平成28年(行ヒ)第169号 相続税更正及び加算税賦課決定取消請求事件
平成29年2月28日 第三小法廷判決
TKCのローライブラリーによると、次のように解説しています。
共同相続人である上告人らが、相続財産である土地の一部につき、財産評価基本通達の24に定める私道供用宅地として相続税の申告をしたところ、相模原税務署長から、これを貸家建付地として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたため,被上告人(国)を相手に、本件各処分(更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求めた上告審の事案において、本件各歩道状空地の相続税に係る財産の評価につき、建築基準法等の法令による制約がある土地でないことや、所有者が市の指導を受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えて選択した結果として設置された私道であることのみを理由として、具体的に検討することなく、減額をする必要がないとした原審の判断には、相続税法22条の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決を破棄し、本件各歩道状空地につき、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
難しい事書いてありますね。
1 相続人が、相続した土地の一部を財産評価基本通達の24に定める私道供用宅地として申告しました。
是によれば、評価額の30%に下げられることになります。
2 ところが、相模原税務署長から,これを貸家建付地として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,これらを併せて「本件各処分」という。)を受けました。
他人に貸しているのだから、それはダメよという事のようです。
3 相続人たちは、本件相模原土地及び本件大和土地並びに本件相模原共同住宅3棟及び本件大和共同住宅8棟を取得しました。
4 相模原土地には,インターロッキング舗装が施された幅員2mの歩道状空地(以下「本件相模原歩道状空地」という。)が存在する。しかも、被相続人が平成14年11月に相模原市長から都市計画法所定の開発行為の許可を受けて本件相模原共同住宅を建築した際に,相模原市開発行為等指導要綱を踏まえた市の指導によって,市道に接する形で整備しました。
5 同様に大和土地には,インターロッキング舗装が施された幅員2mの歩道状空地(以下「本件大和歩道状空地」という。)が存在する。本件大和歩道状空地は,被相続人が平成14年11月及び同15年6月に大和市長から都市計画法所定の開発行為の許可を受けて本件大和共同住宅を建築した際に,大和市の「都市計画法施行令第25条第2号ただし書の運用基準」を踏まえた市の指導によって,市道に接する形で整備された。
6 外観上,車道脇の歩道として本件各共同住宅の居住者等以外の第三者も利用することが可能な状態となっている。なお,本件各歩道状空地は,いずれも遅くとも平成25年4月以降,近隣の小学校の通学路として指定され,児童らが通学に利用している。
こうなれば当然私有地でありながら、公共性の高い土地、まさに道路と言ってよい状態ですね。
7 ところが、本件各歩道状空地につき,いずれも私道供用宅地に該当せず,本件各共同住宅の敷地(貸家建付地)として評価すべきであるとして,本件各処分をしました。
原審と二審は以下のように判断しました。
①建物敷地の接道義務を満たすために建築基準法上の道路とされるものは,道路内の建築制限(同法44条)や私道の変更等の制限(同法45条)などの制約があるのに対し,
②所有者が事実上一般の通行の用に供しているものは,特段の事情のない限り,私道を廃止して通常の宅地として利用することも可能であるから,評価通達24にいう私道とは,その利用に①のような制約があるものを指すと解するのが相当である。
要するに、容積率など私道と主張する範囲も計算に入れてるよね、他人に売ることだってできるよね、だからダメだと判断しました。
これに対して最高裁は、次のように述べています。
(1) 相続税法22条は,相続により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価による旨を定めているところ,ここにいう時価とは,課税時期である被相続人の死亡時における当該財産の客観的交換価値をいうものと解される。そして,私道の用に供されている宅地については,それが第三者の通行の用に供され,所有者が自己の意思によって自由に使用,収益又は処分をすることに制約が存在することにより,その客観的交換価値が低下する場合に,そのような制約のない宅地と比較して,相続税に係る財産の評価において減額されるべきものということができる。
そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は,私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず,当該宅地の位置関係,形状等や道路としての利用状況,これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし,当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か,また,その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。
相続したときすでにその辺の小学生が通学路に使っている実態があったし、後から付け足したものではない。ちゃんと実態を見ましょうよという事のようです。
(2) これを本件についてみると,本件各歩道状空地は,車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので,いずれも相応の面積がある上に,本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また,本件各歩道状空地は,いずれも本件各共同住宅を建築する際,都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために,市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり,本件各共同住宅が存在する限りにおいて,上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。
しかも道幅もそれなりにあるし、住人以外も遣っているし、そもそも市からの指示で作れと言われたのだから、そう簡単に転用できないよね。
ということで、全員一致で申請通り30%まで評価を下げなさいと判決が出ました。
今回の裁判官
第三小法廷
裁判長裁判官 山崎敏充
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
すっきりとした判断でした。むしろ原審がなんでそんな判断を出したのかの方が疑問です。
しかも、市の指示で一般人が通るとなれば、ここで起きた事故は市が管理者責任を持ってくれるんですよねと言いたくなります。
平成29年2月28日 第三小法廷判決
TKCのローライブラリーによると、次のように解説しています。
共同相続人である上告人らが、相続財産である土地の一部につき、財産評価基本通達の24に定める私道供用宅地として相続税の申告をしたところ、相模原税務署長から、これを貸家建付地として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたため,被上告人(国)を相手に、本件各処分(更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求めた上告審の事案において、本件各歩道状空地の相続税に係る財産の評価につき、建築基準法等の法令による制約がある土地でないことや、所有者が市の指導を受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えて選択した結果として設置された私道であることのみを理由として、具体的に検討することなく、減額をする必要がないとした原審の判断には、相続税法22条の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決を破棄し、本件各歩道状空地につき、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
難しい事書いてありますね。
1 相続人が、相続した土地の一部を財産評価基本通達の24に定める私道供用宅地として申告しました。
是によれば、評価額の30%に下げられることになります。
2 ところが、相模原税務署長から,これを貸家建付地として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,これらを併せて「本件各処分」という。)を受けました。
他人に貸しているのだから、それはダメよという事のようです。
3 相続人たちは、本件相模原土地及び本件大和土地並びに本件相模原共同住宅3棟及び本件大和共同住宅8棟を取得しました。
4 相模原土地には,インターロッキング舗装が施された幅員2mの歩道状空地(以下「本件相模原歩道状空地」という。)が存在する。しかも、被相続人が平成14年11月に相模原市長から都市計画法所定の開発行為の許可を受けて本件相模原共同住宅を建築した際に,相模原市開発行為等指導要綱を踏まえた市の指導によって,市道に接する形で整備しました。
5 同様に大和土地には,インターロッキング舗装が施された幅員2mの歩道状空地(以下「本件大和歩道状空地」という。)が存在する。本件大和歩道状空地は,被相続人が平成14年11月及び同15年6月に大和市長から都市計画法所定の開発行為の許可を受けて本件大和共同住宅を建築した際に,大和市の「都市計画法施行令第25条第2号ただし書の運用基準」を踏まえた市の指導によって,市道に接する形で整備された。
6 外観上,車道脇の歩道として本件各共同住宅の居住者等以外の第三者も利用することが可能な状態となっている。なお,本件各歩道状空地は,いずれも遅くとも平成25年4月以降,近隣の小学校の通学路として指定され,児童らが通学に利用している。
こうなれば当然私有地でありながら、公共性の高い土地、まさに道路と言ってよい状態ですね。
7 ところが、本件各歩道状空地につき,いずれも私道供用宅地に該当せず,本件各共同住宅の敷地(貸家建付地)として評価すべきであるとして,本件各処分をしました。
原審と二審は以下のように判断しました。
①建物敷地の接道義務を満たすために建築基準法上の道路とされるものは,道路内の建築制限(同法44条)や私道の変更等の制限(同法45条)などの制約があるのに対し,
②所有者が事実上一般の通行の用に供しているものは,特段の事情のない限り,私道を廃止して通常の宅地として利用することも可能であるから,評価通達24にいう私道とは,その利用に①のような制約があるものを指すと解するのが相当である。
要するに、容積率など私道と主張する範囲も計算に入れてるよね、他人に売ることだってできるよね、だからダメだと判断しました。
これに対して最高裁は、次のように述べています。
(1) 相続税法22条は,相続により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価による旨を定めているところ,ここにいう時価とは,課税時期である被相続人の死亡時における当該財産の客観的交換価値をいうものと解される。そして,私道の用に供されている宅地については,それが第三者の通行の用に供され,所有者が自己の意思によって自由に使用,収益又は処分をすることに制約が存在することにより,その客観的交換価値が低下する場合に,そのような制約のない宅地と比較して,相続税に係る財産の評価において減額されるべきものということができる。
そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は,私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず,当該宅地の位置関係,形状等や道路としての利用状況,これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし,当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か,また,その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。
相続したときすでにその辺の小学生が通学路に使っている実態があったし、後から付け足したものではない。ちゃんと実態を見ましょうよという事のようです。
(2) これを本件についてみると,本件各歩道状空地は,車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので,いずれも相応の面積がある上に,本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また,本件各歩道状空地は,いずれも本件各共同住宅を建築する際,都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために,市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり,本件各共同住宅が存在する限りにおいて,上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。
しかも道幅もそれなりにあるし、住人以外も遣っているし、そもそも市からの指示で作れと言われたのだから、そう簡単に転用できないよね。
ということで、全員一致で申請通り30%まで評価を下げなさいと判決が出ました。
今回の裁判官
第三小法廷
裁判長裁判官 山崎敏充
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
すっきりとした判断でした。むしろ原審がなんでそんな判断を出したのかの方が疑問です。
しかも、市の指示で一般人が通るとなれば、ここで起きた事故は市が管理者責任を持ってくれるんですよねと言いたくなります。