昔俳優だった小林三四郎さんが映画の配給をしている関係で、『涙するまで、生きる』を観せてもらった。6月だったか、上映後のアフタートークのゲストに呼ばれたのだ。
『涙するまで、生きる』はアルベール・カミュの短編集『転落・追放と王国』の一編の映画化。
フランス人入植者の父を持ちアルジェリアで生まれ育ったカミュは、いわば「ふたつの祖国」に引き裂かれ、その共存を望んでいたという。「貧しい作家として成功を収めていたカミュだったが、アルジェリアの独立を巡り激化する戦いに胸を痛めていた。あるとき市民に停戦を呼びかけるが、裏切り者と罵られ、不毛に終わる。以来、口を閉ざしてしまったカミュ。その直後に発表された本作には、そんなカミュの知られざる真意が込められている」のだそうだ。
カミュの葛藤が投影されているらしい主人公ダリュを演じるのは、最近は『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『イースタン・プロミス』といったクローネンバーグの映画で印象的なヴィゴ・モーテンセン。
クローネンバーグの最新作『マップ・トゥ・ザ・スターズ』は、世評はイマイチのようだが、やっぱり面白かった。クローネンバーグとデ・パルマの映画は、私にとっては期待はずれが少ないと思う。
まあ、つまり、ヴィゴ・モーテンセンは「クローネンバーグ顔」ではある。
見終わってしばらくになるが、『涙するまで、生きる』は、なんとなく印象がずっと残る映画だ。
題名は今いちだが。
映画自体はカミュというよりカフカ的な印象もある。
「掟の前に」のカフカである。
いや、ほんとにそうなのだ。
掟からは逃げられない、という物語である。
「俺は教育で社会を変えようとしている」と言ったりもするが、アルジェリアでアルジェリアの子供たちに教育を施す元軍人の教師である主人公は、世捨て人のようでもある。
戦争体験が彼をそうさせたらしく、ゲリラ闘争に巻き込まれて、もともとの戦友と緊張感のある対峙をするときもある。
理想主義者とは迷惑なものだ、というフレーズも湧いてくる。そんなストーリーのようでもある。
カフカ的であるから印象的なのかと思うのは、今稽古に入っている新作の原作『バートルビー』が、「カフカの先駆的作品」と呼ばれているからかも知れない。カフカが生まれる前に書かれているのだ。
まあ、つまり、『涙するまで、生きる』の主人公もまた、バートルビー的なところがあるのだ。
新人監督の作品だが風景も美しく、展開は抑制的だが見応えはある。
まだ全国では上映が続いている。
ストイックな気持ちになりたい向きには、お薦めする。
『涙するまで、生きる』HP
http://www.farfrommen.com/
『バートルビーズ』は、こちら。
http://rinkogun.com/
『涙するまで、生きる』はアルベール・カミュの短編集『転落・追放と王国』の一編の映画化。
フランス人入植者の父を持ちアルジェリアで生まれ育ったカミュは、いわば「ふたつの祖国」に引き裂かれ、その共存を望んでいたという。「貧しい作家として成功を収めていたカミュだったが、アルジェリアの独立を巡り激化する戦いに胸を痛めていた。あるとき市民に停戦を呼びかけるが、裏切り者と罵られ、不毛に終わる。以来、口を閉ざしてしまったカミュ。その直後に発表された本作には、そんなカミュの知られざる真意が込められている」のだそうだ。
カミュの葛藤が投影されているらしい主人公ダリュを演じるのは、最近は『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『イースタン・プロミス』といったクローネンバーグの映画で印象的なヴィゴ・モーテンセン。
クローネンバーグの最新作『マップ・トゥ・ザ・スターズ』は、世評はイマイチのようだが、やっぱり面白かった。クローネンバーグとデ・パルマの映画は、私にとっては期待はずれが少ないと思う。
まあ、つまり、ヴィゴ・モーテンセンは「クローネンバーグ顔」ではある。
見終わってしばらくになるが、『涙するまで、生きる』は、なんとなく印象がずっと残る映画だ。
題名は今いちだが。
映画自体はカミュというよりカフカ的な印象もある。
「掟の前に」のカフカである。
いや、ほんとにそうなのだ。
掟からは逃げられない、という物語である。
「俺は教育で社会を変えようとしている」と言ったりもするが、アルジェリアでアルジェリアの子供たちに教育を施す元軍人の教師である主人公は、世捨て人のようでもある。
戦争体験が彼をそうさせたらしく、ゲリラ闘争に巻き込まれて、もともとの戦友と緊張感のある対峙をするときもある。
理想主義者とは迷惑なものだ、というフレーズも湧いてくる。そんなストーリーのようでもある。
カフカ的であるから印象的なのかと思うのは、今稽古に入っている新作の原作『バートルビー』が、「カフカの先駆的作品」と呼ばれているからかも知れない。カフカが生まれる前に書かれているのだ。
まあ、つまり、『涙するまで、生きる』の主人公もまた、バートルビー的なところがあるのだ。
新人監督の作品だが風景も美しく、展開は抑制的だが見応えはある。
まだ全国では上映が続いている。
ストイックな気持ちになりたい向きには、お薦めする。
『涙するまで、生きる』HP
http://www.farfrommen.com/
『バートルビーズ』は、こちら。
http://rinkogun.com/