なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

亜急性甲状腺炎

2024年09月20日 | 内分泌疾患

 9月18日(水)の亜急性甲状腺炎の80歳代初めの女性が入院した。治療はプレドニン20mg/日の内服で外来治療可能だが、患者さん本人が入院治療を希望していた。

 2週間前の9月3日に動悸・息切れが続くという訴えで、内科外来を受診していた。ふだんは直腸癌術後(人工肛門造設)で消化器科の外来に通院している。

 心肺疾患や貧血はなかった。びまん性甲状腺腫があり、血液検査で甲状腺機能亢進を認めた(FT3/FT4高値、TSH感度以下)。内分泌に詳しい先生の外来に回していた。外注の甲状腺のマーカーが提出された。

 抗TSH受容体抗体は陰性で、抗サイログロブリン抗体・抗TPO抗体も陰性だった。白血球は5700だが、CRP8.4と上昇している。

 入院の約1週間前から頸部の熱感があり、4日前から39℃の高熱があった。甲状腺エコーでは甲状腺はびまん性に腫脹して両葉に低エコー域があった。甲状腺のマーカーの結果とも合わせて、亜急性甲状腺炎と診断された。

 

 数か月前に当方も亜急性甲状腺炎の80歳代女性を治療していた。亜急性甲状腺炎は教科書的には「30~60歳に多く、男女比は1:10と女性に多い」とある。イメージは比較的若めの中年女性と思っていたが、高齢者も普通にあるのだった。

 

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脳出血

2024年09月19日 | 脳神経疾患

 9月18日(水)の内科外来(再来)に、高血圧症の70歳代初めの女性が受診した。降圧薬を4種類使用しているが、血圧は120台で安定していた。

 病状やそれ以外のことで時間がかかる患者さんが多い。その中で、心気的は訴えもなく、血圧も安定しているので診察がすぐに終わる有難い患者さんだった。高脂血症もあるので、半年に1回検査をしているが、結果は問題なかった。

 その日は珍しく、実はと話し出した。40歳代後半の息子さんが当院の回復期リハビリ病棟に入院しているという。

 

 1か月前に左半身不全麻痺と知覚鈍麻の症状が出て、地域の基幹病院に救急搬入された。頭部CTで脳出血(左被殻出血)と診断され、脳外科に入院した血腫が小さく保存的治療になった。

 高血圧症があったが放置していたそうだ。比較的若年でもあり、内科で二次性高血圧症の精査をしたが、特に二次性ではなかった。降圧薬2種類(ARBとCa拮抗薬)が処方されて、血圧は軽快している。

 転院時には血腫は吸収されていた。多少の麻痺は残るかもしれないが、日常生活には支障がない。別の仕事をしていたが、実家に戻って来て自営業を手伝っていたそうだ。

 

 担当の内科医から退院後は近くのクリニックでといわれているが、いっしょに外来で診てもらえないかということだった。夫婦や親子でいっしょに(同日の同じ予約時間)通院している患者さんたちもいるので、問題はない。

 研修医のころは高血圧症放置で40歳代で脳出血発症というのは時々あったが、最近はほとんどみない。

 印象的で今でも覚えている患者さんもいる。電気工事店を経営している40歳代の男性が、電信柱に登っている時に脳出血が発症した。電信柱の上から助けを求めて、近くの人が救急要請した。いわゆる命綱は装着しているので転落はしなかったが、電信柱から降ろすのには消防のレスキュー隊が必要だった。

 ほぼ完全麻痺で歩行はできず仕事は難しかった。兄弟たちの希望で、リハビリ病院に転院していったが、改善は見込めなかった。(お子さんはまだ中学生)

 

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高浸透圧高血糖症候群

2024年09月18日 | 糖尿病

 施設入所中にCOVID-19に罹患した90歳代前半の男性は、隔離解除後も食事摂取が進まなかった。

 末梢静脈からの点滴を続けていたが、むしろしだいに摂取量は低下した。聴覚言語療法士(ST)も経口摂取は難しいとの判断になった。

 高カロリー輸液に切り替えて、昼だけの嚥下訓練を続いてはいた。9月17日の早朝から発熱があり、喀痰が増加していた。嚥下訓練自体が誤嚥性肺炎のリスクになる。

 感染症の評価として血液検査を行うと、炎症反応の上昇があった。ところが、それ以外の異常があり、血糖583mg/dl・血清ナトリウム173・BUN64.6と高値になっていた。

 血液ガスでアシドーシスはなく、尿ケトン体も陰性で、高浸透圧高血糖症候群だった。

 入院時のHbA1は5%台で糖尿病はなかったことで油断していた。血液検査の間隔がちょっと空いていた。

 急速に3時間点滴を行って(超高齢なので規定よりはゆっくり)、血糖は400mg/dl台になった。インスリンは点滴静注も考慮してポンプを用意したが、皮下注を1回して反応をみることにした。夕方には血糖が200mg/dl台まで下がった。

 メインの点滴をソリタT3に切り替えて、(酢酸)リンゲル液を側管から入れて脱水症の補正を行った。18日には血糖が160~180mg/dlで推移した。血清ナトリウムはまだ高く、Na含量の少ない点滴に調整した。

 セフトリアキソンで解熱したので、広域抗菌薬には切り替えないで継続することにした。もともと問いかけにはひとこと簡単な返事をするくらいだが、昨日はもごもごした声で聞き取りにくなっていた。

 病状が落ち着けば、療養型病床のある病院への転院になるが、しばらくは無理なようだ。高カロリー輸液の時は、定期的に(週1くらいは)検査を1か月先くらいまであらかじめ入れておく方がいいのだった。

 

 

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脳梗塞

2024年09月17日 | 脳神経疾患

 9月13日(金)に地域の基幹病院から80歳代半ばの男性が転院してきた。脳梗塞のリハビリ目的だった。

 当方が内科外来で診ている患者さんで、9月初めの予約日に来院しなかった。連れて来る娘さんの都合で、翌週にでも来るのかと思っていた。

 8月19日に左不全半身麻痺が発症して、先方の病院に救急搬入されていた。おそらく夜間で、当院の当直医が整形外科医だった日で、脳血管障害疑いだと当院には搬入されない。

 送られてきた画像を見ると右放線冠に梗塞巣があった。MRIではそれほどひどい脳動脈硬化はない。心房細動はない方で、疑ったが捉えられなかったと記載されていた。部位的には通常のラクナ梗塞になる。(部位的には麻痺が出てしまう)

 脳梗塞というよりは入院後の不穏・せん妄が著明で苦労されたようだ。転院前には過活動型せん妄から低活動型せん妄になっていまい、廃用が進行しています、とあった。

 

 認知症とは思っていたが、娘さんから急に動きが止まって反応がなくなることがあるといわれた。当院の脳神経内科外来に紹介すると、非けいれん性痙攣重積発作が疑われた。診断的治療で抗けいれん薬が処方されたが、有効ではなかったので、中止となっていた。

 11年前に脳室内出血を来した病歴がある。当時当院にも脳外科医が一人いて、原因不明として脳血管障害の専門病院に紹介していた。結局原因不明で保存的治療後に当院にリハビリ目的で転院となった(2か月のリハビリで退院)。

 

 担当が別の先生になったのは、転院の主治医を順番で回していることもあるが、現在当方の入院担当数が多いためだったようだ。

 

 

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敗血症の本

2024年09月16日 | 感染症

 敗血症の本は、基礎的な内容の記載でわかりにくいものが多かった気がする。今回、実践的な記載の「敗血症診療トレーニング」近藤豊著(金芳堂)を購入した。

 症例の提示があり、それに対する輸液・循環作動薬・抗菌薬投与などが、具体的に記載されている。これなら通読できるし、すぐに役立つ。研修医にお勧めの本になる。

 

 いったい自分はいつまで敗血症の診療をするのか、とは思っている。もう外来診療だけ、あるいは健診などだけ行うような時期だから。

 

敗血症診療トレーニング

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アルコール性肝硬変

2024年09月15日 | 消化器疾患

 地域の基幹病院消化器内科には、胃・大腸・肝臓・胆膵それぞれの専門医が揃っている。肝臓専門医が、聞いた話では親戚のクリニックを急遽継承するため退職された。

 大学病院としても地域医療の重点病院なので、少し待っていれば新たに肝臓専門医が赴任するはずだが、まだ実現していない。その後肝疾患の患者さんを次々に他院へ紹介するようになり、受け入れも休止している。

 

 8月初めに市内のクリニックから当院消化器科外来に紹介された40歳代後半の男性も、基幹病院に通院していた。専門医退職で県庁所在地のクリニックに紹介されたが、定期通院としては遠方なので行かなかった。(自分のクリニックに紹介した?)

 数か月治療中断後に、腹水貯留による腹部膨満で当市内のクリニックを受診したが、びっくりして当院に紹介してきたということのようだ。

 消化器科受診時は、AST 98・ALT 35・ALP 100・γ-GTP 91・総ビリルビン3.4と、飲酒はしていないか少し飲んでいるかという値だった。腹部CTでは中等度の腹水貯留を認めるが、肝腫瘍はないようだ。

 フロセミド20mg・トルバプタン7.5mgなどが再開されて、症状は軽快している。(何故か、抗アルドステロン薬MRAは入っていなかった。)

 

 最初から当院紹介でもいいし、基幹病院の近くや当院の近くに肝臓専門医の開業医もいるので、そちらに紹介でもいいと思うが。

 

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脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)

2024年09月14日 | 脳神経疾患

 9月11日(水)に脳梗塞の60歳代後半の女性が、地域の基幹病院脳外科からリハビリ病棟に転院してきた。担当は別の内科医だが、当院は70歳代後半から90歳代の患者さんがほとんどで、60歳代だと(比較的だが)若いという印象があって目立つ。

 MRIで右中大脳動脈領域に散在性の梗塞巣があり、MRAで右内頚動脈閉塞があった。脳動脈全体にかなりの動脈硬化を認める。

 まさにアテローム血栓性脳梗塞で、側副血行が発達したので、このくらいの梗塞巣で済んでいるのだろう。基礎疾患として高血圧症・糖尿病・高脂血症があり、喫煙もあった。

 症状は右半身不全麻痺・構語障害(軽度)・左半側空間無視だった。食事摂取は自力できるが、ベットでの起き上がり動作も介助を要する。

 「右内頚動脈閉塞に対する脳外科手術も考慮しているが、まずはリハビリ優先で」と記載されていた。脳血管がこれだけ動脈硬化だと、冠動脈など他の動脈の状態も気になる。

 

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「漢方薬を試してみたい」

2024年09月13日 | 糖尿病

 内科外来に通院している60歳代初めの男性は、別の病院の看護師をしている。DPP4阻害薬とメトホルミンにSU薬少量を処方して、HbA1cが7%の前半から後半で推移していた。

 SGLT2阻害薬を勧めていたが、処方の変更(追加)を希望しなかった。キッパリ断るというのではなく、のらりくらりと話を逸らすという感じだった。

 受診のたびに勧めていたので、一時使ってみることになったが、頻尿多尿で仕事にならないと、数日でやめてしまった。飲み始めの症状で少し我慢して続けてみてはと勧めたがだめだった。

 GLP-1受容体作動薬でもインスリンでも、する気になれば職業上すぐにできるはずだが、注射はいやということだった。

 そのうち何かで見たのか使っている人の話を聞いたのか、SGLT2阻害薬を使ってみると自分から言った。外来で2回(2か月処方)だして、HbA1cが7%台前半で推移していた。しばらく継続して、それで改善しない時は、GLP-1受容体作動薬かGIP/GLP-1受容体作動薬も勧めてみる予定だった。

 

 今週外来に来た時は、予約の取り直しをしての受診で、薬は2週間ほどなくなっていたはずだった。HbA1cが7.7%と上昇していた。まずはきちんと再開してと思ったが、別の話が出た。

 通信販売で購入した漢方薬を試しているので、糖尿病薬を中止したいという。漢方薬の名前を訊いたが、通常の漢方薬名ではなかった。「糖尿病でも高血圧症でも何でも効く」と主張する。

 病院の治療に自分で追加するなら構わないが、糖尿病薬を中止するとHbA1cが9%かもっと上昇して悪化すると伝えた。数回繰り返して伝えたが、とにかく一度試してみたいのでと聞き入れなかった。

 高脂血症と高尿酸血症の薬は出していいそうで、それだけ処方して、2か月後(希望で)の外来予約とした。もし高血糖の症状が出る時は予約日前に受診するように伝えた。

 その漢方薬は1か月1万円ちょっとするそうだ。こういうものは、数千円では安すぎて信用されない、といって1か月5万円では購入されない。ちょうどいい高めの金額である1万円から2万円に設定されている。

 

 何代か前の糖尿病の教授は、いわゆる民間薬が大嫌いだった。患者さんがそれを使うというと、もう診察はしないことにしていた。大抵の糖尿病の先生は、病院の治療にプラスして使用する分には黙認というスタンスだろう。

 

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heartnote®

2024年09月12日 | 循環器疾患

 9月10日久しぶりに医師会の講演会に行ってきた。テーマは「高齢者の心房細動」。

 心房細動の疫学から、診断、治療の話を一通りされていた。講師は真面目な先生で、冗談を交えたりはせず、淡々とした話しぶりだった。

 その中で、コードレスのホルター心電図heartnote®を紹介されていた。最大で7日間の記録ができる。不整脈(心房細動)の検出は1日付けただけでは30%のみで、7日間で90%に達する。

 発作性頻拍や発作性心房細動が疑われて、ホルター心電図を付けたものの、ちょうどその日は不整脈が生じず、空振りに終わることが多い。3回目のホルター心電図でやっとわかったという患者さんもいた。

 埋め込み式のループ心電図もあるが、ちょっと通常の病院では施行し難い。このheartnoteならば、貼付するだけなのでできそうだ。

 

 心房細動からの心原性脳塞栓症(脳梗塞)を来した患者さんの40数%は、心房細動と診断されていない。心房細動になっていても無症候性がかなりあるそうだ。

 学会では「検脈」を勧めて、やり方をホームページに載せたりしているが、普通はやらないだろう。むしろapple watchなどのデバイスで診断されることが多いそうが、高齢者で使用する人は少ない。

 治療に関しては、主催が第一三共なので、高齢者でもリクシアナ15mg/日という治療がありますという話だった。

 

 

不整脈の診断・検査・治療 | いとう内科クリニック

 

7日間連続装着可能ホルター心電図(Heartnote®)|甲斐田医院 ...

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末梢カテーテル関連血流感染症?

2024年09月11日 | 感染症

 回復期リハビリ病棟に入院している80歳代女性は、先月末から2回嘔吐して発熱した。

 1回目ははっきりしなかったが(ポータブルX線では)、2回目の時は胸部CTで確認すると右肺下肺野背側(S6)に浸潤影を認めた。

 1週間程度の誤嚥性肺炎に治療を行って、食事も再開していたので、週明けに点滴を中止する予定だった。ところが、週末日曜日から高熱が出た。病棟看護師さんはクーリングで月曜日に報告としていた。

 月曜日も高熱があり、再度のCTと血液・尿検査を行った。両側肺に低蛋白血症から来る胸水貯留があったが、明らかな肺炎像はなかった。酸素飽和度の低下もない。

 尿混濁はなかったが、尿培養は提出した。肺炎や尿路感染症ではなさそうだ、ということで改めて身体を見ると、左前腕から肘関節にかけて発赤・熱感がある。

 点滴をしていた部位の血管炎から蜂窩織炎になっているようだ。範囲が狭いので、本当にこれが高熱原因となる感染巣でいいのかとも思った。

 血液培養2セットを提出すると、翌日には検査室からグラム陽性球菌が検出されると報告が入った。肺炎球菌もそうだが、そのそも肺炎ははっきりしないのと、案外肺炎で菌血症は少ない。

 やはり血管炎~蜂窩織炎からの菌血症らしい。培養で菌種確定までバンコマイシン投与とした。

 

 

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