愛らしい薔薇の一鉢を買った。「Michel Bras」という名前の薔薇である。フランスの名コックMichel Brasの名を貰っている由縁は知らないけれど、濃いのピンク色の蕾がほころび始めると少しずつ色が変わって、しまいにやわらかいピンク色に落ち着く。花びらの少ない可憐な花だ。
そしてベリーに関する本を買った。写真は少なく昔の植物画が挿入されているのが中々美しい。
薔薇と本は友人の誕生日パーティーの贈り物。
日曜日は晴れ間と雨模様が入れ替わり立ち代り、めまぐるしい天気だった。
「ぼくは新しい葡萄を買ったんだけれどね、それを鳥が食べちゃうんだ。網をかけてCD盤を沢山吊るして置いたんだけれど、網なんか物ともせずに食べちゃうんだなこれが。CD盤なんか吊るしても鳥払いなんかにはならんね。その上に止まって澄ましていたりしてさ。それでもまあ、このところ毎日葡萄を食べているけれどね。」といつの間にか庭木談義に花が咲いていた。見回した顔ぶれはみんな庭を持っている。
兎に角、葡萄管理者もたらふく鳥もたらふく喰うほどに豊作だったようである。
「あら、うちの主人なんて庭木の剪定が大層下手と来ていますからね、彼が切った樹には翌年実がつかないのよ。トルコの実家から持ってきて植えた、飛びきり美味しい葡萄があるんだけれど、今年なんか2房ほどしか実らなかったの。だからもう2度と触らせない事に決めたのよ。」
と呆れ顔の奥方の横で
「いやあ、私がね、切ると何もかも実らなくなっちゃうんですよ。ははは。」と旦那。
「そういえば、葡萄もだけれどさくらんぼなんかもね、一日タイミングを逃したら全滅だね。さくらんぼの数ほど鳥が来てあっという間だね。今年は殆どさくらんぼは収獲なしだったよ。」とCD作戦の敗者は続ける。
するとテーブルの向かいに座っていた知人は
「そうそう、俺の知り合いの爺さんなんか、時期になったらさくらんぼの樹の前に座って空気銃を撃ちまくるんだけれどね。ずっと撃ってるわけにも行かんからな、結局鳥に喰い散らかされるね。」といいながら、首を振っている。
彼自身猟をするし、銃をかかえてさくらんぼの番をしそうな雰囲気を持っているのでちょっと恐い。
鳥に横取りされる悔しさもわからないではないけれど、空気銃まで出てきては物騒である。さくらんぼが実る頃には近づきたくない。
我が家にも葡萄の木があって、それはかなり古い株で、なかなか格好が良い。
最も鉢植えなのでそれほどぐんぐんとは伸びないようだ。葡萄の大型盆栽という趣だ。それだからと言うばかりでなくもともと小さな実がなる種類らしく、小指の先ほどの黒い実の小さな房が下がる。食べてみるとちゃんと甘くて美味しいが、鑑賞用なので、手ぐすね引いて実が熟すのを待ちながら、鳥と一戦を交える覚悟で待機する必要は無い。