初めて上野ストアハウスへ。ITI(国際演劇協会)の「紛争地域から生まれた演劇シリーズ4」として上演された『第三世代』。構成・台本はイスラエルのヤエル・ロネン。訳は、私がいつもドイツ演劇のことを教えていただいていて、ベルリンに行くたびに情報を提供してもらっている、新野守広さん。ベルリン・シャウビューネ劇場とテルアビブ・ハビマ劇場によって共同製作された作品の日本初紹介であり、「ドイツ/イスラエル/パレスチナ、対立の壁を超えて」という副題がついている。圧倒的多数の元東側劇場が主力のベルリンで、シャウビューネは西側でありほぼ民間主導、私はあまり好きになれないオスターマイヤーが芸術監督だった。この作品はドイツ演劇らしさはあまり感じられない。以前にITIの会議後に林秀樹さんに台本を見せてもらった時に「難しいな」と感じた部分は、やはりそのまま難しいと思う。情報として目新しいところはほとんどない。新野さんがこの作品を紹介したいと思ったのは、劇的趣向と各国俳優たちが言語を交錯して演じる臨場感からであろうか。かなり難しいテキストを相手に、中津留章仁演出は日本向けというか中津留流というか、細部に工夫し、ゴンゴン押してくる感じで、なんとか日本版として飽きないように持たせている。俳優陣もリーディングなのに台本を離している部分が多い熱意で応える。日本でやるならこのやり方がいいと思わせる、真摯さである。ただ、作品=作者のもともとの立場、「イスラエル側」としての言い分は透けて見えてくる。パレスチナを圧倒的な武力で蹂躙してきた、連綿と今現在に至る「事実」は消えない。本作が「イスラエル政府・外務省からも好感を持たれていない作品」だとしても、どうしてもイスラエル容認のプロパガンダに見えてしまう部分がある。直接的な戦争を知る世代の次の次の代としての「第三世代」というのがタイトルの意味だろうが、それは「今まさにイスラエルが行っている戦争」を矮小化し隠蔽してしまうことになりかねない。戦争そのものが、過去形ではないのだ。この劇では、真の意味ではパレスチナは「不在」である。「比べないで」というのはまさにパレスチナ側が言うべきコトバであり、お互いに対等に言いたいだけ言い合っているかのような「喧嘩両成敗」的なニュアンスにされてしまうことは、認めがたい。……なんにしても、ここにこの作品が紹介されることに、演劇の「広場」としての可能性がある。「紛争地域から生まれた演劇シリーズ」は、更に続けるべきだ。……初めてのストアハウスは小綺麗でタッパもあり、既にいい感じに劇場のにおいがする。上野駅から最短距離で来ると周りはビルばかりで、上野に来たという気がしない。駅ビルの上海食堂で酸辣湯麺を食べる。酸味が胃に優しい。
いろいろなことが滞っているが外出、演出者協会の理事会と忘年会。タイからトゥアとゴップが来ている。……主に一回り以上年下の演劇人たちと話す。それぞれが自分の課題を抱えている。せっかく出会ったのだから、なるべくいろいろなことを共有したいと思う。……けっこうリベラルな印象の人が意外に保守的だったりする。反戦意識が強いように見えた人がマスコミ情報に毒されていて「防衛」が必要だと考えていたりする。もちろん彼らは積極的に知ろう考えようとしているからいいのだが、たとえば海兵隊の機能一つとっても、知ろうとしなければ、世間に横行する「情報」を鵜呑みにしてしまう人が多いという事実はある。圧倒的多数を占める、新聞の一行の見出し情報を真に受ける人達の「誤解」を解くことは、かなり難しいのだろうなと思う。
昨日、水津くんの友人たちがやっているというので、『イシノマキにいた時間』を、下北沢・Geki地下Libertyで観る。なんと、下北沢に長く通ってきたが、この劇場は初めてだ。被災地支援のことをやっていて、ある意味、中津留章仁『背水の孤島』前半とは真逆のやり方だが、真面目にやっているし、勉強になる。三人のチームワークもいい。……今日は新宿、金満里ソロ公演「天にもぐり地にのぼる」を観る。時にぎらりと鈍く光り、空気が澄み、また動き出す、独自の空間を創出。馬の被り物をした大野慶人さんとのセッションも、アンコールで。……青年劇場の忘年会にも遅れて顔を出させていただく。
イラク戦争十年実行委員会が、外務省が公表した「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」に対して緊急声明を出す。
〈非戦を選ぶ演劇人の会〉は、〈外務省「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」に対する緊急声明〉に、賛同人として名を連ねることにした。
以下、本文。
……………………………………………………
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
参議院議長 平田 健二 殿
衆議院議長 伊吹 文明 殿
外務大臣 岸田 文雄 殿
外務省「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」に対する緊急声明 ―情報開示と政府による検証を求める
先週 12 月21 日、外務省は「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」として、2003年3 月に開戦したイラク戦争への、同省としての対応を検証したと公表した。一部報道では、「分厚い」報告書がまとめられたと報じられているが、公開されたのは、わずか4ページの要旨のみであった。これをもって日本のイラク戦争への対応が検証されたとはとても言えない。私たち市民団体とNGO は、以下の二点を求める。
1. 外務省の「検証」報告書の全文を公開すること
2. 外務省のみならず政府および国会における独立した第三者の検証委員会により検証が行なわれること
1.報告書の公開に関して
今回の「検証」報告書について、外務省は外交的配慮を理由に公開しないとしている。だが、日本に先駆けてイラク戦争への対応を検証したオランダでは、「国連決議1441 に基づくイラク攻撃は国際法違反」「オランダ政府のイラク戦争支持は誤り」として550 ページにわたる報告書が2010 年1月にまとめられ、公開されている。2009 年7 月から検証が開始され、来年中には最終報告がまとめられると見られるイギリスにおいても、独立した検証委員会がトニー・ブレア元首相を筆頭に当時の政府関係者への聴取や政府文書の開示を行い、それらは検証委員会のウェブサイトで公開されている。これらの先例にくらべ、今回の外務省の「検証」はあまりに閉鎖的であり、客観的な批判に耐えうるものとは言えない。そうした閉鎖性こそ、「イラクが大量破壊兵器を所有している」という誤った情報を開戦にいたるまで主張し続けることとなった原因のひとつである。報告書を公開し、一般(市民)からも広く意見を求めるべきである。
2.第三者の検証に関して
私たちは、今回の外務省の「検証」が、日本におけるイラク戦争検証の幕引きとされることを強く憂慮する。オランダやイギリスの検証は、政府の指示の下に、独立した検証委員会が、イラク戦争と自国の関与について多角的に検証しているものである。それに対し、今回の外務省の「検証」は、同省がイラクの大量破壊兵器に関する情報について、誤った情報しか持ち得なかったことを認めたにすぎない。
私たちは、政府と国会に対し、改めて以下のことを求める。
1)独立の「第三者検証委員会」を政府および国会のもとに設け、「イラク戦争支持の政府判断の是非」「自衛隊イラク派遣の判断の是非」「政府のイラク復興支援の適否」の3 点を検証すること。
同委員会が上記3 点についての情報開示や調査を行い、個人も含めた道義的・法的な責任の所在を明らかにすること。
2)「第三者検証委員会」による検証のプロセス、最終報告などが最大限公開され、誰にでもアクセスできるようにすること。
3)「第三者検証委員会」による最終報告を受けたうえで、日本政府としての見解を国内外に発表するとともに、必要とされる人道支援、被害者支援を行うこと。
イラク戦争の検証を行うことは、第166 回国会で内閣提出の法案第89号(イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案)可決の際の附帯決議で定められた国会の意思である。政府及び国会は、早期かつ内外の評価に充分耐えうる内容をもったイラク戦争の検証の実現に尽力すべきである。
2012 年12 月26 日
イラク戦争の検証を求めるネットワーク
(特活)日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)
ピースボート
非戦を選ぶ演劇人の会
WORLD PEACE NOW
……………………………………………………
と、沖縄では、宮城康博が、退任する森本防衛大臣が閣議後の記者会見で、普天間基地の辺野古移設について「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と発言したことをを受けて、宜野湾市選出の県議・市議と、元民主党の県議と四人で政府に対する「要望書」を送付したという。
宛先および内容は下記の通り。
……………………………………………………
「普天間飛行場の辺野古移設を断念し県内移設なき即時返還を求める(要望)」の提出について
2012年12月25日に政権交代で退任する森本防衛大臣は閣議後の記者会見において、普天間飛行場の県内移設に関し「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と発言した。
1996年のSACO最終報告以来、沖縄はこの問題で揺さぶられ続け、政治的にも大きな争点であり続けた。そうして今日では、移設先の地元である名護市のみならず、沖縄の41市町村長、全県議会議員が反対している状況である。
森本防衛大臣の発言は、これまで沖縄に対して説明してきた「軍事的」「地政学的」「抑止力」などの理由を斥け「政治的最適」としている。これは沖縄になら政治的に押し付けることができるという差別意識の露呈であり看過できるものではない。
このような発言を退任していく一大臣の放言と捉えるのではなく、私たちは日本政府の安全保障政策における沖縄に対する意識を鋭く表すものであると考えている。
私たち、普天間飛行場の存する宜野湾市選出の県議会議員そして市議会議員、移設先とされる名護市の元市議会議員、民主党連立政権が公約を反古にし辺野古移設に回帰することに反対し離党した元民主党所属の県議会議員、それぞれ四人は、緊急で抗議の意志を込め連名で政府に対し別紙「要望書」を提出するものである。
【要望書】
2012年12月27日
内閣総理大臣 安倍晋三
外務大臣 岸田文雄
防衛大臣 小野寺五典
内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 山本一太
普天間飛行場の辺野古移設を断念し県内移設なき即時返還を求める(要望)
2012年12月25日、森本防衛大臣は閣議後の記者会見において、在沖米海兵隊の航空基地である普天間飛行場の辺野古施設について「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と発言した。
私たちは沖縄で生きる者として、この発言に憤りを禁じ得ない。
国政において先の総選挙で自民党が多数となり再び政権交代が成されたが、日本政府の姿勢は15年の長きに渡り普天間の「県内移設」ありきであり私たちは断じて容認できない。
これまで政府は、在沖米軍基地の存在を「地政学的」「軍事的」「抑止力」等で説明してきたが、そのことに対して沖縄は反論し抗議を重ねてきた。今般の森本発言では、普天間の辺野古移設が、これまで説明された「軍事的」理由ではなく「政治的に沖縄が最適の地域」という。これは沖縄の現状と、沖縄がこれまで正当な手続きを経て日本政府に対し意見してきたことを全て無視している暴論である。
2001年2月には沖縄県議会において全会一致で「海兵隊」に言及する兵力削減要求を決議し、相前後して各市町村議会で「海兵隊削減」要求が決議され、北谷町議会では「海兵隊撤退」要求にまで踏み込んだ決議をしている。
今年に入っては、海兵隊の装備変更に伴うMV-22オスプレイ配備について、沖縄県議会と沖縄県知事をはじめ沖縄の全自治体議会および市町村長が反対し、沖縄の民衆が猛抗議する中で普天間飛行場にMV-22オスプレイが配備強行された。
かかる海兵隊をめぐる沖縄での様々な経緯を無視して、海兵隊のMAGTFの機能を「政治的に許容できるところが沖縄にしかないので」(森本発言)辺野古移設を推進する、日本政府の認識は間違いである。直近の総選挙において当選した自民党公認の4氏も普天間飛行場の「県外移設」を公約している。沖縄県民の不退転の決意での県内移設への反対を無視し「政治的に最適」とする日本政府の行為を、私たち沖縄の民は「差別」と断じざる得ない。
普天間飛行場の移設地として沖縄が「政治的に最適」な地ではないことは火をみるより明らかだ。日本政府におかれては、現在進行中の普天間飛行場の辺野古移設に関わる一切の手続きを中断し、県内移設なき普天間飛行場返還に早急に取り組むことを要求する。
日米安全保障条約体制が米海兵隊のMAGTFの機能を必要とするならば、それらの機能と一括し普天間飛行場は「県外移設」すべきである。沖縄にそのような移設先はない。沖縄は1945年の沖縄戦以来、日本国の防衛のために犠牲と負担を強いられ続けている。ウチナーンチュは地上戦で地獄の惨禍を体験し、たくさんの同胞の尊い人命と財産を失い、普天間飛行場も戦中に米軍により土地を強奪されて造られた基地である。67年も経た、条件など付けず速やかに日本政府は普天間飛行場を閉鎖し普天間の土地を沖縄に返還すべきである。
以上、強く要望する。
新垣清涼(沖縄県議会議員)
桃原功(宜野湾市議会議員)
宮城康博(元名護市議会議員)
山内末子(沖縄県議会議員)
……………………………………………………
ヤマトでも、沖縄でも、自民党新内閣に、言うべきことはきっちり言わせていただく。
〈非戦を選ぶ演劇人の会〉は、〈外務省「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」に対する緊急声明〉に、賛同人として名を連ねることにした。
以下、本文。
……………………………………………………
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
参議院議長 平田 健二 殿
衆議院議長 伊吹 文明 殿
外務大臣 岸田 文雄 殿
外務省「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」に対する緊急声明 ―情報開示と政府による検証を求める
先週 12 月21 日、外務省は「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」として、2003年3 月に開戦したイラク戦争への、同省としての対応を検証したと公表した。一部報道では、「分厚い」報告書がまとめられたと報じられているが、公開されたのは、わずか4ページの要旨のみであった。これをもって日本のイラク戦争への対応が検証されたとはとても言えない。私たち市民団体とNGO は、以下の二点を求める。
1. 外務省の「検証」報告書の全文を公開すること
2. 外務省のみならず政府および国会における独立した第三者の検証委員会により検証が行なわれること
1.報告書の公開に関して
今回の「検証」報告書について、外務省は外交的配慮を理由に公開しないとしている。だが、日本に先駆けてイラク戦争への対応を検証したオランダでは、「国連決議1441 に基づくイラク攻撃は国際法違反」「オランダ政府のイラク戦争支持は誤り」として550 ページにわたる報告書が2010 年1月にまとめられ、公開されている。2009 年7 月から検証が開始され、来年中には最終報告がまとめられると見られるイギリスにおいても、独立した検証委員会がトニー・ブレア元首相を筆頭に当時の政府関係者への聴取や政府文書の開示を行い、それらは検証委員会のウェブサイトで公開されている。これらの先例にくらべ、今回の外務省の「検証」はあまりに閉鎖的であり、客観的な批判に耐えうるものとは言えない。そうした閉鎖性こそ、「イラクが大量破壊兵器を所有している」という誤った情報を開戦にいたるまで主張し続けることとなった原因のひとつである。報告書を公開し、一般(市民)からも広く意見を求めるべきである。
2.第三者の検証に関して
私たちは、今回の外務省の「検証」が、日本におけるイラク戦争検証の幕引きとされることを強く憂慮する。オランダやイギリスの検証は、政府の指示の下に、独立した検証委員会が、イラク戦争と自国の関与について多角的に検証しているものである。それに対し、今回の外務省の「検証」は、同省がイラクの大量破壊兵器に関する情報について、誤った情報しか持ち得なかったことを認めたにすぎない。
私たちは、政府と国会に対し、改めて以下のことを求める。
1)独立の「第三者検証委員会」を政府および国会のもとに設け、「イラク戦争支持の政府判断の是非」「自衛隊イラク派遣の判断の是非」「政府のイラク復興支援の適否」の3 点を検証すること。
同委員会が上記3 点についての情報開示や調査を行い、個人も含めた道義的・法的な責任の所在を明らかにすること。
2)「第三者検証委員会」による検証のプロセス、最終報告などが最大限公開され、誰にでもアクセスできるようにすること。
3)「第三者検証委員会」による最終報告を受けたうえで、日本政府としての見解を国内外に発表するとともに、必要とされる人道支援、被害者支援を行うこと。
イラク戦争の検証を行うことは、第166 回国会で内閣提出の法案第89号(イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案)可決の際の附帯決議で定められた国会の意思である。政府及び国会は、早期かつ内外の評価に充分耐えうる内容をもったイラク戦争の検証の実現に尽力すべきである。
2012 年12 月26 日
イラク戦争の検証を求めるネットワーク
(特活)日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)
ピースボート
非戦を選ぶ演劇人の会
WORLD PEACE NOW
……………………………………………………
と、沖縄では、宮城康博が、退任する森本防衛大臣が閣議後の記者会見で、普天間基地の辺野古移設について「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と発言したことをを受けて、宜野湾市選出の県議・市議と、元民主党の県議と四人で政府に対する「要望書」を送付したという。
宛先および内容は下記の通り。
……………………………………………………
「普天間飛行場の辺野古移設を断念し県内移設なき即時返還を求める(要望)」の提出について
2012年12月25日に政権交代で退任する森本防衛大臣は閣議後の記者会見において、普天間飛行場の県内移設に関し「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と発言した。
1996年のSACO最終報告以来、沖縄はこの問題で揺さぶられ続け、政治的にも大きな争点であり続けた。そうして今日では、移設先の地元である名護市のみならず、沖縄の41市町村長、全県議会議員が反対している状況である。
森本防衛大臣の発言は、これまで沖縄に対して説明してきた「軍事的」「地政学的」「抑止力」などの理由を斥け「政治的最適」としている。これは沖縄になら政治的に押し付けることができるという差別意識の露呈であり看過できるものではない。
このような発言を退任していく一大臣の放言と捉えるのではなく、私たちは日本政府の安全保障政策における沖縄に対する意識を鋭く表すものであると考えている。
私たち、普天間飛行場の存する宜野湾市選出の県議会議員そして市議会議員、移設先とされる名護市の元市議会議員、民主党連立政権が公約を反古にし辺野古移設に回帰することに反対し離党した元民主党所属の県議会議員、それぞれ四人は、緊急で抗議の意志を込め連名で政府に対し別紙「要望書」を提出するものである。
【要望書】
2012年12月27日
内閣総理大臣 安倍晋三
外務大臣 岸田文雄
防衛大臣 小野寺五典
内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 山本一太
普天間飛行場の辺野古移設を断念し県内移設なき即時返還を求める(要望)
2012年12月25日、森本防衛大臣は閣議後の記者会見において、在沖米海兵隊の航空基地である普天間飛行場の辺野古施設について「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と発言した。
私たちは沖縄で生きる者として、この発言に憤りを禁じ得ない。
国政において先の総選挙で自民党が多数となり再び政権交代が成されたが、日本政府の姿勢は15年の長きに渡り普天間の「県内移設」ありきであり私たちは断じて容認できない。
これまで政府は、在沖米軍基地の存在を「地政学的」「軍事的」「抑止力」等で説明してきたが、そのことに対して沖縄は反論し抗議を重ねてきた。今般の森本発言では、普天間の辺野古移設が、これまで説明された「軍事的」理由ではなく「政治的に沖縄が最適の地域」という。これは沖縄の現状と、沖縄がこれまで正当な手続きを経て日本政府に対し意見してきたことを全て無視している暴論である。
2001年2月には沖縄県議会において全会一致で「海兵隊」に言及する兵力削減要求を決議し、相前後して各市町村議会で「海兵隊削減」要求が決議され、北谷町議会では「海兵隊撤退」要求にまで踏み込んだ決議をしている。
今年に入っては、海兵隊の装備変更に伴うMV-22オスプレイ配備について、沖縄県議会と沖縄県知事をはじめ沖縄の全自治体議会および市町村長が反対し、沖縄の民衆が猛抗議する中で普天間飛行場にMV-22オスプレイが配備強行された。
かかる海兵隊をめぐる沖縄での様々な経緯を無視して、海兵隊のMAGTFの機能を「政治的に許容できるところが沖縄にしかないので」(森本発言)辺野古移設を推進する、日本政府の認識は間違いである。直近の総選挙において当選した自民党公認の4氏も普天間飛行場の「県外移設」を公約している。沖縄県民の不退転の決意での県内移設への反対を無視し「政治的に最適」とする日本政府の行為を、私たち沖縄の民は「差別」と断じざる得ない。
普天間飛行場の移設地として沖縄が「政治的に最適」な地ではないことは火をみるより明らかだ。日本政府におかれては、現在進行中の普天間飛行場の辺野古移設に関わる一切の手続きを中断し、県内移設なき普天間飛行場返還に早急に取り組むことを要求する。
日米安全保障条約体制が米海兵隊のMAGTFの機能を必要とするならば、それらの機能と一括し普天間飛行場は「県外移設」すべきである。沖縄にそのような移設先はない。沖縄は1945年の沖縄戦以来、日本国の防衛のために犠牲と負担を強いられ続けている。ウチナーンチュは地上戦で地獄の惨禍を体験し、たくさんの同胞の尊い人命と財産を失い、普天間飛行場も戦中に米軍により土地を強奪されて造られた基地である。67年も経た、条件など付けず速やかに日本政府は普天間飛行場を閉鎖し普天間の土地を沖縄に返還すべきである。
以上、強く要望する。
新垣清涼(沖縄県議会議員)
桃原功(宜野湾市議会議員)
宮城康博(元名護市議会議員)
山内末子(沖縄県議会議員)
……………………………………………………
ヤマトでも、沖縄でも、自民党新内閣に、言うべきことはきっちり言わせていただく。
なんとか整骨院には行き、劇団ミーティング、忘年会。いろいろな人。いろいろな話。書ききれないので書かない。……どうでもいい話その1。テレビを付けたら最終回の最後の5分をやっていたNHKドラマ『恋するハエ女』の筧利夫演ずるヒロインの相手役が八重樫修治という役名なのだが、まったく同名の元劇団員が東北のH市にいる。もしも観ていたら本人はさぞ居心地が悪いだろう。……どうでもいい話2。さすがにスマートフォンが当たり前の時代になって、肩身が狭いというわけではないが、私は今でもPHS愛用者である。「誰とでも定額」は安い。「10分まで」の区切りがウルトラマンのような気分にさせられはするが。この待ち受け画面が買った時のままにしてあって黒い子犬の写真なのだが、多くの人がその犬を私の愛犬と思っていたらしい。
森本敏防衛相は職を退く会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に関し「考えたようにならず心残りだ」「(移設が進まなかった理由について)米軍新型輸送機オスプレイの普天間配備に労力を傾注したためだ」「(移設先に関し)ほかに許容できる地域がない。軍事的には沖縄でなくてもいいが、政治的には沖縄が最適だ」と述べた。えっ、「軍事的には沖縄でなくてもいい」? つまり、「地政学的に」沖縄じゃなくてよかったなら、就任中ははっきりと嘘をついていたわけではないか。まあ、彼は二年前の発言に戻ったと思っているのかも知れないが、政治家やら大臣やらになるということは、嘘つきになるということだと、よくわからせてくれた。「政治的な許容力、許容できる地域」が沖縄しかないということは、押しつけられる相手が沖縄だけだという、暴言だ。防衛省は「普天間飛行場の航空部隊を県外・国外に移せば即応性が損なわれ、沖縄での効率的な訓練実施が困難になる」と表明、今年4月の米軍再編見直し共同発表で盛り込んだ、ハワイや豪州への分散配置について「アジア太平洋地域全体の多様な事態に実効的・効率的に対処する態勢」とし、「沖縄は戦略的要衝にあり、地理的優位性に変化はない」と、森本防衛相と異なる見解を示した。もちろん両者とも沖縄の負担を大前提とし、沖縄側が許容することを前提として勝手なことを行っている。沖縄県基地対策課によれば、オスプレイの飛行実態は、確認された517件のうち318件つまり、じつに61・5%が運用ルールを定めた日米合同委員会合意に違反するとされている。日米合意違反は常態化している。これ以上の負担を押しつけることは許されない。米海兵隊MAGTF(地上/航空/支援)についていえば、それは沖縄でも無理だ。過去の歴史が証明しているし(『普天間』を観てくれ)、海兵隊がアメリカにとって「お荷物」であることは、もはや大前提なのだ。……年内に結論を出さなければならないことをあれこれしているうちに時間が経つ。再来年の仕事のことまで入ってきている。もちろん、芝居や映画などまったく観にゆく暇がないのかと言われるとそういうわけでもなく、ふだんの不義理を解消することも必要だし、いろいろと動けるところは動きたい。で、昨日に続いて夜には出かける。東京演劇アンサンブル『銀河鉄道の夜』、武蔵関〈ブレヒトの芝居小屋〉へ。今年の頭は『荷』演出で、ここに通った。あの頃も寒かった。その後、『ALL UNDER THE WORLD』、坂本長利さん・五大路子さんの『冬眠まんざい』リーディング演出、『宇宙みそ汁 / 無秩序な水の小さなコメディ』、犬島での野外劇『内海のクジラ』、『星の息子』、と続いたわけだ。よく働いたものだ。……佃君から2月名古屋・長久手での〈劇王〉イベントの宿泊交通の確認が来る。演劇人としては名古屋との縁はある方だと思うが、このイベントには十年めにして初参加なのだ。参加といっても、審査員としてである。写真は、以前に載せ忘れた、名古屋の瀬辺ちゃんの店「プリシラ」で初めて飲んだ、余市にしか売っていないというカフェ・グレンのシングルモルト。
帰京してそのまますべきことを消化、体調もすっきりしないのにやること多く、結局蒲団でちゃんと寝たのは帰宅後二十四時間以上経ってからだった。それでもさすがに蒲団の威力を感じ短時間だがすっきり眠り目覚めると、もうクリスマスイブ。先日東君と紀伊國屋演劇賞お祝いの電話で話し、久しぶりに桟敷童子の芝居を観ることに。すみだパークスタジオ〈倉〉で「泳ぐ機関車」。少年が今はなき自分の生まれ故郷をモノローグで振り返って牽引する回想劇なので、確かに多くの人が指摘するように鄭義信の影響を強く感じさせるが、義信作品が「僕はこの町が嫌いでした」と言うのに対し、東憲司は「僕は大好きです」と言わせる。その違いが劇全体の空気の違いとなっている。照明(ライトカーテン)と花道の多用で更に速度を増した舞台転換の素早さ、以前に比べると省略の技法を身につけた展開、俳優たちが意欲と自信に満ちていることじたいは良いのだが、登場人物たちが登場時の紹介の仕方でその後どうなるかだいたい見当がついてしまう作劇は、好みが分かれるだろう。ひまわりや機関車についての伏線の張り方というより説得力がもう一つほしいと思っていたら、この劇は他の東作品の前段に当たるシリーズの前日譚ということらしく、それで説明が甘くなっているのかもしれない。ラストにひまわりを見せるのは、このやり方なら勇気を持ってもっと鋭くほんの一瞬でいいし、そこにいるのは母親一人のほうがベターと思う。このケースだと、少年は母親の顔を知らないという印象を確実に与えておいて、幻のひまわりの中に初めてその像が見えたというふうにもっていかないと、もったいない。劇中の情報を、観客も含めたそこに立ち会う者のうち、誰がどこまでわかっているかということを操作する視点は、じつは物語性の強い戯曲の場合、必須である。最後の独白で、それまで斜視で、独白も下手端の位置で横向きだった少年が、初めて中央で正面を向いて目線が真っ直ぐになる瞬間は、その目玉の角度の変化だけで、どのようなスペクタクル的な趣向よりも劇的高揚を誘う。もう二十何年かのつきあいになるが、あらためて東独自の繊細さとその成熟を感じた。既に完売の千秋楽を残すのみということなので、感想を記した。……そのまま帰宅しても家では私の関係ないクリスマスパーティーをしているため、総武線から東中野経由、豊島園に行きIMAXで『007 スカイフォール』を観る。十年前までドンマー・ウエアハウスの芸術監督であり、ロンドン演劇界のホープであったサム・メンデスが『007』をどう撮るかは興味深いところであった。もう一日一回だけの上映になってしまっていたので、飛び込むことにした。IMAXは大画面だが後方の席だと前席に背の高い人が座ると確実にその頭が邪魔になってしまう。まあそれも臨場感ということだろう。誰かが指摘していたように『ダークナイト』シリーズを意識したのか、妙に暗く重い部分もあり、これも好みが分かれるだろう。大衆的なシリーズ物の作品がシリアスな面を出して勝負というか延命する趨勢が続くのかもしれない。それが支持されるのだからそれは世の中じたいが「妙に暗く重い」ことの反映か。ただしこの作は、『ダークナイト』シリーズを踏襲して、ジェームズ・ボンドのルーツを辿り始め、タイトルにある「スカイフォール」の意味もそこに繋がるのはなるほどと思わせるものの、シリーズ物の禁じ手を使ってしまったという印象も残る。連続するアクションシーンは相当頑張っているのだが、なぜか映画的快感から遠い。何かが違う。まったくどきどきしない。見せるべきものを見せるように見せていない、としか言いようがない。ストーリー的には、演劇人が監督だからということもあるかもしれないが、宿命論的になっているところがある意味シェイクスピア的であり、ダニエル・クレイグの007とハビエル・バルデムのどちらが前シテでどちらが後シテかはともかく、その両義性を出しているところが複式夢幻能的な気もした。結局ジュディ・デンチ演ずるMに対するマザー・コンプレックスが露出してきて、これは母子ものの能ではないか、と冗談のように思った。後段、アルバート・フィニーの登場には笑った。七十年代にエルキュール・ポアロを演じていたこの人は、今いったい何歳なのだ。サスペンスを放棄したのか、せっかく脱出したフィニーとデンチが懐中電灯を使って歩いて逃げてバルデムに発見されるところは、コケそうになった。ジュディ・デンチを失った007は続篇から、マクベス夫人を失ったマクベスのように狂気に突き進んでいくのであれば、それはそれで面白いのかもしれないが。「ダークナイト」監督のクリストファー・ノーランの前作「インセプション」そっくりの音楽が流れたのは、音楽が同じジェームズ・ニュートンだからだろうが、ノーラン監督もロンドン出身であり「007」シリーズのファンで「いつかボンド映画を監督したい」と発言しているそうだ。イギリスのスパイ「007」をイギリス人が自分のものと思うのは、自然なことなのだろう。……最近、人の作ったものをあまり観ていないので、なんだか新鮮に感じた一日であった。……我が家での私の関係ないクリスマスパーティーでは沖縄そばが振る舞われているはずだが、私は宜野湾で「島風そば」を食べたので、とうぶん食べなくていいのだ。写真は、店の前で『普天間』演出の藤井ごう、照明の和田東史子両氏と。撮影してくれたのは音響の近藤達史氏。
翻訳家であり、日韓を含んだ演劇のコーディネートを続けてきてくれた木村典子さんによると、ソウルの演劇人たちの忘年会ともいえる「演劇人の夕べ」が毎年アルコ芸術劇場で行われる。その場で〈大韓民国演劇賞〉も発表され、今年一年の総決算ということになる。大韓民国演劇賞・男優賞はユン・サンファンとチョン・スンギルが受賞という。ちょっと待てよ。サンファンは私が演出したソウルでの韓国キャスト版「屋根裏」と日本での国際バージョン「裏屋根裏」で組み、スンギルはキム・カンボ演出の韓国版「だるまさんがころんだ」で「タカ」役をやり、今年東京演劇アンサンブルで私が演出した「荷」に主演してくれた。なんと木村さん曰く「坂手ファミリー」の大躍進である。演出賞は、かつて「ブラインドタッチ」「だるまさんがころんだ」の韓国版を演出してくれた、我が韓国の親友キム・カンボ。というか、つまりこれは「キム・カンボ・ファミリー」の大躍進なのだ。受賞対象の一本に私が釜山のワークショップに相棒として連れていってカンボに引き合わせた畑澤聖悟さん作の「親の顔がみたい」が含まれているのも嬉しい。そして作品大賞はカンボの主宰する劇団青羽「そうじゃないのに」。釜山に里帰りか都落ちかわからない気分で悶々としていた数年前から、あっさり甦った、キム・カンボ。さすがだ。写真は左から、スンギル、カンボ、サンファン。背景は私も稽古に通った懐かしいアルコ劇場のロビー。最近のもやもやした気分を払拭してくれる嬉しいニュース。サンファン、スンギル、カンボ、そして典子、おめでとう! ありがとう! ……さて、来年2月20(水)~/24(日)には、世田谷・シアタートラムで韓国現代戯曲ドラマリーディングが行われる。最終日には、キム・カンボらとシンポジウムを行うことになる予定。こんなご時世だからこそ、日韓交流に新しいステップを刻みたい。
米軍普天間基地に配備された新型輸送機MV22オスプレイを、防衛省は本気で自衛隊にも導入するそうだ。「南西諸島など離島の防衛強化」をにらんだものだそうだが、さあ、いったい何に使う気だ。防衛省は「オスプレイの具体的な活用方法などに関する調査研究費500万円を13年度予算案」に計上するという。そんな金なんか使って何を調べる気だ。使い道さえわかっていないのに導入ありきで後付けに使途を探そうとしているのだろう。自民党は「対中国の抑止力という観点からも、導入すべきでは」と言っているそうだが、オスプレイが何をどのくらいできるか、わかっていないのだ。オスプレイはただの輸送機であり、他の部隊との連携なくして意味はない。どこに配置するかについても、沖縄である必然性を説明するのは至難のはずだ。こうしたことがとうに指摘されているのにマスコミも議会も無視しているのがこの国が根本的に腐っている所以だ。……安倍晋三はあらためて普天間移設問題について「基本的には辺野古に移設していく方向で地元の理解を得るために努力していきたい」と言う。ついでのように原発新設を認めない民主党の方針も見直すそうだ。仲井真沖縄県知事は「(県外移設を主張する)自民党県連とも違うのに、県連と調整もしないでどうやって地元の理解を得るのか」「私は、辺野古は事実上不可能だから県外移設を求めるという主張は変えない」とした。沖縄の自民党議員は党を離れてでも辺野古案を拒むために闘う気はあるのか? 沖縄防衛局は突如、補正した環境影響評価書を県に提出した。阻止する勢力を警戒してか、衆院選2日後、電話で突然連絡し、5分後に約20人の防衛局職員が県の担当課に押し寄せて評価書を置いていったという。辺野古移設ごり押しに繋がる卑劣な行為を許してはならない。この時期にこの暴挙は、民主党政権は何か置き土産のようなつもりなのか。愚かだ。補正評価書は、地元の反発を呼んだ「(移設に際し)環境保全上、特段の支障はない」の文言を削除し、「最大限の環境保全措置を講じる」との表記に改めた。この大きな「後退」を、知事も県民も許すはずがない。環境保全は不可能と認めるなら、潔く中止すべきだ。……沖国大の校舎から普天間基地に平然と並ぶオスプレイを見下ろしてきた。もう遠慮も何もない様子だ。辺野古や高江では学校の真上も平気で低空で飛んでいるという。腹立たしい。……沖縄から伊丹に戻り『星の息子』千秋楽にギリギリ間に合い立ち会う。伊丹に行くのに伊丹空港を使えずかなり移動に消耗する。関空から兵庫は遠い。今回の伊丹公演は圧倒的好評にもかかわらず年の瀬のせわしさゆえか当日キャンセルなども多く前日まで集客がたいへんだったとはいえ、さすがにラストステージは満席である。……小堀純さんと、大阪、演劇界、これからについての話。……劇場人としても大活躍している毎日放送の日高英雄さんと話していると、琉球朝日放送の高江を描いたドキュメンタリー『標的の村』のディレクター三上智恵さんは沖縄に来る前に毎日放送のアナウンサーであり、それじたい知ってはいたが、日高さんとも知り合いとわかり、世の中の狭さというか繋がりの濃さに驚く。日高さんと一緒になんだか嬉しくなる。……東京に戻るが息子は野球部の合宿で広島。かれこれ二十日近く顔を合わさないことになる。大学の野球部なのに広島では地元の高校生とも合同で練習をしているらしい。高校生といえば、『星の息子』岡山公演には母校・芳泉高校から演劇部の子たちが顧問の高見先生と一緒に来てくれた。私は演劇部ではなかったが、後輩たちである(写真)。男子学生は三年生、卒業後は関東に来るらしい。「選挙が終わり、今は憲法と教育がどうなるか恐くてたまりません」と、高見先生からのメッセージ。……沖縄・宜野湾では、「うまんちゅ大行動!御万人大行動」というパレードデモが敢行された。「御万人」は「五万人」を動員目標とするという意味ではない。「御万人」は沖縄語で「みんな」を意味するという。ちょっと感動する。
青年劇場が巡演している『普天間』を、いよいよ舞台になっている沖縄・普天間で上演するとなって、やはりその場に立ち会うべきではないかといろいろな人に言われ、自分でもそう思い、急遽二日だけ沖縄へ行くことになる。伊丹から神戸空港経由。細かいことはまたどこか別に書くが、行ってよかったと思う。普天間、つまり宜野湾市民会館での公演は、どう受け取られたのかは、今ひとつわからないが、終演時の拍手の鋭さに驚かされる。世代や考え方によっても受け取り方は違うはずだが、沖国大や爆音訴訟関係の皆さんらと一緒に上演のため尽力して下さった宜野湾市議の桃原功さんがこの劇を、「どの世代にもストライクに入ってきます!」とのこと。ありがたい。以前は心配していた伊波洋一元市長も喜んでくれた。……これから撮影される映画「ザ・思いやり予算」のリラン・バクレー監督を紹介される。そのカメラマンの高尾さんは高江の支援者でもある。劇場を出て、彼らとこの劇の登場人物のモデルにさせていただいた人達、いろいろな情報を提供してくれた人達と、一献。……宿はコザに移って、デイゴホテル。久しぶりに来た。コザのゲート前の通りは、ふだん米兵で賑わうはずの店が米兵の外出禁止令のため閑散としている。そのうちの一軒、マスターがインド系オーストラリア人という店で、情報収集。米兵の基地内での飲酒禁止措置は前日にこっそり解除されたそうだ。というか、どうせ基地内で飲まないはずがないと思っているよ、こちらは。……宜野湾では、あと、沖縄そば「島風」の手打ち麺に感動。……翌日は那覇公演。5月の憲法集会で私が講演したのと同じ会場。表に行列が続く(写真)。千七百人収容の会場を埋めるのは無理だが、メインの一階席は埋まった。こちらの実行委員会は弁護士の皆さんが中心。我が姻戚の皆さまも大挙来て下さる。高江から伊佐さんも。……終えて、沖縄五都市公演まるごとの打ち上げ。ものすごい人数。これも書き記していくと際限がない。いろいろな方々が応援し支えて下さったのだ。暖かい言葉をいただく。伊佐さんのみならず、『標的の村』QAB琉球朝日放送の三上智恵ディレクターも自局の忘年会二次会から移って来てくれたので、高江との繋がりも感じながらの夜更けであった。伊佐さんが「『高江』という題名の劇も作ってよ」と言いかけ、「あ、『星の息子』がそうか」。とにかく、またここからスタートだ。
『星の息子』AI・HALL公演をもって、いよいよこの公演全体の千秋楽を迎えることになった。関西地域の未見の皆さま、この機会をお見逃しなく。
岡山から伊丹へバス移動。『星の息子』AI・HALL仕込み。これまでの劇場と捌きが変わるぶんをあれこれ考えながらの設営。終えてスタッフの皆さんらと宿近くの年に一度行きつけの居酒屋で一献。……沖縄・高江ではオスプレイパッド建設強行に対する抗議の座り込みが60余名の市民によって行われ、北部訓練場の米海兵隊ジャングル訓練センター正面ゲートを2時間余りにわたって封鎖。名護警察署・内原課長が警告に来て最初に発した言葉が「どけ!バカ野郎」。市民に対する正当な態度とはいえない。……高江の現実を反映する『星の息子』、基地に抗した人々のたたかいを描いているだけに、襟を正す思い。……自民党は「原発ゼロ目標」撤廃を打ち出す。許し難い。今回の選挙は戦後最低の投票率だった。未来の人々に顔向けできるように、できるだけのことをしなければ。……韓国は朴槿恵候補が「韓国初の女性大統領」に。これから、どうなる。来年2月には東京で日韓演劇交流センターの韓国戯曲リーディング。韓国演劇人を招くが、韓国演劇界を取り巻くいろいろな空気も、変わってくるのだろうか。……紀伊國屋演劇賞受賞者が発表となる。東憲司さん、神野三鈴さんら旧知の人々。おめでとう。
『星の息子』岡山公演終了。午前中は劇場に行っても事務仕事。午後は、場当たりと本番の間も雑務が続き、バラシ中も一角に籠もって、なんとか提出期限本日締切の書類を書きあげる。いろいろな方が観に来てくださった。ありがたいことである。事前宣伝と関係者連絡が遅れて、客足がもう一つ伸びなかったことが惜しまれる。知り合いの多くは某首長の忘年会だ新議員の祝賀会だと重なりまくったせいもあるようだが。高校の同級生で渡辺美佐子さんの熱烈なファンであるMくんが広島の仕事で今回観に来られなかったのが、まことに残念。それでも、いろいろな人が来てくれた。私は高校では演劇部ではなかったが、演劇部の顧問・現役生徒たちも。岡山公演は今回のツアーで一番闇の深さを感じられるホール上演で、やぐらの高さも際だつ。東京公演とツアーで成長を感じさせる若手もいる。それぞれの課題が見えてきているともいえる。きちんとすべきことをしていれば、本番は俳優を成長させる。『星の息子』は、20~22日の伊丹公演を残すのみ。関西の皆さま、どうぞお見逃しなく。千秋楽22日は昼の回のみです。……沖縄では『普天間』上演中の青年劇場さんご一行が、本日、辺野古、高江を訪問したらしい。演劇の世界からのみならず沖縄にいろいろな輪が繋がってほしい。『星の息子』を観て深く関心を寄せてくれた岡山の同級生H子さんたちにも、とにかく沖縄に行ってみることを勧めた。
写真はホールのロビーから見える旭川の日没。
『星の息子』伊丹公演の詳細は以下の通り。
http://rinkogun.com/Next_Itami.html
写真はホールのロビーから見える旭川の日没。
『星の息子』伊丹公演の詳細は以下の通り。
http://rinkogun.com/Next_Itami.html
原発被災地である福島で自民党が支持されたのには驚愕した、という意見が多い。私もがっかりした。しかしこれは、日本が営々と続けてきた、地域であり国の、「保守」の姿である。アメリカに依存しつつ、カネとコネを頼りに築いてきた、主体性なき国家を支える「地域」の姿である。……沖縄選挙区・比例区の当選者七人のうち四人が自民党系であることにも茫然とする。ただ、この七人全員が米軍普天間飛行場の県外・国外を求める考えを示し、防衛省が年明けにも提出する名護市辺野古移設に向けた埋め立て申請に、仲井真弘多知事は応じるべきではないとしている。「辺野古移設」を謳い憲法を改正し自衛隊を国防軍と位置づける自民党の政権公約に、自民党系議員が反対しているのだ。なんだかおかしくないか。この自民党系議員たちは自身の立場を「県外移設」とした上で、埋め立て申請を承認するか拒否するかは知事自身の判断であり、自分自身は責任を負わなくていいと考えているわけだ。西銘恒三郎氏(自民・元)は「私たちは知事と同じように『県外が早い』という立場だ」と、「早い」という緩い言い方でごまかし、「埋め立て申請が実際に出た時に判断する」と、ほぼ無抵抗に受け入れるであろう可能性を示した。いま本気で反対しなくていつ反対するのだ。……得票率と議席率が同期しない小選挙区制は、わずかな風向きの変化で、オセロゲームのように、ドミノ倒しのように、一政党が地滑り的勝利を収める場合がある。早くこの「一票の格差」もありすぎる現行の選挙制度に対して、より明瞭な強制力のある「違憲」判決を下し、選挙のやり直しをしてほしいものだ。……名古屋から五時間半、満席のバスに揺られて岡山へ。劇場での仕事はさくさくと進み、夜、同級生三村泰彦さんに連れられ、たまたまこの日にあった中学校同窓会の評議委員会に飛び入り参加させていただく。芝居の宣伝もさせていただく。新岡山県知事も、日曜に衆議院に当選したばかりの新議員も、後輩なのである。初めて彼らと話す。岡山という比較的恵まれた地で育った人間たちが、今後、積極的に日本という国と地域の関係を結び直す役割を果たしてゆければ、と思う(写真は同会・三村氏撮影)。本日の『星の息子』岡山公演は午後7時より、市民文化ホール。
憲法違反の制度下での選挙。自民党294議席。政党支持率は前回とほぼ変わっていないにもかかわらず、すべての常任委員長ポストを独占したうえで委員の過半数を確保できる絶対安定多数(269議席)を超えた。小選挙区制マジック。「政権奪還」などということではない、たんなる消去法による浮上。ゾンビ安倍が総理大臣。気持ちが悪い。公明党が31議席。併せて参院で否決された法案の再可決が可能な3分の2にあたる320議席を越えた。維新も相乗りさせて憲法を変えようということになるのか。脱原発を掲げた日本未来の党は公示前勢力の62議席から1ケタに。……ただ、絶望したり自棄になったりしている方々に言いたいのは、では、いったいどこが勝てば良かったというのですか。「反原発」なら「未来の党」ですか。しかしこの党の候補者全員が当選したとしてもせいぜい百議席。元々この選挙は勝ち目がないはずではなかったのですか。このままでは金曜デモは自己満足と思われてしまう。自分たちの意志を反映できる政党を持っていないことこそが、国民の怠慢。私が子どもの頃から人々に対して問いかけてきたことだが、その「日本がほんとうに戦争をすることになってしまったらどうする?」という問いに対する答のほとんどが、「その時には反対する」。皆さん「その時」を逃がしたわけだ。民主党はひどかったし、民主党支援をしてきた人達の責任は本当に重い。野田は民主党代表を辞任するそうだが、というか、そもそもなぜ解散したのかが、いまだにわからない。社民はもう終わりだろう。……東京都知事は猪瀬。沖縄の自民党躍進も意味がわからない。マイケル・グリーン元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長は靖国神社参拝、従軍慰安婦問題に関する河野談話の見直し、沖縄県・尖閣諸島への公務員常駐の三つを挙げ、これらに踏み切ることは「日本の自滅行為だ」と警告したらしい。アメリカに楯突いた振りしても従属を深めるだけの自民党は、ヘンに子どもッぽい振る舞いに及ぶ可能性もある。うんざりだ。