ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

茨城郷土料理自慢:4回目は「県西地区・鹿行地区の郷土料理編」

2024-11-04 07:21:47 | 日記

 

ユネスコ無形文化遺産に「和食」が登録されたのは、登録申請した内容が評価されたということです。
その内容は「一つ目は日本人が抱く自然を尊重した精神を体現した食であり、二つ目は特定の調理法
や具体的なメニューがあるわけではなく、和食全体を巡る日本の文化」となっています。
和食には4つの特長があって、

1.多彩で新鮮な食材とその持ち味の尊重:海、山、里と多様な食材と、素材の味わいを活かす調理
     技術や調理道具も発達している。
2.栄養バランスに優れた県好意的な食生活:一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な
  栄養バランス、「うま味」を生かした動物性油脂の少ない食生活。
3.自然の美しさや季節の移ろい表現:食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現する。季節
  の花や葉などで料理を飾りつけ、季節に合った調度品や器を利用する。
4.正月などの年中行事と密接な関わり:自然の恵みである「食」を分け合い、家族や地域の絆を深
  めている。

<農林水産省が定義する「郷土料理」とは>

「うちの郷土料理」の選定基準

1.必須項目

(1)地元で入手できる食材を利用する:地元で生産された食材のみならず、流通網の発展等により
   他の地域から入手した食材を用いた郷土料理も含む。
(2)歴史・文化・風習的な特徴、又は気候・風土を背景とした特徴がある
(3)家庭・地域で作られ、継承されている
(4)全体数のうち1~2品以下:(1)~(3)の選定基準(必須項目)に当てはまらないが、歴史的
   に残すべきと考えられる

2.推奨項目

(1)地域において人気・愛着がある
(2)都道府県内の地域バランスに著しい隔たりがないか
(3)伝統的な郷土料理から、現代的な文脈で変容したレシピである
(4)地域におけるメニュー化や新たなレシピ化などの次世代継承に向けた「新しい価値」の提供が
   あるか

   ※データベースからダウンロードできる画像は二次利用も可能です。
   ※茨城県では7名の方が検討委員会の委員として公表されています。

(データベースに記載されている茨城県の郷土料理30品目の地区別の振り分け)

1.県北地区:「つけけんちん」「干し芋」「いわしの卯の花漬け」「柚子大根」「手作り刺身こん
        にゃく」「凍みこんにゃく」「あんこうの共酢」「バイタ焼き」「赤餅」
        (9品目)
2.県央地区:「煮合い」「紫錦梅」「こも豆腐」「五目いなりずし」「そぼろ納豆/しょぼろ納豆」
       「かぼちゃのいとこ煮」(6品目)

3.県南地区:「ワカサギとれんこんの酢漬け」「がりがりなます」「たがね餅」「小倉れんこん」
       「うなぎの帆引き煮」「鯉の唐揚げ」「ピーナッツ味噌/落花生味噌」「れんこんの
        きんぴら」(8品目)

4.県西地区:「しもつかれ/すみつかれ」「すだれ麩(ふ)のごま酢和え」(2品目)
5.鹿行地区:「はまぐりごはん」「ござい漬け」「海藻よせ」「みつめのぼたもち」「いもがらの
        炒め煮/いもがらの五目煮」(5品目)

茨城県は30品目が紹介されています。茨城県の食文化は、地域ごとの気候風土にあわせて、多様な進
化を遂げてきました。茨城県は地域的特徴に分けると、県北地区、県央地区、県南地区、県西地区、
鹿行地区(ろっこうちく)の5つに大別されています。今回は第4回目で最終回です。この5地区を代
表する郷土料理について公表されているデータベースの記述を横に置きながら、取り上げられた郷土
料理は納得できるものなのかどうか、私見で評価してみたいと思います。
最終回は「県西地区・鹿行地区の郷土料理編」です。

1.県西地区の代表として取り上げられた郷土料理

  <茨城県西地区とはどんなところか>

  筑波山の西側に続く広大な平野部。中央を鬼怒川が流れ、肥沃な土地と豊富な水資源に恵まれた県
  内有数の農業地帯でもあります。観光資源としては、国の重要伝統的建造物群保存地区になってい
  る真壁の町並みやひなまつりをはじめ、ユネスコ無形文化遺産にも登録された結城紬や結城の街の
  見世蔵、日光街道の宿場町として栄えた古河宿など、古き良き町並みを活用したものが目立ちます。
  また、国の名勝に指定されている磯部桜川公園の山桜やユネスコ「メリナ・メルクーリ国際賞」を
  受賞した古河公方公園(古河総合公園)のピンク色に染まる桃林など美しい景勝地も見どころの一つ
  です。交通手段としては、JR水戸線、JR宇都宮線、関東鉄道常総線の沿線では公共交通機関の利用
  が可能ですが、その他の地域は自動車での移動がおすすめです。

<県西地区の郷土料理>

  県西地区から登録されたのは「しもつかれ/すみつかれ」「すだれ麩(ふ)のごま酢和え」の2品目
  だけです。なぜなのでしょうかね。

(1)しもつかれ/すみつかれ

   独特の風味や見た目から、非常に好みが分かれる郷土料理ですが、ていねいに下ごしらえをして
   生臭さをおさえ、食べやすくする工夫がなされています。今でも近所で「しもつかれ」をやりと
   りする地域があります。大鍋で大量につくるからこそ味が出る料理といわれ、家庭ごとの味があ
   ります。「しもつかれ」は、正月の残りのサケの頭に、節分でまいた豆の残り、そして根菜など
   を酒粕で煮こんだ県の西部地域に伝わる郷土料理です。正月からの残り物を大事に使い、また、
   冬場の栄養摂取や保存性に優れた先人の知恵がつまった料理といえます。「鬼おろし」と呼ばれ
   る竹製の鋭利な刃がついたおろし器で粗くすり下ろした大根と人参、短冊切りにした油揚げを、
   大豆およびサケの頭とともに、酒粕、だし汁で煮こんでいく。鬼おろしは、竹製のため素材に熱
   が伝わりづらく、さらに一般的な大根おろしよりも粗くおろされていくため、野菜の余分な水分
   が出ず、食べるときにしっかり食感を感じることができます。サケの頭がない場合は、サケの切
   り身でもよく、食べ方もさまざまで、ごはんにかけたり、茶請けとしても食べます。また酒の肴
   として、こたつに入りながら凍った「しもつかれ」を熱燗と一緒に楽しむ地域もあり、先人の知
   恵が詰まった料理なので登録に納得です。

(2)すだれ麩(ふ)のごま酢和え

   茨城県結城市でつくられている郷土料理です。結城市がある西部地域は、1年を通じて晴天の日が
   多く、また利根川や鬼怒川の恩恵を受け、古くから農耕が盛んであり、米や麦、大豆、そばなどさ
   まざまな食材がつくられています。結城城があった北部は、城下町として栄え、寺院なども多く建
   てられました。そこで食べられる精進料理に使われた食材の一つが、すだれ麩です。小麦の保存も
   兼ねてつくられたといい、江戸時代後期にはすでに食べられており、当時の貴重な食材であったと
   いう。他の県にもすだれ麩はありますが、結城市のすだれ麩は、小麦粉から取り出したグルテンに、
   再び小麦粉を加えてよく練ったものを薄くのばして全体に塩をまぶします。それをゆでた後、竹で
   つくったすだれに広げて天日干しにします。保存性が高い麩としては焼き麩があるが、結城市のす
   だれ麩は、生麩に塩をまぶし、加熱して乾燥させることでより高い保存性を実現しています。全て
   手づくりでつくられており、現在でもその生産量は限られたものであることから、結城市のみで食
   べられているそうで、煮物やお吸い物などにも使われるようです。

 

2.鹿行地区の代表として取り上げられた郷土料理

<茨城鹿行地区とはどんなところか>

  茨城県の鹿行(ろっこう)地区は、県の南東部に位置し、鹿島郡の「鹿」と行方郡の「行」から名付
  けられました。この地域は、太平洋(鹿島灘)と霞ヶ浦に挟まれた場所で、水郷筑波国定公園の一部
  として美しい自然環境に恵まれています。この地域は、農業が盛んで特にメロンの生産が有名です。
  また、鹿島臨海工業地帯があり、鉄鋼や石油化学などの産業も発展しています。観光地としては、鹿
  島神宮や霞ヶ浦、北浦などがあり、サーフィンや釣りなどのレジャーも楽しめます。さらに、Jリーグ
  の鹿島アントラーズのホームタウンでもあり、サッカーが盛んな地域です。

<鹿行地区の郷土料理>

  登録されたのは5品目です。この地域は、霞ヶ浦や北浦、太平洋に囲まれた豊かな自然環境に恵まれて
  おり、特産品や郷土料理が豊富ですので登録された品目も多いです。

(1)はまぐりごはん

   茨城県大洗岬から千葉県犬吠埼にいたる海域の鹿島灘は、親潮と黒潮がぶつかる潮目であるため、豊
   富な海の幸に恵まれます。鹿島灘の砂地が続く沿岸部では春ごろになると、産卵前の大ぶりなハマグ
   リがとれます。時に10cmを超えるハマグリがとれ、市場では「鹿島灘はまぐり」の名前で高値で取引
   されています。今でこそ希少となったハマグリですが、昔は大洗や鹿行地域の沿岸部でよく採られて
   いたため、茨城県では身近な食材でした。とれたハマグリを新鮮なまま刺身や網焼きで味わうものか
   ら、味噌汁に入れたり、酒蒸しにするなど、さまざまな調理方法で親しまれてきたのです。「はまぐ
   りごはん」もはまぐり料理の定番料理として、家庭でもよく食べられてきました。作り方はハマグリ
   を食べやすい大きさに切り、千切りにした人参、しいたけとともに油で手早く炒め味付けをします。
   炒めすぎると身がかたくなりすぎてしまうので注意が必要。米に炒めた時に残った煮汁と水を入れて
   炊き上げ、最後に具を混ぜ込んでいただく。ハマグリのぷりぷりとした食感と、旨味を存分に味わえ
   ます。大好物で個人的理由から登録に納得です。

(2)ござい漬け

   茨城県大洗から千葉県犬吠埼の間で広がる鹿島灘は、親潮と黒潮がぶつかる好漁場。戦前戦後の昭和
   時代は、秋になるとイワシが大量に獲れ、家々に配られました。たくさん獲れるイワシを11月ごろか
   ら塩漬けにし、発酵してきたところで大根と一緒に漬け込んだ「ごさい漬け」は冬の郷土料理として
   長く愛されており、庶民の重要なタンパク源でもあったのです。かつては家庭ごとの味があり、盛ん
   につくられていましたが、近年では、その手間の多さや温暖化で昔ながらの製法ではできない等の理
   由から、ごさい漬けを作る家庭も減ってきています。また、いわしの水揚げの減少と、形が崩れて見
   栄えが悪くなることから、現在はサンマで作られるようになりました。作り方はサンマの頭と腹わた
   をとり、腹を何度も流水中で洗い、しっかり血と脂を洗い流したら、4等分から5等分にぶつ切りにす
   る。2週間から1ヶ月、塩をまぶして樽に漬け込み、その後、そのサンマを再び水で洗い、血と脂を流
   す。一口大の半月切りにした大根とサンマ、赤唐辛子、柚子の果汁と皮、塩の順に繰り返し入れて漬
   けます。冷暗所もしくは冷蔵庫で保存をし、途中水をとり除きながら、2週間後に食べられるようにな
   ります。そのままでも食べられますが、完成した「ござい漬け」を一度水で洗って塩気を抜き、醤油
   を少量たらして食べるのも好まれているという。手間のかかる料理が今日まで伝承されてきました。
   登録に納得です。

(3)海藻よせ

   海藻よせは、茨城県鹿嶋から千葉県・銚子に至る鹿島灘沿岸で食べられている郷土料理です。鹿島灘は、
   親潮と黒潮がぶつかる潮目であるため、さまざまな海の幸に恵まれていて、日本一の水揚げ量を誇る銚
   子港では、魚のほかにも海藻も豊富にとれます。その中の一つが、「海藻よせ」のメイン食材となる、
   コトジツノマタやツノマタです。コトジツノマタは、潮間帯の岩上に付着する、高さ20cm程度の海藻で、
   規則正しく、二又に分枝しながら成長していく。その枝のかたちが琴の弦を支える琴柱に似ていること
   から、この名がついたといわれます。火にかけるととろみが出て、冷ますと凝固する特性を生かし、古
   くは石けんや接着剤として使われていたという。年末になると、銚子から商人が正月用にコトジツノマ
   タを売りにきたことから、おせち料理に「海藻よせ」がつくられるようになったそうです。作り方は、
   コトジツノマタをしっかり洗って汚れを落とした後、沸騰したお湯に入れ、とろみが出るまで煮る。と
   ろみが出てきたら、型に流し、冷やしてかたまったら食べやすい大きさにカットしていただく。磯の香
   りを存分に楽しめるさっぱりとした味わいなので、醤油に加えて、カツオ節やねぎ、唐辛子をのせて食
   べます。また、「海藻よせ」のアレンジとして、細かく刻んだ人参やごぼうを一緒にかためることで、
   食べた時の風味や食感の違いを楽しむこともできます。地元の環境に合わせた郷土料理で登録に納得です。

(4)みつめのぼたもち

   みつめのぼたもちとは、第1子の赤ちゃんが生まれて3日後に食べる大きなぼたもちのことをいうそうです。
   かつて、食糧を満足に得ることが難しかった時代、子育てのために栄養が必要な出産直後の母親のために、
   栄養豊富なもち米や小豆を使った大きなぼたもちを食べさせたことがはじまりだという説があります。滋
   養食代わりにしっかり食べ、出産の疲労回復や母乳がよく出ますようにという想いが込められているほか、
   親戚や近所に赤ちゃんが生まれたことを知らせる意味もあり、重箱に詰めたものを挨拶しながら配って回
   る習わしがあったといわれています。江戸時代には多くの地域でこの風習があったとされますが、現在で
   は茨城県(鹿嶋市、神栖市、水戸市など)のほか、千葉県(銚子市、市原市など)や神奈川県、愛知県などの一
   部の地域に限られています。最近では家庭ではつくらなくなり、和菓子店での購入や、ネット注文するこ
   とが多いそうです。食べ方は、もち米、うるち米を炊き上げて蒸らした後、重箱につぶさず、丸めず、そ
   のまま敷き詰め、上からあんこをのせる。食べるときは、食べやすい大きさにカットする。重箱に入れず、
   一般的なサイズよりも大きなぼたもちを3つ用意することもあります。「みつめのぼたもち」は、とにかく
   “大きい”ことが重要で、米どころの茨城県らしい郷土料理なので納得です。

(5)いもがらの炒め煮/いもがらの五目煮

   いもがらは、里芋などの葉柄の芋茎と呼ばれる部分を乾燥させたもの。呼び名は各県によってさまざまあり、
   芋茎のことを「ずいき」と呼ぶことから、「ほしずいき」と呼ばれたり、または「割菜(わりな)」とも呼
   ぶ地域もあります。いもがらは乾燥もののため、保存食としてつくられており、通年の常備菜にも活用され
   てきました。茨城県は、古来より農業が営まれ、昔からさまざまな野菜が収穫されてきました。そうしたな
   か、豊富にとれる野菜を飽きずに美味しく食べるため、多くの料理のバリエーションや「いもがら」や「凍
   みこんにゃく」、「干しいも」などの長持ちさせるための保存食が多くあります。いもがらは料理に使うと
   きには水で戻してから使います。乾燥したいもがらは水で戻すとふっくらとした食感になり味が良く染み、
   煮物やきんぴら、酢の物などに良く合います。人参、れんこん、こんにゃく、油揚げと合わせて、たっぷり
   の煮汁で時間をかけて煮ることで、材料に味が染み込み美味しくいただけます。いもがらは味はないが、煮
   物や味噌汁などに入れることによって味が染みこみ美味しくなるので、さまざまな料理に合わせることがで
   きます。また、食物繊維が豊富で、食べるとシャキシャキとした歯ごたえが楽しめます。
   これも登録に納得ですね。

次世代に大切に伝えたい「うちの郷土料理」の茨城県版に登録された30品目の品目とその内容を紹介してきました。
これでこのシリーズの紹介を終了しますが、私には今回の選抜に漏れた品目の中に「この料理も茨城県の郷土料理
だ!」と自信を持って言える品目があります。選抜に漏れた理由は分かりませんが、私個人が推薦する「追加の茨
城県の郷土料理5品目」を次回に5回目として紹介します。私が今は知らない郷土料理がまだまだあると思います
よ。調べてまとまったら、更に追加で紹介しましょう。

機会があれば茨城県の郷土料理を是非ご賞味あれ!

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 茨城郷土料理自慢:3回目は... | トップ | 茨城郷土料理自慢:5回目は「... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事