選挙シーズン。投票日は東京にいないので、どのみち私は不在者投票をしなければならない。気が重いのはなぜか、説明するまでもないだろう。憲法改悪だけは避けたい。……橋下徹大阪市長は「ツイッター」について、「(自らは)候補者ではないから、投票を呼びかける行為以外の場合はいいのではないか」と、自分だけは言いたい放題を続けるつもりのようだ。現行のままでは不自由すぎて選挙期間中こそ自由な論議が必要という意見もあるだろうが、それは別な話。公約を主張したり、他政党の政策を批判したりすれば、公選法違反にあたる恐れもある。そういう場合もいちいち確かめるまもなく時は過ぎるだろうから、ぼったくりやり逃げの発言も出てくるだろう。うんざりだ。……新党ラッシュのしんがり「日本未来の党」は、どうなのか。「卒原発」というネーミングもぴんと来ない、原発を本気で止めたいならいいが、後になって「まだ卒業には早い」と言い出さないか。「みどりの風」が福田衣里子ら前衆院議員3人を「日本未来の党」に合流させ、当選すれば、みどりの風に復党させる方針を示しているというのも、よくわからない。いきなりクリーンさとはほど遠い印象になってしまう。……しばらく整骨院に通うことにするが、バランスボールも始める。
『星の息子』東京公演終了。そしてすぐに『宇宙みそ汁』態勢に入る。既にアトリエでの照明の吊り込みは終えた。今夏上演したアトリエ公演の演目だが、好評につき、十二月後半の『星の息子』ツアーとの間のこの時期に、急遽追加公演をすることにしたのだ。前回見逃された方、もう一度観たい方(リピーター割引準備中、詳細はもう少しお待ち下さい)、是非おいで下さい。『星の息子』情報に埋もれてなかなか公演情報が浸透していなかったのですが、お見逃しなく。演劇評論家の扇田昭彦さんから、「清中愛子の詩、手記などを坂手洋二が構成・演出した『宇宙みそ汁』を観て驚いた。等身大の濃い生活感、造船所でのリアルな仕事の描写などが、途方もない笑いの感覚、カオス的な奔放な想像力と見事に共存していたからだ。小さな空間から生まれた大きな作品世界に心を動かされた。」という推薦文をいただいている。12月5日(水)~9日(日)、梅ヶ丘BOX。
http://rinkogun.com/Misoshiru.html
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始発新幹線で岡山に。『星の息子』岡山公演に向けて取材を受ける。私が子どもの頃から岡山随一の人気を誇るアナウンサー、岩根宏行さんの番組にも出演。火曜日なので天満屋デパート休館日のため表町商店街も軒並みお休み。昼食は「やまと」でラーメンをと思ったが開いていないので、芳泉高校の後輩でもあるアートファームの古本径子さん推薦のカレー屋で野菜と魚のスープカレー×5辛。人気があるらしく、殺到する客で目の前で炊飯器のご飯がなくなり、慌てて炊いていたりする。……大阪に移動して記者会見。……石原燃、円岡めぐみと、高江を支援するBARのこされ島へ。〈イラク帰還兵スピーキングツアー番外編「SAKE & PEACE ~酒がつなぐ友情、そして平和」〉へ。アートを通じて反戦活動を続けている二人のイラク帰還兵、アーロン・ヒューズとアッシュ・キリエ(写真)。イラク戦争の初期、米軍兵士として従軍。イラクでのことを、アッシュは、「人間の間化」だと言う。帰還後、そうとは知らずにPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいた2人は、家族や友人、同じ経験をしてきたベトナム帰還兵等周囲の助けを得て、徐々に自分自身を取り戻し始めた。内々へと引きこもっていたアーロンは、絵や詩等、アートを通して自分自身と向き合い始めたという。既に証言活動を始めていたイラク帰還兵の友人を見て、アッシュも、自分の体験を話し始めた。子どもが生まれたことで、「戦争と家族」について問い続けるようにもなったという。戦争が終わったとしても、イラクやアフガニスタン等戦場となった地に住む人々、そして、帰還兵の多くが、PTSDやTBI(外傷性脳損傷)等見えない痛み(トラウマ)をかかえている……。彼らの兵士体験をもっと聞きたかったが、この夜は人的交流がメインで、アーロンとアッシュは本来はオフ日のつもりだったとかで、終始リラックスしており、それはそれでよいことだ。若い人達もいっぱい。みんないい顔だ。のこされ島のガンジーさんが同年齢と知る。アーロンとアッシュは高江にも訪れてくれている。彼らの日本ツアーは、のべ一ヶ月続くという。円岡めぐみが英語を教える学校にも行くようだ。人の輪とは、いいものだ。
「生きて虜囚の辱めを受けず」
1944年 8月5日。
第二次世界大戦中のオーストラリア、
ニューサウスウェールズ州・カウラにある連合軍の捕虜収容所。
捕虜になった日本兵545名による、史上最大の脱走計画。
日本兵たちは「班長会議」で、
計画を実行するか否かの、多数決投票を行った❾。
極限の選択を迫られた兵士たち等を演ずる俳優を求めます。
<公演>
○上演日程 2013年 3月8日(金)~24日(日) 会場=下北沢ザ・スズナリ
○稽古開始 2013年 1月下旬
<オーディション>
○男性❾日本兵を演じる俳優。
○女性❾事件の謎に迫る「現代の女性」を演じる俳優(若干名)。
【応募方法】履歴書と作文をA4サイズで作成し、以下にご郵送下さい。
○履歴書 要写真貼付。身長・体重・年齢(生年月日)・住所・電話・メールアドレス(PC/携帯共)を明記のこと。
観たことのある、あるいは読んだことのある、燐光群または坂手洋二の作品を挙げて下さい。
○作 文 「戦争について」字数自由。
○送付先 〒154-0022 世田谷区梅丘1-24-14 フリート梅丘202 (有)グッドフェローズ
『カウラの班長会議』 オーディション係
○締 切 2012年11月28日(水)必着
電話でのお問合せはご遠慮下さい。rinkogun@alles.or.jp または FAX:03-3426-6594でお受け付けします。
○二次審査 日時=11月30日(金)
10:00~12:00または13:00~15:00
会場=梅ヶ丘BOX
※二次審査の詳細は、書類審査の上、通知します。
制作助手も募集します。e-mailまたはFAXでご連絡下さい。
1944年 8月5日。
第二次世界大戦中のオーストラリア、
ニューサウスウェールズ州・カウラにある連合軍の捕虜収容所。
捕虜になった日本兵545名による、史上最大の脱走計画。
日本兵たちは「班長会議」で、
計画を実行するか否かの、多数決投票を行った❾。
極限の選択を迫られた兵士たち等を演ずる俳優を求めます。
<公演>
○上演日程 2013年 3月8日(金)~24日(日) 会場=下北沢ザ・スズナリ
○稽古開始 2013年 1月下旬
<オーディション>
○男性❾日本兵を演じる俳優。
○女性❾事件の謎に迫る「現代の女性」を演じる俳優(若干名)。
【応募方法】履歴書と作文をA4サイズで作成し、以下にご郵送下さい。
○履歴書 要写真貼付。身長・体重・年齢(生年月日)・住所・電話・メールアドレス(PC/携帯共)を明記のこと。
観たことのある、あるいは読んだことのある、燐光群または坂手洋二の作品を挙げて下さい。
○作 文 「戦争について」字数自由。
○送付先 〒154-0022 世田谷区梅丘1-24-14 フリート梅丘202 (有)グッドフェローズ
『カウラの班長会議』 オーディション係
○締 切 2012年11月28日(水)必着
電話でのお問合せはご遠慮下さい。rinkogun@alles.or.jp または FAX:03-3426-6594でお受け付けします。
○二次審査 日時=11月30日(金)
10:00~12:00または13:00~15:00
会場=梅ヶ丘BOX
※二次審査の詳細は、書類審査の上、通知します。
制作助手も募集します。e-mailまたはFAXでご連絡下さい。
ギリギリまで雑務処理、劇場へ。『星の息子』、今日は池澤夏樹さんが来て下さる。池澤さんは私のハヤカワ演劇文庫の沖縄三部作『海の沸点/沖縄ミルクプラントの最后/ピカドン・キジムナー』の書評を新聞に書いて下さったことがある。池澤さんは2005年まで沖縄に住み、続いて、パリ、札幌と住処を移られている。小説『カデナ』は、沖縄を離れてから書かれたものだ。……かなりの疲労度、蓄積睡眠不足。鏡を見ると目が充血している。これでは使いものにならない。パソコン前でくたばる。……くたばっていたら夜中の三時に息子がバイトから帰ってくる。腹が減ったという。バイトしている店では千円以内のメニューは××円で食べることができるらしいが、何十分かの労働の対価として食べることの意味を考えたのか、直帰したのだ。冷凍庫を見るが、冷凍食品のスーパーの半額サービスは増えたものの、元々の定価が上昇していることなどから、社会の推移を理解しなければなるまい。……憲法改悪、徴兵論議。自民党の過去の党内リベラルの長老たちは好戦新世代の台頭を黙って見過ごしているようだが、どういうことなのだろう。……『星の息子』東京公演、あと三日、水曜日までです。月・火は夜。水曜日は昼のみ。渡辺美佐子・円城寺あやの名コンビぶりもますます定着してきた。お見逃しなく。
ギリギリまで雑務処理、劇場へ。『星の息子』は実在の方々をモデルというか参考にさせていただいている部分の多い劇であるが、今日はまたそのうちの何人かが観に来てくださる。高江・普天間でも活発に動いている琉球大学の阿部小涼さんも。彼女は「私も、やぐら派」と、喜んでくれる。……急いでシアタートラムへ。水曜日に見逃した『4 four』。舞台と客席の関係で、私がやろうと思っているあることと似た内容があるらしいので、是非見ておきたかった。結果として、まったく関係なかった。私がこの劇場で『トーキョー裁判 1999』を上演したのはもう十三年も前なのだが、その時も画期的な舞台と客席の関係に挑んだのである。今日の『4 four』について劇としての感想は差し控えたいが、戯曲を二年間かけて磨き上げた部分というのがどこなのかは、観ただけではわからない。死刑や裁判制度については、ほぼ何も言っていないのに等しい。それも狙い通りという答が返ってくるのだろうが、こちらも別にこの劇から何かを知りたいとは思わない。開演寸前に地震。隣の未知の女性客が「地震ですよね」と不安な声を掛けてくるくらいには、揺れた。……明治大学リバティタワーに移動、〈イスラエルのガザ攻撃を許さない緊急集会「ガザで、今、起きていること」【映画『ガザに生きる』・第五章『ガザ攻撃』/先行上映会】に駆け込むが、既に映画は終わっていた。11月10日より1年ぶりにパレスチナ・イスラエルの取材に現地へ飛んだ土井敏邦監督は、イスラエルによるプレスカード発行拒否(ガザ取材の拒否)により、ガザに入れない状態。会場と繋がったスカイプで土井さんからの報告を聞く。お元気そうで何よりだが、かの地では「停戦」とはいっても、これからの揺り戻しが考えられる。気をつけてください。この集まりは〈非戦を選ぶ演劇人の会〉も関わっている。これから何にどう取り組むべきなのか、あらためて考える。
政府は米軍普天間飛行場へのオスプレイ配備に反対する住民がたこや風船を揚げて抗議の意思を示す行為について、「航空法の規則を改正したとしても禁止することはできないため、法改正そのものを考えていない」との認識を表明。罰則の強化や新たな法律の制定も「考えていないが、関係省庁が連携し、航空の安全確保に取り組む」という。とりあえず、安心して凧を揚げよう。というか、そんなことは初めからわかっていたわけで、何を今更、である。とにかく「対策を練ろうというポーズ」を示しただけだ。仕事しているふりばかりする税金泥棒たちである。……日本維新の会代表代行・橋下徹大阪市長(書いていて面倒なややこしい身分だが、それだけ「無理矢理」な人なのだという気がする)は、みんなの党の渡辺喜美代表に「国のことを思うなら一緒になろう。大英断を下してほしい」と合流を打診。この二団体は選挙協力を進めており、18選挙区で公認が競合するという。橋下は「一つのグループになれば調整は意地でもやる。最後は(候補者を)ジャンケンで決めてもいい」という。ジャンケンで選んだ人間に投票するヤツは馬鹿じゃないのかってことになるだろう、普通。選挙に勝てれば誰とでも組むというこの空っぽな人物を世間は甘やかしすぎ。……政府主導の東電福島第一原発周辺の除染で、現場作業員に税金から支払われる「特殊勤務手当」が本人に支給されていない事例が相次いでいるという。元請けのゼネコンに続いて下請けがいくつも連なる多重請負構造の中で手当が「中抜き」された結果という。「作業員に渡していない」「作業員に手当のことを知らせず、日当5千円で働かせている会社もある」という。既にわかりきっているあからさまな非道が横行するのは、組合なき国・日本の、労働を支える社会的基礎力のなさである。企業たちは結果として自分の首を絞めていることを知るべきだ。「除染」という「事業」じたいの是非も問題なのだが。……民主党・安住淳幹事長代行は、離党した前衆院議員らに選挙資金として渡した300万円の返還を求める考えを示した。「別の政党に行って、民主党から受け取ったお金を使ってはならない。人間性が問われる」という。選挙資金を早めに渡して繋ぎとめようとしたことが(それでみんな解散を事前に知っていた)、はからずも露呈。聞いているだけで恥ずかしい。ところで、太陽の党はもうなくなるのに、12月分の政党助成金4300万円を受けとる権利があり、それがそっくり「日本維新の会」への「持参金」になってしまうというのは本当の話なのか。こっちはほんとにちゃんと返してもらいたい。……23日は牡蠣の日だったらしい。そういう季節なのだ。あと一週間で師走になるということだ。なんともはや。……『星の息子』東京公演は28日まで。
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沖縄県の米軍普天間飛行場から米兵一人が脱走。米軍は県警に逮捕要請。それにしても今この時期に、いろいろ起きるものである。自民党が衆院選公約に自衛隊を「国防軍」とするという憲法改悪案を掲げ、「日本維新の会」の橋下徹は徴兵制を言挙げしているが、まあ、兵士たちも好きで兵隊になりたいわけではないのである。昔、反戦自衛官第一号・小西誠さんは「反戦自衛官のたたかいは階級闘争である」と言ったが、徴兵制以前に、貧困・格差の問題がさらに重大になってくると、「生きていくために仕事を求める」ために、自衛隊に職を求める者が増えてくるのは必須である。橋下は次期衆院選での連携協議を進める石原慎太郎・前東京都知事が尖閣諸島を巡り緊張が高まる中国に対抗するため「最低限核兵器のシミュレーションが必要だ。強い抑止力としてはたらくはずだ」と言及したことについて「安全保障で核の役割を考えるのは政治家としてやらなければいけない」と追随した。私は兵士の脱走を支持する。ただし、沖縄じゃなくて本国の段階でやっていただきたいし、そもそも軍隊に入隊しなくてすむ社会づくりを目指してこそたたかってほしい。それはかの国もこの国も同様である。「日本は軍備を持たない」という大前提がなし崩しにされることだけは、避けなければならない。……昨日は終演後、『普天間』の演出・藤井ごうさん、日本に於ける「ドラマトゥルグ」の概念を示したいという中島那奈子さんらと飲む。睡眠不足が続いていたせいか、早々に酔っぱらう。……それにしても、これから寒くなりそうだ。……写真は、非戦を選ぶ演劇人の会が高江に贈った横断幕。「やんばるを飛んでいいのは、鳥と虫と、自由だけ」。このコピーの作者は私なので、同じコピーが『星の息子』のコピーにもなっているのである。
22日夜公演のアフタートークには、竹下景子さんが来て下さる。景子さんは燐光群には二本出演していただいているが、今回の『星の息子』にも出演している渡辺美佐子さんと一緒に出演されたのが六年前秋の『チェックポイント黒点島』(写真)。 下北沢ザ・スズナリ開場25周年記念公演ということで、東京で一ヶ月の公演、その後、全国公演を年の瀬まで続けた。内容的には、竹島・尖閣と特定したものではないが、日本列島と大陸の間に浮かぶ小さな島をモチーフにした、領土問題の劇である。対馬に取材したのを覚えている。美佐子さんも景子さんも、私たちが携わる、ある意味では世間が遠くに置きたがる「問題意識の強い劇」への出演を躊躇されなかった。ほんとうに支えられてきたと思う。……昨日は、NOTEは半分だけ事前に書き出して渡す。楽屋ロビーで三〇分、話。アップと確認。部分稽古は基本的にもう皆に任せる。六日目の本番。昼公演終えて、久しぶりの観劇のため三軒茶屋に向かうが、特殊な形状の舞台・客席の芝居のため、開演時間に間に合いそうにないので、途中まで行きかけて結局、断念。
書類を予定より一つ多く片付け、二時間睡眠のまま劇場へ。NOTEは事前に書き出して渡す。楽屋ロビーで三〇分は、話。アップと確認。部分稽古は基本的にもう皆に任せる。五日目の本番。終えて、扇田昭彦さんとアフタートーク。美佐子さん提唱で、扇田さん、久しぶりに来た城田美樹演出助手と二階カフェでカレーをいただく。城田君は念願のカレーなのだ。皆も疲れが出てくる頃だが、乗りきっていきたい。宮城康博とFB上でチャットまがいの会話をして、その流れでお湯割りを飲んで寝ることにするが、やはりもう一仕事すると決める。が半ばで眠る。そんな一日。
天気予報でわかってはいたが思わぬ寒気。四時間睡眠で目が覚めてしまうのはやはり老人化か。午前は自宅居間の机で諸々の作業。月曜午前は大学の授業を入れていない息子も隣で勝手にしている。昼、久しぶりの整骨院、やはり保険が利くのはありがたいと思う。劇作家協会の事務所にも寄る、高円寺に毎日通っているのに顔も出せずにいて申し訳なかったのだ、渡す物も渡す。だけどチャイムもない事務所で真っ昼間から鍵を締めていては、怪しいよ。来る途中にラスク中毒の清水弥生のために、ラスクと称してはいるが実態はパンの耳の揚げ砂糖まぶしであるものを買う。きなことシュガーとシナモン味があるが、清水はきなこを選ぶ、後の二種の袋は皆で食べるが思わぬ好評。今度は協会事務所にも土産にしよう。楽屋ロビーで劇団の小ミーティング、至近のことを細々と決める。部分稽古。開演前、先方に劇場カフェまで来てもらって、ずいぶん先に実現するかもしれない仕事の打ち合わせ。他にもいろいろな方面で来年以降の予定が少しは決まっていく。四日目の本番、ようやくふっきれた人もいて、劇としての筋がより鮮明に。渡辺美佐子・円城寺あやの二人が星を見上げるやぐらの上にいる情景がよりいっそうユートピアのように見えてくる。宮台真司さんが観て喜んでくれる、彼も沖縄には格別の思いがあるのだ。とはいえ、この劇はまだまだどこか一箇所でも気を抜くと明確にわかるはずのことが通じにくくなると思うので、気は抜けない。幕が開いて三日目から城田美樹演出助手が来ていないのでさみしい。終演後、座高円寺の佐藤信芸術監督と短い立ち話。高円寺と自宅を自転車で行き来するばかりの日々で他人の舞台をずいぶん長い間観られずにいるが、信さんもほとんど何も観ていない、観る気になれないという。座高円寺地下で稽古中の西山水木さんらが合流、不思議な顔ぶれで泡盛をちょっと飲む。解散後、極めて家庭的な内容で高円寺の終夜スーパーで買い物して帰る。そうして一日が過ぎた。帰宅後もこうして朝までいろいろ。明けてきた空の色を見つつ、眠りたいがまだ眠らない。最近凝っている生姜紅茶を飲む。あと二つ書類を片付けるつもりだ。思うことはいろいろだがとりあえず記す気になれない。……ともあれ共にこの時代この場所を生きる人達がいる。こうして生きていることは幸せなのだろう。
三日目。十時半小屋入り、幾つか確認、稽古、今後の打合せ、ばたばたしているうちに開演。昼公演のみだが、あたふたと終わる。劇場の外に出ればまだ五時だというのに真っ暗だ。知らない間に(てことはないのだが)、もう十一月後半になっているのだ、無理もない。暗いとはいってもまだ酒を飲む時間でもないし、遊んでくれる人もいないので、自転車でとことこ帰宅。……溜まっている書き仕事や校正等を消化しようということになるが、腹が減ったので沖縄名物コンビーフハッシュ(ジャガイモの粒々入りコンビーフ)とタマネギの極薄切りを炒めグラタン皿に入れチーズを載せて焼くというおそろしく簡単な料理を作って食べる。胡椒以外の調味料は使わないのだが、うまい。意外なことに主役はタマネギである。タマネギを炒めた時のあの甘みというのはなんなのだろう。それにしても家で夕食を食べるなんてどのくらい久しぶりだろう。……そんな中、世の中ではいろいろなことが起きている。……パレスチナの状況を撮り続けてきた映画監督の土井敏邦さんが、エルサレムにいながら、そこから百数十キロほどの距離にある連日激しい空爆が続くガザに行けないでいる。朝日新聞やNHKの特派員たちはすでに現地から報道を続けているのに、土井さんにはイスラエル政府発行のプレスカードが申請を拒否されている。拒否はもう5度目、「長年パレスチナ、とりわけガザを追ってきたジャーナリストとして、言葉に表せないほど悔しく、情けなく、苦しい」という。何かできることはないだろうか。……それにしてもパレスチナは、国連総会で「国家」に格上げが決議されるだろうか。……イスラエルによるパレスチナへの空爆はもともとの軍事的な応援に加えて、オバマ大統領がお墨付きを与えた。ハマスのロケット弾を迎撃するアイアンドームの予算やらはアメリカから出ているので、「金がかかる兵器だがドカスカ撃てる」のだという。他国の悪行をアメリカがガイドしているわけだ。それを聞くと宮城康博の今日の発言「世界で起こっていること、沖縄で我々が直面し続けていること、それらのリアリズムを考えると、日本国の政治はどれほど陳腐で愚かしく恐ろしいか。鎖国してるんだろ、アメリカ様の庇護のもとで」というのも、あらためて、もっともだと思う。アメリカの提言に対して真似というか言いなりになってしてしまった施策で、日本は取り返しのつかない蒙昧に陥っている。問題は、その鎖国状態に対して自覚がないことだ。……神奈川県は財政再建の一環として県立図書館2か所を廃止する検討を始めたという。そりゃあないよ。図書館に行かずウィキペディアを見たりグーグルで検索すればすむという理屈なのか。こういう「合理化」は、政府や自治体が公共の仕事を別団体を作って任せ、予算がなければ事業の廃止を促し、自分は手を汚さずに「切り捨て」を行い、「格差」「貧困」をうみだす仕組みである。これもアメリカ指導下の政策によるもので、結局、今や「アメリカの影」が及ばぬ部分はない、この国なのである。
二日目。満席。アフタートークは小熊英二さんと。客席から飛び入り小中陽太郎さんからの発言も。終えて、小熊さんと話。かねてから聞きたかったある時期の話を聴く。興味津々。……沖縄の永年の友人・宮城康博と、米軍問題を語らせたらこの人以上の知識理解のある人は珍しいはずである屋良朝博の「博博」コンビ(!)が、9月末の沖縄県民による「普天間基地完全封鎖」についての本『普天間を封鎖した4日間』を出す。かなりのスピード編集、高文研という出版社らしいタフな仕事ぶりだ。楽しみである。……石原と橋下が組んだ。付ける薬はない。中途半端な人たちだ。
『星の息子』、初日があく。なんとかこぎ着けた。更に気を引き締めてゆこう。……楽屋で簡単に初日乾杯後、沖縄方言指導をしてくれた沖直未さんと焼酎を飲む。これまでなかなか落ちついて話もできなかったのだ。彼女は沖縄中部出身。……大阪市此花区の震災がれきに関する市民向け説明会で、がれき受け入れに抗議する4人を公務執行妨害容疑等で逮捕。露骨な言論弾圧。……パレスチナ・ハマスのトップ、アフマド・ジャバリ氏がイスラエル軍の空爆により死亡。これまでに子ども2人を含む最少でも7人が死亡。イスラエルによるこの理不尽な虐殺を国際社会は容認するのか。
『星の息子』、初日前日、劇場での稽古続く。高所も多く慌てず進行。客席でオペしている照明音響班も今日を最後にブースに上がる。しかし初日前日になってしまった。時間というのは経過していくものだ。うむ。……劇場を出ても仕事は山積。机に向かったまま二時間寝ただけで、初日を迎えることに。……ところで、沖縄では「9.30普天間基地ゲート封鎖を考える『場』」というイベントが行われる。12月8日 13:00~18:00 沖縄国際大学5号館106教室 内容としては、「9.30をふり返り、これからを考える「場」を設けます。それぞれの立場からの報告をいただくことで、何があったのかの全体像の片鱗でも共有できればと思いますし、考える「場」になると思います。ぜひ立ち会ってください。特別講演に講師として佐賀大学教授の豊島耕一氏をお招きし、イギリスの反核運動団体のトライデント・プラウシェアズの非暴力直接行動についてお話をいただきます。トライデント・プラウシェアズは核兵器を非武器化するための直接行動など一見過激な行動と同時に幅広い支持を集めることに成功しています。2001年には第二のノーベル賞と言われる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞しています。沖縄における非暴力の運動にもとても示唆に富む刺激あるお話が聞けると思います。乞うご期待。(報告者/講師の敬称略)」とのこと。『9.30をふり返る』報告:三宅俊司(弁護士)・山内末子(県議)・阿部小涼(琉大准教授)・山城博治(平和運動センター)、主催は、オキュパイ普天間(平良夏芽・桃原功・仲渡尚史・宮城康博)。問い合わせ先:オキュパイ普天間の4人のメンバーそれぞれに直接問い合わせてください。4人とも知り合いでもないという方は、メールで occupyfutenma@gmail.com まで。とのことである。