...といっても、今公開中の映画ではなく原作の感想です。
風邪で寝込んでいる間、少し調子がいいと本を読んでいたので、いつもより充実した読書タイムを送っていたかもしれません。これはその中の一冊。夫が机にポンと置いておいてくれた本ですが、こういう肩が凝らずに楽しめるエンタメ小説は病人にはありがたい。500ページ強の長編ですが、読み始めるととまらなくて一気に読み終えてしまいました。
都内で3件の連続殺人事件が発生。残された暗号が解読され、次の犯行場所が都内の一流ホテル、ホテル・コルテシア東京であることが判明します。警察はホテルに協力を要請し、数名の刑事がホテルのスタッフとしてもぐりこむことに。警視庁捜査一課の新田浩介も、フロントクラークに就くよう命じられます。
彼の教育係を務めることになったのはフロントクラークの山岸尚美。人を疑うことが仕事の新田と、お客様を信じることを第一に考える山岸は、最初は何かと衝突しますが、やがて互いのプロとしての姿勢やものの見方を学び、尊敬しあうようになっていく...というお話です。
ひとことでいうと、クライムエンターテイメントになるのでしょうが、単なるミステリーでなく、ホテルを舞台にしたお仕事小説であり、人間ドラマであり、ほんのりロマンスも感じさせる展開となっています。
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既に映画の予告で、新田浩介=木村拓哉さん、山岸尚美=長澤まさみさんというのを知っていたこともあり、小説を読んでいる間は、この2人が頭の中で完全に乗り移っていました。^^ 実際、まるで当て書きかというくらい2人のイメージにぴったりなのです。
私は木村さんのファンではないのですが、彼は映画でもドラマでも、いい作品、いい役に恵まれていますよね。やはり作り手の心を動かす、愛されるスターなんだと思います。
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ミステリーの部分では、最初にピンときた人がやはり重要人物でしたが、この人が最終的にこの犯罪とどう結びつくのか、動機は?方法は?など、いくつもの疑問が最後にひとつに結びつく展開にすっきり。ラスボスを倒したようなカタルシスを感じました。さりげなく現代のテクノロジーをからませるところも東野さんならではでおもしろかった。
それから、ホテルの仕事のあれこれや、ホテルが困ったお客にどう対処するのか?など、いろいろな裏話が聞けたのも興味深かったです。あとは新田と、品川署の能勢とのチームプレイ。能勢は刑事ものによく出てくるタイプの、見た目はさえないけれどものすごい切れ者で現場にこだわる刑事。映画では小日向文世さんが演じているみたいですね。^^
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本作のモデルとなったホテルは、箱崎のロイヤルパークホテルだそうです。私は最近はすっかりご無沙汰していますが、祖母がいた頃は、よくここにお昼を食べに行ってたので懐かしくなりました。どちらかというとこじんまりとした、隠れ家といっていいホテルですが、それゆえにくつろげる雰囲気がありました。
昔、作家がこもるというと駿河台の山の上ホテルが有名でしたが、東野さんがロイヤルパークホテルを仕事場にされているとうかがって、なるほど...と納得しました。(新参者シリーズの舞台、人形町は目と鼻の先ですし) でも映画がヒットしたら、ここでゆっくり執筆どころではなくなるかもしれませんね。