文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

続き。

2010年11月17日 21時50分26秒 | 日記

≪根拠があるわけではないが、本という形態が消滅すれば文学には深刻な、おそらくは致命的な悪影響が出ると私は確信している。名目上文学とは呼ばれても、それは今日我々が文学と呼ぶものとはまったく無縁な産物となるだろう。(中略)

 国家生命において文学が果たすもう一つの重要な役割は、批判精神を育むことであり、文学がなくなれば、国民は歴史的変化やさらなる自由の行使など望むべくもなくなるだろう。優れた文学は、我々の生きる世界を根底から問い質す。≫

 

リョサが文学の重要な役割の第一としたのは、個人の内面への深い探究です。

 

かれの取り上げるヘミングウェイの小説『老人と海』は、一見単純なストーリーで始まります。不漁の続いた老漁師が、ついに大きい獲物をとらえるが、それを横取りしようとする鮫と格闘しなければならない。

 

やがてカジキマグロの残骸と共に港に戻る疲れ切った老人は、≪最悪の試練と逆境に立だされても、人間は行動次第で敗北を勝利に変え、人生に意味を見出すことができる、そんな希望≫を現します。

 

かれを心配していた少年は、≪漁を教わったこの不屈の老人にいつも感じていた情愛と慈悲心よりもっと大きな崇拝で涙を流す。≫

  

≪物語にこれほどのー単なる一エピソードから普遍的類型へのー変化を引き起こすためには、感情と感覚、示唆と省略を少しずつ積み重ねて挿話の地平を広げ、そこから絶対的普遍の平面に達するよりほかに方法はない。『老人と海』がこれを成し遂げたのは、文体と構成における手腕の賜物だろう。≫

 

リョサはこの本で一作家に一編を論じますが、ヘミングウェイについては二編(同じようにグレアム・グリーンも特別扱いしながら、作品が偉大とはいえないという)、もう一作は『移動祝祭日』この晩年の作品で回想される若いヘミングウェイが、パリのボヘミアン生活神話とは正反対の、「すべてを冷静沈着な目で眺め、体験を取捨選択して蓄える」、注意深く勤勉な意志の人だったことを示すためです。

 

 

リョサは大作家ですが、この本で世界文学の最良の教師であり、小説家をめざす人には誠実なテューターであることも明らかです。折角の出会いを逃さぬように。 


定義集 大江健三郎

2010年11月17日 21時45分50秒 | 日記

新しく小説を書き始める人に

情理尽くすリョサの文学論 

 

定義集 大江健三郎

 

ノーベル文学賞は、世界的によく知られ、文学的実質もきわだっている作家より先に、あきらかに周縁の名前が受賞することがあります。たとえばギュンター・グラス、マリオ・バルガスリョサより先に自分がもらった時、私はかれらに往復書簡をお願いする立場だったので、正直ひるんだものです。(『暴力に逆らって書く』、朝日文庫)

 

しかし、五年、十年の規模でリストを展望すると、いつもよくできた選択に思えます。ポーランドの女性詩人シンボルスカの名は知りませんでしたが、受賞を機に出た邦訳を読み、英・仏訳も集めて、いま私には枕頭の詩人の一人です。

 

グラスから十一年、今年のリョサ受賞をおおいに喜んで、私はかれに送るべく日本での反響を切り抜きしましたが(評価をまとめた英訳をつけます)、胸にこたえたのは、本紙 「池上彰の新聞ななめ読み」。

 

池上氏は、作家リョサを「恥ずかしいことながら、私も存じませんでした」とのべ、授賞理由「権力構造の『地図』を作り、個人の抵抗、反抗、挫折を鋭く描き出している」について、「これでは、何のことか皆目わかりません」といいます。

 

私は、リョサが初期からペルーの政情・現実を批判的にとらえた秀作群の特質を、よく要約していると思いました。

 

それに続けて池上氏が、年季をいれた専門研究者が、短いスペースに思いのたけを詰め込んだ各紙の解説を、「少なくとも私にはチンプンカンプンでした」といわれるのに、確かにそうかも知れないと感じながら、素人ではない「新しく小説を書き始める人に」向けて、申しのべたいことがあるのです。長らく、ナンカイと拒絶反応を示される経験を続けて来た者として。

 

まず翻訳の多いリョサの小説を一編でも読む。次いでリョサの情理をつくした文学論に学んでほしい。

 (前者なら『緑の家』木村築一訳、岩波文庫。そして『嘘から出たまこと』寺尾隆吉訳、現代企画室)

 

後者でリョサは、生涯をつうじて選びぬいた二十世紀の小説三十五編を、見識と情熱を表して説きます。その上で付けられた、明確なまとめから引用します。

 

かれは「本を時代遅れと見なす人々のなかでとりわけ重要な人物」、マイクロソフトのビル・ゲイツがマドリッドで行った、スペイン語に欠くべがらざる「Ñ」をコンピュータから消すことはしない、という約束に感動するのです

 

が、ゲイツが続けた、紙をなくし本をなくすのが自分の人生最大の目的だという言明には激怒します。

 


大江大人(たいじん)の本を読んだのは青年の時…。

2010年11月17日 21時36分32秒 | 日記

大江大人の本を読んだのは青年の時…当時、芥川が一番良いなと思ったのは「日常生活の冒険」だったが…その頃、大人からの言葉として、僕が終生、自分の中に刻んでいるのは…彼が、敬愛する恩師から学んだ言葉として伝えてくれた≪パルレ・バッソ(声低く語れ)≫…僕は、時々、「この、ど阿呆が。」と書きますが、これは芥川の一つの、お約束の様に使っているもの。

 

これからも、ずっと、僕は、大人から伝えられた上記の言葉から、終生、逸脱することはない。

 

今日、弊社専務が、「これ読んだ」と言って、昨日の朝日新聞・文化欄の記事を見せてくれた(僕は読んでいなかったのだ)

 

さて、

僕は、この池上彰なる人物が、昨今、テレビにおいて、結構な人気を博しているらしい事は、新聞下段、雑誌の見出し広告で知ってはいるが、その番組を見たこともなければ、それらの写真以外では、観た事もないが。

 

次章の大江大人の記事は、芥川が、何度も言及しているテレビのいい加減さ、或いは、浅学、軽佻浮薄さを、見事に表しているし、朝日新聞までテレビ人気に追従してものを書かせているとは知らなかった。

 

昨今のテレビに出て、大金を稼いでいるような人だから…普通の人なら、赤面の至りも、全く感じずにテレビに出続けているのだろうが。

 

 


韓国へ教育参観、研修に行かせる?!

2010年11月17日 14時37分00秒 | 日記

橋本大阪府知事のことは支持している、大停滞した大阪を変えるには、あれぐらいでなきゃ駄目だ、と、或る章で書いた通り。

 

韓国へ教育参観に行かせる…僕は、このニュースについては、首を傾げた。サムスンに、抜かれているから、仁川空港に激しく追い上げられているからetcな理由なのでしょうが…そういう有り様を作ったのは、芥川が何度も書いて来た様な、私たちの国の、この20年の有り様だけのことである。

 

橋本さん、あなたの母校の北野高校は、各界の先達になれる様な教育を、今はしていなんですか?もし、そうなら、僕は、150%の自信を持って、我が母校の授業参観に、大阪の子供たちを連れてゆくことを、お勧めします。

 

哲学、文学、思想の分野では、戦後だけでも、大江大人、高橋大人、梅棹大人、その他、多数の、大人たちが日本にはいます。物理や化学、科学の分野に於いても、幾多のノーベル賞受賞者たちを生んだ日本は…申し訳ないけれども、アジアでは、圧倒的に、学問のレベル、本当の知性のレベルが高い国だと、芥川は確信している。

 

金儲けに敏(さと)くなるのに、学問は要りません。何故?…金儲けの秘訣とは、粘りと頑張り、ただこの二つだけなのですから。

 

成功した企業家の、根底にあるもの…必要十分条件は、実は、この二つだけです。それだけのことを学ぶのに、わざわざ韓国に行く必要はないと僕は思う。


ジョン・バリー、〈 オバマのインド訪問は貴重な「求愛ダンス」〉から。

2010年11月17日 13時52分46秒 | 日記

中略…中国を牽制しようとするアメリカに、インドは協力する気があるのか。答えは110億ドルを投じて新たな戦闘機を買おうとしているインドが、どこへ発注するかで推測できる。

 

中略…一方、アフガニスタン、パキスタン、イランをめぐる問題については、インドはアメリカとの話し合いに乗り気ではないようだ。インドのある外交官はこう表現する。「インドは(アメリカに)釣り上げられるような魚じゃない」

 

芥川が昼食時に、産経新聞を読んだ時、書いた、元・海軍中将の言葉(該当の章を御参照下さい)を待つまでもなく、

  

梅原大人が、インドもまた、実地探査して、自分の目で見た様に…芥川は、映像で、何度か見た、インドの実態…サプコンティネントをずっと通って、一ヵ月ぐらいかかってカルカッタまで行った。インドというところはこわいところで、そこを通って帰ったために、わたしの人間観が変わってしまった。とくに大きかったのは、ヴァーラーナシー(ベナーレス)。「これが人間と言うものか」と。こんなん、いままで考えていたような生やさしいものと違う。

 

小山 何を見てですか?

 

梅原 ヒンドゥーの行者たちを見て「人間の極地みたいなもんやな」と。

ヴァーラーナシーのガンジス川の岸辺で人間の死体を焼いている。ガットという川岸の火葬場があるんです。

 

それで、ガンジス川にプカプカと死体が流れていく。ところが、人間はその川で平然と水浴びをしてる。ほんま「気持ちの悪い社会やな」と思った。…「梅棹忠夫 語る」p2324

 

インドが、このような社会…カースト制度の社会を克服するのには、最低でも後、100年かかる。その間、インドは平和でありたい、平和を希求している、と上記の海軍中将が言った様に。

 

釣り上げられるような魚じゃない、のも真実だろうが、このような在り様について言えば、誰も釣り上げたくない魚であるのも真実だろう。

 


「decent」 について。

2010年11月17日 13時09分58秒 | 日記

この言葉を、芥川に、日本人を考える時のキーワードとして気付かせてくれたのは、大江健三郎大人(たいじん)…大江大人に多謝。

 

手元の辞書、研究社では、

decent 形容詞 1(身なり、ふるまいなどが)見苦しくない;(人柄が)きちんとした、まともな。 2(ことば・話などが)下品でない、みだら(わいせつ)でない。 3(口語)結構な、まあまあの、悪くない。4(口語)親切な、気のいい。 

 

 

三省堂では、1(社会一般常識からみて)ちゃんとした、見苦しくない 2礼儀正しい、みだらでない(⇔indecent)3(口語)悪くない、満足できる 4(口語)親切な(kind)、寛大な(generous)名詞はdecency


その日本の良さを、この20年、民放テレビは、台無しにし続けて来たのだ

2010年11月17日 11時23分08秒 | 日記

その日本の良さを、この20年、民放テレビは、台無しにし続けて来たのだ。彼らが、やってきたことは…これほど愚かしく阿呆な事はない…日本のdecentを壊し、日本を韓国や中国の悪しき面の国にして来たわけだから…彼らが、一部芸能事務所と、その所属芸人の、…による、…のための番組を24時間、5局でやり続けて来た結果なのだ。

 

毎日、テレビが流している芸人達とは、言わば、梅棹大人が言うところの、カルカッタの猥雑さ、と全く同じもの…或いは、前章の、道端に男がザーツと並んで、ウンチしてる光景と、全く一緒であると芥川は思う。

 

日本のテレビが、この20年超、どんなに罪深いものだったかが、これで完璧に分かったでしょう。

 

テレビを…真実を追求する公共放送局から、遥か遠く…そういう悪しき、東南アジアの様な、愚かで猥雑な地平に向かわせた、自民党の田舎政治家たちの罪もまた、本当に深いのです。

 

彼らは、もうひとつ、違う場所でも、日本の特質を破壊してきたことを、昨夜の「ニュース・ステーション」は伝えていた…教育現場が崩壊しかかっている、と。

 

芥川は、「学校は天国だった」で書いた様に、小・中(故郷の町の、歩いて通った…日本では全く無名の、どこにでもある、本当に普通の、小学校であり、中学校)そして我らが母校…みな本当に良い学校だった…良い教師たちばかりだった。

 

ここにemperor-banzai-fascismの残滓を、その精神構造に抜きさし難く持っていた、自民党の、むくつけき田舎政治屋…今だって、この党には散見されるはずだ…田舎の特権階級にあぐらをかき続けてきた親父が、その正体…この連中が、教師を、ただのサラリーマンにし、20年超もやり続けている痴呆テレビを観て育った…日本人の特質であるdecentを失って、猥雑なアジア人となってしまった暴虐無人な子供たちが、教室で好き勝手をしている国。

 

誰がそうしたかって…田舎政治屋さんたちよ。あんただ。

 

芥川は、2か月前に、マスメディア全体主義が産物とした、現執行部が、お粗末すぎて、執行部を交代することになったとしても、自民党が、この田舎政治屋の部分を払しょくしていない限り、この党への交代なんぞはまっぴら御免。

 

小沢一郎よ、あなたの出番だ。悪役顔で、破れ鍋に綴蓋顔で、低支持率で、この国を、あなたが望み続けた国、世界でも有数に知的で、最高の言論の自由があり、世界でもっともdecentで、それだからこそ、意思表明の明確な国。核を持たない由縁を、世界に、ちゃんと言える国…だから持たないんだ、と。

 

それにつけても、この2年超、検察が…時の権力の差し金だったのか、自らのエゴイズムだったのかは知らぬが…やり続けてきた事が、どんなに、国にとって害悪、マイナスだったかを、私たち国民は、毎日…本当に毎日、証人として観ている訳です。


「日本はアジアではない」は、本当の真実。

2010年11月17日 10時31分50秒 | 日記

先週号のニューズ・ウィークに、アメリカの、その件の担当政府高官だった人物の論文が在る…韓国の粘着質外交…と題した記事だった。地図としては、世界的な権威となっているアメリカの該当部門が、竹島についての記述を、当然な状態に名称変更した時に、韓国が、朝(それも朝一番だったと)早くから、昼、夜を問わず、連日、彼が「勘弁してよ」と思うほど、電話攻勢をかけてきた様子や、

 

日本にとっては間の悪い事に…ブッシュ大統領の韓国訪問の時期と重なっていたために…支持率の低下に苦しんでいたブッシュ大統領は、ここで少しでも成果を上げる事を期していたのに…大規模な反米デモに迎えられる様な事態だけは何としてでも避けたい…それでは韓国訪問が本末転倒になってしまう…ギリギリの局面で、韓国の言い分通りに、既述を、元に戻した。…のちに、最初の状態に戻したはずですが。

 

日本に在って、中国や韓国にないものは何か…一つの言葉で言えば、decent

 

そして、それが、梅棹大人が驚くべきほどの違いとして指摘していたこと、駅や、様々な場所の猥雑さ…大人が、中国で研究生活を送っていた2年間、毎日、目にした事とは、… 信じられないような話やけど、中国で二年間生活していたとき、朝、研究所への通勤途中、道端でウンチしてる人がいっぱいいた。ほんとうにすさまじい社会やった。道端に男がザーツと並んで、ウンチしてるわけです。

ぜんぜんちがう。わたしは二年いたから、中国のことはよく知っている。それから後も、中国三〇州を全部歩いている。そこまでした人間は、中国人にもほとんどいないと言われたけれど、わたしは全部自分の足で歩いている。向こうで生活していてわかったんやけど、中国というところは日本とはぜんぜんちがう。「なんというウソの社会だ」ということや。いまでもその考えは変わらない。最近の経済事情でもそうでしょう。食品も見事にウソ。ウソと言うと聞こえが悪いけれど、要するに「表面の繕い」です。まことしやかに話をこしらえるけれども、それは本当ではない。…「梅棹忠夫 語る」p3031から抜粋。

 

わたしたちの国は、何故、アジアではないか…芥川は、まさに、それこそが島国日本であったがゆえだと思うし、その幸運を日本は大事にすべきなんだと言及もして来た…ガラパゴスで良いんだと。

 


久しぶりに、株の話から。

2010年11月17日 09時39分12秒 | 日記

芥川が日本株について言及して来た事が正しかったことの…ひとつの証明が、本日の「株式オープニングコメント」に、垣間(かいま)見える。

 

日経平均の抵抗から支持線に変わった、9700円処の底堅さを確認する展開を想定したい。米国株の下落の要因は引き続き中国の金融引き締め観測と欧州のソブリンリスクであり、昨日の上海株の下げによって想定されていた展開であろう。中国のポジション調整となれば、日本には売りポジションの解消の流れも考えられるため、各国と比較しての底堅さは意識される可能性がある。そのため、相対的な底堅さが試されるときである。…黒字化は芥川

 

株式市場について言及した章を御参照下さい…実は、世界でも数少ない、最も安定した民主主義国家のトップランナーである、日本株に空売りをかけて=日本株で…絶対的に確実なヘッジをかけて、体制等に本質的な問題、いな、欠陥が存在する新興国市場で、安心して、思い切った買いに入る=リスクをとる。

 

これが本当の構図のはずだ…だから、芥川の「買っておしまい」戦略だけが、一番の特効薬なのだ…この章と、最初の「文明のターンテーブル」を御参照下さい。