7月に60歳代前半の患者さんがグラフト感染疑いで入院していた。幸いにも、抗菌薬長期投与で軽快して退院していた。
その後近くの医院に通院していたが、2~3週間の食欲不振と体重減少があった。医院の検査で貧血・低蛋白血症・炎症反応の上昇があった。前回のことがあるので、入院の時に担当した先生に紹介された。
胸部大動脈のステント挿入と腸骨動脈のグラフト置換術を、それぞれ大学病院と地域の基幹病院で受けた既往がある。前回はグラフト周囲に軟部組織陰影を認めて、そこが感染巣と推察された。
今回はその部位は軽快していて、胸部大動脈の弓部から下行大動脈近位部の周囲に軟部組織陰影を認めた。放射線科の読影レポートは感染か出血かということだった。
胸部単純X線でも、ステントが大動脈石灰化のような役割を果たして、いわゆるcalcium sign、egg shell signのようになっている。
血液培養を提出すると、翌日には菌が検出された。グラム陽性桿菌だった。前回の菌種(グラム陰性球桿菌)とは違う。外来診療に来ている大学病院感染症内科の先生に相談して、Corynebacteriumを想定してバンコマイシンが開始された。
まずは菌種の確定と抗菌薬にどれだけ反応するかみての判断になる。思わしくない時は大学病院紹介というのは前回と同じだった。手術だと大手術になってしまうので、何とか抗菌薬でやれないだろうか。