6/7(木)に行われた「エリアマネジメント・シンポジウム」に行ってきた。
「エリアマネジメント」とは、広義には「一定の地域(エリア)における地域住民・地権者に身近な安全・安心・美しさ・豊かさその他の地域における居住環境・市街地環境の維持・向上・管理を実現していくための地域住民等による様々な自主的取り組み(合意形成、維持管理、事業・イベント等の実施、公・民の連携)」を指すとされている。
簡単に言えば、商業業務地・住宅地の没個性化が進み、また人口減少時代の到来、市街地の縮減傾向の進行などを考えると、地域間競争に勝ち抜いていくためのまちづくりが必要になり、そのためのエリア関係者(住民等)の手による地域の管理・運営のことといえるのだろう。
冒頭の小林重敬・横国大教授の基調講演によれば、エリアマネジメントのルールの方向性には、「ボトムアップ(課題を解決していくこと)」「レベルアップ(価値を向上させていくこと)」「プリベンション(防ぎ守っていくこと)」の3つが考えられるという。
基調講演では、「大都市中心部(大規模跡地型、混在市街地型、既成市街地型)」と「既成住宅市街地」それぞれのエリアマネジメントの必要性と事例報告があり、エリアマネジメントへのアプローチ、組織のあり方等に関して課題提起がされた。
・・・自分の勉強不足があらわになる。。。
その後、主催者である国土交通省土地・水資源局から「新たな担い手による地域管理のあり方検討委員会報告」があった。
詳しくは、
国土交通省のホームページに検討経過や報告内容が掲載されている。
続いて、エリアマネジメントの事例報告。
●コモンシティ星田HUL-1地区建築協定運営委員会(大阪府交野市)
建築協定による住宅市街地の価値向上に向けた地域住民の取り組み事例
-H17年度
住まいのまちなみコンクール国土交通大臣賞を受賞している。
●WeLove天神協議会(福岡県福岡市)
徒歩圏内に非常に多くの都心機能が集積するコンパクトであるが故の課題解決とまちの魅力向上をめざした、企業、団体、住民、行政などによるエリアマネジメント事例
-天神ブランドの確立に向けてという副題がついた「天神まちづくりガイドライン」を作成中(H19年度に策定予定)
-「天神ピクニック」という街をあげてのイベントや「きれいな天神プロジェクト」なる環境美化活動、自転車と歩行者の共存をめざした「おしチャリロード」など、ユニークで魅力的な活動が取り組まれている。
協議会の概要や活動については
WeLove天神協議会ホームページを。
●伊勢河崎の町並み保全型まちづくり(三重県伊勢市)
行政と住民間の対立を乗り越え、両者の協働による町並み保全に取り組んでいる事例
-河川の氾濫を契機とした河川改修計画を巡って行政と市民が対立していたが、市民のねばり強い町並み保存運動が実を結び、行政と市民の協働によるまちづくりが展開されている。
-旧商家を改修した伊勢河崎商人館を管理運営するNPO法人
伊勢河崎まちづくり衆を中心として古い問屋街に残る蔵などを使いながら残していく活動がすすめられている。
後半のパネルディスカッションでは、エリアマネジメントを進める上での課題や方向性について意見交換された。
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◇エリアマネジメントには、ルーチン部分と付加部分がある。付加部分の取り組みをどのように進めるかが個性化、価値向上につながる。
◇共有できる価値をどのように見出していくかが重要。その価値は関係者自らで見出し(または創り)、共有していかなければならない。
◇価値の共有は総論的なものと各論的なもので温度差が生じる。
◇活動を進めていくとジャンプアップする時期(メルティングポイント)がある。関係住民等の反応を見ながら、活動を確認していく作業が必要。
◇活動を進めるには、活動組織に法人格を与えたり、権限を与えたりといった法制度の整備、活動する人が自分たちの活動の意義・効果を実感できるような仕組み、専門家の関わり方等が課題になる。
◇エリアマネジメントのための法整備を行うことが各地域における活動の画一化を招くおそれがあるのではという指摘の一方で、景観法のような枠組み法をつくることで十分対応可能だろうという考え方も。
◇エリアマネジメントのエリアは重層化している。テーマによってエリアが異なるため、レイヤーが重層化することを許容する柔らかな仕組みが必要か。
◇住宅地におけるエリアマネジメントは価値共有が意外と容易である(問題点が明確)が、商業業務地におけるエリアマネジメントは来街者との価値共有が必要となるため難しいところもある。
→住宅地についてはタイプ別の推進方策が整理できるのかも(エリアマネジメント推進マニュアル(H20発行予定)にぜひ盛り込んでみたい)。
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このような発言が印象に残った。
エリアマネジメントを行う組織は、自治会や任意の協議会、株式会社、NPO、中間法人など様々である。
しかし、求めるものは自分のまちの価値の向上、つまり住みやすさであったり、愛着心や誇りの確認・実感、商業地だったら魅力度アップだったりと、ある程度同じ方向を向いているのだと思う。
ゆるやかな法的仕組みによる裏付けのもとで、個性豊かで多様なマネジメントがエリアごとに行われ、互いに刺激しあうことでより魅力度を増していくような流れになればいいのかなと思う。
これからますます進んでいく人口減少時代。オールハッピーをめざすのは難しいのかもしれないが、どこにいっても同じ店が並ぶ街、同じ家が並ぶ街をつくってきた、そして選んできた僕たちが、自分のまち、そして他人のまちを評価してみるには、よい機会だと思う。
自分のまちは住みやすい方がいい。それは他人がつくってくれるものではない。自分たちでつくるもの。そのためには・・・。
専門家のひとりとして、地域の一員として精進しま~す。
(oba)