Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

「人を殺すための予算」と、陸上自衛隊の「こわもてエンブレム」

2016-06-29 | Weblog
共産党の藤野保史政策委員長が、26日の与野党の政調会長らが出演したNHK番組で、防衛費を「人を殺すための予算」と発言し、同日夕になって「不適切であり、取り消す」とのコメントを発表した。共産党の志位和夫委員長は27日、「海外での戦争のための装備などを念頭に言ったが、そういう前提なしに発言した。私たちも、あの発言は不適切だと考える」「(藤野氏)本人がきちんと(発言を)取り消した。私からも注意し、これで解決したと思っている」と述べ、これ以上言及する必要はないとの考えを示した。
藤野政策委員長は28日夜、党本部で緊急の記者会見を行い、発言の責任を取って政策委員長の辞任を表明した。同氏は会見で「多くの方から厳しい批判をいただいた。わが党の方針と異なる誤った発言であり、結果として自衛隊の皆さんを傷つけるものとなった。深く反省し、国民の皆さんに心からおわび申し上げる」と述べた。
参院選のタイミングで、共産党にとっては不利な展開となった。

「被災地で救援にあたっている献身的な自衛隊員」に対して、「人を殺すことを仕事をしている人」と決めつけることに対し、「失礼だ」とする非難が多かったようだ。それは理解できる。
「防衛費」とされている予算の中には、災害救助等のための予算も入っている。藤野氏が「人を殺すため「だけ」の予算」という意味に聞こえても構わないと思っていたのなら間違っているし、そこに違和感があるのは当然である。「揶揄」としても適していない粗雑な物言いであったとことを、藤野氏は認めるべきである。

しかし、兵器は相手を殺傷するものである。それを購入し、配置し、整備するのである。「専守防衛」「日本の平和・独立・安全を守るため」という考えに基づいていようといまいと、防衛費に「人を殺す可能性も含めた作戦を実行可能にするための設備・事業」が含まれていることは、認めなければならない。
防衛予算は高額だ。たとえば、オスプレイ17機の購入予算はおよそ3600億円。これをやめて、3000億円台でも予算捻出が困難とされているいくつもの福祉事業に使うべきだと提言することじたいは、おかしなことではない。オスプレイ一機の購入費で八十箇所以上の保育園が作れるというのは、真実なのである。

自衛隊は、南スーダンPKO(国連平和維持活動)での任務を拡大することになった。政府は、自衛隊が国連PKOに参加する際には「PKO5原則」(停戦合意の成立、すべての紛争当事者の受け入れ同意、中立的立場、いずれかが満たされない場合は撤収など)に即して行う、「憲法9条で禁じた武力行使を行うことはない」としてきた。自衛隊が携わる可能性のある「安全確保業務」と「駆けつけ警護」は、「人を殺すことも含めた作戦を実行可能にするための設備・事業」に該当しないのである。
伊勢崎賢治氏(東京外語大教授)は、「停戦合意が破られてから住民保護という本来の任務が始まる。『それができないなら、初めから来るな』という世界になっていることに(政府は)全く気付いていない。PKO5原則や憲法9条との整合性は、PKOそのものの変質によって完全に破たんしている」と、現場の立場から指摘している。

陸上自衛隊は初めて公式エンブレムを採用し、ホームページなどで使い始めた。上段に日の丸を配し、これを日本刀で守る「こわもてのデザイン」である。
陸上自衛隊は、エンブレム作成の目的として、「近年、国際平和協力活動はもとより、能力構築支援、防衛協力、防衛交流等に積極的に取り組んでまいりましたが、今後は国家安全保障戦略(平成25年12月17日閣議決定)に示された「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を具現するため、その活動の場はますます広がっていくものと考えております」「島しょ部に対する攻撃を始めとする各種事態に即応し、実効的かつ機動的に対処し得るよう陸上総隊、水陸機動団等の新編等、陸上自衛隊創隊以来の大改革を断行してまいります。このような大改革を効果的に成し遂げていくためには、日本の平和と独立を守るという強固な意志、陸上自衛官としての誇りとアイデンティティを今一度、各隊員まで再認識させるとともに、国民の方々にも陸上自衛隊の強さと今後の体制改革への取り組みについてご理解頂くことが重要であると考えております」。「他国の軍人等に日本及び陸上自衛隊の歴史・伝統・文化を感じて頂くとともに、国内外で活動している隊員等に日本の平和と独立を守るという強固な意志等を再認識させることを目的に」エンブレムを作成したのだという。
そして、「古来より武人の象徴とされてきた日本刀を中央に配置して、その「刃」に強靭さ、「鞘」に平和を愛する心を表現しました」という。
「刃」は、人を殺すための武器である。「鞘」はその「刃」を包むための日本刀の一部分であるにすぎない。「平和を愛する心を表現しました」というのは、いくら何でも無理筋である。
「奥に刃、手前に鞘、帯を配置することで、陸上自衛隊が「国土防衛の最後の砦」であること、そして、国家危急の時に初めて戦う意思を表現しました」というが、海外に出て行ってする事業が「国土防衛」「国家危急の時」に該当すると言われても、俄には信じがたい。
陸上自衛隊には、とくに自衛官隊員募集の時に使われる、人に見立てた日本列島を手のひらで包むシンボルマークと、キャッチコピー「守りたい人がいる陸上自衛隊」がある。
こちらも引き続き使われるそうだが、「人と国土を守るメッセージ」が込められていたはずのエンブレムから人が消え、日の丸に象徴される国家を守る印象を強めたということだ。
「手のひら」から「日本刀」へというのは、極端な変化だ。ソフトなイメージのマークに安心して応募し採用された新隊員は、入隊後に「本物のエンブレム」の意味を知ることになるのだろう。

個人的には、感想も出て来ないが、エンブレムの英語表記と「Since 1950」が、えらく気持ちが悪いという意見もある。
まあ、自衛隊関係者に良識があれば、このダメダメなエンブレムは撤回することになるのではないかと思うが。

昨年改定された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に基づき設置された「同盟調整メカニズム」では、自衛隊と米軍の制服組が、平時から有事まで運用調整に当たることになっている。防衛省内での影響力が高まったうえ、現場同士の軍事的に専門的な見地からのやりとりが頻繁になる。そのため、政治家や背広組は、制服組が決めたことを追認するだけになる可能性があるという。エンブレム作成に象徴される自衛隊の「積極性」に、不安を感じる人がいても、おかしくない。

かつて国連PKO幹部として東ティモールなど世界各地で武装解除などに携わった伊勢崎氏は、次のように証言している。
「インドネシアから独立した東ティモールの暫定知事を務めて、PKF(平和維持軍)を統括していたとき、反独立派の住民によってPKFの一員であるニュージーランド軍の兵士が殺されました。彼は首が掻き切られて耳がそぎ落とされた遺体で見つかりました。その時、僕らは復讐に駆られてしまった。僕は武器使用基準を緩めました。敵を目視したら警告なしで発砲していいと。法の裁きを受けさせるために犯人を拘束するという警察行動ではありません。敵のせん滅が目的です。現場はどんどん「復讐戦」の様相を呈してきました。結果、全軍、武装ヘリまで動員して追い詰めていったのです。民家などしらみつぶしにして、十数名の敵を皆殺しにした。全員射殺したので、そのなかに民間人がいたかどうかは分かりません。」
PKOに携わる自衛隊はそのような憲法違反の理不尽な攻撃命令を受けてもきっと、「わが国の憲法に反しますので従えません」「我々の活動は人を殺すための費用で成り立っていません」と、拒否してくれるだろう。
もちろんそれは、PKOの要員として通用する理屈ではないはずだが。

最近、「戦争とは、殺し、殺されることです」という言い方が、通りにくくなっているように思う。
「平和と安全と独立のため」という粉飾というか「条件付け」に惑わされて、「殺し、殺される」という現実にピントが合わなくなっているのではないか。
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矢内原美邦さん登場

2016-06-27 | Weblog
『ゴンドララドンゴ』けいこ場に、矢内原美邦さん登場。
振付をしていただくのは久しぶりだ。美邦さんは海外での活躍が多いので、なかなか日本でぴったりスケジュールが合わないのだ。で、私は彼女に比べると世間はずっと狭いのだが、アメリカのキャメロン・スティールを例外とするとアジア中心に、海外の共通の知り合いもなんだかんだ多いようだ。ここ最近でも彼女は、私が合作をしたベトナム青年劇場でも公演していてレ・カインさんとも知り合いだし、インドネシアでは各地で私の知人たちに会っているようだ。この日もタイやシンガポールのことを教えてもらった。
稽古場では、事前に相談した非常にシンプルな条件付けの中で、劇団員でここ何週間か作ってきた動きを整理してもらう。黙っていても矢内原ワールドになっていく。ここから先の作業がまた楽しい。
http://rinkogun.com/gondola_ladongo.html

美邦さんとは四年前に瀬戸内・犬島でも野外劇の振付をしてもらったが(写真はそのプロフィールより http://www.artfarm.or.jp/25th/detail/kuzira.html)、この夏は犬島で彼女自身の集団ニブロールの公演(http://www.nibroll.com/inujima2016.html)がある。
瀬戸内国際芸術祭2016 犬島パフォーミングアーツプログラム・Nibroll新作ダンス公演「世界は縮んでしまってある事実だけが残る」
2016年 8月 10日(水) 11日(木・祝) 12日(金) 13日(土) @犬島精錬所美術館発電所跡  開場 18:30 開演 19:00(上演時間:1時間程度)
*受付開始 15:00より犬島港[公演受付]にて  *雨天決行・荒天中止 終演後、岡山駅までの送迎船・バスを運行します



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参院選の混沌 安倍首相の無意味な沖縄詣で 英国のEU離脱ショック

2016-06-24 | Weblog
第24回参院選についての世論調査は、共同通信も朝日新聞社も、安倍晋三首相が目指す憲法改正に賛同する勢力は、改憲発議に必要な3分の2(162議席)をうかがう、としている。
本当にそうなのか。世論調査は電話のはずだが、携帯電話にも電話しているのか。自宅電話だとすると、偏った結果が出ているわけではないのか。
野党が候補を一本化した「1人区」で憲法改悪阻止勢力がどこまで伸びるか。投票先を「まだ決めていない」層は選挙区・比例代表ともに半数を超えているという。

東京。三宅洋平はなんでこのタイミングで出ると言ったのかな。山本太郎を一人にしたくないのだったらもっと早く出てきてほしい。陰謀論好きなこの人は、情に訴えるタイプで、あまり政策的なことは言えていない気がするが、山本太郎贔屓層はなびくはずだ。割を食うのは社民から出ている増山れなだろう。選挙に向けて粘り強く活動してきたが、世論調査では「民進、共産はのびるが、社民は苦戦」と見込まれてしまっているようだ。死に票になるのが嫌な人たちは共産新人の山添拓に注目しているという分析もある。それにしてもここしばらく与党関係者の共産党への「差別発言」はひどいものがあった。民進と共産らを「野合」というが、連立政権をさんざんやってきた連中が何を言っているのか。
東京は「4人区」でも、もっと「絞り込み」があってよかったのではないか、という意見にも頷ける。票は一票だけだ。
田中康夫には失望した。なぜ「おおさか維新」から出るのか。自民党改憲草案は民主主義を根本から否定するひどいものだが、「おおさか維新」改憲案では9条や緊急事態条項に触れていないからまだましという理屈はナンセンス。何より下地幹郎と組めるというのが、理解できない。阪神淡路大震災で名乗らずボランティア支援を始めた頃とは、人が違ってしまったのだろうか。

沖縄の戦没者追悼式に、安倍晋三首相が出た。会場では演台に立ったとき、あいさつ後に「帰れ」などの怒号が起こったという。当然だ。在日米軍に関し「我が国の平和と安全を守る上で不可欠だが、負担を国民全体で負う必要がある」と本気で言うなら、米軍普天間飛行場の辺野古への移設も見直さないとおかしい。安倍首相は、沖縄県での米軍属による女性殺害事件について「今回逮捕された容疑者のような人物が、軍属という形で地位協定に保護されているのはおかしい」「米国と、協定上の軍属の扱いの見直しで合意している。県民の気持ちに寄り添いながら成果を上げたい」と語ったというが、日米地位協定を見直すなら、もっと全体にわたってでなければおかしい。「軍属の範囲厳格化」に絞って何かを言った気になっているのは、ためにするパフォーマンスでしかない。このたびの事件の犯人は軍属でさえなかった。それが何だというのだ。事件への人々の怒りを矮小化しようとするもので、ひどいものだ。
朝日の報道によれば、政府高官は、翁長氏が平和宣言の中で辺野古移設に反対したことについて「首相は一日を沖縄に捧げたのに、なぜああいうことを言うのか、理解できない。沖縄は普天間を政治利用している」と憤ったというが、何より沖縄で戦没者追悼式を政治利用しようとしたのは、安倍総理本人だろう! 結局、沖縄では参院選のこの時期、選挙の応援演説もしないで(するのが怖かったのだろう)、わずか三時間半の沖縄滞在で、ヤマトに戻った。日本のマスコミではネガティヴに報じていないから「戦没者追悼式に出るくらいだから首相と沖縄との関係は良好で、沖縄にも辺野古移設肯定者が一定数いるのかも」という錯覚を与える意図が通ってしまっている面もあるかもしれない。だが海外の目はそうではない。「(これまでの)日本の首相は、公衆の場で嘲笑されることは、あまりない」と報じたAFP東京支局の副支局長ヒュー・グリフィスさんは「へい、NHK。なんで安倍首相に「帰れ!」と叫んでいる人々を映さないんだ?」とネットに書き込んでいるし、ロイター も「日本の安倍首相、沖縄戦の式典でヤジを受ける(Japan PM Abe met with rare heckling at Battle of Okinawa ceremony)」と報じている。

以上、あまりにも気分が晴れないので記す。これで当分選挙について書かずにすむはずだ。なるべく何も書きたくない。

昨日から、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が開票中だった。残留、離脱が伯仲。これこそ接戦。
ウェールズの暗さは離脱に、「英国」であるよりも「EU」であることを選びたいスコットランド等はEU残留に向かうだろうと思ったが、まあ、やはりそれに近い結果のようだ。
結局、残留派の女性下院議員ジョー・コックス氏が殺害された事件が残留支持を後押しすることはなかった。
EU加盟国が離脱を決めたのは初めて。キャメロン首相は辞めるだろうが、これだけの接戦だと、些細なことでも今後の国内トラブルが多いはずだ。
1000近い在英の日系会社はどうしていくのだろう。特にEU圏に入れると1割以上の関税を取られるはずの自動車業界は。
株価も大きく下げた。円相場もあおりを食い、2年7カ月ぶりに1ドル=100円を切る、高値。イギリスはヨーロッパの金融界で中心的な立場を担えなくなるのか。
EU加盟国は難民受け入れを拒否できない。離脱派は、EU内の自由の原則により流入する「移民」を拒否したい、ということが、やはりメインなのだろうか。自分の暮らしもたいへんなのに移民のために税金を使いたくない、職まで奪われてしまうのは割に合わない、という理屈なのか。長く語られているイギリス独自の国内格差が育んだルサンチマンは、我々が想像するよりも根強いものなのだろう。

日本も同様に、いや、もっと極端な「島国根性」を持っているわけで、ただイギリスとはそうとう様子は違っていて、アメリカべったりで自分自身の判断というものをしないできていることが、多くの誤謬を招いている。
だが、少なくとも、「アメリカに押しつけられた」と決めつけるような根性で憲法を改悪することが「自立」に繋がるというような理屈は、前提が大きく間違っている。
それは、純然たる意味では、少しも「改革」にはならない。悪い時代に戻っていくだけだ。憲法を改悪し「戦争のできる普通の国」を目指すことが「一人前の国家の仲間入り」というとんちんかんな思い込みは、確実に、日本の自主独立を妨げることになる、と言っておこう。

写真は、十日ほど前の、シビウの仕込み。
ルーマニアはイギリス同様に、通貨は独自でなおかつEUに属しているわけだが、多くの他国と地続きなだけに、イギリスと同じ道は辿らないと思う。
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「謝罪」を超え、「正義」の実現を

2016-06-23 | Weblog
私はオバマ大統領が伊勢志摩サミットの後、被爆地・広島に趣いて行ったという演説を、テレビ等のニュース映像などで聴いていない。だが、翻訳された文面からは、世間の多くの人たちが言う「格調高さ」を、感じなかった。
米国では、歴史的に、日本への原爆投下を「必要悪」としている。オバマ大統領の演説でそこに触れた部分は、
「71年前、明るく、雲一つない晴れ渡った朝、死が空から降り、世界が変わってしまいました。閃光と炎の壁が都市を破壊し、人類が自らを破滅させる手段を手にしたことを示したのです」
と訳されている。
もちろん、オバマ大統領は「謝罪」していない。

この文への違和感を抱いたまま、しばらくの時が過ぎた。
やがて私は、元米兵に傷つけられ、殺された、二十歳の女性の死を悼み、日米政府に抗議する、沖縄での六万五千人の集会〈元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾 被害者を追悼し、海兵隊の撤退を求める県民大会〉の報道を聞いて、もしもこの場にオバマ大統領がいたら、と、妄想した。
そこで、ある疑念というか、イメージが湧いてきた。
彼ははたしてその場で、広島の時と同じような面持ちで、次のように言えるだろうか。
「被害者の女性が夜の県道沿いをウォーキングしていたとき、平和な幸福に包まれていた沖縄の人たちの暮らしの場に、突如として、死が車道から彼女を襲い、その運命を変えてしまいました。暴力と欲望と差別意識が彼女の人生を破壊し、人類がそうした邪な衝動により相手と自らを破滅させる手段を手にしたことを、示したのです」。
あり得ない。
そんな無神経で無責任な物言いが、あり得るわけがない。

話を広島に戻そう。
オバマ大統領は、なぜ謝罪をせず、日本への原爆投下を、ある種の「史実」として、「必然」のように語っているのか。
それは、彼以前にアメリカが、原爆投下を、歴史の中で「不可欠」と判断しているからだ。
原爆投下という行為には、実行者がいる。トルーマン大統領がアメリカの国策として命じ、原爆が二度投下された。
「空から死が降ってきた」?
死は降ってはこない。死をもたらす原因が、広島にもたらされたのだ。
自然現象でも天変地異でもない。その行為を命令され、それを忠実に実行した者たちがいたのだ。
オバマ大統領の言う「私たち」は「合衆国国民」ではなく「人類」、つまり、科学文明の発達による悲劇、という物語にすり替える方便にも聞こえる。オバマ大統領の謝罪なき演説は、それが仮に「人類」という主語に自分たちみんなが入ると考えたとしてさえ、責任を回避するもののように響く。それは周到に歴史上の事実を隠蔽し、不可避であったという物語に塗り込めてしまおうとするものである。
原爆投下は、本当に必要だったのか。オバマ大統領の演説は、その問いには、なんら答えられてはいない。

多くの日本人は、「敗戦」を通じて、思考停止した。
なぜ戦争が起きたか、誰に責任があるのかを本気で顧みることなく、「反省」し、「悪かったとわかっているからもう終わったことにしよう」、とした。
多くの日本人は加害者であったことを忘れ、隠し、自らが戦争という「不幸な出来事」の「被害者」であるかの如く振る舞い、「全面降伏」したことにより、「勝者」に全面的盲目的に従う道を選んだ。
そして周囲に「禊ぎが済んだ」と思ってもらえるようになるまで、時を待とうとした。
「戦争責任」も「戦後責任」も、果たさぬままにだ。
そのツケは、今現在の日本に、しっかりと被さってきている。
そうした欺瞞を許してきた多くの日本人に、オバマ大統領のレトリックを批判する権利はない。

元広島市長の平岡敬氏が言うように、オバマ大統領=米国は、「原爆投下は正しかった」という姿勢は崩していない。つまり、正当化されている限り、「核兵器をまた使ってもいい」ということに、なりかねない。
彼らの文脈は、核兵器が非人道的で残虐な大量破壊兵器であるという事実を遠ざけ、戦争なら多少の犠牲はやむを得ないという立場を打ち出そうとしている。
過ちは、繰り返されるかもしれない、ということだ。

オバマ大統領の広島訪問で、米大統領による初の被爆地訪問を達成させたと、安倍首相は鼻高々のようだ。
だが、海外のメディアはまったくちがう反応を見せている。
「ニューヨーク・タイムズ」は5月26日付で、「日本のリーダーは広島の平和の教訓をほとんど活かすつもりがない」(Japan’s Leader Has Little Use for Hiroshima’s Lessons of Pacifism)という見出しで報じたという。「戦後日本が憲法9条と日米同盟のもとで平和主義をとってきた」として、日本が明確に「軍隊」を持ち、「戦争のできる普通の国」であろうとする安倍首相の方針が、「平和の教訓」とは縁遠いもので、アジア諸国にも不安をもたらしている、とする。
橋下徹前大阪市長は、Twitterに以下のように記している。
〈今回のオバマ大統領の広島訪問の最大の効果は、今後日本が中国・韓国に対して謝罪をしなくてもよくなること。過去の戦争について謝罪は不要。これをアメリカが示す。朝日や毎日その一派の自称インテリはもう終わり。安倍首相の大勝利だね〉。
これがこの国の保守陣営の「本音」ということだろうか。
ひどいものだ。

そうした経緯をみるならば、アメリカと日本政府が、次のように言うのは明らかだ。
「米軍の戦後七十年を超える沖縄駐留という措置は、正しかった」。

私はそうした考え方に納得しないし、許してはならないとも思う。
だが、自分の意見を言うのではなく、米軍属による女性暴行殺人事件に抗議する沖縄県民大会の開催に際し、被害者の女性の父親から大会主催者に寄せられ、1分間の黙祷の後、読み上げられた、そのメッセージを記したい。
そして、「一人の死」の重さをきちんと理解することが、「人類」の「歴史」を動かしうる原動力になると、考えたい。
「謝罪」を求めるのではなく、「正義」の実現を、信じたいのだ。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 ご来場の皆さまへ。
 米軍人・軍属による事件、事故が多い中、私の娘も被害者の一人となりました。
 なぜ娘なのか、なぜ殺されなければならなかったのか。今まで被害に遭った遺族の思いも同じだと思います。
 被害者の無念は、計り知れない悲しみ、苦しみ、怒りとなっていくのです。
 それでも、遺族は、安らかに成仏してくれることだけを願っているのです。
 次の被害者を出さないためにも「全基地撤去」「辺野古新基地建設に反対」。県民が一つになれば、可能だと思っています。
 県民、名護市民として強く願っています。
 ご来場の皆さまには、心より感謝申し上げます。

      平成28年6月19日 娘の父より

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

そしてもう一つ、米軍属女性遺棄事件を受けて米国の有識者や平和運動家ら83人が出した緊急声明文の日本語訳と英文を紹介する。

【日本語訳】
 私たちは沖縄での元海兵隊員による若い女性に対する女性暴行と殺人にぞっとさせられる。最近の若い女性への性犯罪や殺人を含む米軍人による沖縄の人々への犯罪や、米軍基地が存在する環境が原因となった被害は70年にわたって起き続けている。米国は第2次世界大戦終結以降から、プレゼンスを維持しており、現在、33の米軍施設と約2万8千人の米軍人がこの島にとどまっている。

 私たちの多くは沖縄を訪れたことがあり、あの美しい島から米軍基地を完全に撤退することを要求することにおいて、平和を愛する人々を支持する。さらに、私たちはこれらの犯罪への対処、または米軍基地の閉鎖のために翁長(雄志)県知事と話し合うことをオバマ政権に促す。

【English】
We are horrified by the recent rape and murder of a young woman from Okinawa by a former U.S. Marine. Crimes against Okinawans by U.S. military personnel — including sexual crimes and the recent murder of a young woman — and damage caused to the environment by the presence of U.S. military bases have been occurring for over 70 years. The U.S. has had a presence in Okinawa since the end of WWII and currently 33 U.S. military facilities and about 28,000 U.S. military personnel remain on the island.

Many of us have been to Okinawa, and stand with the peace-loving people there in demanding the complete withdrawal of U.S. military bases from that beautiful island. Further, we urge the Obama administration to hold discussions with Okinawa Prefecture Governor Onaga to address these crimes and to shut down U.S. military bases.

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

写真は、沖縄・久高島。5月。

参院選について考えるとき、こうした構造、保守勢力の蒙昧に対して、毅然と向かうことが求められているはずだ。

どうしても記さねば気がすまなかったことを、ようやく記した。これからしばらく、ブログの書き込みは減ると思います。
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やんばる国立公園、米軍北部訓練場のグレーゾーン部分も対象であるべきだ

2016-06-21 | Weblog
6月21日付けの琉球新報によれば、「やんばる国立公園」を環境省が前日に決定、「北部訓練場は除外、世界遺産へ弾み」とのことである。新聞の図表をそのまま引用することは避けたいのだが、あまりにもうまくシンプルにまとめてあるので借用させていただく。
記事本文によれば、「やんばる国立公園」に指定されたのは、本島北部の国頭、東、大宜味3村にまたがる陸域と海域約1万6300ヘクタール。「国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がり、固有動植物や希少動植物が生息し、多様な生態系が複合的に一体となった景観が特徴。10年度に実施された国立・国定公園総点検事業で「わが国を代表する傑出した地域である」などと評価されていた。政府は指定地域を含む「奄美・琉球」について、世界自然遺産登録を目指す考えで、国立公園化によって開発を規制し、環境を守る体制を強める。」としている。
そして、図表を引用させていただいた主な理由がそこなのだが、「指定地域に米軍北部訓練場(約7800ヘクタール)は含まれていない。」と、ある。
「国立公園」になれない、このグレーゾーンの全てが「米軍北部訓練場」である。
もちろんここには、高江も入っている。
朝日新聞によれば、「水辺のマングローブ林、石灰岩が浸食されてできたカルスト地形など多様な生態系、天然記念物ヤンバルクイナやオキナワトゲネズミ、ヤンバルテナガコガネ、ノグチゲラ……。環境省によると「これまでの国立公園は景勝地が多かったが、多様な生き物を育む生態系と一体になった新たなタイプの公園として指定する」という。」。
そして、「日米両政府が一部返還に合意している米軍北部訓練場は含まない。返還後に扱いを検討するという。」と、している。

こんな広大なグレーゾーンを内包した「国立公園」など、おかしいではないか。そんなにみごとな自然なら、まるごと米軍から返還してもらわねばならない。
「米軍北部訓練場」の、オスプレイの轟音と振動、訓練の悪影響、汚染等から、ほんらい「国立公園」になるべき対象の自然を、守るべきである。

沖縄の生物たちの守護神・アキノ隊員こと宮城秋乃さんは、最近、オスプレイとトンボが同じ空を飛んでいる写真に「沖縄を飛んでいいのは、虫と鳥とコウモリとウルトラマンだけ。(2016.6.17沖縄本島中部)」というキャプションをつけた。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=887159981406802&set=a.108832335906241.10357.100003384259284&type=3&theater
ご本人のコメントによれば、「「非戦を選ぶ演劇人の会」さんの「やんばるを飛んでいいのは、鳥と虫と、自由だけ」を模倣しました。」とのことである。
米軍基地・オスプレイパッド施設に反対する高江住民の会に「非戦を選ぶ演劇人の会」贈った、あの横断幕のコピーのことである。文案作成者としては名誉なことだ。
もともとアキノさんは「やんばるを飛んでいいのは、鳥と虫と、自由だけ」について、「コーモリも入れて!」と言われていた。
もちろん私としても、オスプレイよりはウルトラマンに飛んでいてほしい。
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松本雄吉さんの犬島

2016-06-19 | Weblog
「維新派」の松本雄吉さんが亡くなられた。今年になってから、お悪いということは聞いていた。
燐光群が京都大学西部講堂で初めて上演したのは1987年だが、「維新派(当時は「日本維新派」)」が西部講堂前でいろいろやった痕跡は残っていて、ご本人との直接の面識を得る前に、空間を通しての出会い、というのが最初の記憶だ。
それほど多くの接点があったわけではないが、お会いすると必ずお話はした。松本さんが新国立劇場で初めて上演した頃にも、いろいろ意見を聞かれた。屋内の劇場、国立の施設でやるということが、落ち着かなかったのだろうと思う。
犬島は私の実家の牛窓にも近いのであるが、維新派がそこで壮大な野外劇の公演をやるようにならなければ私も足を向けることがあったかどうか、わからない。
後に自分も犬島で野外劇を上演したが、松本さんに私がどこを上演会場に選んだか訊かれ、じつは松本さんも上演会場候補に挙げたことのあるという石切場近くの浜ですよ、と答えたら、おお、あそこでやるのか、という反応だった。
少なくとも私にとって、犬島は、松本さんあっての犬島、であった。松本さんの公演を観に行って、船で帰らなければならない観客がいると、いちいち見送りに来られる習慣だったようだ。優しい人だった。
そして、やはり野外がお好きだったのだと思う。
池袋のデパートの屋上で公演したときは、ちょっと照れくさそうだった。
小堀純さんに言われて、精華小劇場の存続のために、松本さんと集まったりもした。
小堀純さんは亡くなられる前日にお見舞いに行かれていたようだ。岡山での松本さんの上演になくてはならぬ人であるアートファームの大森さんと、電話で話した。今年は犬島で、松本さんと組んでいた音楽の内橋さんのコンサートがあるようだが、また松本さんの野外劇を犬島で観たい。しかし「維新派」の作品は再演するというようなことに馴染まない気がするから、きっと難しいだろう。
松本さんの69歳という年齢が、どうにもリアリティがない。年齢を感じさせない人だった。
そしてやはり、作品のすごさ、明確にそこにある個性、それを忘れてはならない。
ご冥福をお祈りする。

今年は訃報が多く、また、今取り組んでいる新作の内容のせいでもあるのだろうか、松本さんのことを知る以前に、ここ数日、亡くなった人のことばかり考えていた。

そういうことも踏まえていえば、今抱えている新作は、自分も五十を超えなければやらないはずの劇である。
演劇は若い人のもので、青春を追いかけるようなものだ、そう考える向きも多いと思う。
だが、世阿弥のいう「時分の花」の、さらに先に入っていくことを、もう少しは長く生きる以上、私たちは知らなければならない。
そういうおそろしい、しかし、こうなってしまわないと見えなかった、おもしろいはずの領域に、着実に入っている。
まわりがそう理解するかどうかの問題でさえない。前人未踏の場所にいることは、確実だ。

写真は文と関係ないのだが、沖縄にて、5月。ツートンカラーの、不思議な、夢のような、葉々。
現実と夢の境目がないことを知らないと、本当のその違いもわからないし、先には行けやしないのだ。
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平成29年度 文化庁による芸術家支援活動「新進芸術家海外研修制度」の募集開始

2016-06-18 | Weblog
ええ。シビウの『野鴨中毒』結城座さん主催の打ち上げで、ルーマニア料理を頂きました。証拠写真も残っています。はい。ちゃんと日本に帰ってきてからも働きますから許して下さい。
右より、肉料理を切り分ける山田真実演出助手、ヴァイオリンの魔人太田惠資さん、私、現場制作・通訳の志賀重仁さん、照明の山口洸チーフ、ベトナム青年劇場の美術担当ダン・ミン・トゥアン氏(島次郎氏にプレゼントされた手拭いをヴァンダナにしている)、森下紀彦舞台監督、神永結花舞監助手。
ツアーを振り返るとついつい楽しい写真ばかりお見せしてしまうものだが、実際には海外の現場はなかなかハードなものだ。だが、その甲斐はある。

私はしょっちゅう海外に行っていると誤解されているが、ぜんぜんそんなことはない。平田オリザ氏の十分の一くらいだろう。
初めて海外に行ったのも、三十を過ぎてからだ。みんな信じてくれないが、本当である。歳を食ってからの海外体験スタートであることは、それなりにメリットもあるが、本気で行きたいと思う人が早く行けるに越したことはない。
だが、どうやって? お金もかかるのに? どうすれば? と、知らなかったら、思う人もいるだろう。そういう方々に教えておかねばならない。文化庁の海外研修制度というものがあるのだ。渡航費、滞在費が出る。年齢と内容によっては3年間くらい行くこともできるはずだ。海外で暮らせるだけのケアは、手厚い。
私はACC(アジアン・カルチュラル・カウンシル)のグラントで三ヶ月ニューヨークに滞在したことはあるが(1999年)、文化庁の海外研修制度とは縁がなかった。文化交流使という制度で、三ヶ月海外三カ国で講演やワークショップを重ねたこともあるが(2007)、これは本当によく働かせてもらったという記憶である。
若いときに、文化庁の海外研修制度で、のびのびと、自分の行きたいところで、1年2年と勉強できたら、どんなに素晴らしいことだろう。

という話をするのは、文化庁から、
平成29年度新進芸術家海外研修制度長期研修
平成28年度短期研修・後期
の募集開始の情報が、今週、各団体に届いたからである。

短期は、直接、文化庁に書類を提出する。
長期は、提出団体に指定されている劇作家協会や演出者協会等を通しても、書類を提出することができる。締切は7月10日頃である。
【対象研修等期間】は、平成28年10月1日~平成29年3月31日となっている。

詳細は以下の通り

http://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/kobo/h28_shinshin_tanki_koki.html

今の若い人たちは「内向き」と言われているが、決して誰もがそんな一色に染まるようには、生きてはいないはずだ。
奮って応募されるとよいと思う。

燐光群の制作チーフ・古元道広も、じつはニューヨークでの一年間の海外研修を終え、3月に帰国したばかりだ。そのうち報告会を開くことになると思う。

ちなみに、これはたんに誤解を怖れてという意味で記しますが、江戸糸あやつり人形結城座×ベトナム青年劇場 日越国際協働制作『野鴨中毒』ツアーは、文化庁の助成は受けておりません。主に国際交流基金の助成を受けています。
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シビウから、帰還。

2016-06-17 | Weblog
というわけで、今は日本にいる。

帰国前夜に、シビウ演劇祭で『野鴨中毒』千秋楽を終えた。慌ただしい日々である。
シビウ演劇祭に限らず、同じ国際演劇祭に2年連続で出るというのは、なかなか珍しいことだろう。と、思いはしたが、もともと日本ではあんまり話さないのにシビウでは昨年もいろいろ喋った安田雅弘氏は、今年もワークショップなどのためにこちらに来ていて、公演を持ってきたのは全部の年ではないにしても、八年連続でシビウに来ているという。彼の「山の手事情社」が今年にシビウ演劇祭に参加できなかったのは、日本の助成金を得られなったからだと聞いたが、安田氏たちのような、これだけ実績があって、海外から期待されている団体を行かせないなんて、その助成金の対象を決める審査をしている方々には、もう一つ踏み込んで、現実をちゃんと見ていただければと思う。
夜中の零時を過ぎてシビウに到着したが、トランジットのミュンヘンでの航空会社のトラブルで、一部の荷物、しかも主に人形が、本隊と一緒には届かないという事態になったことが露見。あれこれ対応しているうちにどんどん時間は過ぎる。8時間後には、久々に合流したベトナム俳優陣と共に、会場の都合でやや狭くしたセットを想定した稽古をしなければならない。私はその稽古を人形無しで、つまり「air」で人形遣いの皆さんにやっていただくと決断して、とにかくみんな早く寝よう、ということになる。現地制作を担当された志賀さん、昨年もお世話になったボランティアグルーブのボス谷口さんも、奔走してくださる。
夜が明けて稽古、人形を持たない人形使いたちの演技を見て、さまざまな示唆を得る。この世に無駄な出来事など、何もない。
ようやく人形も届き、夕方から仕込み。予想外のことはいろいろ起きる。森下舞監の采配でなんとか深夜零時半には退出。私はその後に1本、インタビューを受ける。
翌朝8時から作業続行、速いテンポで場当たり、その場の空気を読むのと自分なりの判断と計算で、可能な限り早めに終わらせて、各自準備の時間を増やすことにした。
上演については、超満員の観客が、冒頭の人形たちの「葬列」を、言語を超えて圧倒的な太田恵資ヴァイオリンが生で奏でられる中、とてもいい集中力で、息をのんで見守っていることがきちんと伝わってくる。後はお客さんの受容の力に委ねるのみ。舞台上の低い位置にある人形たちが見えづらいことが難点ではあったし、次の演目に移るために途中で退席する一部の無神経な観客もいたものの、とにかく最後は、気持ちよい拍手をいただけた。Wコール。私も舞台に上がって挨拶したが、これは本当に久しぶりのことである。
終演後にロビーでいろいろな人に話しかけられる。普通のお客さんからも、駆け寄っての祝福あり。昨年『屋根裏』を観て今年も楽しみに待ってくれていたという母娘、今年も喜んでくれて嬉しい。そういえば昨年シビウの前にオデオン座で上演したブカレスト界隈で昨年の『屋根裏』は話題になっていて、影響を受けたらしい現地作品も出てきていると聞いた。他に、学生さんらの質問を受け、取材等も。
写真は、ゴングシアターの前にて、終演後一時間余り過ぎての、搬出も終えた後。ふだんから演目は人形劇の多い劇場だが、なかなか大きな構えである(写真撮影・山田真実)。昨年の『屋根裏』はここの三階の劇場で上演。今年やったグランドフロアと、どちらがメインシアターかということではない。劇場の種類が違うのである。
退出後、ツアー全体の打ち上げ。楽しいが、一時間あまりで引き揚げさせてもらう。夜十時から開演の、関係者に薦められた『バニラ・スカイプ』を観に行く。郊外なのでタクシーでを飛ばすが、10レイ=およそ三百円で着く。昨年ロシアの演目を観た劇場というかロフトだった。英語のイヤホンガイドがついたが、どこまで理解できただろうか。五百人は入る空間。とにかく自分がさっきまでやっていた上演に比べて、あまりにも「薄い」ことに茫然とする。それが狙いなのだろうし、ナチュラルなモノローグの劇だからとも言えるが。
『野鴨中毒』は、濃厚だ。劇中の闇の深さとそこに渦巻く呼吸は、確実に他とひと味もふた味も違う空間を創出しているはずだ。
江戸糸あやつり人形結城座×ベトナム青年劇場 日越国際協働制作。原本はイプセン。それをヨーロッパでツアーしたわけだ。ややこしや、である。だが、一目でも観た者は忘れないだけの提示ができたとは思う。
夜は豪雨、無料バスでフェスティバル事務所に戻り、野外のフェスティバル・クラブのテントで水滴を避けながらビールを一杯だけ飲む。あれこれ話しかけられるが、みんな意外と日本のことはよく知っている。
帰路はへろへろのずぶ濡れである。

翌日午前、昨年に続いて、『屋根裏』で私をシビウに招いた張本人である演劇祭のサブ・ディレクターのオクタビアン・サイウと、記者会見。この記者会見は普通にみんなやっているのだと思っていたが、昨年『屋根裏』のようにフェスティバル側が力を入れているものを事前にか、今年のように上演が好評だったものについて翌日にか、十日で四百以上あるフェスのプログラムの中で、いちにち二、三団体だけが選ばれていたのだという。
会見後の質問が、これまた濃厚だった。ドイツで『だるまさんがころんだ』を出版してくれているトリアー大学の関係者も来てくれた。
会見を観たRoxana von Krausというボストン在住・ルーマニア出身の女性作家が、熱心に語りかけてきた。彼女は、息子さんがイラクへ出征した人で、後遺症に苦しんでいる。「(アメリカは)私たち近年の移民やその子孫は兵士になる義務があると考えられてしまう国なのです」という。彼女は、AGAPE(Agapeveterans@gmail.com 917-804-4696)というベテラン向けのライティング(物書き)ワークショップをやっている。話をしているうちに彼女の感情が溢れてきた。主に、私の口から出た「マリン(海兵隊)」「沖縄」というキーワードからだ。シビウで、沖縄と繋がるとは。しかもジャングル戦闘演習基地、つまり高江も含むやんばるのことを理解している人と出会うとは。「息子が兵士でも、いえ、だからこそ私は戦争に反対する。ええ、本当は息子もそう思っているの」。
午後、フェスティバル・ディレクターのキリアックさんの事務所に呼ばれる。今回は同行の結城座さんを立てて私はあえてあまり話さなかったが、キリアックさんの雰囲気は非常によく伝わってきた。以心伝心。結城座の伝統劇上演を薦める。「キリアックとの面談は二分区切りの交代でしかできない」などと聞いたことがあったが、日時や相手次第ということなのだろうか。
そんなわけで、お土産を買う暇もなかった(空港で少しは買ったが)。帰りの飛行機は、機内で映画を観るわけでもなく、ただひたすらパソコンを開いて仕事した。私の日本の次作品も、尻に火がついているのだ。

レ・カインさんは「国民女優」と呼ばれる以上の、本人のパーソナリティを発揮してくれた。ビンちゃんも、いい役者だ。ベトナム・日本のスタッフチームの親密さは尋常ではなく、羽田に着いてからも皆でベトナムメンバーの蒲田での「爆買い」につきあったり、翌日のベトナムチーム帰国便出発前も、ほぼスタッフ全員が「お見送り」に馳せ参じたようだ。
才気溢れる通訳のクエンさんとも一年半の間にずいぶん打ち解けた。
長い間つきあってきたベトナム青年劇場の皆さんとも、お別れ。寂しい。でもきっと、次がある。
私も「人形」のことが、最初から比べると、わかってきた部分がある。特に5月のハノイ以降、海外に来てから、人形の摂理への理解というか、人形遣いの方の意識のあり方というか、ようやく独自の仮説が立てられるようになった。それをちゃんと生かす機会が訪れるかどうかは、まだわからないが。

帰国後、日米通算で言えばピート・ローズの記録を破ったイチローのインタビューに、ツボに入ってしまう部分あり。
「いやそれ、18の時に42までプレーしてることを想像してるやつは誰もいないと思いますけどね」
それを言うなよイチロー。
「だからちょっと狂気に満ちたところがないと、そういうことができない世界だと思うので、そんな人格者であったらできないっていうことも言えると思うんですよね。その中でも特別な人たちはいるので、だから是非そういう人たちに、そういう種類の人たちにこの記録を抜いていって欲しいと思いますよね」
こんなことを言う裏にはいろんな思いがあるのだろう。
おめでとう。ありがとう。あなたが記録を気にしているような器でないことはよくわかっている。
で、安倍総理が祝福してきても、ちゃんと皮肉で返すよう、よろしく。
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満田康弘監督、渾身のドキュメンタリー 「クワイ河に虹をかけた男」完成。試写招待情報あり。

2016-06-15 | Weblog
満田康弘監督、渾身の一作がついに完成。
「クワイ河に虹をかけた男」。
完成と言いつつまだどこか1箇所くらいまだ最終編集中らしいこの映画の内容の紹介は以下の引用を見ていただきたいが、私のブログを読む人は映画関係者も多いだろうから言えば、このドキュメンタリー映画の主人公は、2013年制作のオーストラリア・イギリス合作映画『レイルウェイ 運命の旅路』(The Railway Man)で、第二次世界大戦中、タイとビルマ間を往来する泰緬鉄道の建設に捕虜として従事させられたイギリス人将校エリック・ローマクス(コリン・ファース)と対峙する、当時、その施設にいた日本人通訳・永瀬隆その人、本物の本人である。『レイルウェイ 運命の旅路』では、真田広之さんが演じた。
あの『戦場にかける橋』の裏ストーリーと思ってもらってもいいのかもしれない。
岡山在住の満田監督は、ここ近年の友人であるが、その熱意と、懐の深さ、駄洒落の破壊力、柔和な物腰に相反する粘り強さ、いずれをとっても尋常ではない。彼が永瀬隆さんを撮影し始めて二十数年余、ついに1本の映画として完成したのである。
もともとはテレビのドキュメンタリーとして複数本の作品として撮影されたものであり、その時点でも素晴らしい出来なのだが、やはりテレビドキュメンタリーを発展させて劇場映画として成功した『標的の村』を見て、「ぜひ映画版にすべきだ」とけしかけた一人としては、この結実は、非常に嬉しい。

私は粗編集版を見て何度も涙した。
映像から読み取れる永瀬隆さんと満田監督のメッセージは、明解だ。
「戦争のせいにしてはいけない。人間が人間を大切にしないことこそが問題なのだ」ということだ(そういう台詞はない)。
日本兵からの虐待を受けた連合軍捕虜たちをして「彼は自分が握手することのできるただ一人の日本人だ」と言わしめた、元陸軍通訳である永瀬さんが辿った人生を、見届けてほしい。
そして、永瀬さんが、かつて多くの兵士たちが死んだ戦場であった森で呟く一言は、どのような反戦の言葉をも超えて、私たちが、戦争を、兵士を、生みだしてはいけないことを訴える。このシーンは絶対にカットされていないと私は信じる。
そして、『レイルウェイ 運命の旅路』エリック・ローマクスの妻を演じたニコール・キッドマンはたいへん素敵だったのだが、永瀬隆さんの妻・佳子さんは、ニコール以上に魅力的であると付け加えておこう。

試写招待詳細情報は以下の通り。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

http://www.asahi-mullion.com/presents/detail/4993


 7月1日(金)午後3時、東京都新宿区戸塚町1丁目の早稲田小劇場どらま館(早稲田駅)で開催される映画「クワイ河に虹をかけた男」の試写会にペア20組を招待。
 満田康弘監督、119分(予定)。
 太平洋戦争中、陸軍通訳として従軍した永瀬隆の晩年を記録したドキュメンタリー。
 タイとミャンマー(ビルマ)をつなぐため旧日本軍が建設した泰緬(たいめん)鉄道。その工事では連合国の捕虜や現地のアジア人が動員され、過酷な環境下で数万人が命を落としたとされる。
 工事拠点に派遣されて捕虜への拷問にも立ち会った永瀬は戦後、犠牲者を慰霊する旅を開始。生涯をかけてタイを135回訪問し、1976年にはクワイ川鉄橋で元捕虜と旧日本兵の再会を実現させた。
 本作では94年のタイ訪問を手始めに彼の旅を追い、つぐないにかける思いや関係者たちとの絆を見つめる。
 8月下旬公開予定。
 上映後に監督のトークを予定。

 問い合わせは、きろくびと(info@kiroku-bito.com)にメールで。
 当選発表は発送をもって代えさせて頂きます。

 2016年6月22日16時締め切り
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『原発プロパガンダ』

2016-06-15 | Weblog
舛添要一東京都知事辞職を巡るあれこれに、どうしても広告代理店が暗躍しているように思えてしまう。
『原発プロパガンダ』(本間龍著 岩波新書)という本を読んだからかも知れない。
東京オリンピックはロゴ問題から広告代理店の介在が指摘されており、舛添バッシング直前の頃にも、オリンピック誘致の裏献金問題で、広告代理店・電通の暗躍が指摘されていたせいもある。なんでこの件、今みんな巷では言わなくなったのかな。

報道によれば、東京電力が福島第一原子力発電所の事故のあと、2か月以上、メルトダウン、いわゆる炉心溶融が起きたことを認めなかったことについて、原因などを調べてきた外部の弁護士らで作る第三者委員会は、当時の清水正孝社長が官邸からの指示で炉心溶融ということばを使わないよう指示していたなどとする検証結果をまとめた、という。
事故の大きさを隠そうとする意志からか、「当時の清水社長が事故から3日後の3月14日夜、記者会見中だった武藤副社長に対し、広報の担当者を通じて、炉心溶融と書かれた手書きのメモを渡させた」というが、東電が依頼した弁護士たちは、まだまだ真実をあからさまにはしていない。「官邸からの指示」としているのも、鵜呑みにはできない。「炉心溶融ということばを使わないよう」指示していた「広報の担当者」は、詳細を明らかにすべきだが、そもそもこんな大切なことは「広報」の領域ではないはずだ。ここにも「プロパガンダ」の構図がある。

『原発プロパガンダ』は、出版直後にいただいたのだけれど読み始めるのに時間がかかってしまった。旅の合間のパソコンを開けないときにようやく読んだ。
「BOOK」データベースによれば、「世界有数の地震大国日本になぜ54基もの原発が建設され、多くの国民が原子力推進を肯定してきたのか。電力料金を原資とする巨大なマネーと日本独自の広告代理店システムが実現した「安全神話」と「豊かな生活」の刷り込み。40年余にわたる国民的洗脳の実態を追う、もう一つの日本メディア史」、とある。それはその通りである。
去年の途中から、東日本大震災にまつわる原発事故のほとぼりがさめたと思ったのか、原発再稼働の動きと連動して「原発広告」が復活し始めている様子はあった。
国民は黙っていても電気は使うはずだし基本的には独占状態であるはずの電力会社がなぜ広告を出すのか。なぜ原子力をアピールしたがるのか。「反原発」を訴える勢力を排除させるためだけにあれだけの意見広告を出してきたのか。
謎というより、直視すればいいだけだ。「原子力ムラ」から得た多大な「原子力マネー」をちらつかせて、40年以上にわたって「原発の安全神話」を宣伝してきた、大手広告代理店の存在がそこにある。
「資源の乏しい日本」に見合ったエネルギー源、価格変動のある石油に比べ「原子力利用による発電」は、運営しやすく利益が高いと考えられてきた時期がある。しかし、その理屈に自信があるならこんなに広告を打つ必要はない。やはり原発は「やばい」と感じる人類の直観は、推進している側も、共有はしていたのだろう。
東京電力の広告費が、1979年、アメリカ・スリーマイル島原発事故後、1986年のチェルノブイリ原発事故後、等、大事故の後には必ず増加しているという。どうしても「反原発」世論を抑制したかったのだ。
よく言われることだが、広告宣伝費は電気料金に上乗せされ、国民が払わされている。電力会社は、広告宣伝費などの「経費」も原価として電力料金を決められる「総括原価方式」を認めさせている。発電所建設から運用・維持管理まで、電力会社以外にも関連業界の広い裾野がある原子力産業という大きな傘は、そもそも巨大だし、半公共のように見せかけた天下りに最適な「関連団体」も作りやすい。カネのにおいがぷんぷんしているのだ。広告は特に、カネの問題に特化された部分のように見えてしまう。
電通・博報堂等の大手数社の寡占状態にある日本の広告業界は、ライバル会社どうしの宣伝を同じ一社が手掛けるという理屈に合わないことが横行している一点だけ見ても、いびつである。
一部の広告代理店がメディアに対しても政治に対しても権力を行使できるのだ。
原発会社「電力自由化」もまた、原発を抱える電力会社が「広告」を打っていくことの正当性を手に入れさせるわけで、広告業界はいっそう権力を増大させるはずだ。
オリンピック誘致の不正問題について、フランス捜査当局が手をつけなければ、日本の「広告代理店オリンピック」の実態はあからさまにされなかっただろう。だが今後はぜひ「原発・広告代理店の意志に反することは言及できない」という日本メディアの「タブー」が打ち破られることを望みたい。

『原発プロパガンダ』は、そうした批評精神を湛えた書であると同時に、著者と同年生まれの私にとっては、私たちの世代を振り返る機会を与えてくれる本だと言うこともできる。
私たちは「CM世代」である。テレビのCMが私たちに与えた影響は大きいし、広告はアートだという考えが七十年代から八十年代に膨れあがってきた、その時期に立ち会っている。広告や宣伝という仕事が「かっこよかった」のだ。
そして、世代的な振り返りに加えて、八十年代後半からしばらく、他のアルバイトと並行してだが、電力とは別業種だし純粋宣伝ではなかったものの一時でも「企業PR」の仕事にも関わっていた経験からしても、『原発プロパガンダ』の各所各所で、はっとさせられる部分がある。

オリンピックに限らず、政治や経済、社会や生活にまつわるあらゆることについては、「プロパガンダ」の意志の介在を抜きにしては語ることができない。私たちはそういう時代にいる。そこから逃れずに考えようよ、という声が聞こえる。
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二度目のシビウ演劇祭

2016-06-13 | Weblog
昨年に続き、シビウ演劇祭である。
参加するのは、2年越しの企画、江戸糸あやつり人形結城座×ベトナム青年劇場 日越国際協働制作『野鴨中毒』。ベトナムツアーを経て、本年の千秋楽。
前日午後6時からの仕込み、開演は翌日午後4時である。日本語英語ベトナム語ルーマニア語が飛び交う多国籍の現場、思いがけない事態も続々。
場当たりまでこぎ着ける。
町中を散歩することも(写真は山田真実撮影を借用、散歩でなく通っただけである)、他のフェスティバル参加演目を一本も見ることなく、ただただ準備している。
まあ、そういうものだ。
ともあれ、まもなく開幕。
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非戦を選ぶ演劇人の会 連絡先変更

2016-06-11 | Weblog
「非戦を選ぶ演劇人の会」の連絡先が変わりました。関係諸氏はご確認ください。

毎年夏にはリーディングを行うことカセ定着していますが、今年も8/31~9/1に新宿スペース・ゼロでリーディングが行われます。
準備が始まるところで、ほぼまだ何も決まっていません。
協力したい方、参加したい方は、ぜひご連絡いただければと思います。
今年は5月に「全国同時多発ピースリーディング」を成功させたばかりです。

「非戦を選ぶ演劇人の会」ホームページで、過去のリーディングの台本なども読めます。

………………………………………………………………

新連絡先

TEL.070-5457-2003
MAIL. info@hisen-engeki.com

郵送物発送元 くまがい まき
〒352-0033 埼玉県新座市石神1-3-20 チェスキー・ケー内

………………………………………………………………

「非戦を選ぶ演劇人の会」ホームページ

http://hisen-engeki.com/index.htm

「非戦を選ぶ演劇人の会」
会の発足と経緯については、ホームページでは以下のように示されている。

2003年2月14日、平和を願う演劇人が集まり、日本の有事法制や、国連各国の反対を押し切ってイラクの国土とイラク人への攻撃を宣言したアメリカとそれを支持した日本政府に対し、「対話を重視し、武力による外交手段に反対すること」「人権を軽視する法案に反対すること」「戦争に反対すること」が呼びかけ文として作られ、多くの演劇人の賛同を得、「イラク攻 撃と有事法制に反対する演劇人の会」として活動を始めました。
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韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.8 演出家募集のお知らせ

2016-06-10 | Weblog
私もメンバーである日韓演劇交流センターによる「韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.8」、演出家募集の詳細をお知らせします。
今回は初めて「座高円寺1」で上演します。
こういう企画で演出家を募集するというのは、あまりないのではないだろうか。その背景には、いろいろな歴史があるのだが、まあそれはまたいずれ。

日韓演劇交流のコアな部分を作ってきたこの企画に、是非ともご参加ください。


「韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.8」
演出家募集のお知らせ
日韓演劇交流センターでは、これまで隔年実施してきました韓国現代戯曲ドラマリーディングの8回目を、2017年1月に予定しております。このリーディング公演の演出家を公募することになりました。
今後は、出演者もオーディション形式で募集したいと思っております。
当企画に興味を持つ演出家の方々には、ぜひご応募していただきたいと思います。
なお7月1日以降作品の粗訳もお読みいただけるようになります。
◆応募資格 18歳以上で、これまで演出経験の実績のある方
◆応募方法 郵送、メールのどちらか
郵送 〒177-0051 東京都練馬区関町北4-35-17 東京演劇アンサンブル内 日韓演劇交流センター
メール akira@tee.co.jp 
必ず件名に「日韓リーディング演出希望」とお書きください。
◆応募に必要なもの 
【書式自由】プロフィール、希望作品志望理由
◆締切 2016年7月20日必着
◆公演までのスケジュール
8月 演出家決定
10月上旬 出演者オーディション・出演者決定
12月顔合わせ
1月上旬~1月中旬 稽古(1週間~10日間)
座・高円寺稽古場 orブレヒトの芝居小屋
◆公演日程 2016年1月24日(火)~29日(日) 座・高円寺1
3作品各2回公演とシンポジウム
◆料金 1500円 通し券3000円 シンポ500円
◆お問合せ akira@tee.co.jp 必ず件名に『2017日韓リーディング』としてください。

◆作家・作品について
 公演の順番などは未定です。

■チャン・ウジェ(71年生) 『アメリカの父』(2014年初演) 장우재 <미국아버지>
登場人物:男6、女2
この作品は、2004年国際テロリスト団体アルカイダによってインターネットを通じて公開斬首されたアメリカ人ニック・バーグの父マイケル・バーグがイギリスの戦争阻止連合に送った一通の手紙から始まる。 2000年代初期の実際の事件をモチーフとしているので、基本的にドキュメンタリー的なスタイルを採択している。「戦争とは何の関係もない息子がアルカイダによって殺され、その姿が全世界に生中継された父親は、いったい何を考えたのだろうか?」についての物語だ。 現代の資本主義社会、人種および宗教問題に直面したアメリカ人の父親の姿を通して、観客に現在の韓国、そして世界を考えさせる。
この作品はアメリカを背景として書かれており、韓国人は一人も登場しない。
世界中の人が共感できる素材を選んで、韓国演劇の新しい境地を開いた。

■ユン・ミヒョン(1980年代生?) 『若いフシディン』(2014年初演) 윤미현 <젊은 후시딘>
登場人物:男4、女5
この劇に登場するのは、「若いフシディン」(フシディンは傷口に塗る薬)と彼の両親、そして双子の姉妹「あどけないシンシンパス」と「あどけないマデカソル」、そして家主である「態度がでかい女」などである。 登場人物たちはそれぞれ家に対する不満が頂点に達している。彼らが家賃を払って暮らしている地下室は窓もなく、一日中わずかな光も射さない。雨が降れば常に雨漏りするが、滞納している家賃のせいで、ほとんど毎日大家にいびられている。フシディンの家族がかわす会話は非論理的で互いに会話が通じず、彼らが行う行為は滑稽なほどだ。
それでもフシディンの家族は、肯定的に生きるべきだと言って、現実に順応しろとお互いに諌めあう。雨漏りするから火事になる心配もないし、狭い部屋で死ねば自分の部屋がそのまま棺桶がわりになるから経済的だ、という具合だ。しまいには、近所の公園の屋根つきのベンチで野宿しながら、家を「テイクアウト」したと思い込む。このように、お話にもならない現実を不満なく受けえ入れて生きていく。

■チェ・チオン(70年生) 『狂った劇』(2008年初演) 최치언 <미친극>
登場人物 男6、女3
才能のない劇作家ドヨンは飲み屋で働く妻チャンミのヒモのような生活を送っている。
一方、借金に苦しめられている演出家は新しい作品を執筆している。ドヨンとチャンミは、実は彼の作品の登場人物だったのだ。そこにサラ金業者のハクスが借金取りにやってくる。借金を減額するという条件で、ハクスは演出家が執筆している演劇に投資することにする。ところがハクスgは作品の執筆に口を突っ込み始め、無理やり本人のキャラクターを作品に登場させる。演出家は自分でも気がつかないうちにハクスの注文どおりに作品を書き直し始める。結局ハクスは作品の中に吸い込まれ、戯曲の中の人生と現実の人生を区分することができなくなり、絶望の結末を迎える。『狂った劇』は複雑な劇中劇のスタイルと緻密な構成が評価された。
(2008年初演。2011年再演。)
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『ゴンドララドンゴ “Go-n-do-la, La-do-n-go”』 始動

2016-06-07 | Weblog
新作『ゴンドララドンゴ “Go-n-do-la, La-do-n-go”』始動である。

気心の知れたメンバーで、稽古が始まった。
間に私だけ『野鴨中毒』ツアーでヨーロッパに行ったりするので、皆には迷惑をかける。

稽古初日後半は、ちょっと珍しい光景。

まあ、現在チラシ等で出回っている以下の情報通りの作品になるとは限らない。
まだまだ模索中である。

自己中心的な者が複数いると場は必ず濁るものだが、今回はそういう感じはなさそうな気がする。

宣伝写真は、姫田蘭さん。
空を切り取ってみる、試み。


……………………

ゴンドララドンゴ
“Go-n-do-la, La-do-n-go”

作・演出○坂手洋二

7月16日(土)~ 31日(日)
下北沢ザ・スズナリ

人生は長かったか短かかったか、これでほんとうによかったのかどうか、落ちていく間に考えよう。

揺られ流され、生きてきた。私たちの30年を振り返る、ちっぽけだけどSomethingsに満ちた、空中大河ドラマ。

1980年代、東京。ゴンドラやブランコに乗って、ビルのガラス清掃、外壁補修等、高所作業を業務の中心とする会社があった。全員が同じ時給、出勤は自己申告、「原始共産制」を標榜する自由な気風の中、社員の半数は俳優や音楽・美術等のアーティストだった。仕事のこと、未来のこと、さまざまな問題でぶつかり、通じ合う仲間たち。「昭和」「バブル」の終焉を経て、彼ら、そして家族たちは、さまざまな選択をしてゆく。
 
そして現在。私は、幼い頃、横書きされていた「ゴンドラ」という文字列を逆に読んだ記憶を頼りに、思いがけず、父たちの時代と出会い直すことになった。


川中健次郎 
猪熊恒和 
大西孝洋  
杉山英之
武山尚史 
山村秀勝
尾崎太郎
 
都築香弥子
中山マリ 
樋尾麻衣子
百花亜希
田中結佳 
宗像祥子
秋定史枝 
大浦恵実

照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
舞台監督○森下紀彦
美術○じょん万次郎
衣裳○小林巨和  
アクション指導○佐藤正行
振付○矢内原美邦 
演出助手○村野玲子
文芸助手○清水弥生 久保志乃ぶ
宣伝意匠○高崎勝也
写真・映像○姫田蘭
協力○オフィス・ミヤモト さんらん DULL-COLORED POP
制作○古元道広 近藤順子
Company Staff○鴨川てんし 桐畑理佳 根兵さやか 番匠郁 鈴木菜子 松岡洋子 福田陽子 鈴木陽介 西川大輔 宮島千栄 橋本浩明 内海常葉 秋葉ヨリエ
主催○有限会社グッドフェローズ


7/16(土)はプレビュー:一律2500円(全席自由) 

※ゲストと坂手洋二によるアフタートークあり。 
日時、詳細はおってホームページでお知らせします。
本公演の前売券をお持ちの方、ご予約の方はご入場頂けます。

受付開始○開演の40分前 開場○開演の20分前 

開演直前・直後は(一時的に)ご入場を制限させて頂く場合がございます。
未就学児のご入場はご遠慮下さい。

【全席指定】
一般前売3,600円 ペア前売6,600円 当日4,000円
大学・専門学校生&U-25(25歳以下)2,500円 
高校生以下1,500円
※学生、U-25は、前日までに電話またはメールでご予約の上、当日受付にて要証明書提示。

前売開始○6月19日(日) 11:00

★燐光群オンラインチケット(一般・ペア前売のみ)
http://rinkogun.com 
24時間いつでもホームページ上でご予約頂き、セブンイレブンでチケットをお受け取り頂けます。
お支払いは現金(セブンイレブン)、またはクレジットカードとなります(手数料はお客様負担)。
※会員登録(無料)が必要です。 

★ご予約・お問合せ○燐光群/(有)グッドフェローズ 
03-3426-6294 ticket-rinkogun@ee.alles.or.jp  
①<お名前/電話番号/希望日時/チケットの種類と枚数>をお伝え下さい。
こちらからのお返事を以てご予約とさせて頂きます。
②当日、開演の15分前までに受付にお越し下さい。代金と引換でチケットを
お渡しします。
開演の10分前までにご精算頂けない場合は、あらかじめご用意したお席にご案内できない場合がございます。
※キャンセル・日時変更はできません。 
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『野鴨中毒』シビウ国際演劇祭での上演情報

2016-06-05 | Weblog
江戸糸あやつり人形結城座×ベトナム青年劇場 日越国際協働制作『野鴨中毒』、シビウ国際演劇祭での上演情報をお伝えしていなかった。
http://www.sibfest.ro/evenimente-2016/rata-salbatica
6月13日午後4時~、ゴングシアター。
街の中心の広場から、石畳の道を少し下ったところだ。
人形劇をよくやる劇場と聞いているから、しぜんと『野鴨中毒』の上演会場となったのであろう。
シビウ演劇祭では何年か前に世田谷パブリックシアター製作・野村萬斎氏の『マクベス』を上演した劇場である。
昨年の『屋根裏』はこの劇場の三階のほうの劇場で上演した。

私としては昨年の『屋根裏』に続き、シビウ演劇祭には二年連続参加である。
シビウ滞在時間は二日半という強行軍。
ベトナムの俳優陣との確認稽古、仕込み、舞台稽古、上演で、ほぼ終わるだろう。
他の演目のことは調べていないからどんな国からどんな演目が来るかもまだ何も知らないのだが、たぶんよその芝居はほとんど観ることはできないだろう。
ともあれ、短い間だが、いろいろな再会が楽しみではある。
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