今回ご紹介するのは「幻想日記店」(著:堀川アサコ)です。
-----内容-----
謎の美女、猩子(しょうこ)が営む日記堂。
山奥に佇むこの店では、人に読ませる目的で書いたのではない「本当の日記」を売っている。
日記は悩みと希望の生の記録。
人生の道しるべとなり、お客の悩みを救う。
なぜかタダ働きすることになった大学生・友哉(ともや)は「日記堂」のとんでもない秘密を知ることに―。
人気シリーズ第三弾!
-----感想-----
この作品は「幻想郵便局」、「幻想映画館」に続く幻想シリーズの第三弾です。
2012年の8月に刊行された「日記堂ファンタジー」を大幅改稿の上、改題したとのことです。
主人公は鹿野友哉、三浪して大学に入った一年生です。
医学部への受験に二度失敗し、そこからさらに一浪し、文学部へと入りました。
両親ともに医者ということで自身も医学部へ進もうとした友哉ですが、色々考えて最後は自分の好きな文学を学ぶことにしたようでした。
物語の舞台となるのは「日記堂」。
安達ヶ丘という小山の、飛坂(とびさか)という坂を登って行ったところにあります。
そこの店主の名は、紀猩子(きのしょうこ)。
青い紬の着物を着て長い黒髪を一つに束ねていて微笑むと目が弓の形になる、謎の多い女性です
この日記堂で友哉は半ば無理やり、タダ働きさせられることになりました。
日記堂では、様々な人が書いた日記を販売しています。
その噂を知っている人は結構いて、日記堂には色々な人が訪ねてきます。
「こちらでは、読めば人生がパーッと開ける書物を売ってくださるとか」
人の書いた日記がそんなに参考になるものなのか?と私は疑問に思いましたが、猩子さんは以下のように言っていました。
「日記とは悩みと希望の記録。それは、同じ悩みや希望を持つ人の、生きるしるべともなりましょう」
「他の人の迷いを客観的に読み解くことで、ご自身の心を見極める目も養われるというものです。進むべき道も、おのずと見えてくるでしょう」
「中年の危機」という言葉も興味深かったです。
それまで懸命に働いてきた人が、中年に差し掛かった頃にぶつかる壁で、人生の後半に直面して、昨日に続く明日を思った時に、このままで良いのだろうか……と思ってしまい、落ち込んだり、原因不明の病気になったりする状態のようです。
その危機に際して、同じような悩みを持つ人の記した日記が力になってくれるようです。
また、特に印象的だったのが以下の言葉です。
「あらゆる書物の中で、一番に書き手の真実が記されているのは日記です。手記やブログなんてのは駄目ね。人に読ませようとした時点で、どうしても誤魔化しが入り込んでしまうのよ。無意識でも、自分というキャラクターを作り込み、それを演じてしまう。だけど、日記だけは生の言葉が書き込まれているものなの」
手記やブログなんてのは駄目ね、とブログも一刀両断されてしまいました
たしかに全世界に公開しているのを前提として書いているので、100%の生の言葉になることはほぼないですね。
そこはツールの使用目的の違いというものです。
しかし日記は人に見せるものではなく、自分自身のために書いているので、赤裸々な生の言葉が書かれています。
それこそが、同じ悩みや希望を持つ人の生きるしるべとなり、読めば悩みが解決するくらい、相当な参考になるということです。
前に進む力を与えてくれたり、自分自身の過ちを気付かせてくれたり、色々な効果があります。
猩子さんの場合は恐ろしいことに少しお客さんの話を聞けばどういう日記が合うか分かるらしく、すぐにピッタリと合うものを選び出してくれます。
しかもお代は、日記を読んで本人が満足してからで良いというのです。
値段は猩子さんの言い値で決まるのですが、大抵のお客さんはその値段で納得してくれるようです。
作品としてはファンタジーあり、ミステリーあり、古典文学も少々ありでした。
「幻想郵便局」とのリンクもあって、登天郵便局の配達主任・登天さんの意外すぎる正体が明らかになりました。
そしてホラーも少々。。。
「あなた方全員――。この話を聞かれたからには――」
やはり、余計なことを知ってしまうと、口封じの展開になるようです。
他にも「怪盗花泥棒」、さらには「ニセ怪盗花泥棒」との攻防もあり、終盤までもつれていました。
日記の中にも、泥棒に狙われるような希少価値の高いものがあるようです。
鍵は「ジャスミン」で、ジャスミンの香りが漂ってきたら要注意という感じでした。
非常に面白い物語で、すっかり幻想シリーズのファンになりました。
現在はシリーズ第四弾の「幻想探偵社」を連載中とのことなので、そちらもいつか読んでみたいなと思います
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
※図書ランキングはこちらをどうぞ。
-----内容-----
謎の美女、猩子(しょうこ)が営む日記堂。
山奥に佇むこの店では、人に読ませる目的で書いたのではない「本当の日記」を売っている。
日記は悩みと希望の生の記録。
人生の道しるべとなり、お客の悩みを救う。
なぜかタダ働きすることになった大学生・友哉(ともや)は「日記堂」のとんでもない秘密を知ることに―。
人気シリーズ第三弾!
-----感想-----
この作品は「幻想郵便局」、「幻想映画館」に続く幻想シリーズの第三弾です。
2012年の8月に刊行された「日記堂ファンタジー」を大幅改稿の上、改題したとのことです。
主人公は鹿野友哉、三浪して大学に入った一年生です。
医学部への受験に二度失敗し、そこからさらに一浪し、文学部へと入りました。
両親ともに医者ということで自身も医学部へ進もうとした友哉ですが、色々考えて最後は自分の好きな文学を学ぶことにしたようでした。
物語の舞台となるのは「日記堂」。
安達ヶ丘という小山の、飛坂(とびさか)という坂を登って行ったところにあります。
そこの店主の名は、紀猩子(きのしょうこ)。
青い紬の着物を着て長い黒髪を一つに束ねていて微笑むと目が弓の形になる、謎の多い女性です

この日記堂で友哉は半ば無理やり、タダ働きさせられることになりました。
日記堂では、様々な人が書いた日記を販売しています。
その噂を知っている人は結構いて、日記堂には色々な人が訪ねてきます。
「こちらでは、読めば人生がパーッと開ける書物を売ってくださるとか」
人の書いた日記がそんなに参考になるものなのか?と私は疑問に思いましたが、猩子さんは以下のように言っていました。
「日記とは悩みと希望の記録。それは、同じ悩みや希望を持つ人の、生きるしるべともなりましょう」
「他の人の迷いを客観的に読み解くことで、ご自身の心を見極める目も養われるというものです。進むべき道も、おのずと見えてくるでしょう」
「中年の危機」という言葉も興味深かったです。
それまで懸命に働いてきた人が、中年に差し掛かった頃にぶつかる壁で、人生の後半に直面して、昨日に続く明日を思った時に、このままで良いのだろうか……と思ってしまい、落ち込んだり、原因不明の病気になったりする状態のようです。
その危機に際して、同じような悩みを持つ人の記した日記が力になってくれるようです。
また、特に印象的だったのが以下の言葉です。
「あらゆる書物の中で、一番に書き手の真実が記されているのは日記です。手記やブログなんてのは駄目ね。人に読ませようとした時点で、どうしても誤魔化しが入り込んでしまうのよ。無意識でも、自分というキャラクターを作り込み、それを演じてしまう。だけど、日記だけは生の言葉が書き込まれているものなの」
手記やブログなんてのは駄目ね、とブログも一刀両断されてしまいました

たしかに全世界に公開しているのを前提として書いているので、100%の生の言葉になることはほぼないですね。
そこはツールの使用目的の違いというものです。
しかし日記は人に見せるものではなく、自分自身のために書いているので、赤裸々な生の言葉が書かれています。
それこそが、同じ悩みや希望を持つ人の生きるしるべとなり、読めば悩みが解決するくらい、相当な参考になるということです。
前に進む力を与えてくれたり、自分自身の過ちを気付かせてくれたり、色々な効果があります。
猩子さんの場合は恐ろしいことに少しお客さんの話を聞けばどういう日記が合うか分かるらしく、すぐにピッタリと合うものを選び出してくれます。
しかもお代は、日記を読んで本人が満足してからで良いというのです。
値段は猩子さんの言い値で決まるのですが、大抵のお客さんはその値段で納得してくれるようです。
作品としてはファンタジーあり、ミステリーあり、古典文学も少々ありでした。
「幻想郵便局」とのリンクもあって、登天郵便局の配達主任・登天さんの意外すぎる正体が明らかになりました。
そしてホラーも少々。。。
「あなた方全員――。この話を聞かれたからには――」
やはり、余計なことを知ってしまうと、口封じの展開になるようです。
他にも「怪盗花泥棒」、さらには「ニセ怪盗花泥棒」との攻防もあり、終盤までもつれていました。
日記の中にも、泥棒に狙われるような希少価値の高いものがあるようです。
鍵は「ジャスミン」で、ジャスミンの香りが漂ってきたら要注意という感じでした。
非常に面白い物語で、すっかり幻想シリーズのファンになりました。
現在はシリーズ第四弾の「幻想探偵社」を連載中とのことなので、そちらもいつか読んでみたいなと思います

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