石破総理がアメリカを訪問、日本時間8日未明、トランプ大統領と初の日米首脳会談を持った。
最初の少人数にのみ公開した対談では、トランプ大統領は石破総理の存在を忘れ、どんな場でも話しているように話しているだけで、自分の独壇場と考えているように見えた。石破総理の方をほとんど一瞥もせず、石破総理がそこにいることなど関係ないと言わんばかりだ。賓客として扱っているようには見えない。防衛についてはトランプ大統領が「ガザ地区・中東地区を安定させる」と言った。とにかく石破総理は置いてけぼりにされた感じだ。
そんな必要ないだろうに、二人とも安倍総理のことをヨイショしているし、石破総理が「日米関係の新たな黄金時代を築きたい」、トランプ大統領が「素晴らしい前例となるだろう」というが、言葉が軽く感じられる。
「ワーキングランチ」後の正式な会見では、一種の出来レースの感じの中で、相互に予定調和な感じの発言だった。
日米両国の関係強化は大前提のようだが、「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領が自国優先を覆すはずもなく、本心を掴みかねる感じも多かったが、おそらくとっくに両者間で話はついていたのであろう。
経済分野では、まず大統領が、日本に対する一千億ドルの貿易赤字に言及。
結局わかったことは、日本からの対米投資額を一兆ドルまで引き上げるという約束をしたらしい、ということだ。
アメリカに対する日本の巨額投資が米国内での雇用創出に貢献していると言っても、アメリカ側はそれを恩義に感じるはずもない。
両国の国益に沿う経済協力を目指すといっても、まったく鮮明さがない。
日本がアラスカから採掘されるLNG液化天然ガスを輸入する約束をしたといっても、これから、輸送のパイプラインのために相応の援助を要求されるだろう。
貿易の不均衡を是正するというが関税についてはなかなか言及せず、ついに「日米 相互の関税となる、やがて後日に発表する」という言い方で終わった。米側は、首相訪問の場では言いづらい政策を持っているのであろう。予断を許さない。
防衛問題については、石破首相が日米同盟に言及し、日米安保条約第5条が尖閣諸島にも適用することについての確認はしたという。「アメリカに守ってもらえる」という確認をしに行ったというふうにしか見えない構図が、情けない。情けないというのは、この国が、戦争の危機を防ぐだけの、独自の外交力を持っていないことである。
トランプは中国よりも強い軍隊を持ちたいと言った。石破総理は「防衛費増額はアメリカに言われてやっていることではない」と言うが、はたして本当にそうなのか。これまでの経緯を考えれば、決してそんなふうには見えていない。
「USスチール」について石破総理は「買収ではない投資なのだ」と言ったが、どういうことだ?と誰もが思ったはずだ。トランプ大統領は「買収ではなく投資だ」と言う。テレビを観ているだけでは、なんだかよくわからない。結局「買収」は拒否されたということなのだろうか。後の報道ではトランプ大統領が正式に「(日本側が)USスチールを所有するのではなく、多額の投資をすることで合意した」と報じている。そういうことなのだろう。
これで日米首脳共同声明は無事に終わった、ということなのか?
まさか。
石破総理は「私からは同盟国として責任をアメリカと共有し役割を果たす用意があると伝えた。また日本の防衛力の抜本的強化に向けた取り組みへの決意を改めて表明し、日本の防衛に対するアメリカの揺るぎない関与を確認した」「日米同盟の抑止力と対処力をともに高める」と言ったようだ。
「同盟国として責任を果たす」といえば、アメリカの戦争に日本も参戦する、というふうにしか、聞こえないのだが。
トランプ大統領は「アメリカは日本の安全保障に全面的に関与する。われわれはアメリカの抑止力を拡大させていく」と述べた。
危なかしくって、しようがない。
日本の総理大臣は、トランプという狂気の大統領と親密であることをアピールして満足なのか。
歴史の目から見れば、本当に情けない、アメリカへの迎合の会談でしかないと思う。
何より憲法を守って「アメリカの戦争には関わらない」「防衛の名を借りた参戦はしない」ということを、あらためて国内で明確にすべきだ。少数与党の今、野党が踏ん張って「非戦」の原則について共有する確認を取るべきだ。
狂気のトランプ大統領が露悪的なことを言わないというのは、たんに予定を消化しているだけの場だからだろう。
この会談が、日本がさらなる暗黒の時代に突き進むきっかけにならないようにしなくてはならない。
写真は、沖縄やんばる、高江の、米軍ジャングル基地、北部演習場。