Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

蜷川さんの訃報、日本から

2016-05-13 | Weblog
蜷川さんの訃報、日本から「第一報です」と、届く。ハノイ青年劇場『野鴨中毒』ゲネプロ開始直前のことだった。
ご病気のことはわかっていたが、やはり、残念である、という思いが強く迫ってきた。もう一度お会いできるような気がしていたのに。
1984年だと思う。自分が劇団を旗揚げした直後に、花園神社の野外劇版『王女メディア』を観た。力強く、華やかだった。シンプルな方向の蜷川さんのいい面が一番出ていた。劇団を旗揚げしたばかりで貧乏な私は花園神社の樹に登って遠くから『王女メディア』を観た。訃報を聞いてその時の印象が一瞬熱く甦った。私が蜷川さんと仕事したのは『エレンディラ』だが、私の潜在意識にあの体験があったのだと思う。『エレンディラ』のメイン・コンセプトを思いついたのも、十一年前燐光群のアメリカツアー唯一の空き日にニューヨークのセントラルパークを一日中歩き回っていたとき、ハドソン河の水面の照り返しが目に入ったときだった。『エレンディラ』は設定がそうである通り、野外劇であるべきだったのだ。一日そんなことを考えていた。
新しい世代の人にはわかってもらえないことと思うが、花園神社の『王女メディア』は、ある意味、「新劇」「アングラ」「商業演劇」の垣根が明確に壊れたことを示した事件でもあった。『王女メディア』を「ただ観」したことは後に中根公夫プロデューサーに謝罪した。

昨日は朝9時からマスコミ対応で小屋入りしていたが、一夜明けて初日の今日は俳優・人形遣い諸氏に休んでいただく意味もあって(もちろんスタッフにも!)、遅い入りとなった。昨夜は宿舎に戻ってなりゆきで日本側ほぼ全スタッフが缶ビール等片手に屋上に集まった。ハノイの夜景を背に、風がよく抜けた。スタッフの皆さんは、音楽の太田さんが蜷川さん監督の映画『嗤う伊右衛門』の音楽に加わっていたくらいで、私以外は蜷川さんと接点がなく、その話題は出なかったが、個人的には演劇の仲間たちと過ごすのが相応しい夜だった。
蜷川さんのご冥福をお祈りいたします。

『野鴨中毒』、まもなくベトナム初日の幕が開く。

………………

江戸糸あやつり人形結城座×ベトナム青年劇場
日越国際協働制作『野鴨中毒』

原作:イプセン
脚本・演出:坂手洋二
人形美術・衣裳:寺門孝之
音楽・生演奏:太田惠資
出演:十二代目結城孫三郎、レ・カイン、グエン・タイン・ビン(ベトナム青年劇場) ほか

舞台美術:島次郎
照明:齋藤茂男
音響:島猛
舞台監督:森下紀彦

<ベトナム青年劇場スタッフ>
Dang Minh Tuan(舞台美術・舞台監督)
Nguyen Anh Tuan(音響)

国境や文化の境界を越えて、結城座+坂手洋二がイプセン最高傑作『野鴨』に挑む!

日本の古典文化のひとつ「江戸糸あやつり人形」を継承する結城座と、ベトナム青年劇場との国際協働制作による人形芝居。12代目結城孫三郎はじめ人形遣いたちが寺門孝之デザインの人形をあやつり、ベトナムの国民的大女優であるレ・カインと競演します。演出に現代演劇の旗手・燐光群主宰の坂手洋二を迎え、アジアの芸術力を結集し、イプセンの戯曲『野鴨』を再構築していきます。様々な要素が融合した今まで見たこともない舞台にご期待ください。


○ハノイ公演 

於 : ベトナム青年劇場

5月13日(金)20:00開演
5月14日(土)20:00開演
5月15日(日)15:00開演


http://www.youkiza.jp/sp/vietnam/
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