雑誌「再開発 2021.10」(発行:全国市街地再開発協会)の空き家対策
「静岡市が行った略式代執行の実例」を読んで、空家対策の大変さを改めて知りました。
忘れないよう、略式代執行の流れを以下に整理することにします。
①行政代執行と略式代執行の違い
○「行政代執行」とは、特定空家等の所有者等に代わって行政が強制的に措置を行うことをいい
○「略式代執行」とは、特定空家等の所有者等が特定できない場合、行政が措置を行うことをいう
○行政代執行は「行政代執行法」に基づき行われ、特定空家等の措置にかかる略式代執行は「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき行われる。
○代執行の費用負担:行政代執行の場合、代執行に掛かった費用はすべて空き家等の所有者等が負担する。
略式代執行の費用は、所有者等が特定できないことから行政が負担することになる。また、行政が財産管理人制度を活用して土地を取得・売却し費用に充てることもできる。
②静岡市の略式代執行の概要
1)建物の状況等
○建物は平成30年に静岡市が初めて特定空家に認定した中の1件
○登記名義人は亡くなっていて、相続人は相続放棄
○建物は、通行量も多く、通学路にもなっていた公道に面し、外壁の剥落も進んでいた。
2)略式代執行までの流れ
【予算措置(R元年度)】
○このまま放置すると危ない状況のため財政部署に予算要求
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【審議会への意見聴取】
○市の空家等対策審議会の意見聴取のため審議会を開催(R2.6)
○略式代執行が妥当であることの答申(R2.7)
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【除却に関する公告】
○官報への掲載及び市役所掲示板への掲示(R2.8)
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【残存物の処理】
○見えるだけでも様々なものがあり、残存物(動産)への対応も課題だった。
○環境部署の協力のもと残存物を確認しながら処分。
○一部の動産については一時的に保管
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【施工業者の決定】
○最初の見積合わせを行ったが不調に
○再度、業者を選定し、見積合わせを行い解体業者が決定
※不調の原因:除却する建物の規模に対し、作業性が悪く、困難性が高いと判断された。
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【隣接所有者との調整、議会及び近隣への周知】
○隣地の建物にも養生等が必要だったため、隣地の建物所有者の了承も必要だった。
○工程が決まった段階で地元自治会長や周辺住民への作業の周知を行った。
○静岡市で初めての略式代執行だったため、報道関係・議会等への情報提供を行った。
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【除却工事の実施】R3.2.27~R3.3.24に実施
○複数の報道関係者から取材申込みがあったため、施工業者に支障をきたさないよう配慮した。
③略式代執行で苦労した点・課題等
【苦労した点】
◎残存物の処理に対するノウハウがなく苦慮した
◎隣地所有者との調整
◎議会や報道関係者への周知
【課題】
◎審議会で「相続財産管理人」の検討について意見があったが、隣地所有者の購入の意思がなかったこと、市街化調整区域で売却できる見込みもなかったことから、相続財産管理人の申し立ては行わなかった。これにより、費用回収のめどが立たないうえ、跡地の処分や管理が課題として残った。