山と自然の雑学ノート

山歩き&散歩道で出会った植物などの記録

イヌビワ(犬枇杷)

2009-11-26 06:39:47 | 植物(木本)
里山を歩くと、この小さな紫色をしたイヌビワによく出会います。

名前は「不味くて食べられないビワ」という意味だそうですが、まずくて食べられないということに関しては

私は子供の頃によく食べていたので、熟したものはさほど不味くはなかったように記憶しています。

それともう一つには名前の後ろに「ビワ」とつきますが、これはクワ科イチジク属の植物で

バラ科ビワ属であるビワとの近縁関係ではないようです。

イチジクと同様、雌雄異株で、この果実のような形をしているのは、花嚢(かのう)と呼ばれ、

この中にたくさんの花が詰まっています。

この花は虫媒花で、花粉の媒介は、花嚢に寄生するイヌビワコバチという寄生蜂によって行われます。

ところが、この受粉システムが少しややこしいのです。

まずイヌビワコバチの雌の成虫が、雄株にできた雄花嚢の頂部から花嚢の中に入り込み、仮雌花の柱頭から

産卵管を差し込み、胚珠に産卵します。卵から孵った幼虫は胚珠を食べて成長し

成虫になった雄は、雌より先に子房から出て、雌のいる子房壁を破って交尾します。 ここで雄はお役御免となり

花嚢から出ることもなく死んでいきます。

交尾を終えた雌は新しく若い花嚢を求めて外へと飛び出しますが、新しく見つけた花嚢が雄花嚢なら、そこで産卵できますが

雌花嚢だと仮雌花と違って、雌花の柱頭が長いため吸密できず、体に付いた花粉を柱頭にこすりつけるだけで

産卵することなく諦めて去っていきます。産卵されなかった雌花では胚珠が幼虫に食い荒らされることなく

無事に種子を付けることができます。

尚、雄花嚢の中の仮雌花は柱頭が短くイヌビワコバチが吸密しやすい構造ですが、幼虫が胚珠を食べるため、

受粉はしますが種子はほとんどできないようです。


イヌビワ<クワ科 イチジク属>



コメント (2)
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