最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

在外被爆者にも医療費全額支給すべきか

2015-09-09 15:31:41 | 日記
平成26年(行ヒ)第406号 一般疾病医療費支給申請却下処分取消等請求事件
平成27年9月8日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所

産経新聞によると以下のような概要です。

 海外に住む被爆者に対し、被爆者援護法に定める医療費の全額支給規定が適用されるかが争われた訴訟で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は10日、上告審の判決期日を9月8日に指定した。2審判決の変更に必要な弁論が開かれていないため、全額支給すべきだとした2審大阪高裁判決が確定する見込み。
 在外被爆者の医療費について、最高裁が判断を示すのは初めて。同種訴訟では広島、長崎両地裁が訴えを棄却して原告が控訴しており、最高裁が示す判断が影響を与えるとみられる。
 原告は韓国在住の被爆者や遺族。援護法は被爆者がやむを得ない理由で国内にある指定医療機関以外で治療を受けた場合、医療費の自己負担分を全額支給できると規定。しかし、在外被爆者の海外治療は「保険医療制度が違う」などと対象外とされてきた。
 1審大阪地裁は平成25年10月、「援護法を在外被爆者に適用しないと限定解釈する合理性はない」として、原告の申請を却下した大阪府の処分を取り消し、2審も支持した。


まずは、外国居住者についての扱いが問題になったようです。まずは、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律を見てみましょう。
2条(被爆者健康手帳)
2  被爆者健康手帳の交付を受けようとする者であって、国内に居住地及び現在地を有しないものは、前項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その者が前条各号に規定する事由のいずれかに該当したとする当時現に所在していた場所を管轄する都道府県知事に申請することができる。
3  都道府県知事は、前二項の規定による申請に基づいて審査し、申請者が前条各号のいずれかに該当すると認めるときは、その者に被爆者健康手帳を交付するものとする。

なお、外国籍に関する条項はありませんし、立法趣旨から言って原爆投下時に広島長崎にいたすべての人と胎児が含まれているので、外国人を除くという判断はできないようです。外国居住者に関しても、2条から被爆者手帳の交付ができることになっています。ここまでは問題ないでしょう。

次に、18条を見ます。
(一般疾病医療費の支給)
第十八条  厚生労働大臣は、被爆者が、負傷又は疾病(第十条第一項に規定する医療の給付を受けることができる負傷又は疾病、遺伝性疾病、先天性疾病及び厚生労働大臣の定めるその他の負傷又は疾病を除く。)につき、都道府県知事が次条第一項の規定により指定する医療機関(以下「被爆者一般疾病医療機関」という。)から第十条第二項各号に掲げる医療を受け、又は緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたときは、その者に対し、当該医療に要した費用の額を限度として、一般疾病医療費を支給することができる。

基本的に、乳幼児が居住する都道府県外でも医療費減免措置が受けられるのと同じになりますね。
では、今回のケースではどうなるかというと、海外での治療にその手帳が使えるかという論点になります。
第一に、海外での治療は、健康保険制度や医療制度そのものが異なります。となると、日本では保険適用外の治療であっても海外で治療すればタダになるということになります。これは自国民に対して不公平を強いることになりませんか?この観点から、大阪市は支払いを拒否したのだと思います。
せめて、日本と医療関係に関して条約を締結しているとか、そういうのを最低条件として入れているならば話は別ですが、これでは手帳を先に使ったもん勝ちということになります。その手帳の不正使用の可能性については、どうなのでしょうか。
少なくとも、韓国内では日本語を解する人は少なくないですが、公用語ではありません。日本語を解さない人が事務処理をすることは充分の考えられますし、英語で発行しても同じことです。
要するに法的安定性が保たれません。
第二に、当時日本国民であったとは言え、すでに日本から独立した国の国民であること。日本から独立した時に、賠償等は日韓基本条約によって解決済みであることから考えれば、改めて個人に対してどういった名目で保障するのか不明確です。思いやり予算としてこの制度を作ってしまった政治に大きな問題があるとはいえ、法の番人としてこの点は日韓基本条約に基づくべきでしょう。

これに対して裁判所は全員一致で以下の理由を述べています。

一般疾病医療機関以外の者から医療を受けた場合については,緊急その他やむを得ない理由により一般疾病医療機関以外の者から医療を受けたことをその支給の要件として定めているところ,被爆者の居住地又は現在地の付近に一般疾病医療機関がないため近隣に所在する一般疾病医療機関以外の者から医療を受けることとなった場合には,上記の要件が満たされるものと解され,在外被爆者が日本国外で医療を受けた場合にも,これと同様に解することができるというべきである

これは私が述べたように法的安定を担保する観点からして、かなり無理があり、類推適用にしてもかなり拡大しすぎという感じが否めません。
今回私の判断からすれば、トンデモというまでは行かないにせよ、かなり法的に無理した判決であると言わざるを得ません。

今回の裁判官 第三小法廷
裁判長裁判官 岡部喜代子 ややずれている
裁判官 大谷剛彦 ややずれている
裁判官 大橋正春 ややずれている
裁判官 木内道祥 ややずれている
裁判官 山崎敏充 ややずれている