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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

韓国・京畿道の「児童・生徒人権条例」

2010-11-29 17:11:22 | ニュース

もうひとつのブログ(住友剛の日記帳)にも書きましたが、先週土曜日(11月27日)に千里金蘭大学梅田キャンパスで行われた「子ども支援学研究会」に私、行ってきました。

この日の研究会では、金炯旭さん(前・韓国子ども権利モニタリングセンター研究員)から、韓国の京畿道(キョンギド)における「児童・生徒人権条例」制定に関する報告がありました。

詳しいことは今後、子どもの権利条約関連の各種研究団体などから情報発信が行われることかと思うので、ここでは金さんの報告やこの条例の概略などについて紹介しておきます。

まず、この条例制定に向けての動きが本格的にはじまったのは、去年の5月のこと。京畿道の教育監の選挙の結果、「児童・生徒人権条例」制定を公約にした方が当選されたことから、一気に条例制定に向けての準備がはじまりました。で、実際に制定されたのは今年の9月17日、公布が10月5日とのことでした。

それから、この条例の内容なのですが、まず、条例は「第1章 総則」「第2章 児童・生徒の人権」「第3章 児童・生徒の人権の振興」「第4章 児童・生徒人権侵害に対する救済」「第5章 補則」で構成されています。

ちなみにこの第4章、「児童・生徒人権擁護官」を設置するための数々の規定が設けられているのですが、金さんにお聞きしたところでは、私の前の職場・兵庫県川西市の子どもの人権オンブズパーソン制度が参考にされているとのこと。また、条例づくりにあたっては、川崎市の子どもの権利条例なども参考にされているそうです。

それから、総則(第2条)の部分では、この条例でいう「児童・生徒の人権」について、韓国憲法や法律によって保障されている権利、子どもの権利条約など韓国が加入・批准している国際人権条約などによって、児童・生徒に当てはまるすべての権利とされています。また、京畿道の初等・中等教育段階の学校でその「児童・生徒の人権」を保障する原則(第3条)、それを保障するための教育監などの責務(第4条)なども定められています。

このほか、第2章の部分では子どもたちの学校生活に即して細かいところまで規定が設けられているのですが、そのなかにはたとえば「第9条 正規教科以外の教育活動の自由」という規定もあります。これは「夜間の自律学習、補充授業などの正規教科以外の教育活動」に関する子どもの選択の自由、学習する権利を定めています。また、「夜間自律学習、補充授業の強要」の禁止に関する規定も、この第9条には設けられています。そして、第10条では「休息の権利」として、「正規教科以外の教育活動の強要」により子どもの休息をとる権利の侵害を防ぐことも定められています。

日本と同じか、それ以上に受験競争の激しいことで知られる韓国ですが、このような規定が設けられることによって、韓国・京畿道でこの条例が作られることによって、今後、学校教育がどのように変わっていくのか、注意深く見守っていく必要があると思いました。また、韓国の国内では、同様の条例制定を目指す地域が他にもいくつかあるようですので、その動向にも注目したいと思います。

そして以前、大阪府教委が橋下知事の声かけのもと、今後、韓国の教育を視察する取り組みをはじめるという話が、何かの折にでていたかと思います。今後、大阪府教委の関係者が韓国の教育を視察するときにはぜひ、受験競争や「学力向上」策の実施状況とともに、「児童・生徒人権条例」制定を目指した京畿道の人々の取り組みについても視察していただきたいと思います。

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