陸上自衛隊第7師団を基幹とした南スーダン国連平和維持活動(PKO)第10次派遣隊の第1陣・約130人が、今月22日、新千歳空港を出発。続いて北部方面各直轄部隊や要員も含んだ総勢約350人が定期便やチャーター便で続々と南スーダンの首都ジュバへ向かった。約6カ月間、道路補修・施設整備などに従事し、年末までに帰国の予定という。
正当防衛などに限っていた武器使用基準を緩和し、武装集団に襲われた国連要員らを自衛隊員が急行して助ける「駆け付け警護」や宿営地の共同防衛が可能になるとした、3月の「安全保障関連法」施行後、初のPKOとなる。ただし今回の派兵は「駆け付け警護」などの新任務には当たらず、それは陸上自衛隊第5普通科連隊(青森市)を中心とする11次隊以降に先送りされている。
そんな最中、十勝管内鹿追町の陸上自衛隊然別演習場で23日、事故が発生した。トラックで物資を輸送中に敵から襲撃を受け、応戦するという想定で、トラックの援護役7人と敵役2人が計79発の実弾を発射、隊員2人が負傷した。
明らかに手に持った感触や射撃したときの手応えが違う「実弾」と「空包」を取り違え、79発も撃ち続けてしまうということが起こり得るのか。陸自のOBや現役隊員からは「ありえない」という声も上がっている。
実弾と空包は部隊内の弾薬庫の別の場所で、それぞれ鍵をかけて厳重に保管されており、実弾は使い終わった後も全て数え、足りなければ数百人単位で捜索するくらい管理は厳密だという。空包も内部に火薬が入っているが、弾頭を詰めておらず、発射時には光や発射音を伴うだけで、一定の距離を保てば、実弾と異なり殺傷能力はないという。
実弾や空包を使う場合には申請書が必要で、弾薬庫からの受け渡しには幹部ら複数人が立ち会い、訓練直前に部隊の責任者が隊員に配ることになっており、今回は、全て実弾が手渡されたとみられているらしいが、ほんとうに幹部も含めて誰ひとり、実弾であることに気づかなかったのだろうか。
「うがった見方かも知れないが、本人たちは気づいていて、皆で示し合わせて、今回の派兵に対する異議を呈するとか、杜撰さを内部告発するという意図があったのではないか」という推理を披露する人が、身近にいた。
それを聞いても、いくら何でもまさかとは思うのだが…………。
知己の自衛隊OBによると、やはり「作為的ではなく、組織が機能保全に陥っているということではないか」という反応だった。「派兵自体は自民党政権下で決定したわけではないし、意義を呈する意図があったとしても、その対象が何なのかがわからない」という。
真相は藪の中である。
現在のこの日本という国に、武装した相手と渡り合う「兵士」の自覚を持てと言われ順応できる者がいるのだろうか、という問いも出てくる。もちろん「自衛隊」は軍隊か否かという問いは半ば抽象論であって、内部では徹底して「兵士」としての教育を受ける。しかし防衛大の卒業生の二割以上が自衛隊への任官を拒否するようになったという報道もある。
そんな中、防衛省は、海上自衛隊の人員も予算も不足していることなどから、民間の船会社の乗組員を予備自衛官補として採用する制度の導入を目論んでいたらしい。民間のフェリーを自衛隊の物資や隊員の輸送手段として活用しようとする準備が進んでいたのだ。予備自衛官補とは、一定の期間、訓練を受けると、武力攻撃などの有事の際に召集される予備自衛官になることができるという制度だが、それが半強制的であることはいうまでもない。これは「有事法制」以外の何物でもない。憲法が改悪され「緊急事態条項」が導入されれば、「任意」の判断の余地は認められず、なし崩しに命令に従うことになってしまうだろうからだ。
貨物船やフェリーの乗組員などで作る「全日本海員組合」は、反対の意を表している。
空砲が消え、実弾しか選択の余地のない世界がもうそこまで来ている。
こうした動きをマスコミはもっともっと報じるべきだし、反対意見が存在することも取り上げてもらわないと困るのだ。
ましてや自衛隊の中に反対意見があっても言えない状況があるとしたら、今からそれを掬い上げていく必要がある。
そもそも自衛隊内ではしばしば問題が起きている。潜水艦内で上官の暴力を原因とした自殺未遂事件を海自が公表していないとか、航空自衛隊で過労自殺があり、妻ら4人が大津地裁で国を相手取って提訴していたり、といった事件が知られている。
今年度の自衛隊の殉職者は27人と大増加となっている。演習ではなく、武装した相手と対峙することになれば、危機は増大する。「覚悟の上」ということになるのかもしれないが、やむにやまれず、どこにも相談できず、ということもあるかもしれない。
そんな時に、自衛隊から外部への相談の場としては、「自衛官人権ホットライン」がある。
http://8701.teacup.com/hotlines/bbs
http://gi-heisi.doorblog.jp
写真は沖縄・斎場御嶽(せーふぁうたき)近く。少し先から久高島が見える。
正当防衛などに限っていた武器使用基準を緩和し、武装集団に襲われた国連要員らを自衛隊員が急行して助ける「駆け付け警護」や宿営地の共同防衛が可能になるとした、3月の「安全保障関連法」施行後、初のPKOとなる。ただし今回の派兵は「駆け付け警護」などの新任務には当たらず、それは陸上自衛隊第5普通科連隊(青森市)を中心とする11次隊以降に先送りされている。
そんな最中、十勝管内鹿追町の陸上自衛隊然別演習場で23日、事故が発生した。トラックで物資を輸送中に敵から襲撃を受け、応戦するという想定で、トラックの援護役7人と敵役2人が計79発の実弾を発射、隊員2人が負傷した。
明らかに手に持った感触や射撃したときの手応えが違う「実弾」と「空包」を取り違え、79発も撃ち続けてしまうということが起こり得るのか。陸自のOBや現役隊員からは「ありえない」という声も上がっている。
実弾と空包は部隊内の弾薬庫の別の場所で、それぞれ鍵をかけて厳重に保管されており、実弾は使い終わった後も全て数え、足りなければ数百人単位で捜索するくらい管理は厳密だという。空包も内部に火薬が入っているが、弾頭を詰めておらず、発射時には光や発射音を伴うだけで、一定の距離を保てば、実弾と異なり殺傷能力はないという。
実弾や空包を使う場合には申請書が必要で、弾薬庫からの受け渡しには幹部ら複数人が立ち会い、訓練直前に部隊の責任者が隊員に配ることになっており、今回は、全て実弾が手渡されたとみられているらしいが、ほんとうに幹部も含めて誰ひとり、実弾であることに気づかなかったのだろうか。
「うがった見方かも知れないが、本人たちは気づいていて、皆で示し合わせて、今回の派兵に対する異議を呈するとか、杜撰さを内部告発するという意図があったのではないか」という推理を披露する人が、身近にいた。
それを聞いても、いくら何でもまさかとは思うのだが…………。
知己の自衛隊OBによると、やはり「作為的ではなく、組織が機能保全に陥っているということではないか」という反応だった。「派兵自体は自民党政権下で決定したわけではないし、意義を呈する意図があったとしても、その対象が何なのかがわからない」という。
真相は藪の中である。
現在のこの日本という国に、武装した相手と渡り合う「兵士」の自覚を持てと言われ順応できる者がいるのだろうか、という問いも出てくる。もちろん「自衛隊」は軍隊か否かという問いは半ば抽象論であって、内部では徹底して「兵士」としての教育を受ける。しかし防衛大の卒業生の二割以上が自衛隊への任官を拒否するようになったという報道もある。
そんな中、防衛省は、海上自衛隊の人員も予算も不足していることなどから、民間の船会社の乗組員を予備自衛官補として採用する制度の導入を目論んでいたらしい。民間のフェリーを自衛隊の物資や隊員の輸送手段として活用しようとする準備が進んでいたのだ。予備自衛官補とは、一定の期間、訓練を受けると、武力攻撃などの有事の際に召集される予備自衛官になることができるという制度だが、それが半強制的であることはいうまでもない。これは「有事法制」以外の何物でもない。憲法が改悪され「緊急事態条項」が導入されれば、「任意」の判断の余地は認められず、なし崩しに命令に従うことになってしまうだろうからだ。
貨物船やフェリーの乗組員などで作る「全日本海員組合」は、反対の意を表している。
空砲が消え、実弾しか選択の余地のない世界がもうそこまで来ている。
こうした動きをマスコミはもっともっと報じるべきだし、反対意見が存在することも取り上げてもらわないと困るのだ。
ましてや自衛隊の中に反対意見があっても言えない状況があるとしたら、今からそれを掬い上げていく必要がある。
そもそも自衛隊内ではしばしば問題が起きている。潜水艦内で上官の暴力を原因とした自殺未遂事件を海自が公表していないとか、航空自衛隊で過労自殺があり、妻ら4人が大津地裁で国を相手取って提訴していたり、といった事件が知られている。
今年度の自衛隊の殉職者は27人と大増加となっている。演習ではなく、武装した相手と対峙することになれば、危機は増大する。「覚悟の上」ということになるのかもしれないが、やむにやまれず、どこにも相談できず、ということもあるかもしれない。
そんな時に、自衛隊から外部への相談の場としては、「自衛官人権ホットライン」がある。
http://8701.teacup.com/hotlines/bbs
http://gi-heisi.doorblog.jp
写真は沖縄・斎場御嶽(せーふぁうたき)近く。少し先から久高島が見える。