今回ご紹介するのは「太陽の塔」(著:森見登美彦)です。
-----内容-----
私の大学生活には華がない。
特に女性とは絶望的に縁がない。
三回生の時、水尾さんという恋人ができた。
毎日が愉快だった。
しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!
クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。
失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
-----感想-----
森見登美彦さんのデビュー作です。
以前から気にはなっていて、今回ついに読んでみました。
主人公の「私」は、京都大学農学部を休学中の五回生。
森見登美彦さん自身が京都大学農学部大学院修士課程修了なので、自身をモデルにしているのだと思います。
その「私」の手記という形で、物語はスタートします。
何の手記なのかというと、「私」の日常です。
しかし内容は全くもって普通の日常とはかけ離れていて、森見さんの作品の登場人物はデビュー作からぶっ飛んでいたんだなと思いました(笑)
そして森見作品独特の高慢ちきな語り口もデビュー作から健在だったようです。
「私」は長きにわたり、「水尾さん研究」なるものを行っていました。
「私」にとって初めてできた恋人で、それはそれは有頂天になっていたようでした。
水尾さんのほうは法学部の三回生とのことです。
1年前の12月に一方的に振られてからも研究は続いていて、水尾さんの平均的な一日の行動を曜日別に記録したレポートまで作っていて、ストーカーまがいなつけ回しぶりでした
本人は「ストーカーではない」と弁明していましたが、どう見てもストーカー的つけ回し行為にしか見えないです(笑)
物語を読んでいて、印象的なキーワードがいくつもありました。
それらをピックアップしてみると、
4畳半、下鴨幽水荘、招き猫、信楽焼きの狸、叡山電車、猫ラーメンなどです。
いずれも後の森見作品に何度も出てくるもので、デビュー作の時点であの独特な世界観を表すキーワードがずらりと並んでいたのかと驚きました
4畳半は「四畳半神話大系」と「四畳半王国見聞録」で壮大な物語が展開されていますし、狸は「有頂天家族」で派手に活躍しています
あと、下鴨幽水荘は今作では「私」の友達である「高藪」という人が住んでいるのですが、他の作品で出てきた人物共々、このアパートはとんでもない人達の巣窟だなと思います
へんてこな人ばかりで、普通の人をまだ見たことがないような気がします。
森見さん作品の特徴として、「どこまでが現実で、どこからが空想なのかが分からない」というのがあります。
現実のつもりで読んでいても、いつの間にか空想的物語になっていたりするのです
このデビュー作でもそれが発揮されていて、特に街中に叡山電車が現れる時に現実と空想の間を行ったり来たりしながら、物語は進んで行きました
常に高慢ちきな「私」の、特に高慢ちきだったのが以下の語りです。
何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、我々が間違っているはずがないからだ。
このすごい自信はどこから来るのだろうと思います(笑)
実に高慢ちきで、それでいて滑稽な「私」とその仲間達でした。
後の森見作品へと続くデビュー作、楽しませてもらいました
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-----内容-----
私の大学生活には華がない。
特に女性とは絶望的に縁がない。
三回生の時、水尾さんという恋人ができた。
毎日が愉快だった。
しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!
クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。
失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
-----感想-----
森見登美彦さんのデビュー作です。
以前から気にはなっていて、今回ついに読んでみました。
主人公の「私」は、京都大学農学部を休学中の五回生。
森見登美彦さん自身が京都大学農学部大学院修士課程修了なので、自身をモデルにしているのだと思います。
その「私」の手記という形で、物語はスタートします。
何の手記なのかというと、「私」の日常です。
しかし内容は全くもって普通の日常とはかけ離れていて、森見さんの作品の登場人物はデビュー作からぶっ飛んでいたんだなと思いました(笑)
そして森見作品独特の高慢ちきな語り口もデビュー作から健在だったようです。
「私」は長きにわたり、「水尾さん研究」なるものを行っていました。
「私」にとって初めてできた恋人で、それはそれは有頂天になっていたようでした。
水尾さんのほうは法学部の三回生とのことです。
1年前の12月に一方的に振られてからも研究は続いていて、水尾さんの平均的な一日の行動を曜日別に記録したレポートまで作っていて、ストーカーまがいなつけ回しぶりでした

本人は「ストーカーではない」と弁明していましたが、どう見てもストーカー的つけ回し行為にしか見えないです(笑)
物語を読んでいて、印象的なキーワードがいくつもありました。
それらをピックアップしてみると、
4畳半、下鴨幽水荘、招き猫、信楽焼きの狸、叡山電車、猫ラーメンなどです。
いずれも後の森見作品に何度も出てくるもので、デビュー作の時点であの独特な世界観を表すキーワードがずらりと並んでいたのかと驚きました

4畳半は「四畳半神話大系」と「四畳半王国見聞録」で壮大な物語が展開されていますし、狸は「有頂天家族」で派手に活躍しています

あと、下鴨幽水荘は今作では「私」の友達である「高藪」という人が住んでいるのですが、他の作品で出てきた人物共々、このアパートはとんでもない人達の巣窟だなと思います

へんてこな人ばかりで、普通の人をまだ見たことがないような気がします。
森見さん作品の特徴として、「どこまでが現実で、どこからが空想なのかが分からない」というのがあります。
現実のつもりで読んでいても、いつの間にか空想的物語になっていたりするのです

このデビュー作でもそれが発揮されていて、特に街中に叡山電車が現れる時に現実と空想の間を行ったり来たりしながら、物語は進んで行きました

常に高慢ちきな「私」の、特に高慢ちきだったのが以下の語りです。
何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、我々が間違っているはずがないからだ。
このすごい自信はどこから来るのだろうと思います(笑)
実に高慢ちきで、それでいて滑稽な「私」とその仲間達でした。
後の森見作品へと続くデビュー作、楽しませてもらいました

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