なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

心肺停止

2024年01月21日 | 循環器疾患

 20日の夕方に感染管理ナースから、コロナの患者さんが入院した、とメールが来た。その日の日直の内科の先生が90歳代女性を入院させていた。

 最近、入院が断続的にあり、患者数がじわじわ増えている。今回は中等症Ⅱ相当で、厳しいようだ。ずっとコロナの入院を専任で診てきたが、5類になってからは当たった人が担当となった。

 

 1月16日は腎臓内科の若い先生が当直だった。翌17日に、前夜に救急搬入された心肺停止の86歳男性の話をしていた。

 自宅の浴槽に入った状態で家族が発見した。反応はなかった。顔は浴槽のふちに乗っていて、お湯につかってはいなかった。救急隊到着時に、発見した孫が心マッサージをしていた。心肺停止(心静止)で、心肺蘇生術を行って搬入された。「

 心肺蘇生術にはまったく反応しせず、死亡確認がなされた。当院初診でこれまでのことはわからない。死因検索のためにAutopsy imaging(AI)が行われた。

 頭部CTでは死因につながる異常を認めなかった。胸腹部CTでは、明らかな所見があった。大動脈が解離して両側胸腔内に出血して、心タンポナーデを呈していた。下行大動脈は虚脱している。これでは心肺蘇生にまったく反応しないだろう。ほとんど即死だったと思われる。

 

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急性心筋梗塞

2023年12月04日 | 循環器疾患

 11月29日(水)の当直の時に、午後5時半に搬入された呼吸困難の患者さん(肺炎による慢性閉塞性肺疾患増悪)を診ていると、別の内科の先生(もともとは消化器外科医)が救急室に顔を出した。

 後で訊くと、急性心筋梗塞の患者さんを地域の基幹病院循環器内科へ救急搬送してきて、その戻りだった。

 

 72歳女性がその日の午後3時に胸痛と背部痛を訴えて、外来を受診していた。前日の夜間から始まって、眠れなかったそうだが、朝まで我慢していた。

 午前8時過ぎに市内の内科クリニックを受診して、採血検査後に上部消化管内視鏡検査が予約された(1月に)。受診時にどういう訴え方をしたのかわからない。嘔気があるとも訴えたらしい。

 別居の妹さんに当院受診を勧められて、午後に当院に来たという経緯だった。ふだんは眼科医院に通院しているだけで、内科系の通院はない。

 心電図でV1-4に明らかなST上昇を認めた。血液検査では白血球7200・CRP0.3だった。トロポニンIが20728.5と著明に増加している。CK 2128・CK-MB 274・AST 173・LDH 721と筋原性酵素が全部上昇している。(受診した内科クリニックは末梢血・CRPは迅速で出て、生化学は外注のはず)

 胸部X線ではなく、胸部CTを検査していた(大動脈解離の鑑別か)。心嚢液が軽度に目立つ。単純CTだが大動脈解離はなかった。明らかな心不全の所見はない。

 検査後に救急室に移動して、点滴・酸素吸入を開始した。来院時は血圧が100ちょっとだったが、その後99/71mmHg、91/68mmHgと低下している。酸素飽和度は97%(室内気)だったが、顔色不良・末梢冷感を認めた。

 救急隊にそのまま搬送依頼というわけにいかず、先生も同乗しての搬送となった。先方の病院には無事着いて、当院に戻って救急室にちょっと顔を出した、というところだった。

 

 この先生は11月いっぱいで当院を辞めて、関東圏の病院に移ることになる。その日は勤務最終日だった。

 翌30日は挨拶周りをして、お昼には病院を出られた。200床弱の病院の院長先生になられる。世代交代が進んでいない病院でなかなか、と言っていた。持ち前の明るい人懐こい性格で、きっと何とかやっていかれるのだろう。

 

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心房細動・心不全

2023年10月07日 | 循環器疾患

 9月28日(木)に皮膚科の先生から、前夜の当直の時に右下肢の腫脹した89歳男性を入院させたので、時間のある時に診てほしいといわれた。ゼーゼーして酸素吸入もしているという。

 言葉通りだと、深部静脈血栓症から肺塞栓血栓症を来した可能性が考えられた。ただ喘鳴は出るだろうか。

 もともと心房細動があり、心原性脳塞栓症(後遺症)で当院神経内科の外来に通院していた。担当医が春に退職したので、現在は紹介された市内の内科クリニックに通院している。

 心房細動としてDOAC(エドキサバン=リクシアナ)が処方されていた。深部静脈血栓症は起こりがたい。

 病室に行ってみると、かなり肥満した患者さんだった。一人暮らしで、自力で車椅子に移乗して生活しているらしい。両下腿は黒褐色に変色して皮膚は肥厚している。うっ滞性皮膚炎のようだ。

 皮膚科外来に通院して、保湿剤とステロイド剤の混合した軟膏と白癬症の軟膏が処方されていた。皮膚科医としてはおなじみの患者さんなのだった。

 右下肢が左下肢に比べて腫脹しているが、熱感があり、皮膚表面に膿疱が散在している。皮膚軟部組織感染症(蜂窩織炎、一部膿瘍化)による症状のようで、皮膚科の範疇だった。

 聴診すると両側に喘鳴が聴取された。酸素3L/分が開始されていて、飽和度は98%と保たれている。気管支喘息の既往はない。胸部X線は心拡大・肺うっ血があり、心臓喘息としての喘鳴のようだ。要するに、心房細動・心不全(の悪化)だった。

 健側である左下肢にも浮腫がある。全身的にむくんでいて、点滴は困難だった。

 

 皮膚科医に声をかけられたのがお昼で、その日は午後からICD講習会で出かける予定だった。「右下肢は先生の分野なので、抗菌薬をお願いします、心房細動・心不全は(処方されていない)利尿薬で治療を開始します」、と伝えた。

 アゾセミド(ダイアート)30mgをすぐに内服してもらうことにして、夕方になっても変わらない時は別の内科医に相談してもらうことにした。

 結果は、アゾセミド内服後に尿が多量に出て、翌日までに3000mlが排出されて、喘鳴は消失していた。その後数日間尿量2000ml/日が続いて、その後は1000ml/日に落ち着いた。

 降圧薬としてARB・ACE阻害薬・Ca拮抗薬が処方されていたので、少しずつ調整して今どきのFantastic 4に変更していくことにした。

 

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急性心膜炎

2023年09月26日 | 循環器疾患

 9月15日金曜日に地域の基幹病院循環器内科に紹介した88歳男性の返事が来ていた。病名は急性心膜炎となっていた。

 

 この患者さんは2020年2月7日にリウマチ性多発筋痛症(PMR)で入院している。約1か月間上下肢の痛みで鍼灸院に通院していたが、良くならなかった。その日は体動困難となって救急搬入された。

 両側肩・両側腰部から大腿部の痛みがあり、炎症反応も上昇していた。普通PCRは発症1週間くらいに受診されるので約1か月我慢しての受診は珍しかった。

 鑑別(菌血症)のための血液培養2セットを提出して、プレドニン15mg/日で開始した。約1週間かかって、症状は軽快していった。

 外来治療ではプレドニンを漸減していき、5mg/日で2年間継続してから1mgずつ漸減して中止した。2022年6月に終診としたが、再発する可能性があり、その時はすぐに受診するよう伝えていた。

 

 9月15日はPMRの再発かと思っての受診だった。2日前から両側肩の痛みがあり、前胸部の重苦感もあるようだという。住所は市内だが、車がないとすぐには来れない。電車(一駅だが)とバスで病院まで来ていた。

 下肢の症状はなく、普通に歩行できる。両上肢は普通に挙上できた。これはPMRではない。

 血液検査では白血球9500・CRP13.3と炎症反応が上昇していた。筋原性酵素の上昇はなかったが、心電図でⅡ・Ⅲ・aVFで軽度のST上昇があった。胸部X線では以前と比べて心拡大が軽度にある。

 循環器内科に連絡すると、すぐに救急搬送するようにといわれた。急性心筋梗塞にしては変だと思いながら搬送した。急性心膜炎といわれれば、なるほどなのだった。

 心エコーで心嚢液貯留と大動脈弁狭窄(AS)を認めたそうだ。心臓カテーテル検査で冠動脈の狭窄はなかった。NSAIDs投与ですみやかに改善して、退院となっていた。外来でASのフォローをすると記載されている。

 

 できれば、Ⅱ・Ⅲ・aVF以外の誘導にもST上昇がほしかった。ふだんは年齢の割に身体も認知力も問題ない方で、我慢強い。再発した時はすぐに受診するように、と言っていたことだけは多少役立ったのかもしれない。

 

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完全房室ブロック

2023年09月08日 | 循環器疾患

 9月6日に地域の基幹病院循環器内科から95歳女性が転院してきた。7月28日に完全房室ブロック・心不全で救急外来担当の先生が搬送していた。入院はその先生が担当になる。

 市内の内科医院に高血圧症・糖尿病で通院していたが、最近は動けなくなり、家族が薬だけもらいに行っていた。その日は意識レベルが低下したとして家族が救急要請していた。

 当院搬入時は心電図モニターで心拍数40/分と徐脈を呈して、20台を記録したりもしていた。12誘導心電図で完全房室ブロックを認めていた。肢誘導は著明な低電位差になっている。QRSはwideで心室リズムだった。

 胸部X線では両側胸水と葉間胸水を認めて、肺野はうっ血・水腫を呈している。

 95歳と超高齢で心臓ペースメーカーの適応はどうかという問題はあるが、循環器内科で判断してもらうしかない。担当した先生はプロタノールの点滴静注を行って、搬送していた。超高齢でどうするのだろうかと思ったのを覚えている。

 

 先方ではプロタノールを継続して、心拍数60/分になり、QRSはnarrowになったそうだ(junctional rhythmになったのだろう)。利尿薬の投与で利尿がつき、心不全は軽快していった。プロタノールは漸減・中止となった。

 ベット上の生活で(要は寝たきりということ)、徐脈による症状の訴えがないので、積極的な心臓ペースメーカー植え込み術の適応はなく、むしろ植え込みのリスクがあるので、このまま経過をみることが妥当と判断した、とある。

 胸部X線では心不全所見の明らかな改善を認めているが、心電図は変わりなく、QRSはwideで心拍数44/分だった。

 

 徐脈で心臓ペースメーカー治療までの橋渡し(つなぎ)としては、アトロピン0.5mgを静注して、イソプロテレノールの点滴静注になっている。

 プロタノール(イソプロテレノール)の点滴はしたことがないかもしれない(記憶にない)。プレタノールL注は、0.2mg/1mLで、0.01~0.03μg/kg/分(γ)で使用する。

 「循環器のトビラ」(medsi)ではプロタノール0.2mg/A+生食250mLを40~120mL/時で持続投与とある。これだとすぐに点滴がなくなりそうだ。

 「救急ICU薬剤ノート」(羊土社)には、プロタノールの持続静注は初期投与量0.005γで常用量0.005~0.2γとなっていた。体重60kgでは、プロタノール3A(0.2mg/1mL/A×3)+生食37mlの全量40mLを1.2mL/時(0.005γ)で開始する。これを心拍数50~60/分を目標に1~2mL/時ずつ増量とある。

 こちらの方が使いやすそうだ。1mL/時で開始して、1mLずつ増量して5~6mL/時までの調整で0.005~0.03γくらいか。

 担当した先生は、プレタノール2A(0.2mg/1mL/A)+生食20mLを2mL/時で開始していた。初期開始量としてちょうどよさそうで、わかりやすい調整だった。

 

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