那須太社 錦輔 の日記

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カムイ伝 白土三平

2023-01-30 22:24:28 | 読書感想文

もう、40年くらい前に読んだマンガだ。

年をとっても昔の記憶ほど薄れにくい、と最近になって思うがこの漫画の事はどれだけ思い出せるだろうか?ちょと試してみたい。

小学館のサンコミックというシリーズだったような気がする。当時、すでに小学館の少年コミックはサンデーコミックとかいうシリーズになっていたが、なぜかカムイ伝だけはサンコミックとして残っていた。当時書店に並んでいたサンコミックは他にはなかったと思う。

主人公は百姓の下人の息子、正助。

カムイは正助と同年代の非人部落の少年。

非人は武士の下働きをするので、武力を持っているが、汚れ役を担当させられている事や屠畜をして肉を食べる事から、他の階層から嫌われ見下されている。

カムイはそれに耐えられず、武で身を立てようと体を鍛え、どういう経緯かは忘れたが忍者になる。

だが忍者の組織に入ってみたら、そこにも厳しい掟に縛られる世界で、上忍・下忍といった身分制/階級制がしかれていた。

死と背中合わせの毎日を過ごしつつ実力を蓄えたカムイは抜け忍となる。

忍者の組織はカムイを抹殺するため刺客を次々と送り込む。

一方の正助は下人ながら勉強に取り組み工夫を重ねて技術改革を続け、村落の指導者へと成長していく。

権助だったか、権六だったかの逞しい相棒や、他国で一揆を起こして鎮圧され逃げてきて顔を切り刻んで人相を分からなくした「スダレ」という協力者となる男と出会う。

 

武士側のストーリーもあって、こちらの方がチャンバラ・剣豪小説・忍術物の要素があって面白かった。

正助の暮らす土地をおさめる藩主は強欲な人物。

藩主の弟の狡猾な目付がいて、その息子の一馬はボンクラ。

藩の武芸の指南役は笹一角という硬骨な男。

草加竜之進という藩重役トップ・城代の息子がいて、彼はまじめ一徹で藩主の息子の一馬とは対照的。

竜之進の父は謀略によって誅殺される。

目付の弟の玄蕃は、浪人となって諸国を放浪しているが剣術の達人で人を人とも思わない悪魔的な男で、兄に呼び寄せられ汚れ仕事を請け負う。

笹一角はなぜだか忘れたが、草加竜之進を名乗って顔をスダレにして藩に出頭し、処刑される。

草加竜之進は父を殺され、玄蕃には指を二本切り落とされるが、笹一角が身代わりとなってくれたので命からがら逃げのびて藩を出る。

そして、青木鉄人という宮本武蔵の弟子と知り合い、鉄人流という剣術を習得するがそれは玄蕃の使う剣と同じであった。

玄蕃も宮本武蔵の流れをくむ武人だったのである。

相手を体術で宙に投げ上げて落ちてくるところを刀で突き殺すのが必殺技で、突き刺す時「突破!」と気合をかける。

やがて、藩主は強欲とやりたい放題のあまり幕府に目を付けられ、確か誰かに殺害されて藩は改易、天領となる。

もしかしたら弟の目付が殺害されたのかもしれない。

軟弱な一馬は玄蕃とともに浪人となってさすらい、スパルタ式に鍛えられるうちに剣の腕を上げ、玄蕃と同じかそれ以上に暴力的・刹那的で傲慢な快楽主義者になる。

飲みたいときに酒を飲み、気に入らない男は威嚇し這いつくばらなかったら斬り殺し、良い女を見かけたら襲い掛かって犯してしまうし、逆らわれたらためらいなく殺す。

一方、取り潰しになった土地にやってきたのが正助や百姓たちにとっては手ごわい禿頭の幕府代官(名前は思い出せない)。

 

もうひとり藩主の弟の目付が用心棒としてやっとった着流しの遣い手がいて、名前を思い出せないが彼は最初は刹那的だったのだが、青木鉄人の娘に惚れて享楽的になり藩が取り潰しになった後も当地に残り、狂言回しみたいな役回りを演じる。

確か誰かに片足を鎌で切り落とされている。カムイにやられたのだったか、それとも非人の遣い手にやられたのだったかな?

あと商人もいて、最初は正助たち百姓側で立ち回っていたが、店を持ち身代が大きくなって武士と付き合うようになるとあっさり百姓を搾取する側に寝返る。

夢屋という屋号だった。

全21巻だった思うが、とりあえず前半の物凄くおおまかな粗筋はなぞれたのではないかと思うが、今はここまで。

思い出せるかと思ったが正助の名前もなかなか思い出せなかった。

また改めて続きに挑戦してみたい。

 

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路地の子 上原善広

2023-01-30 21:45:31 | 読書感想文

えた、と非人が違うと書いてあった。

非人というのは江戸時代に番太、番太郎、番非人などと呼ばれ、牢屋番や夜警、浮浪者の取り締まりなどの職業についていた人たち。えた、は屠畜や皮革産業といった職業についていた人たち、だそうだ。そして、非人の方がステータスが高くてえた、を見下していたらしい。

また、明治以降の被差別部落には古くから何代も続く家は少ないらしい。みな差別を嫌って部落を離れ、代わりに他で生き辛くなった人たちが流れ着き住みついたのだそうだ。

 

自分は被差別部落の事は、家の中や学校でそういった話を見聞きした事はなく、あとから学習して知ったので実態は知らない。

少年時代に学校で映画を見せられて「橋のない川」だったかを読んだくらい。

あと白土三平のカムイ伝も中学生の頃読んだ(今から思うと恐ろしく陰惨な漫画だった)。

 

この本にも書いてあったが、えた非人と言っても先の大戦に召集されて戦っているわけである。日清・日露の戦争にだってもちろん行ってるはず。

同じ日本人なのである。

朝鮮人とは全く違うわけである。

 

ネット上の情報では、被差別部落の団体が反日の暴力装置のような動きをしているらしいが、残念なことだ。

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モナドの領域 筒井康隆

2022-12-16 08:19:43 | 読書感想文

筒井康隆は昔よく読んで好きな作家だった。

ただ、虚人たち、が出たあたりからあまり読まなくなった。

難しくて読み進められないし、理解できなくなったから。

旅のラゴス、とか虚構船団とかは読んだ。普通の物語が成立している作品は読めたし、まあまあ面白かった。

虚構船団もクオール史の部分は凄く面白かったが、文房具が登場人物になる部分はどうも楽しめなかった。

宇宙からやってくるバーサーカー軍団を文房具の集団としたのは安直すぎないか?

SF作家として、ちゃんと分かりやすい殺戮機械の軍団を考え出すべきだったと思う。

で、そういう精密機械の中身が、いつもの筒井節で俗物根性の権化である、としたほうが良かったんじやないかな。

ホッチキスが怒って、コ、コ、コ、コ、と針を飛ばした、とか何も面白くない。

そんな感じで最近は全く読んでなかったが、たまたまネットで対談を読んだりすると、お元気で面白い。

原宿に住んでいる、というので興味を覚えてそのお住まいを見に行ったら普通に表札が出ていた。

「残像に口紅を」だったか自分の知らない本で、たくさん売れているらしいし、久しぶりに何か読んでみようと、ご自分で最高傑作だとおっしゃるこの本借りてきて読んだが意味が分からない。

アクイナス君もライプニッツ君もアリストテレス君も、この本で語られる思想家の本は一つも読んでないが、そういうの読んで理解してれば、この小説を楽しめるのかね?

なんか、筒井康隆が昔から徹底的に小馬鹿にし揶揄してきた周りの見えなくなった老大家、祭り上げられた裸の王様に自分が陥っているのではないのかな。

amazonのレビューを見るとみんな褒めているけど、その褒めてる言葉がそもそも分からない。

逆に新潮社のサイトで大森望は微妙に褒め殺ししているような気がする。

まあ、図書館で借りて良かった、という感じだ。

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萩尾望都と竹宮恵子

2022-11-19 10:43:11 | 読書感想文

先日ふと、萩尾望都論を読みたいなと思って、長山靖生の「萩尾望都がいる」という本を読んだのだが、この本はなんか作者のおじさんが物凄い萩尾ファンで、自分としてはそこまで好きでもないし、僕は萩尾さんのことちゃんと理解できてる人間ですから、みたいなおかしな選民意識が感じられて共感できなかったのだが、その中に記述があったので興味がわいて「一度きりの大泉の話」と「扉はひらく いくたびも」の2冊を図書館で借りてきた。

年の近い妹が読んでいたので、自分もお二人の作品も若いころ読んでいたし、けっこう面白いと思っていた。

歳を取ってから何作か再読して、萩尾さんの「ポーの一族」、「来訪者」、竹宮さんの「地球(テラ)へ」、など傑作だと改めて思っていた。

そんなお二人が来し方を振り返った本で、どちらも語り下ろし的に作られた本。

なので、やや文章が生硬というかぶっきらぼうな感じがする。

お二人が若かりし頃、大泉学園で2年くらい同居しておられたころの話がやはり興味深い。

結果的に両雄並び立たなかったわけだが、どちらかというと萩尾さんがお気の毒な感じだ。

大泉学園、下井草で暮らしたあと萩尾さんが転居された埼玉の自然に囲まれた良いところってどこかな、と検索してたらブックログというサイトに萩尾さんの本のレビューが沢山載っていた。

全部読んでないが、本格的な書評が多くて読みごたえがある。いろんな立場の人がいるが、それぞれに「なるほどー」と思わされる深い分析や読み込みがある。

amazonとか自分がブログに上げてる感想文のようなのとはレベルが違う

https://booklog.jp/item/1/4309029620

このブックログに書評上げている人たちってレベルの高い人たちなのかな、と他の作者のレビューを読んだら大したことなくて、萩尾望都と竹宮恵子の読者のレベルが高い、と言う事なんだろうなと思った。

中でも美しいな、と思ったのがgonriさんという方の下記の一節。

以下引用

「大泉」の死によせて、竹宮惠子は壮麗な墓へ美しい花を手向けるように語るけれど、萩尾望都はいまだ埋葬も叶わぬその死体と暮らしていると悲痛に告げる。

引用終わり

 

あと竹宮さんの本を読んでると、やっぱり才能のある人は若いころから凄いんだな、と思ったのと、自分が不勉強なのかもしれないがお二人の傑作って初期の若いころに描かれたものが多いなと、才能って有限でいくらでもあふれてくるものではなく、出尽くしてしまうのかなとも思った。まあ、またそこから蓄積をすることで何度でも汲み上げられることもあるのだろうけど。

夢枕獏さんが「瑠璃の箱舟」で自分の胸の中の井戸にどれだけの深さがあって、どれだけの水が入っているのかは、水を汲んでみないと分からないんだ、と書いていたがやっぱり汲み尽くして涸れてしまう事があるのではないか。

あと、萩尾さんは少年愛に興味がない、と書いておられて、才能のある女性漫画作家はみんなそういうの好きなのかな、と思っていたのでそうじゃないと知ってホッとした。

竹宮さんは創作に見切りを付けて、大学教授に転身、最終的に学長にまで上り詰めて引退され今はマンガ原稿の保存などの仕事に取り組んでおられる。功成り名遂げて萩尾さんとも和解しゆったりと過去を振り返りたい所なのではないかと思うが、萩尾さんはとてもそんな気持ちになれなくて、逆に決別のために本を書かれた。
萩尾さんは、竹宮さんと増山さん(竹宮さんのブレーンだった方)との事は思い出したくない、と記憶を封印されているが、お三方だけじゃなく、そういった若くて才能と情熱をもって漫画と言う一つの仕事、というか夢に取り組んでいた少女達が全国から集まっていた大泉学園の2年間って、萩尾さんにとってもやはりかけがえのない黄金時代だったのだろうな、と思った。

萩尾さんが許さない限りどうにもならないだろうが、萩尾さんの本に書いてあるいきさつを知ると難しいかな、とも思うし、萩尾さんも頑なすぎるのでは、こんな本まで出さなくても、とも思うのだが、大泉学園の黄金時代が素晴らしすぎたから、逆に許すことができないのかもしれない。

竹宮さんの本のエピソードでは、上京したばかりの頃に下宿で来る日も来る日も漫画を書き続け、誰も知り合いがいないので、息抜きをかねて買い物かごを下げて外に出るのだが、一人で漫画を書くのは慣れてるから平気、と思っていた竹宮さんがふと通りがかった八百屋さんで店のおじさんに声をかけられて、泣き出してしまいそうになる話がよかった。でも竹宮さんは自分が寂しくて泣きそうになったのだとは思ってないらしく、ちょっと違った解釈しておられた。

そういえば、自分が子供の頃は夕方になると籐で編んだ買い物かご持っておばさん(子供の自分から見て)たちが商店街で買い物して、ところどころで集まっておしゃべりに興じてたものだ。今ではそんな光景を見ることはないけど。

もう一冊、竹宮さんの「少年の名はジルベール」という本もあるらしいが、そこまでは読む予定なし。

上記のレビューサイトの中でも書いてる方がいたが、萩尾さん、竹宮さん、お二人の知り合いで大泉の仲間だった城章子さんというしっかりとした芯の強い方がマネージャーとして萩尾さんのサポートをしておられるそうで、なんか火の粉が降りかかってきたときは萩尾さんの代わりに矢面に立って戦っておられるみたいで、ナイーブすぎる萩尾さんがそういった方の支えを得られて良かったな、と他人ごとながら思った。

城さんは萩尾さんの本のあとがきを書いておられるが、本の中でこのあとがきが一番理路整然としていた。

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MR 久坂部羊

2022-10-30 20:38:49 | 読書感想文

ネットの書評で興味を覚えて図書館で借りた。

自分も昔、医療機関へシステム導入するSierの下請けに入って病院に出入りしたことがあったが、再下請けという立場だったので病院相手に直接営業する元請けの営業さんの姿を見る事はあまりなかった。

それでもちらっとかいま見る姿は、自信満々の人もいれば、疲れ果てて神経が切れそうに見える人もいた。

たまたま書評を読んで、そういえばMRってどういう事してるんだろう、と昔を思い出したのである。

読んだら実に面白い。

自分も若いころから法人対象の営業を20年近くやったものだが、こんな濃密な営業はやってなかった。

ここまでやるなら、確かに高い給料もらえるよな、と思った。

久坂部羊さんは医師だそうで、この作品は2021年出版で最近の作品。

もう何作も書いておられるようで、それでこの密度だとしたらこれから他の作品を読むのが楽しみ(このような自分の経験をもとに書く方は1作目が一番面白い、ような気がするので)。

素晴らしいエンターテイメントだった。

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