最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

労組との話し合いがまとまらないから賃下げは裁量権逸脱

2022-03-21 09:46:57 | 日記
令和3(行ヒ)171  山形大学不当労働行為救済命令取消請求事件
令和4年3月18日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  仙台高等裁判所

使用者が誠実に団体交渉に応ずべき義務に違反する不当労働行為をした場合には,当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときであっても,労働委員会は,使用者に対して誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずることを内容とする救済命令を発することができる

NHKの報道です。
山形大学は、平成27年に労働組合と合意がないまま教職員の基本給を引き下げ、県の労働委員会から、「十分な説明をしておらず不当労働行為にあたる」として団体交渉に応じるよう命令を受けました。
大学は命令を不服として訴えを起こし、2審の仙台高等裁判所は「給与の引き下げから命令までおよそ4年が経っていて、改めて団体交渉をしても有意義な合意をするのは事実上、不可能だ」として、1審に続いて大学の訴えを認め、労働委員会の命令を取り消す判決を言い渡しました。

労働新聞の報道です。
一審の山形地裁、二審の仙台高裁は、ともに賃下げから4年ほど経過した労委の命令時点で改めて団交をしても、労働組合にとって有意な合意は不可能だったと指摘。仮に誠実交渉義務違反があったとしても、労委命令は裁量の範囲を超える違法なものといわざるを得ないとして、救済命令を取り消した。
 最高裁は労委の裁量について「広範な裁量を有し、裁判所はその裁量を尊重する必要がある」と強調。合意の成立が見込まれないとしても、労委は誠実交渉を命じることができると判示した。誠実交渉義務違反があったかどうかについて、さらに審理を尽くす必要があるとして、仙台高裁に差し戻している。


これって、3.11の東日本大震災の時に公務員が一律に給与減額ボーナスカットされたことがありましたが、これもその後の回復がなされていません。
(1)国立大学である山形大学を設置する被上告人は,平成25年頃,その雇用する教職員等によって組織された労働組合である上告補助参加人に対し,平成24年度の人事院勧告に倣って平成26年1月1日から教職員のうち55歳を超える者の昇給を抑制することにつき,団体交渉の申入れをした。
(2)被上告人は,平成26年頃,上告補助参加人に対し,平成26年度の人事院勧告に倣って平成27年4月1日から教職員の給与制度の見直し(賃金の引下げ)をすることにつき,団体交渉の申入れをした。
(3)被上告人は,平成25年11月以降,上告補助参加人との間で,上記 及びの各事項につき複数回の団体交渉をしたが,その同意を得られないまま,同27年1月1日から上記 の昇給の抑制を実施し,同年4月1日から上記 の見直し後の給与制度を実施した。


不思議なのは国立大学法人なので国の直接管理下にあるわけでもないのに準公務員扱いで、給与も国から指示されるということです。どこまでが独立行政法人が独自判断できるのでしょうか???ちなみに文科省の本省は上級試験を通過したものしか採用しないそうで、地方国立大の事務職で優秀なのを本省に呼ぶらしいです。これって独立行政法人の意味があるんですかね。随分中途半端な制度にしたもんです。

(4)本件申立ては,本件各交渉事項に係る団体交渉における被上告人の対応が不誠実で労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するとして,被上告人に対し,本件各交渉事項につき誠実に団体交渉に応ずべき旨及び上記団体交渉につき不当労働行為であると認定されたこと等を記載した文書の掲示等をすべき旨を命ずる内容の救済を請求するものである。

まあそうなりますね。ところが原審は4年経過した後だから、労組の組合員も入れ替わっているので、今更交渉するのは意味がないと判断しました。そりゃないでしょうに。労組の人格否定ですか??

最高裁は
(1)労働組合法7条2号は,使用者がその雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むことを不当労働行為として禁止するところ,使用者は,必要に応じてその主張の論拠を説明し,その裏付けとなる資料を提示するなどして,誠実に団体交渉に応ずべき義務(以下「誠実交渉義務」という。)を負い,この義務に違反することは,同号の不当労働行為に該当するものと解される。・・・ところで,団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないと認められ
る場合には,誠実交渉命令を発しても,労働組合が労働条件等の獲得の機会を現実に回復することは期待できないものともいえる。しかしながら,このような場合であっても,使用者が労働組合に対する誠実交渉義務を尽くしていないときは,その後誠実に団体交渉に応ずるに至れば,労働組合は当該団体交渉に関して使用者から十分な説明や資料の提示を受けることができるようになるとともに,組合活動一般についても労働組合の交渉力の回復や労使間のコミュニケーションの正常化が図られるから,誠実交渉命令を発することは,不当労働行為によって発生した侵害状態を除去,是正し,正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復,確保を図ることに資するものというべきである。


要するに、山形大は労働組合とちゃんと話し合いをしてないじゃないかと認定しています。

(2)本件認容部分は,被上告人が誠実交渉義務に違反する不当労働行為をしたとして,被上告人に対して本件各交渉事項につき誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずる誠実交渉命令であるところ,原審は,本件各交渉事項について,被上告人と上告補助参加人とが改めて団体交渉をしても一定の内容の合意を成立させることは事実上不可能であったと認められることのみを理由として,本件認容部分が処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法であると判断したものである。そうすると,原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。

だって合意できないんだからしゃーないやんは駄目ですよ、裁量権の逸脱がありますと言ってます。

ということで審理やり直しを命じました。

裁判官全員一致
裁判長裁判官 岡村和美
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一

妥当な判断ですかね。ただ、準公務員でストライキが制限されている中、どうやって交渉の席につかせるか、この点が曖昧なままになっていることが問題の発端のように思えます。その点について最高裁は、労組よりにならざるを得ないのかなという気もしますが、立法には早くこの辺りの改善を求めたいところです。

一般論として、国立大の給料は非常に安いです。まともな教員を維持しようとすると、世界標準に合わせる必要があります。例えば、日本で助教の給料は年収で500万、中国による占領前の香港では1200万円です。人件費はきちんとやらないと国力が低下しますよ。

また、事務職と教員を同じ労働組合にするのもおかしな話です。Job型にしようという国の方針ならば、この辺りについても本気で改革が必要です。