なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

末梢カテーテル関連血流感染症?

2024年09月11日 | 感染症

 回復期リハビリ病棟に入院している80歳代女性は、先月末から2回嘔吐して発熱した。

 1回目ははっきりしなかったが(ポータブルX線では)、2回目の時は胸部CTで確認すると右肺下肺野背側(S6)に浸潤影を認めた。

 1週間程度の誤嚥性肺炎に治療を行って、食事も再開していたので、週明けに点滴を中止する予定だった。ところが、週末日曜日から高熱が出た。病棟看護師さんはクーリングで月曜日に報告としていた。

 月曜日も高熱があり、再度のCTと血液・尿検査を行った。両側肺に低蛋白血症から来る胸水貯留があったが、明らかな肺炎像はなかった。酸素飽和度の低下もない。

 尿混濁はなかったが、尿培養は提出した。肺炎や尿路感染症ではなさそうだ、ということで改めて身体を見ると、左前腕から肘関節にかけて発赤・熱感がある。

 点滴をしていた部位の血管炎から蜂窩織炎になっているようだ。範囲が狭いので、本当にこれが高熱原因となる感染巣でいいのかとも思った。

 血液培養2セットを提出すると、翌日には検査室からグラム陽性球菌が検出されると報告が入った。肺炎球菌もそうだが、そのそも肺炎ははっきりしないのと、案外肺炎で菌血症は少ない。

 やはり血管炎~蜂窩織炎からの菌血症らしい。培養で菌種確定までバンコマイシン投与とした。

 

 

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Candida parapsilosis

2024年09月10日 | 感染症

 8月29日に記載したカテーテル関連血流感染症の70歳代後半の男性のその後。

 血液培養2セットといわゆるカテ先から、Candida parapsilosis(カンジダ・パラプシローシス)が検出された。当方がよくCVカテーテルを挿入していたころにも出たことがある菌種だった。

 若い先生たちはPICC(末梢静脈からのCVカテーテル)をよく行っている。感染を来しにくいはずだが、「感染を来すことが多い気がする」といっていた。PICCが得意な先生といっしょに行っていて、「清潔操作に問題ないと思うんですが」ともいっていた。

 抗真菌薬は(菌種判明まで)ミカファンギンで開始して、解熱軽快はしていた。外来に大学病院感染症内科から来ている先生に相談して、血液培養陰性化から投与期間を決めることになっている。

 Candidaは菌種ごとに抗真菌薬の有効性が異なる。Candida parapsilosisはアゾール系(フルコナゾール)、キャンディン系(ミカファンギン)が使えるが、第一選択はアゾール系でキャンディン系は代替薬になるようだ。

 キャンディン系は組織移行性が悪く、特に眼内への移行が悪いので、眼内炎を伴う場合はアゾール系かポリエン系(アンホテリシンB)を使用する。

 

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カテーテル関連血流感染症

2024年08月29日 | 感染症

 内科の若い先生に、血液培養でカンジダが検出された患者さん(70歳代後半)がいて、と報告があった。

 

 入院は長期になっていて、そもそもは4月に地域の基幹病院脳神経内科から脳梗塞のリハビリ目的で転院してきた。両側大脳に脳梗塞があり、血栓性脳塞栓症が疑われたが、心電図では洞調律だった。

 深部静脈血栓症からの卵円孔を介した奇異性脳梗塞を疑っていたが、確定はできなかった。当院転院後も心エコーを行ったが、真空内シャントは否定的だった。

 転院当初は食事摂取もできたが、その後反応が悪くなり、経口摂取は不可能になった。頭部MRI再検で梗塞巣が増加してきていた。

 7月には中心静脈カテーテルを挿入(PICC)して、高カロリー輸液を行っていた。病状が安定していれば、療養型病床へ転院ということになる。

 8月22日から高熱があり、24日に血液培養2セットを提出していた。(それまでも発熱が出没していたが、持続するようになった。)今週酵母様真菌が検出され、Candidaの何かだった。

 

 PICCのカテーテルは抜去していた。菌名確定まではミカファンギンで開始していいでしょうか、ということだった。グラブラータなどでなければ効くはずだ。カテーテル抜去だけで解熱はしていた。

 どこまで治療したものでしょうか、とも訊かれた。患者さんは寝たきり状態で発語もない。カテーテル関連血流感染は医原性ともいえるので、ここは治療しましょう、と答えた。培養陰性日から4週間の投与にはなる。

 ミカファンギンは1瓶約5000円で、2瓶使用するので1日1万円になる。ジェネリックだとその半額くらい。

 

 

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急性副鼻腔炎

2024年08月17日 | 感染症

 7月31日(水)に30歳代後半の女性が発熱外来を受診した。前日からの発熱(37℃台)・鼻汁・咽頭痛・咳・頭痛があった。

 発熱外来なので、新型コロナとインフルエンザの迅速検査から始まる。両者陰性だった。対症的な処方を行った。

 8月2日(金)にも発熱が続きとして受診した。発熱は38℃台で、右頬部に痛みがある。横に寝ると頭痛がするそうだ。鼻汁は黄色だった。(後鼻漏ははっきりしなかった)

 副鼻腔炎疑いだが、耳鼻咽喉科医が不在の日なので紹介できなかった。副鼻腔のX線撮影を行うと、右上顎洞に液体貯留がある。

 白血球・8100(以前の受診時は5000)・CRP3.7で軽度だが、ウイルス性よりは細菌性が疑われた。オーグメンチン・サワシリン(AMPC/CVA+AMPC)の内服を5日分処方しして、5日の再検とした。

 8月5日に解熱したということだった。右頬部に痛みは軽快していたが、鼻汁はまだ黄色調が残っている。5日分追加処方して基本的には副鼻腔炎の治療は終了とした。

 ただ血液検査時に肝機能障害があり、1週間後に再検と腹部エコーを入れた。炎症反応はすっかり正常化していて、肝機能障害も軽快していた。腹部エコーでは脂肪肝だった。(身長166cm・体重80kg)

 今回の発熱で体重が4kg減少したという。食欲は戻っていたが、体重は戻らない方がいいかもしれない。

 ただ前日に発疹(細かな発赤が多発して痒みあり)が出て、皮膚科を受診していた。中毒疹(薬疹)として抗菌薬中止と抗アレルギー薬処方がなされていた。発疹は退色してきていた。

 

 オグサワはやりすぎで、サワシリン(AMPC)単剤でよかったのだろう。AMPC自体の薬疹かもしれないが。

 

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大腸菌ESBL

2024年08月16日 | 感染症

 8月5日(月)に前週の木曜日から発熱が続く93歳女性が受診した。それまでも膀胱炎を時々起こしている。尿路感染症(急性腎盂腎炎)が疑われた。

 尿は混濁している。無症候性膿尿・細菌尿の可能性もあるが、肺炎や胆道感染症など他の感染症らしさはなかった。食欲低下もあり腎前性腎不全になっている。

 ふだん高血圧症で治療しているが、血圧90~100と低下していた。ふだんは良くしゃべる方だが、ショックバイアルで元気がなかった。

 CRPが40と著明に上昇していた。血液培養2セットと尿培養を提出して、抗菌薬(セフトリアキソン)を開始した。入院後は解熱はして炎症反応も軽減はしたが、血圧が100前後で尿所見はあまり変わらなかった。

 一見抗菌薬が効いているような経過だが、いまひとつの印象がある。尿培養の結果をみていたが、外注検査なのでなかなか結果が出ない。

 週末3連休になるので、8月9日(金)も午前と午後に見たが、結果は出ていない。気になって午後5時過ぎに見ると、尿培養から大腸菌ESBLが検出されていた。(血液培養は陰影)

 慌てて病室に行って、抗菌薬をメロペネムに変更した。3連休明けの8月13日は食欲も出て来て、CRPが2と一気に軽快していた。

 耐性菌が出ると検査室で報告を入れて来るが、この方は忘れていたようだ。

 セフトリアキソンはESBLには無効だが、「実際は高濃度の抗菌薬が尿中に排泄されるため、尿路感染では効いてしまうことも多い」(プラチナマニュアル)。といってそのまま継続することはないので、判明すればカルバペネムにする。

 

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肺炎±尿路感染症

2024年08月15日 | 感染症

 8月11日(日)の日直で2名入院した。入院担当数が19名になって、ちょっと多い。(少し退院を出さないとまずい状況ではある)

 

 その日の当直は小児科医だった。午後8時半過ぎに、80歳代前半の男性が転倒・頭部打撲で救急搬入されていた。前日から発熱があり、その日も39℃の発熱があった。

 意識はほぼ清明で会話も可能だったが、血液検査で白血球13200・CRP18.2と炎症反応が高かった。また血圧91/53・心拍数117/分なので、正確にはショックバイタルになっている。

 血液培養(1セットだけ)と尿培養を提出していた。放射線技師は院内にいたが、画像検査はしていなかった。(時間外は検査技師不在なので、検査は簡易検査で培養は保存しておくだけになる)

 入院させて、翌日日直の内科医に相談としていた。内科当番は日ごとに決めているので、その日は当方が当番になるが、この先生は翌日の内科医に依頼する。

 以前も日直で来た時に、前日夜間に入院させた低カリウム血症(1.4)の高齢者をよろしくと頼まれたことがある。確かにこのやり方の方が、実際に病院にいる内科医が診ることになるので効率がいいともいえる。

 

 CTでは左肺炎があり、両側腎臓~膀胱にステントが留置されている。尿混濁があるが、今回の尿路感染症か無症候性膿尿か判別し難い。肺炎±尿路感染症になる。入院後は抗菌薬投与(セフトリアキソン)で解熱軽快していた。

 

 この患者さんは2020年にS状結腸癌で手術歴があるが、その際に後腹膜線維症が疑われていた。そこの術中生検もあり、大学病院外科に紹介された。術後は当院に来ていないので正確な結果はわからない。

 生検では確定できなかったようだが、IgG4疾患疑いで経過観察とされた。今回見るときれいになくなっていた。(CTは当時の術前の画像)

 

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グラム陽性球菌

2024年08月12日 | 感染症

 先々週、糖尿病・高血圧症で通院している80歳代後半の男性が、高熱で受診した。悪寒戦慄もあったが、それ以外の症状は訴えなかった。

 菌血症の症状なので、コロナとインフルエンザの迅速検査を行って(陰性)、すぐに感染源の検索を行った。肺炎・尿路感染症・胆道感染症は否定的だった。

 血清PSA値が40ちょっとあり、前立腺炎が疑われた。血液培養・尿培養を提出して、セフトリアキソンを開始した。高熱と悪寒戦慄は治まったが、微熱が続いて炎症反応は不変だった。

 血液培養からグラム陽性球菌が検出されたと検査室から報告が来た。尿路系のグラム陰性桿菌を想定していたので意外だった。尿路系なら腸球菌しかない。

 いったんバンコマイシンに切り替えて経過をみて、解熱して炎症反応は軽減した。感染性心内膜炎や化膿性脊椎炎も確定できなかった。

 菌名が出て、Staphylococus captisStreptococcus anginosusだった。前者はコアグラーゼ陰性ぶどう球菌としては少ないメチシリン感受性だった。どちらもABPCに感受性がある。嫌気性培養は陰性だった。

 膿瘍らしさはないので(anginosusは膿瘍を伴う)、ビクシリン(ABPC)で経過をみることにした。入院してしばらくは血圧が90~100だったが、ショックバイタルなのだった。(回復したが、まだ降圧薬は休止している。

 セフトリアキソンがあまり効いていないように見えたのは投与日数の問題だったようだ。

 

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悪寒戦慄

2024年08月07日 | 感染症

 8月2日(金)の午後に70歳代前半の男性が発熱外来を受診した。受診の1~2時間前に自宅でパソコンを打っていた時に、突然悪寒戦慄があり、ただごとではないと自分で判断した。

 自分で車を運転して病院に来て、普通に受付をしようとした。高熱があるのが分かり、急遽発熱外来の待合に移された。

 通常は発熱で受診したいという連絡があると、発熱外来に車で来てもらって専用の駐車場に止めてもらう。問診とコロナの検査から始めて、さらに院内での検査に回すという形になっている。

 高熱と悪寒戦慄以外の症状はなかった。この患者さんは知的な印象の方で、正確に症状を伝えてくれる。コロナとインフルエンザの迅速検査は両者陰性だった。呼吸器症状はないので、違うとは思っていた。

 

 普段は前立腺肥大症で泌尿器科外来に通院している。血清PSAが4~6台と軽度高値が続いていた。MRIで前立腺癌は指摘されず、癌に関しては経過観察になっている。

 胸部X線で肺炎像はなく、尿混濁もなかった。発症して間がないので、白血球6900・CRP0.9と炎症の初期像と思われる結果だった。前立腺炎を疑ったが、血清PSAは5.517とふだんと比べて有意に高いとはいえない(これも初期像?)。

 熱が上がりきって、悪寒は治まっていた。さてどうするかだが、何らかの感染症には違いない。ウイルス性とも細菌性とも決め難いが、年齢的には細菌性になる。

 その時点では入院するほどではなく、患者さんもそのつもりはなかった。アセトアミノフェン屯用で経過をみるのもあるがそれで治まるとは思えない。診断確定できないことを伝えて、血液培養2セットを提出して、抗菌薬投与で外来治療とした。(週末に高熱、悪寒戦慄があれば入院の方針)

 

 8月5日(月)に外来に来てもらったが、8月3日には解熱して悪寒戦慄はなかった。抗菌薬継続として週末再受診とした。血液培養1セットからグラム陽性桿菌が出て、コンタミのようだ。(その日は忙しくて血液培養は看護師さんに任せた)

 

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ウイルス感染症だとは思う

2024年07月20日 | 感染症

 7月17日(水)に2日前から発熱が続く19歳男性が発熱外来を受診した。7月15日と16日に市内の違うクリニックを受診して、コロナとインフルエンザの迅速検査を受けて、いずれも陰性だった。発熱外来なので当院でも施行したがやはり陰性。

 症状は15日に発熱40℃で、当院を受診した日も38℃の発熱があった。鼻汁・咳はなく、咽頭違和感があるというが、嚥下痛はない。咽頭はわずかに発赤があるかもしれないが、腫脹・白苔などはなかった。高熱はあるが、ぐったりしているわけではなく、食事摂取はできる。

 ただその日から顔、頸部、胸部と細かな発疹が多発して、両上肢にも散在していた。皮膚科で診てもらったが、特定の診断名がつくものではないという。

 血液検査では白血球減少(3100)・血小板減少(11.2万)があった。(Hbは15.1g/dLと正常域)異形リンパ球はないが、単球が11.0%と若干上昇している。肝機能はAST 43・ALT 40・LDH 291・ALP 59・GTP 26・総ビリルビン0.6と軽度に肝細胞障害型の障害を呈していた。

 CRPが1.2と発熱3日目の値としては軽度上昇にとどまっている。血算と肝機能も含めて、ウイルス感染症を示唆する値だった。副鼻腔炎・扁桃炎・肺炎などの細菌感染症らしくはない。

 皮膚科医と相談して、何らかのウイルス感染症だろう、ということになった。本人と付き添いの母親に説明して、アセトアミノフェンだけ5日分処方して、週明けの月曜に再受診とした。

 年齢的にEBウイルスのマーカーだけ提出しておくことにした。

 

 その日の午後の発熱外来を担当したが、COVID-19の患者さんが次々に受診した。入院させたかった85歳女性もいたが、病室がなく、入院で行う治療を外来でして、翌日入院しているコロナの患者さんが退院した後に入院させることにした。

 

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グラフト感染疑い

2024年07月17日 | 感染症

 7月13日から15日まで3連休だった。その週末は大学病院からの日当直の応援はなく、全部常勤医の担当となる。たまたまそこに入っていなかった。

 7月12日(金)にCOVID-19の高齢男性が入院した。軽度だが両側肺炎があり、39℃の発熱で体動困難となっていた。他の入院患者さんは落ち着いていたので、気になるのはその患者さんだけだった。

 翌々日の14日(日)に病棟に連絡に連絡すると、36℃台に解熱して食事も半分以上食べているという。予定していた点滴を継続してもらえばいい、と判断された。

 ということで、珍しくしっかり3連休になったのだった。

 

 7月7日(日)に記載した菌血症の60歳代前半の男性のその後。

 血液培養2セットから検出されたグラム陰性桿菌は、Pasteurella multocidaだった。「ネコや犬の口腔内に常在する菌で、動物咬傷で他の口腔内常在菌との混合感染が多い。」(プラチナマニュアル)。患者さんはネコを飼っている。

 抗菌薬の感受性は良好だった。「ペニシリンに感受性があるが、口腔内嫌気性菌と混合感染があり、咬傷や軟部組織感染症でβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンのAMPC/CVA、ABPC/SBTを用いる。蜂窩織炎によく使用される第1世代セフェム系やCLDMが無効であることに注意!(プラチナマニュアル)」。

 胸部大動脈の大動脈弓部にグラフトが挿入されていて、下行大動脈から腸骨動脈にYグラフトが挿入されている。放射線科の読影レポートには「腹部大動脈周囲ないし両側腸骨動脈周囲に脂肪織濃度の上昇がみられ、明らかな病的所見と考えられる。造影CTを強く推奨する。」とあった。

 

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