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読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「夜の国のクーパー」伊坂幸太郎

2014-05-12 23:36:01 | 小説
今回ご紹介するのは「夜の国のクーパー」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
この国は戦争に負けたのだそうだ。
占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。
はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。
人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない──。
これは猫と戦争と、そして何より、世界の秘密のおはなし。
どこか不思議になつかしいような、誰も一度も読んだことのない、破格の小説をお届けします。
ジャンル分け不要不可、渾身の傑作。
伊坂幸太郎が放つ、10作目の書き下ろし長編。

-----感想-----
伊坂さんの、連載ではなく一気に書き上げた「書き下ろし」の通算10作品目。
内容の紹介文によると「渾身の傑作」とのことですが、他の伊坂作品を多数読んでいる私としては、そこまでの傑作なのかなという気がします
この作品は猫が語り手になっていて、同じく人間以外が語り手の小説に車が語り手の「ガソリン生活」があるのですが、面白さはそちらの方が上回っていたと思います。
ただこの作品も盛り上がってくるとどんどん読んでいける面白さはありました。

上で触れたように、この作品では猫の「トム」が語り手になっています
他にもギャロやクロロなど、たくさんの猫が登場。
猫達は人間の言葉を理解することが出来て、猫同士でも普通に人間の言葉で会話をしています。
ただし人間相手にはその言葉は通じず、「ニャー」としか聞こえないようです。

そして冒頭から謎が多いです。
トムの国は8年前から隣国の「鉄国(てつこく)」と戦争をしていて、トムの国が負けて、鉄国の兵士達がこれからトムの国を占領しにやってくるとのことでした。
しかしこの鉄国というのが一体どの国のことなのかが謎でした。
トムが語り手の章のほかに、人間の「私」が語り手の章もあるのですが、そちらでは「私」が宮城県仙台市に住んでいることが書かれていました。
そして「私」が語り手の章にもトムが出てきて、鉄国との戦争のことについて「私」に対して語っているので、現実世界が舞台なのか架空の世界が舞台なのか、謎に満ちた作品世界になっていました。
宮城県仙台市の近くにトムの住む国や隣国の鉄国があって戦争をしているのか?という感じでした。

トムが語り手の章に出てくる人間達は皆、変わった名前をしていました。
冠人(かんと)、酸人(さんと)、号豪(ごうごう)、丸壺(まるこ)、幼陽(ようよう)、枇枇(びび)、など、日本人離れした名前の人が多かったです。

さらに気になるのが、「クーパーの兵士」。
謎の生物「クーパー」を倒すためにトムの国から毎年選抜され派遣されていく兵士達。
クーパーの兵士は今から百年ほど前から始まりました。
ちなみに鉄国とは以前にも戦争をしたことがあって、その戦争が起きたのはクーパーの兵士が始まるさらに前とのことでした。
10年前まで、クーパーの兵士は続いていました。
しかしその10年前を境に、兵士の派遣は終わりました。
時系列を見ると、鉄国との戦争が始まったのが8年前なので、クーパーの兵士の派遣が終わったすぐ後になります。
これらには何か関係があるのか、気になるところでした。

P232に「戦争に負け、敵による支配のはじまった昨日から、この国は、少なくともこの町は、夜の闇に沈んだ重苦しさに満ちていた」という描写があって、これがタイトルの「夜の国」の由来なのだなと思いました。
この夜の国と、クーパーの兵士、これらの謎が終盤で明らかになります。
トムの住む国については、後半の「私」が語り手の章で”岩山”の描写があって、それを読んだ時に「もしかして」と思いました。
違和感を感じたのです。
それが種明かしの伏線になっていて、終盤でトムの住む国がどんなものか分かったときに「やはりそういうことか」と思いました^^
謎に満ちた不思議な作品世界を納得させてくれるラストだったと思います。


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初夏の陽気

2014-05-11 19:24:36 | ウェブ日記
昨日、今日は天気もよくかなり行楽日和な週末になりました
絶好の五月晴れでしたね
一年で最も過ごしやすいと言われる5月の、これぞ真骨頂だと思います。

私は昨日は午前中図書館に行き、本を借りてきました。
図書館は作家ごとに五十音順で著作がまとめられているので、書店とは違った本の並びになっています。
それを順番に眺めていくと、意外な小説が目に留まったりもするので面白いです
午後は宮下奈都さんの「誰かが足りない」のレビューを書き、その後は読書。
夜までずっと部屋の窓を開けていて、入ってくる風が心地良かったです^^
夜は非常に眠かったので22時頃には寝ました。

今日は午前中は部屋の掃除をしました。
その後は読書の続きに入り、午後も読書の続きをしました。
途中競馬のNHKマイルカップをテレビ観戦したりもしながら、読書中心の一日となりました。
この後は大河ドラマの軍師官兵衛を見て、後は寝るまで読書の続きをしようかなと思います。
寝るまで窓を開けておいて、外の心地良い風を入れておこうと思います。
過ごしやすいこの時期はありがたいものです

「誰かが足りない」宮下奈都

2014-05-10 15:01:53 | 小説
今回ご紹介するのは「誰かが足りない」(著:宮下奈都)です。

-----内容-----
予約を取ることも難しい、評判のレストラン『ハライ』。
10月31日午後6時に、たまたま一緒に店にいた客たちの、それぞれの物語。
認知症の症状が出始めた老婦人、ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない青年、人の失敗の匂いを感じてしまう女性など、その悩みと前に進もうとする気持ちとを、丹念にすくいとっていく。

-----感想-----
物語は「予約1」から「予約6」までの6話で構成されています。
まず最初にプロローグがあって、レストラン「ハライ」で予約の時間少し前に来店した人の描写だけがあって、そこからそれぞれの物語が始まっていきます。

最初、第一話を読んだ時点では、淡々とした物語が続くのかなと思いました。
今まで読んだ宮下奈都さん作品と比べると少し心理描写を軽めにした印象でした。

二話目から、ラストは10月31日の午後6時にハライに行くという終わり方をしています。
それが六話目まで続きました。
日にちは明かされませんでしたが第一話も10月31日の午後6時にハライを予約したはずです。
10月31日の午後6時、同じ日の同じ時間、同じお店に居た人達それぞれに物語があり、それを描き出していくというのがこの作品の特徴です。
たしかに、外食でレストランに行けば同じ時間に他のお客さんが居るし、当然その人の後ろにはその人の物語が広がっているんだよなと思いました。

調べてみるとこの作品、2012年の本屋大賞第7位にランクインしています。
この時の大賞受賞作品は三浦しをんさんの「舟を編む」で、私はそちらが圧倒的に嬉しくて、宮下奈都さんのこの作品には注目していなかったです。
この時には既に本屋大賞のベストテンに入るくらい注目の作家さんになっていたんだなと思います。

ハライはトルコの言葉で「晴れ」という意味とのことです
古いレンガ造りの小さなレストランで、出てくる料理は美味しく、いつも満席で予約を取るのも困難な人気のお店です
描写から見て、わりとゆったりとした街並みの中にあるという印象を受けました。

「予約4」では、主人公が常にビデオカメラを構えているひきこもりの青年で、その異質さが印象的でした。
読んでいると、ビデオカメラのファインダー越しでないと人と話が出来ないというのが分かりました。
直接相手の顔を見ることが出来ないようです。
実の妹相手でもビデオカメラ越しでないと話せないのはまさに異様で、なぜそんなことになってしまったのかと思いました。
この青年もハライを予約するわけですが、さすがにレストランでまでビデオカメラを構えているのは不審じゃないかと本人が気にして悩んでいたのが面白かったです。
最後のエピローグで10月31日午後6時のハライの様子が語られますが、この青年もちらっと登場していました。
本人の悩みと、他のお客さんから見たこの青年の挙動のギャップが面白く、意外と他の人からは違う見え方をするんだなと思いました。
ハライで美味しい料理を食べて、明るい気持ちで帰路につき、その先の人生に進んでいってほしいと思います


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「オー!ファーザー」伊坂幸太郎

2014-05-07 22:33:03 | 小説
今回ご紹介するのは「オー!ファーザー」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
父親が四人いる!?
高校生の由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。
個性溢れる父×4に囲まれ、息子が遭遇するは、事件、事件、事件──。
知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。
多声的な会話、思想、行動が一つの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語が、あなたの眼前に姿を現す。
伊坂ワールド第一期を締め括る、面白さ400%の長篇小説。

-----感想-----
主人公の由紀夫は、高校二年生。
由紀夫には、父親が4人居ます。
鷹、悟、勲、葵と4人居て、4人とも由紀夫のことを「俺の子だ」と言っています。
この4人と由紀夫が同じ家に住んでいるのですが、そんな特殊環境で育ったからか、捻くれた子になってしまったようです
由紀夫は凄く大人びていて、醒めていて、父親達との会話でも適当にあしらうような感じで話すことがしばしばでした(笑)

父親達は由紀夫に格言じみたことを言うことがよくあります。
序盤から格言的な言葉が出てきて、これは後半でこの言葉が生きてくるんだろうなと思いました。
伊坂さんの小説の十八番で、序盤で何か印象的なキーワードが出てきた場合、かなりの確率でそれが伏線になっていて後半に思わぬ形で登場したりします。
それは人の名前もそうで、「富田林(とんだばやし)さん」なる謎の人物の名前が出てきた時も、どう考えても物語が進めば登場するんだろうなという予感がしました。
「富田林さんは怖いぞ、やばいぞ」という感じでその名が語られていただけに、どんなやばい人が出てくるのか興味深かったです。

ちなみに父親達4人の職業は、鷹がギャンブラー、悟が大学の教授、勲が中学校の教師、葵がバーの経営者。
鷹は賭け事大好きでアウトローの陽気な悪オヤジの雰囲気を醸し出していて、悟はあらゆることを知っていてクイズ番組に出れば優勝出来るのではというくらいの博識、勲は筋骨隆々のスポーツ万能タイプで由紀夫に戦闘の仕方を教えてくれたりもしました。
最後の葵は女性を見かければ即声をかけるというくらいの女好きで、あまりの声のかけっぷりに由紀夫も呆れていました^^;

ただ父親達、4人が4人とも、良い味を出しているんですよね。
4人の誰かしらと由紀夫が2人で話す場面もあるのですが、みんな何かしら興味深い話をしてくれます。
釣れない態度を取る由紀夫ですが会話は軽妙で、読んでいて面白いです。

そしてこの作品の特筆すべきは、終盤の怒涛の伏線回収ラッシュです
あれも伏線、これも伏線で、終盤の意外なところで見事につながります。
伏線が一気に終盤で結びついて一つの大盛り上がりな物語を見せてくれるのは本当に凄いです
伊坂さんの作品では「別々だった物語が一つに合わさり、うなりを上げて動き出す」という展開がありますが、この作品は「別々だった伏線が一つに合わさり、うなりを上げて動き出す」という終盤の盛り上がり方でした。
怒涛の伏線ラッシュを怒涛の勢いで読み、非常に盛り上がりながら読めるクライマックスで読んでいて楽しかったです


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「かっこうの親 もずの子ども」椰月美智子

2014-05-05 16:31:28 | 小説
今回ご紹介するのは「かっこうの親 もずの子ども」(著:椰月美智子)です。

-----内容-----
幼児向け雑誌の編集部で働く、シングルマザーの統子。
子どもを保育園に預け、シッターの協力を得ながら、仕事と育児を両立させている。
4歳の息子・智康は、夫・阿川の希望もあり、不妊治療の末に授かった子どもだ。
産後、すべてが順調かにみえたが、ささいな喧嘩をきっかけに、阿川と統子は離婚に至った。
予定通りには進まない仕事、智康の突然の病気、実母との気持ちのすれ違い、園でのママ友との人間関係など、統子に悩みは尽きないが、日々を全力で過ごしている。
そんなある日、統子は旅雑誌のグラビアページに智康とそっくりの、双子の少年が載っているのを見つける。
それをきっかけに、統子と智康は、五島列島・中通島へ向かった――。
命とは、愛とは、絆とは……子育ての今、子育てのすべてを描き切った感動の家族小説。

-----感想-----
主人公は有坂統子、41歳。
まず冒頭に、以下の言葉がありました。

――かっこうは、もずやおながなどが産卵したばかりの巣に、自分の卵をひとつ産卵する。孵化した雛は、それらの鳥を仮親として哺育される。

かっこうの雛から見て、育ててくれる親は本当の親ではないということで、この小説のテーマにつながっています。
統子の息子の智康は、出生に秘密があります。

統子の揺れまくり、ブレまくりの心境が、読んでいて引くところもありました。
ふとしたきっかけで、智康の遺伝上の父親の正体を知りたくなる場面がそうでした。
子供が欲しかった時は不妊解決薬としか見ていなかったのに、急にその正体が誰なのか知りたくなり、それを調べるために長崎県に行ったりもするのですが、私にはその行動は理解出来なかったです。
それはルール違反なのではないかなと思います。
「あの時はそう思ったけれど、今になって知りたくなった」という感じでした。
これはやはり、特殊な方法を使って子供を授かった親の苦悩、葛藤がそうさせるのだろうなと思います。

ただその長崎で、統子も智康も良い思い出を作れたのは良かったです
海を珍しがり大喜びの智康と、それを見て喜ぶ統子。
智康は遠い地の長崎に友達が出来たし、統子も良き相談相手が出来ました。
教会巡りも楽しそうだったし、私も長崎に興味が出てきました

智康が通う保育園のママ友達との友情や確執も興味深かったです。
智康と智康の友達の、子供同士の喧嘩に親が割って入ってきて、統子に「訴える」と脅しめいたことを言ってきたりもして、さすがにそれはどうなんだろうと思いました
何しろ子供の喧嘩ですからね。
統子が述懐していた

我が子が絡むと親は理性がなくなってしまう。内臓をひっくり返して見せるほどに身のうちを吐露し、むき出しになった感情だけが突っ走ってしまう。

はたしかにそうかもと思いました。
「訴える」と脅してきた親も、自分の子供のことになると極度に感情剥き出しになるタイプなんだろうなと思います。

それから連日仕事が忙しくて帰るのが遅くなる統子と、そんな時に限って体調を崩してしまう智康、さらにぐずり出す智康とそれに切れて怒鳴り散らす統子の様子が描かれていて、これは育児の一番きつい時だろうなと思いました。
仕事が遅くまでかかって疲れている時に体調を崩されぐずり出されたら、親はやっぱりイライラすると思います。
怒鳴り散らしても事態は好転しないと分かっていても怒鳴り散らしてしまい、怒鳴ってしまってから後悔するというのはリアリティがありました。

ひまわりサービスという会社のベビーシッター、神田さんは印象的な人でした。
統子の帰宅が遅い時、22時くらいまで家に居て智康の面倒を見てくれたり、統子が風邪でダウンした時智康からの電話を受け、休みの日なのに駆けつけてくれたりと、かなり良いベビーシッターさんでした。
こういう人の助けがあって、統子の子育ては何とか成り立っています。
母子二人の家族小説、終わってみればこの二人の未来が明るいものになってくれと応援したくなる一冊でした


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第149回天皇賞(春)

2014-05-04 23:20:02 | スポーツ
本日行われた競馬の第149回天皇賞(春)
京都競馬場、芝3200mで行われる長距離王決定戦です。
結果は以下のとおりです。

1着 フェノーメノ      史上三頭目の天皇賞(春)連覇
2着 ウインバリアシオン  オルフェーヴル世代のNo.2健在
3着 ホッコーブレーヴ
4着 キズナ         本来の切れ味が見られず
5着 タニノエポレット
8着 ゴールドシップ    気性の悪さが出てしまいました…

というわけで、昨年の覇者、フェノーメノが今年の第149回天皇賞(春)を制覇
メジロマックイーン、テイエムオペラオー以来史上三頭目となる天皇賞(春)連覇を成し遂げました
脚部不安からの長期休養明け2戦目で、まだ絶好調とまではいかないのではと思いましたが、見事な復活劇でした

断然の一番人気に支持された昨年の日本ダービー馬、キズナはまさかの4着。
私は天皇賞(春)を優勝したキズナが太陽の光を浴びながら正面スタンド前をウイニングランする姿を思い浮かべていただけに、今日の敗戦はとても残念でした
後方から2番手に待機してレースを進めて、最後の直線で末脚が炸裂するかと思いましたが、イマイチ伸び切れませんでした。
前走の産経大阪杯を勝った時のような切れが今日はなかったですね。
末脚が武器のこの馬が最後の直線で内側に居たホッコーブレーヴに脚色で負けて交わされてしまったのを見ると、距離が長いのではという印象を持ちました。
3200mに対応することは出来ても、この距離でフルに力を出せる強敵が相手だとやや分が悪いという印象です。

ただ次走の宝塚記念は2200m。
産経大阪杯と同じ阪神競馬場で、距離もコースも申し分ないですし、ぜひ勝ってほしいです。
勝って胸を張って凱旋門賞に行ってほしいです。
第80代日本ダービー馬の巻き返しを期待します

ゴールデンウィーク

2014-05-03 23:38:50 | ウェブ日記
今日からゴールデンウィーク4連休です
というわけで、今日から実家に帰省しています

そして先日生まれた姪っ子に初めて対面しました。
すごく小さな体でスヤスヤ眠っていました。
頻繁に手を伸ばしたり足を伸ばしたりして体を動かしながら、時折り「あ」とも「う」ともつかない言葉を発しています。
両手を伸ばして万歳の格好になりながら寝ているのが何だか面白かったです^^
伸びをすることが体の成長につながっているらしいので、着々と身長を伸ばしていくんだろうなと思います
生後2週間なのでまだ目はあまり見えていないと思いますが、こちらを見てくれるので「そこに誰か居るな」と気配は感じていそうです。
泣きだすとかなりパワフルな子で、「オギャー」とも「ウエーイ」ともつかない泣き声を上げています。
あと、私も抱っこさせてもらいましたがなかなか緊張しますね

この4連休では小説を2冊読む予定です。
ゆっくりリラックスして過ごして、疲れを取れればと思います。

「終わらない歌」宮下奈都

2014-05-02 21:56:15 | 小説
今回ご紹介するのは「終わらない歌」(著:宮下奈都)です。

-----内容-----
卒業生を送る会の合唱から3年、少女たちは二十歳になった。
御木元玲は音大に進学したが、自分の歌に価値を見いだせなくて、もがいている。
ミュージカル女優をめざす原千夏が舞台の真ん中に立てる日は、まだ少し先みたいだ…。
ぐるぐる、ぐるぐる。
道に迷っている彼女たちを待つのは、どんな未来なんだろう。

-----感想-----
この作品は「よろこびの歌」の続編となります。
二十歳になる御木元玲たちの物語です。

物語は以下の六編で構成されています。

Ⅰ シオンの娘
Ⅱ スライダーズ・ミックス
Ⅲ バームクーヘン、ふたたび
Ⅳ コスモス
Ⅴ Joy to the world
Ⅵ 終わらない歌

第一話が御木元玲の物語なのですが、何だか再び自信をなくしているようでした。
音楽大学に入った玲は、自身の歌の力量を「20人のクラスの中で7番目くらい」と評していました。
「かなり絞り込まれて入学しているわけだから、そこで真ん中より上なら悪くはないのかもしれない。でも、誰かの歌を聴きたいと思ったとき、たかだか大学のひとクラスの中で七番目の人間の歌をわざわざ聴きに行こうとは思わないだろう」とも述べていました。
すごく冷静に淡々と、自分自身を評していたし、どこか冷めたものを感じました。
そんな玲が欲しいと願っていたのが、以下のもの。

「私は情熱がほしい。どんな障害をも越えていく情熱。たぶんそれこそが、才能だとか、個性だとか、それから努力だとか、素質だとか、可能性、環境、遺伝、機会、そんなようななんだか別々のようでいて実はとてもよく似た、たちの悪いばけものに立ち向かう唯一の武器なんじゃないかと思う」

第二話は中溝早希の物語。
大学の運動科学部に進み、スポーツ選手をサポートするスポーツトレーナーを目指す早希。
中学のソフトボール部でエースだったのに無理をして肩を壊してしまった早希は、もう選手として活躍することは出来ません。
元々エースになるくらいで非常に気も強いのですが、その早希の熱い気持ちが現れていたのが以下の言葉。

強くなろうとしてる人の手伝いならいくらでもする。だけど、適当にやってる人に手伝えることなんてなんにもないよ。

努力もしないうちから自分には何もできないと思っている人のことをなまぬるいと思ってしまう。

スポーツトレーナーを目指しているものの、適当にやっている人をサポートしたいとは思わないようです。
何で向上心がないんだ、何でもっと上を目指そうとしないんだと、やきもき、イライラしてくるのだと思います。

そんな早希なので、第三話の「バームクーヘン、ふたたび」の同窓会で御木元玲と話した時は険悪な雰囲気になっていました
これだけ強くなろうとしている早希なので、自分に冷めて諦めがちな玲を見るとイライラするようです。
私は玲と早希のやり取りにハラハラしました。
小説という、文章だけでもその場の緊張感がビリビリと伝わってきました
「井の中の蛙っていうけど、玲は逆なんだよ」
「井戸の蛙は狭い世界で自分が一番だと思い上がってるんだよね。でも、玲は逆。ほんとうは一番になれるかもしれないのに、第二グループだと決めつけている。そうやって投げてるんだよ」
玲は玲で淡々としつつも全然引かないので、この小説でも屈指の緊迫した場面になりました。
そしてふと「よろこびの歌」のレビューを読み返してみたら、あの時はやる気になっている玲に対して、自分に冷めて諦めがちな早希がイライラしていたんですよね。
今回は自分に冷めて諦めがちな玲に早希がイライラしていて、何だかんだでこの二人はよく似ているなと思います(笑)

ちなみにこの第三話は里中佳子という人が語り手なのですが、印象的だったのが以下の言葉でした。

ちゃんとわかっている。気持ちはあの頃に戻っても、身体はここにある。この子たちとはもう現在ではない。

同窓会で、気持ちは当時の高校二年生に戻っても、もう現在はみんな違う道に進んでいるということで、何となく心を捉える言葉でした。
あともう一つ、印象的だったのが

私がぼうっと過ごしている間に、集めていたカードに価値がなくなり、トレーニングしていた人たちははるか遠くに進んでいる。

という心境吐露でした。
久しぶりにみんなに会ってみて、これを感じることってあると思います。
当然焦りもするし、佳子の心境はよく分かりました。

第五話「Joy to the world」の語り手は原千夏。
御木元玲の一番の友達でもあり、アルバイトをしながら劇団に所属してミュージカル女優を目指しています。
高校二年生の時の千夏とミュージカル女優は全く結びつかなかっただけに、この現在の姿は意外でした。
千夏はかなり強くなっていると思いました。
第一話で、玲がある人物にひとめぼれしてしまったっぽいことや、似合わないアルバイトを始めたことに苦言を呈すところとか、高校二年生時代からは想像もつかないです。
それと同時に、周りを楽しい気分にさせてくれる天真爛漫なところも変わっていなくて良かったです。
良い役をつかんで、ミュージカル女優として花開いてほしいなと思います

第六話「終わらない歌」は、再び御木元玲が語り手。
時系列は大学四年生の春。
第一話が大学二年生の秋だったので、一年半ほど経過しています。
この最終話では、今まで上げてきたような、これはという表現はありませんでした。
でも素晴らしく良い最終章です
玲も千夏も生き生きとして、楽しく踊りだすような”陽”の力を強く感じました
特に玲のそういった姿を見られるのはなかなかないので「ついに来たか」という感じで嬉しかったです^^
冷めていた玲が熱くなるのは読んでいるほうも楽しくて、この先大きく羽ばたいて行ってくれるのではないかと期待せずにはいられないラストでした


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