なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

Candida parapsilosis

2024年09月10日 | 感染症

 8月29日に記載したカテーテル関連血流感染症の70歳代後半の男性のその後。

 血液培養2セットといわゆるカテ先から、Candida parapsilosis(カンジダ・パラプシローシス)が検出された。当方がよくCVカテーテルを挿入していたころにも出たことがある菌種だった。

 若い先生たちはPICC(末梢静脈からのCVカテーテル)をよく行っている。感染を来しにくいはずだが、「感染を来すことが多い気がする」といっていた。PICCが得意な先生といっしょに行っていて、「清潔操作に問題ないと思うんですが」ともいっていた。

 抗真菌薬は(菌種判明まで)ミカファンギンで開始して、解熱軽快はしていた。外来に大学病院感染症内科から来ている先生に相談して、血液培養陰性化から投与期間を決めることになっている。

 Candidaは菌種ごとに抗真菌薬の有効性が異なる。Candida parapsilosisはアゾール系(フルコナゾール)、キャンディン系(ミカファンギン)が使えるが、第一選択はアゾール系でキャンディン系は代替薬になるようだ。

 キャンディン系は組織移行性が悪く、特に眼内への移行が悪いので、眼内炎を伴う場合はアゾール系かポリエン系(アンホテリシンB)を使用する。

 

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アルコール性肝硬変

2024年09月09日 | 消化器疾患

 先週の9月3日にクリニックからアルコール性肝硬変の60歳半ばの男性が紹介されてきた。食欲不振・倦怠感があり、体動困難ということで、入院治療の依頼だった。

 2年前に腹水貯留・下肢浮腫で受診して、地域の基幹病院消化器内科に紹介していた。肝性腹水として、入院ではなく外来治療されていた。

 肝臓専門医が退職したために、今年の始めに紹介元に戻されていた。7月には別の病院に紹介して入院になったが、「コロナの患者さんが入院して、免疫力の弱い患者さんは退院した方がいい」、という理由で退院になっていた。

 今回も入院先を探したが、受ける病院がなくて、仕方なく(?)当院に頼んできたのだった。飲酒を継続していると困ることになる(離脱症状)と思ったが、数日は飲酒していないそうだ。

 

 受診してみると、下肢浮腫はあるが、腹水・胸水はなかった。痩せている割に内臓脂肪が目立つ。

 一人暮らしで、両親・同胞は亡くなっている。甥がいるが、北海道在住だった。知人の妻という方が、夫にいわれて連れてきました、という。

 血液検査では、白血球5700・Hb13.4と問題ないが、血小板は7.6万と低下していた。肝機能は、AST 141・ALT 92・γ-GTP 167・総ビリルビン2.4とアルコール性として矛盾しない値だった。血清アンモニアは正常域。

 その後問い合わせて、基幹病院からの診療情報提供書を送ってもらった。診断はアルコール性肝硬変・肝性腹水となっていた。途中で通院の中断もあったが、腹水・浮腫の悪化で再度受診したという経過が記載されていた。

 利尿薬としてフロセミド20mg・スピロノラクトン25mgが処方されていたが、増量するほどでもないので、そのまま継続とした。総蛋白6.3・血清アルビミン2.9と低蛋白血症がある。

 入院すると、食事摂取は良好だった。起立して歩行はできるが、ゆっくりでふらつきがある。それでもしだいに浮腫は軽減して、歩行も良くなって来た。

 本人の希望は、帰っても一人なので、できるだけ長くおいてほしい、ということだった。今のところは「おとなしくしている」という雰囲気。こういう入院(絶対入院というほどではないが、諸事情で入院)は当院ならではだろう。

 

 初期研修は港町の病院だったためか、アルコール性肝硬変・アルコール性慢性膵炎の患者さんをかなり診ていた。昔に比べると、アルコール性肝硬変は大分少なくなっているような印象がある。希少な症例になっていくのかもしれない。

 

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GIP/GLP-1受容体作動薬

2024年09月08日 | 糖尿病

 9月7日(土)にGIP/GLP-1受容体作動薬の「マンジャロ」の講演会に行ってきた。すでに長期処方可能になっているが、まだ使用していなかった。

 GLP-1受容体作動薬は、以前からのトルリシティ(デュラグルチド)をずっと使用していて、オゼンピック(セマグリチド)も使用していなかった。

 コロナ禍でMRさんとあまり会わなかったり、講演会に出ることもなかったがということもあるが、自分でも糖尿病治療に関して遅れてきていると思っていた。

 製品の方でも、1回1本使い切りと使用しやすいアテオス製剤が品薄で手に入りにくかったという事情もあった。遅ればせながらだが、専門医の講演を直接聴いて、使い始めようと思っての出席だった。わかりやすい内容で、「当たり」の講演会。

 

 マンジャロ(チルゼパチド)はGIP/GLP-1受容体作動薬で、開始は週1回2.5mgを4週間投与して、その後は週1回5mgを皮下注する。他のGLP-1受容体作動薬と比較してHbA1c低下も体重減少も上回る。

 その代わり、副作用の嘔気・嘔吐や下痢も出やすい、かと思っていたが、GLP-1の副作用をGIPが相殺するのでそれほどではないそうだ。値段はGLP-1受容体作動薬より1000円ほど高い。

 GLP-1受容体作動薬を使用していなかった患者さんほどではないが、GLP-1受容体作動薬からの切り替えでも上乗せ効果がある。今後は積極的に使用しようと思う。

体重減少効果を持つ糖尿病新薬:マンジャロ|糖尿病内科(千船 ...

 

 マンジャロの適応は2型糖尿病だけだが、オンライン診療では肥満薬として薬価より高い値段で使用されている。マンジャロで検索すると、楽天市場が出てきたが、これはキリマンジャロだった。

 

 

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注 ...

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卵巣腫瘍

2024年09月07日 | 産婦人科疾患

 9月2日に記載した絞扼性腸閉塞疑いのその後。

 絞扼性腸閉塞疑いとして搬送した地域の基幹病院外科から受診後の報告が来ていた。診断は卵巣腫瘍で、保存的治療になったそうだ。産婦人科医と相談の上、対応を決めるとあった。

 

 その日は内科再来が多く、新患の診察は2時間待ちになっていた。待ち時間が長いので、点滴室で休んでいたところに診察に行ったのはお昼になってしまっていた。

 相談した消化器科医も内視鏡検査中だったので、しっかり診たとはいえなかった。その後、消化器科医がCT画像を見直して、小腸が一塊になった?と診たところは消化管とのつながりがないことがわかった。消化管以外で子宮近傍にあるのは卵巣しかない。

 時間がない中での対応というのはあるが、要は実力不足。こちらでは手に負えないので、高次医療機関に搬送したことだけが正解だった。 

 突然発症で炎症反応が上昇していたこと、腹水が貯留していたことから、保存的治療で大丈夫なのか。経過をみて適切な治療がなされるのだろう。

 

 

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直腸穿孔

2024年09月06日 | 消化器疾患

 9月3日に記載した消化管穿孔の患者さんのその後。紹介した整形外科医(その日の当直医)のところに返事がきて、診断は直腸穿孔で人工肛門造設が行われたそうだ。

 腹部CTを見ると、直腸S状部に小さな遊離ガスが1個あり、その周囲の腸間膜にも小さな遊離ガスが2個あった。便の排出らしい像は指摘できない。これだとピンポイントの穿孔だったと思われる。

 以前にあったが、大きな穿孔だと便が腸管外に排出されて、みるみるショックに陥ってゆく。今回は穿孔が小さかったことで、発症が排便直後ではなく、受診時にバイタルが保たれていた理由なのだろう。(腹痛が発症したのは午前0時ごろで、その2時間くらい前に排便があった。)

 外科医はCT像を見て、手術前に穿孔部位を推定していたのだろうか。

 

 

 

大腸の解剖用語 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より ...

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発熱外来

2024年09月05日 | COVID-19

 9月にがんセンターの感染管理合同カンファランスがあるので、直近2週間分のCOVID-19の患者数を出すことにした。

 8月26日(月)から9月1日(日)までの1週間では、発熱外来受診者が41名で、14名がCOVID-19と診断された。受診数も2名から12名とばらつきが大きい。COVID-19も、平均すると1日2名になるが、日によって全くいない時と1日7名という日がある。

 発熱外来当番は毎日変わるので(午前・午後で当番を決めている)、当番としては当たりはずれがあるということになる。現在、COVID-19の入院は2名で、病院としては0~2名で対応できると助かる。

 8月から発症の山(11波)が来ているが、おそらくピークは過ぎつつあるようだ。国立感染症研究所の統計は下記のようになっていた。

 

 COVID-19以外の発熱患者さんは急性上気道炎が13名・肺炎が3名・尿路感染症2名などで、他には扁桃炎・腸炎・熱中症などになる。不明熱で入院も1名あった。インフルエンザA型も1名いた。

 病棟看護師さんが、自宅で検査してコロナの検査が陽性と出た。病院で迅速検査(抗原定性)を行うと陰性だった。翌日PCR(迅速)も行ったが陰性だった。結局自主的にコロナかもということで数日休みことにした(体調不良には違いない)。

 

 

 

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両側水腎症

2024年09月04日 | 泌尿器科疾患

 9月1日(日)の夜間に、前日からの下腹部痛を訴えて70歳代半ばの男性が救急外来を受診していた。

 当直の内科医が腹部単純CTで確認すると、両側水腎症(右>>左)を呈していた。膀胱内に尿が大分貯留しているが、完全に尿閉になってはいなかった(尿排泄が多少はある)。

 尿カテーテルを挿入すると、1100mlの尿排出があり、下腹部痛は軽減した。これで水腎症が改善すれば尿閉による症状となる。

 90分後に腹部CTを再検して、両側水腎症の程度は変わりなかった。

 当直医はがんセンターに連絡を入れた。先方の当直は内科系の先生で、今来てもらっても対応できないので、日中に御紹介下さいということだった。

 

 この患者さんは昨年9月に、がんセンターで直腸癌の手術を受けている(人工肛門造設術)。退院直後の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患して、退院直前に面会に行った家族が罹患していたことが判明した。

 当院に入院して、がんセンターにもその旨が報告されている。特に問題なく治癒して退院していた。

 

 膀胱・前立腺疾患による尿閉・水腎症なのか、直腸癌と関連しているのかはわからない。翌月曜日にがんセンターを受診したはずなので、それは先方での判断になる。

 

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消化管穿孔

2024年09月03日 | 消化器疾患

 9月3日早朝午前4時半に病院から電話がきた。2日(月)当直の整形外科医だった。腹痛で受診した患者さんのことで相談があるという。

 午前1時から腹痛が生じた70歳代半ばの男性が午前3時に自分で車を運転して受診した。連絡はなく直接の受診だった。

 腹部が硬かったというから、板状硬だったのだろう。腹部CTで腹腔内(肝表面と上腹部の腸間膜内と肝臓の陥凹部)に遊離ガス像を認めた(放射線技師が指摘してくれた)。

 「血液検査で異常がないが、どうしたものか」という。「消化管穿孔なので、外科手術が必要です」、と答えた。「地域の基幹病院外科に当たります」、ということになった。幸い受け入れてもらえて、救急搬送となった。

 救急搬入ではなく自分で受診したこと、炎症反応が陰性だったことから、紹介搬送していいのか、と思ったらしい。重症度は救急搬入か自分で受診かによらないし、炎症反応は発症直後には上昇しない。

 

 自分で車を運転して受診してきたこと(病状にまだ余裕がある)、遊離ガスの分布からは上部消化管(胃十二指腸)の穿孔だろう。先方の病院に到着するのが、午前5時半くらいになる。バイタルは安定しているので、日勤帯になってからの手術だろうか。

 

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絞扼性腸閉塞疑い

2024年09月02日 | 消化器疾患

 40歳代前半の女性が腹痛で外来を受診した。ふだんは高血圧症で市内の病院に通院している。なぜ当院を受診したかはわからない。

 午前7時に朝食をとっていて、午前8時半ごろに突然腹痛が生じたそうだ。(発症時のことをしつこく訊くと、突発らしい)体格のいい方で、腹部所見がとりにくい。最終生理は3日前に終了したそうだ。

 腹痛が生じてからは持続痛になっている。腹部全体が痛くて、歩くと響く。突発だと「破れる、捻じれる、詰まる」になる。圧痛は上腹部と下腹部にあり、局在がはっきりしない。

 反跳痛があり、筋性防御はたぶんないと思うが迷った。消化性潰瘍の既往はなく、体型的に胆嚢結石を疑ったが、どうも所見が違う。

 胸部X線・腹部X線で腹腔内遊離ガスがないのを確認して、バイタルは安定しているので、血液検査を確認してから造影CT予定とした。

 白血球18900・CRP0.9と超急性期の炎症像だった。肝機能検査は異常がなかった。肝胆道系ではない。

 造影CTを行うと、まず虫垂は正常だった。肝臓周囲と腸間膜に軽度に腹水がある。そして、子宮の背側に拡張した小腸が一塊になっていた。内ヘルニアからの絞扼性腸閉塞と思われた。

 消化器科医にもCTを診てもらって、それ以外は考えにくく、外科に搬送依頼ということになった。地域の基幹病院外科に連絡すると、受けてもらえたので、すぐに救急搬送した。

 

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医学系出版社

2024年09月01日 | 無題

 昨日、羊土社の本を大分購入していると記載した。

 当方が研修医のころは、医学書はもっぱら医学書院の本を購入していた。医学書院の本は内容もいいが、紙質もよかった。他の医学系出版社を圧倒していた。

 羊土社の研修医向け雑誌「レジデントノート」は1999年から出版された。初期研修医向けに特化していて、増刊を出したり、連載記事を単行本化したりしている。

 他の2社からも研修医向けの雑誌が出たが、ほぼ撤退していて現在は「レジデントノート」のみになっている。

 初期研修医向けということで、4月には研修スタートの特集になり、後は内科系各分野の特集になるが、この症状をどう診るかという時もある。さすがに今は購入しなくなり、連載記事の単行本化されたものを購入している。

 

 医学雑誌の紙質は医学書院の「medicina」がいい。羊土社の雑誌はずっとあの厚めの紙を使用しているが、写真の印刷がきれいではなく理由がわからない。

 秀潤社の「画像診断」はたまに(特集によって)購入する。画像の雑誌でいい紙だが、ちょっと厚い。画像の印刷にはこの方がいいのだろうか。

 

 医学書院の本社ビルでセミナーがあり、行ったことがある。水道橋駅で降りて歩いて行った。東京大学が近いので、赤門を見て構内を少し歩いてきた。本郷は文教地区なので、他にも出版社がけっこうある。その時は山中克郎先生の講演で、著書にサインしてもらって帰って来た。

 

 最近は、中外医学社も初心者向けの良質な本をよく出している。増井伸高先生が、ハンターシリーズを出していて、今は「POCTハンター」を読んでいる。読み進むにつれて内容が深くて(初心者には)、とにかく実用的な事がわかってくる。

 中外医学社の本は、以前は印刷が悪くて(薄かった)紙質が悪かったが、現在は改善されている。

 

POCTハンター 血ガス・電解質・Cr・hCG×非専門医

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