今回ご紹介するのは「かっこうの親 もずの子ども」(著:椰月美智子)です。
-----内容-----
幼児向け雑誌の編集部で働く、シングルマザーの統子。
子どもを保育園に預け、シッターの協力を得ながら、仕事と育児を両立させている。
4歳の息子・智康は、夫・阿川の希望もあり、不妊治療の末に授かった子どもだ。
産後、すべてが順調かにみえたが、ささいな喧嘩をきっかけに、阿川と統子は離婚に至った。
予定通りには進まない仕事、智康の突然の病気、実母との気持ちのすれ違い、園でのママ友との人間関係など、統子に悩みは尽きないが、日々を全力で過ごしている。
そんなある日、統子は旅雑誌のグラビアページに智康とそっくりの、双子の少年が載っているのを見つける。
それをきっかけに、統子と智康は、五島列島・中通島へ向かった――。
命とは、愛とは、絆とは……子育ての今、子育てのすべてを描き切った感動の家族小説。
-----感想-----
主人公は有坂統子、41歳。
まず冒頭に、以下の言葉がありました。
――かっこうは、もずやおながなどが産卵したばかりの巣に、自分の卵をひとつ産卵する。孵化した雛は、それらの鳥を仮親として哺育される。
かっこうの雛から見て、育ててくれる親は本当の親ではないということで、この小説のテーマにつながっています。
統子の息子の智康は、出生に秘密があります。
統子の揺れまくり、ブレまくりの心境が、読んでいて引くところもありました。
ふとしたきっかけで、智康の遺伝上の父親の正体を知りたくなる場面がそうでした。
子供が欲しかった時は不妊解決薬としか見ていなかったのに、急にその正体が誰なのか知りたくなり、それを調べるために長崎県に行ったりもするのですが、私にはその行動は理解出来なかったです。
それはルール違反なのではないかなと思います。
「あの時はそう思ったけれど、今になって知りたくなった」という感じでした。
これはやはり、特殊な方法を使って子供を授かった親の苦悩、葛藤がそうさせるのだろうなと思います。
ただその長崎で、統子も智康も良い思い出を作れたのは良かったです
海を珍しがり大喜びの智康と、それを見て喜ぶ統子。
智康は遠い地の長崎に友達が出来たし、統子も良き相談相手が出来ました。
教会巡りも楽しそうだったし、私も長崎に興味が出てきました
智康が通う保育園のママ友達との友情や確執も興味深かったです。
智康と智康の友達の、子供同士の喧嘩に親が割って入ってきて、統子に「訴える」と脅しめいたことを言ってきたりもして、さすがにそれはどうなんだろうと思いました
何しろ子供の喧嘩ですからね。
統子が述懐していた
我が子が絡むと親は理性がなくなってしまう。内臓をひっくり返して見せるほどに身のうちを吐露し、むき出しになった感情だけが突っ走ってしまう。
はたしかにそうかもと思いました。
「訴える」と脅してきた親も、自分の子供のことになると極度に感情剥き出しになるタイプなんだろうなと思います。
それから連日仕事が忙しくて帰るのが遅くなる統子と、そんな時に限って体調を崩してしまう智康、さらにぐずり出す智康とそれに切れて怒鳴り散らす統子の様子が描かれていて、これは育児の一番きつい時だろうなと思いました。
仕事が遅くまでかかって疲れている時に体調を崩されぐずり出されたら、親はやっぱりイライラすると思います。
怒鳴り散らしても事態は好転しないと分かっていても怒鳴り散らしてしまい、怒鳴ってしまってから後悔するというのはリアリティがありました。
ひまわりサービスという会社のベビーシッター、神田さんは印象的な人でした。
統子の帰宅が遅い時、22時くらいまで家に居て智康の面倒を見てくれたり、統子が風邪でダウンした時智康からの電話を受け、休みの日なのに駆けつけてくれたりと、かなり良いベビーシッターさんでした。
こういう人の助けがあって、統子の子育ては何とか成り立っています。
母子二人の家族小説、終わってみればこの二人の未来が明るいものになってくれと応援したくなる一冊でした
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-----内容-----
幼児向け雑誌の編集部で働く、シングルマザーの統子。
子どもを保育園に預け、シッターの協力を得ながら、仕事と育児を両立させている。
4歳の息子・智康は、夫・阿川の希望もあり、不妊治療の末に授かった子どもだ。
産後、すべてが順調かにみえたが、ささいな喧嘩をきっかけに、阿川と統子は離婚に至った。
予定通りには進まない仕事、智康の突然の病気、実母との気持ちのすれ違い、園でのママ友との人間関係など、統子に悩みは尽きないが、日々を全力で過ごしている。
そんなある日、統子は旅雑誌のグラビアページに智康とそっくりの、双子の少年が載っているのを見つける。
それをきっかけに、統子と智康は、五島列島・中通島へ向かった――。
命とは、愛とは、絆とは……子育ての今、子育てのすべてを描き切った感動の家族小説。
-----感想-----
主人公は有坂統子、41歳。
まず冒頭に、以下の言葉がありました。
――かっこうは、もずやおながなどが産卵したばかりの巣に、自分の卵をひとつ産卵する。孵化した雛は、それらの鳥を仮親として哺育される。
かっこうの雛から見て、育ててくれる親は本当の親ではないということで、この小説のテーマにつながっています。
統子の息子の智康は、出生に秘密があります。
統子の揺れまくり、ブレまくりの心境が、読んでいて引くところもありました。
ふとしたきっかけで、智康の遺伝上の父親の正体を知りたくなる場面がそうでした。
子供が欲しかった時は不妊解決薬としか見ていなかったのに、急にその正体が誰なのか知りたくなり、それを調べるために長崎県に行ったりもするのですが、私にはその行動は理解出来なかったです。
それはルール違反なのではないかなと思います。
「あの時はそう思ったけれど、今になって知りたくなった」という感じでした。
これはやはり、特殊な方法を使って子供を授かった親の苦悩、葛藤がそうさせるのだろうなと思います。
ただその長崎で、統子も智康も良い思い出を作れたのは良かったです

海を珍しがり大喜びの智康と、それを見て喜ぶ統子。
智康は遠い地の長崎に友達が出来たし、統子も良き相談相手が出来ました。
教会巡りも楽しそうだったし、私も長崎に興味が出てきました

智康が通う保育園のママ友達との友情や確執も興味深かったです。
智康と智康の友達の、子供同士の喧嘩に親が割って入ってきて、統子に「訴える」と脅しめいたことを言ってきたりもして、さすがにそれはどうなんだろうと思いました

何しろ子供の喧嘩ですからね。
統子が述懐していた
我が子が絡むと親は理性がなくなってしまう。内臓をひっくり返して見せるほどに身のうちを吐露し、むき出しになった感情だけが突っ走ってしまう。
はたしかにそうかもと思いました。
「訴える」と脅してきた親も、自分の子供のことになると極度に感情剥き出しになるタイプなんだろうなと思います。
それから連日仕事が忙しくて帰るのが遅くなる統子と、そんな時に限って体調を崩してしまう智康、さらにぐずり出す智康とそれに切れて怒鳴り散らす統子の様子が描かれていて、これは育児の一番きつい時だろうなと思いました。
仕事が遅くまでかかって疲れている時に体調を崩されぐずり出されたら、親はやっぱりイライラすると思います。
怒鳴り散らしても事態は好転しないと分かっていても怒鳴り散らしてしまい、怒鳴ってしまってから後悔するというのはリアリティがありました。
ひまわりサービスという会社のベビーシッター、神田さんは印象的な人でした。
統子の帰宅が遅い時、22時くらいまで家に居て智康の面倒を見てくれたり、統子が風邪でダウンした時智康からの電話を受け、休みの日なのに駆けつけてくれたりと、かなり良いベビーシッターさんでした。
こういう人の助けがあって、統子の子育ては何とか成り立っています。
母子二人の家族小説、終わってみればこの二人の未来が明るいものになってくれと応援したくなる一冊でした

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