茨城県の中部に位置する涸沼(ひぬま)は、平成27年5月にはラムサール条約湿地に登録され、
涸沼の自然環境が国際的に認められました。周囲は22Km、最大水深は6.5mで、涸沼川の
一部が横長に膨らんだような形をしており、海まで8Kmほどです。満潮時には海から涸沼川
を通じて海水が逆流し、淡水と海水が混ざり合う関東地方で唯一の「汽水湖」です。「汽水
湖」には、海水魚と淡水魚の両方が生息しています。このような環境を好んで生息している
のが、「大和しじみ」です。特に養分が豊富な涸沼および涸沼川で採れるしじみは厚みのあ
るのが特長で、涸沼漁業協同組合が自主的に定めた管理基準を満たした涸沼産のしじみを
「ひぬまやまとしじみ」というブランド名で販売しています。一年を通じて漁獲されますが、
特に寒さで味の締まる12月~2月にかけての「寒しじみ」、6月~8月の産卵時期に身の肥大
した「土用しじみ」が年に2度の旬と言われています。今回は休日に何回もハゼ釣りに通っ
ていた涸沼の「ひぬまやまとしじみ」を紹介します。
<日本在来のしじみの種類>
日本本土に生息するしじみの在来種は3種類です。大きさはどれも2-4cm程度ですが、沖縄諸
島にはマングローブの根元に生息する20cm以上の大型で、大人の手の平サイズの「ヤエヤマ
ヒルギシジミ」がいるそうです。
1.「ヤマトシジミ」:汽水湖に生息するしじみです。国内で出回っているしじみ の99%
がこれです。大きさ2cm前後の2枚貝で、皆さんの食卓でお馴染みですね。
2.「マシジミ」:淡水性ですから、昔は水田に近い小川でたくさん採れました。平べった
い形、殻にあまり艶がなく、殻色もやや明るいのが特徴。殻の内側も紫がかって
いることが多く、大きさは3~4cmと大きめです。今は見なくなりましたね。
3.「セタシジミ」:淡水性の琵琶湖に住む固有種です。瀬田川でよく獲れたことから「瀬
田しじみ」と呼ばれます。ふっくらとした厚みのある形で、成長すると殻頂が突
き出てきます。表面がつやつやとしていて、殻の内面は紫色。大きさは2cmと小
ぶりです。琵琶湖でのシジミ漁の対象ですが、資源量は大幅に減っています。
4.淡水性の外来種「タイワンシジミ」:形態などは日本の在来種である 「マシジミ」と
似たところがあり、生息域や場所が重なっていることから、 混同されやすい。
河川や用水路で大量のシジミを見つけたら、タイワンシジミと疑って良いです。
それだけはびこっています。「要注意外来生物」に指定されています。
<シジミの漁獲量ランキング(2019年度)>
国内の漁獲量1位は島根県の41.2%、2位は青森県で29.6%、3位は茨城県の16.0%です。驚く
ことにこの3県で全国の9割近くを占めています。ちなみに、島根県の主要産地は汽水湖で
ある宍道湖で、また青森県は同じく汽水湖である十三湖と小川原湖です。そして茨城県は
涸沼です。もう10年以上、国内漁獲量より中国・台湾からの輸入量の方が多くなっていま
す。そして残念ながら、熊本県の偽装アサリ問題と同様に産地偽装の問題が過去に取りざ
たされたことがあります。
<シジミの豆知識>
1.シジミの栄養素と効能:しじみには、肝臓の働きを助ける「タウリン」「ビタミンB12」
「メテオニン」などが含まれていて、弱った肝機能を正常に戻してくれます。「二日
酔いには、しじみのみそ汁がいい」とよく言われますが、その理由がここにあるので
す。また、貧血予防に不可欠な鉄分や脂質の代謝や肌荒れ予防に良いビタミンB2など、
女性がぜひ積極的に摂りたい栄養素もたっぷり含まれている他、カルシウムも豊富に
摂ることができます。更に 肝機能の向上が期待できるオルニチンも多く含み、この成
分は冷凍することで約8倍も増えます。
2.シジミの旨味:しじみには 二枚貝を代表する旨味成分「コハク酸」が多く含まれていま
すが、取れたてより、いったん冷凍した方が、旨み、栄養が倍増します。
3.砂抜きのポイント:しじみは、調理前に必ず、夏期なら3~4時間、冬期なら6~8時間水
につけて砂を吐かせましょう。使う水は、1%の塩水を使うと旨味成分が増えて味が良
くなります。砂抜き後は、10分ほど空気にさらす(夏場は冷蔵庫内で)と、コハク酸
が増えてさらに美味しくなるといわれています。夏の土用しじみは砂抜きすると日持
ちしないので、食べきれない場合は、砂抜き後に冷凍しておくと便利です。冷凍して
おけば半年は持つので、ぜひ実践してみてください。
4.シジミの活用法:味噌汁だけではありません。スープにしても、炒めてもよし。酒蒸し
にしたシジミで、クライムチャウダーにすると子供たちに好評です。また、ごま油
でもオリーブオイルでも相性が良いので炒め物にも適しています。ムール貝をシジミ
に代用したパエリアもいけます。又、バター焼き・ピザなどの洋食、そして中華料理
にもOKの万能食材です。
5.しじみの過熱し過ぎはNG:加熱しすぎると、しじみの身が縮んで固くなり、味も落ちて
しまいます。火を通す時は目を離さないようにして、貝の口が開いたらすぐに火を止
めましょう。レンジで過熱するのなら、しじみ150gに対して600Wで3~4分程度が目
安です。貝殻が飛び散ることがあるので、必ずラップをかけて過熱してください。
6,赤シジミ・黒シジミ:シジミの殻の色といえば多くの人が黒を連想するでしょうが、実
はシジミは生息する場所によって殻の色が変化します。シジミ漁は涸沼だけでなく涸
沼川でも盛んですが、涸沼川の下流の方では赤褐色になり、涸沼では黒くなります。
さらに、殻の形状や味も異なっているといいます。生息する場所で殻の色が異なるの
で、地元ではそれぞれ“赤シジミ”、”黒シジミ”と呼んでいるそうです。
<涸沼のシジミ漁は機械を使わないから、キズがなく鮮度長持ち>
涸沼のしじみは、「手採りカッター漁」という、現在では大変珍しい昔ながらの漁法で採
られています。船外機などの動力に一切頼らずに、舟から湖底に下ろした「カッター」と
呼ばれる約5mのカゴ付きの竿を使います。潮の流れや風の力を利用し、少しずつ舟を動か
しながら、湖底の砂の上に生息するしじみをカッターで巧みにかきあげるのです。「手掻
き操業」で漁獲しているので、キズがほとんどなく、日持ちが良くて高品質。中には500円
玉より大きなものが獲れるのも魅力のひとつです。1回に採補できる量は、夏場で約2~3Kg
位、冬場は1Kgにも満たないほど。安定しない自然環境が相手の厳しい仕事ですが、漁師は
「手掘り」での漁に誇りを持って毎日漁に出かけます。涸沼のしじみ専門の漁師は、全部で
240人。資源を守るため、漁は午前中のみ、漁獲量は100kg、径12mm以下は採らないなど、
ルールが厳しく定められています。東日本大震災の影響で、地形が変わり、水深が30cm?
40cm沈んだという涸沼。潮の流れが以前より強くなり、しじみ漁には、ますます技術と体
力が必要になっていると聞きました。
<水質の悪化や護岸工事や密漁などの影響により年々減少>
涸沼は、全国の湖沼別順位で第4位の漁獲量を誇っていますが、水質の悪化や護岸工事や密
漁などの影響により、年々減少しているそうです。特に2011年の東日本大震災時の一時漁
の見合わせからさらに漁獲量が減少しましたが、大涸沼漁協が行っている稚貝の放流の成果
もあり、最近は徐々に漁獲量が復活してきているそうですよ。
<涸沼のしじみ楽市直売所「しじみ屋」>
涸沼沿いにあり、県内はもちろん県外にもその名を轟かすお店で、ブランドしじみの「ひぬ
まやまとしじみ」を中心に取り扱っております。大粒しじみ、特大しじみに加え、砂抜きが
してあるしじみも!ひぬまやまとしじみの特徴は、食感がプリプリしており、なんといって
も濃厚なダシが取れます。お店では万能食材としての活用法も紹介しています。
店内には他にも、多少キズありだが味は変わらない、あじ、ほっけ、赤魚の干物が7、8枚
入って驚きの500円!などの加工品も人気商品になっております。しじみはやっぱり味噌汁
で…という方の為に、しじみによく合う味噌も販売しております。県内の佃煮屋から取り寄
せている、佃煮は6種類、中でもコリコリの食感とししゃもの卵のプチプチ食感がやみつき
になる「ししゃもきくらげ」は一度食べるとクセになるおいしさです。
隣の立ち寄り湯「涸沼温泉」や、宿泊ができる施設「いこいの村涸沼」を利用する方も、
ここでしじみを買って行かれる方が多いそうです。
「ひぬまやまとしじみ」は出汁が良く出てうま味が濃いのが特徴です。この濃厚なうま味
を簡単に味わえる料理としては「シジミの味噌汁」がお勧めですが、紹介した以外に「炊
き込みご飯」も美味しいです。涸沼では5百円玉大のシジミが獲れることがありますが、
この大きなシジミは酒蒸しやバター焼きがいけますよ。
皆さんにおススメです。是非、「ひぬまやまとしじみ」をご賞味あれ!
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