「今年こそ、東京都は慰霊の公園での死者の冒涜を許さない決断を
―横網町公園での虐殺否定・ヘイト集会開催への「利用制限」を都に求める100人声明」
今年も呼びかけ人になりました。
毎年9月1日、横網町公園で開かれる右翼団体「そよ風」の集会は、その参加者の発言が二度にわたって東京都総務局人権部によってヘイトスピーチと認定されています。東京都は、今年は彼らの集会を認めないという決断をしてください。
「横網町公園は、関東大震災や東京空襲による悲劇を、記憶・伝承し、その犠牲になった多くの人々を慰霊する公園です」
横網町公園のツイッターアカウントの自己紹介には、そう書いてあります。
この公園では毎年、東京大空襲があった3月10日と関東大震災が起きた9月1日に、それぞれ都主催の法要が行われています。9月1日には、市民団体の主催で関東大震災時に虐殺された朝鮮人を追悼する「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」も開催されます。
しかし2017年以降、9月1日の横網町公園は、慰霊の公園にふさわしくない異様な雰囲気となっています。その理由は、右翼団体「そよ風」が公園の一角で集会を開くようになったからです。
「そよ風」は、朝鮮人虐殺について、朝鮮人が殺されたのは彼らが暴動や放火を行ったからだという、震災当時に拡がった事実に反する流言を「事実」として語っています。もちろん、歴史学の世界では全く認められない荒唐無稽な主張です。彼らはそうした考えから、朝鮮人犠牲者追悼碑の撤去を求め、朝鮮人犠牲者追悼式典への妨害を執拗に続けてきました。
その集会の参加者にはレイシズム(民族差別)運動の活動家が多く、差別的街宣を禁止する仮処分を受けた者もいます。横網町公園での集会での言動には、ヘイトスピーチ解消法で「解消すべき」と定められている差別発言が散見されます。
つまり彼らは、追悼のためではなく、死者を冒涜し、貶めるために、毎年、公園の一角を占用しているのです。
これに対して東京都総務局人権部は、2020年に人権尊重条例に基づいて「そよ風」集会での発言についてヘイトスピーチと認定。さらには今年8月3日には昨年の同集会参加者の発言を、同じくヘイトスピーチと認定しました。
毎年の集会の意図と様相、繰り返されるヘイト認定、レイシスト活動家を中心とする参加者の顔ぶれといったことを踏まえれば、この集会が、もはや慰霊の日に慰霊の公園で許されるべきものではないのは明らかです。
東京都は、彼らに再び占用許可を出すべきではありません。
そして、東京都にはそれを実現する権限があります。
昨年9月1日、朝鮮人犠牲者追悼碑の前で朝鮮人犠牲者を貶める集会を開こうとした「そよ風」に対して、多くの市民が座り込みでこれに抗議しました。「そよ風」の行動については、警視庁の警備担当者も、「『そよ風』がやろうとしていることが良くないことは誰にでも分かる」と述べたといいます(神奈川新聞23年9月2日付)。 このとき、東京都は「そよ風」に対して、「占用の取り消しと公園外への退去」を通告しています(毎日新聞同年11月4日付など)。これは都立公園条例17条「知事は、都市公園の管理のため必要があると認めるときは、都市公園の使用を制限することができる」に基づくものです。
人権尊重条例にも、ヘイトスピーチが行われる蓋然性、また「施設の安全な管理に支障が生じる事態」が起こる蓋然性が高い場合は、「利用制限」をかけることができることが定められています。
すでに二度もヘイト認定を受けているわけですから、ヘイトスピーチが行われる蓋然性に疑問の余地はありません。また、「施設の安全な管理に支障が生じる事態」について言えば、19年には大型マイクを追悼式典の方角に向けて大音量でヘイトスピーチを流し、23年には制止する都職員たちに台車をぶつけたり、暴言を吐いたり、帽子を奪って投げ捨てたりといった行為が確認されています。
何よりも、慰霊の日に、慰霊の公園で、死者を冒涜し、追悼の営みを嘲笑し、妨害し、差別発言を大音量で繰り返すといったことを、二度と許すべきではありません。それは、横網町公園の存在意義をも否定することです。
東京都は今年こそ、「そよ風」による死者への冒涜を許さないでください。
9月1日、彼らが横網町公園で集会を開くために占用許可を与えないでください。
2024年8月24日
呼びかけ人
加藤直樹(ノンフィクション作家)
坂手洋二(劇作家、演出家)
中沢けい(小説家、法政大学教授)
賛同人
青木正芳(弁護士)
青木正美(医師)
赤池一将(龍谷大学名誉教授)
明戸隆浩(社会学者)
足立昌勝(関東学院大学名誉教授)
綾目広治(ノートルダム清心女子大学名誉教授)
飯山由貴(美術家)
飯島滋明(名古屋学院大学教授)
石川逸子(詩人)
池田香代子(翻訳家)
井桁碧(東日本部落解放研究所)
市野川容孝(東京大学教授)
一盛 真(大東文化大学教授)
稲 正樹(元岩手大学教授・元国際基督教大学教授)
井上博之(東京大学准教授)
上村英明(市民外交センター共同代表、恵泉女学園大学名誉教授)
浦野広明(立正大学法制研究所特別研究員)
大江京子(弁護士)
大熊政一(弁護士)
大山勇一(弁護士)
岡崎勝彦(島根大学名誉教授)
岡田正則(早稲田大学教授)
岡田行雄(熊本大学教授)
大和田茂(日本社会文学会会員)
小野塚知二(東京大学特任教授/名誉教授)
海北由希子(医療通訳)
勝又浩(文芸評論家)
加藤圭木(一橋大学大学院社会学研究科教授)
金井真紀(文筆家・イラストレーター)
神原元(弁護士)
北澤貞男(弁護士)
北村 栄(弁護士)
木戸衛一(大阪大学招聘教授)
木村元彦(ノンフィクションライター)
清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授)
葛野尋之(青山学院大学教授)
上瀧浩子(弁護士)
越川道夫(映画監督)
児玉勇二(弁護士)
小林ふみ子(法政大学教授)
小牧英夫(弁護士)
小松 浩(立命館大学教授)
斉藤豊治(弁護士、甲南大学名誉教授)
齊藤真理子(韓国文学翻訳家)
佐川亜紀(詩人)
佐藤 泉(青山学院大学教員)
佐藤真理(弁護士)
佐藤むつみ(弁護士)
笹川孝一(法政大学名誉教授)
澤藤統一郎(弁護士)
志田なや子(弁護士)
品田悦一(東京大学名誉教授)
篠崎美生子(明治学院大学教員)
嶋内雅人(不動産鑑定士)
島田 広(弁護士)
島村 輝(フェリス女学院大学教授)
清水雅彦(日本体育大学教授)
城塚健之(弁護士)
新屋達之(福岡大学教授)
杉浦ひとみ(弁護士)
瀬池山角(東京大学教授)
竹内栄美子(明治大学教授)
田中正敬(専修大学教授)
田中優子(法政大学名誉教授・前総長)
辻山栄子(公認会計士)
角田由紀子(弁護士)
外村 大(東京大学教員)
豊川義明(弁護士)
中島 晃(弁護士)
中島京子(小説家)
中谷いずみ(二松学舎大学教授)
中谷雄二(弁護士)
中西徹(東京大学名誉教授)
中村一成(ジャーナリスト)
新倉 修(青山学院大学名誉教授・弁護士)
根森 健(新潟大学・埼玉大学名誉教授)
乗松聡子(ピースフィロソフィーセンター)
畑中 愛(慶熙大学外国語学部日本語学科非常勤講師)
原 和良(弁護士)
晴山一穂(専修大学名誉教授)
菱山南帆子(市民運動家)
福永玄弥(東京大学名誉教授)
藤原精吾(弁護士)
藤岡美恵子(法政大学教員)
ぼうごなつこ(漫画家)
保立道久(東京大学名誉教授、歴史学)
堀井一摩(日本大学文理学部国文学科 准教授)
本田由紀(東京大学大学院教育学研究科教授)
本庄 豊(元歴史教育者協議会副委員長)
前田朗(東京造形大学名誉教授)
前田佳子(医師、日本女医会会長)
松田幸子(弁護士)
松原文枝(ジャーナリスト)
丸山重威(ジャーナリスト)
水谷敏彦(弁護士)
宮坂 浩(弁護士)
村上克尚(東京大学准教授)
村上陽子(沖縄国際大学教員)
毛利正道(弁護士)
森川文人(弁護士)
守川幸男(弁護士)
森本一夫(東京大学教授)
師岡康子(弁護士)
屋嘉宗彦(法政大学名誉教授)
矢澤美佐紀(法政大学他講師)
柳井貴士(愛知淑徳大学創造表現学部准教授)
矢野秀喜(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動)
山口二郎(法政大学教授)
山田泉(元法政大学キャリアデザイン学部教員)
弓仲忠昭(弁護士)
吉田恒俊(弁護士)
米倉 勉(弁護士)
米倉洋子(弁護士)
(114人、アイウエオ順・敬称略)