以下は、今週号のニューズウィーク日本語版19ページ「メディア完全掌握を狙う習政権」からである。
題字以外の文中強調は私。
中国の習近平国家主席は先日、3大党・国営メディアの人民日報、新華社通信、中国中央電視台(CCTV)を視察。
その後に開催されたシンポジウムで、報道機関の役割は中国共産党の宣伝マシンだと強調した。
国営メディアは党と政府の「広報機関」であり、「党の方針と計画を伝え、党の権威と団結を守る役割を担う」―新華社通信は習の発言の要旨をこう伝えた。
宣伝マシンは国営メディアだけではない。
習によれば、党のイデオロギーを広めるのはジャーナリストの務めだ。
そのため記者全員に「マルクス主義報道観」をたたき込む必要がある。
実際、習体制の発足後、すべての報道関係者に思想教育が徹底されるようになった。
今では研修を受けてマルクス主義報道観を学び、試験に合格しなければ、記者証を取得できない。
報道統制の強化は、習政権の発足直後から始まった。
13年4月に中国共産党幹部に配布され、欧米のメディアに流出して悪名をとどろかせた通称「9号文件」。
そこには立憲民主主義、普遍的価値、欧米式報道観など、7つの「誤った思想傾向、立場、活動」がリストアップされている。
さらに、この文書は報道の自由を認めることに対し、「穴が開いて、そこから(欧米の影響が)浸透する」と警告。
それを防ぐために「党による報道統制の原則を断固として貫く」必要があると述べている。
9号文件が図らずも認めたのは報道の自由が脅威であること。
共産党の一党支配を守るには、外部の影響を厳重にシャットアウトしなければならない。
中国当局は先日、外国資本が入った企業のオンライン出版・コンテンツ配信を禁止すると発表した。
規制対象にはテキスト、画像、地図、ゲーム、アニメ、音声、動画が含まれる。
当局があからさまに報道の自由を封殺している今、批判精神を持つジャーナリストが活動する余地はほとんどない。
国境なき記者団の15年の「報道の自由度ランキング」では中国は180力国中176位。
中国の評価はここ10年余り常に最低レベルだが、改善の兆しは見えない。
習は報道の息の根を完全に止めようとしているようだ。
シヤノン・ティエジー