Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

トルストイ自身と文体の魅力

2020-01-12 | Weblog

こんにゃく座オペラ『イワンのばか』。

トルストイの生まれ故郷、ヤースナヤ・パリャーナ。

トルストイはここで農民学校を始め、「アーズブカ」という教材を作った。

 
向学心に燃える十八歳の青年が都会に出て行こうとするのをトルストイが止めたという逸話が残っている。
 
若者が都会の大学で勉強し、社交術も身に付けたいと思うのも、当然であるが、トルストイは彼に「なぜあなたは地上の楽園を捨てるのですか」と諭した。

本を読むのが好きだという青年に、農業をやめないように言い、本を読むなら農業こそ適していると忠告したという。

自分で暇を見つけ、思いきり好きなように本を読むには、農業ぐらいぴったりな仕事はないと言ったのだ。

大学で教える教養などというものは、ほとんど頭をなまくらにし、人を堕落させうぬぼれ者にする罠だというのだ。

トルストイは自分で体験したからそう言えるわけだが、若者はまずそれを体験してから自分で判断したいと考えるだろう。

それはトルストイだってわからないわけではないはずだが。

 

そうしたちょっとしたとんちんかんさが、実はトルストイ自身とその文体の魅力であるように思っている。

この青年の場面は初期に書いたのだが、最終的に台本には入れていない。

 

こんにゃく座オペラ『イワンのばか』、稽古はちゃくちゃくと新しい章に進んでいます。

 

写真はヤースナヤ・パリャーナ。昨年六月に訪問した。

  

http://www.konnyakuza.com/syusai.html

 

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如月小春さん 没後二十年という

2020-01-12 | Weblog

「2020如月小春BOOK」が届く。

如月小春さん、没後二十年とは思わなかった。

四十四歳で亡くなったのだ。

それはそうだ。だが、そんなに時間が経ったのか、と暗澹とする。

 

この本は、私も寄稿している。

内容は、同書を読んでいただきたい。

 

私以外の人(妹の伊藤なつみさん)も、如月さんのカウラ留学のことを記しておられて、ああ、と思った。

 

渡辺えりさんの寄稿にあるように、如月さんが亡くなられる数日前、倒れられたその日、えりさんと、燐光群『南洋くじら部隊』を一緒に観て、打ち合わせする約束をされていたのだった。えりさんはスズナリのロビーで小春さんを待っていたのだった。

訃報には、私も衝撃を受けた。

 

今は、過去の続きである。そして、今である。過去も含んだ、今である。

 

そして、この本でインタビューを受けている山田うんさんは現在、如月さんの「NIPPON・CHA!CHA!CHA!」を演出・出演されていて(上演中)、その後『イワンのばか』の振付を担当されることになっている。

 

人の連鎖は、今に続いている。人と人によって繋がった「私たち」は、今もここにいる。

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