茨城県の水産加工品の販売金額は3,619百万円で全国11位、事業体の数は10事業体で全国
30位です(平成29年)。茨城県は多様な水産加工品を製造していますが、総生産量比較
では、とても全国トップクラスの生産地とは言えません。しかし、品種別では塩干品の
「干しホッケ」が、全国生産量32,122tの内、茨城県が7,178t(22.3%)で日本一のシェアで
す。他にも「煮タコ」「佃煮製品」など地域環境に合った特色のある加工品を生産してい
ます。茨城県は大消費都市東京から北東40~160㎞という好位置にあり、その上、太平洋
に面する長い海岸線と、内陸には霞ヶ浦・北浦を有していることから、海面漁業と内水面
漁業の両方で漁獲された魚介類を地元産原料として入手できるのが強みです。現在は漁獲
量が不安定な地元の海面漁獲量だけに頼らず、積極的に輸入品の魚介類を受け入れて、安
定生産を強化しています。出来上がった製品の販売先は国内にとどまりません。例えば、
サバ・イワシの生鮮冷凍品やタコ製品などは、諸外国に向けて輸出されています。
今回は茨城県で生産している特色のある水産加工品を紹介します。
※海面漁業:海で行われる漁業。内水面漁業:河川・湖沼などで行う漁業および養殖業。
<水産加工食品とは>
水産加工とは水産物を生ではなく、なんらかの手を加えることをいい、腐りやすい魚を保存
性の高い食品にする目的から生まれた技術ですが、生とは一味違った食品にする優れた技術
に発展し、そこから更に、家庭における食事、弁当食材に利用される自然解凍食品や電子レ
ンジ解凍食品など、多彩な製品が生まれてスーパーや店頭などで販売されています。日本で
は国内で獲れた魚の約60%が水産加工原料です。このうち約70%が食用向けとなり、残りの
30%は家畜の餌や農産物などの肥料となります。
<水産加工業者の挑戦>
今は魚を好んで食べない人も多くなってきています。昔のように、食卓にブリの照り焼きや
鮭の塩焼きが頻繁に出されることが減ってきました。確かに、国民の「魚離れ」による水産
物消費の減退、漁業生産量の減少等に呼応して、日 本の水産加工業は全体として縮小傾向に
あります。 しかし、世界有数の漁業国である日本が、将来にわたり持続可能な漁業経営を展
開し、 豊かな食生活を支える魚食文化を後世に伝えていくためには、国内水産加工業の健全
な発 展が不可欠であり、水産加工業の再生・発展をいかにして図るかは重要な課題です。
また、東日本大震災による大津波は、東北3県を中心とした太平洋沿岸地域の水産業に未曾
有の被害をもたらし、現在も、その復興は道半ばにあります。こうした中、県内の水産加工
業者は食の多様化をプレゼンスすることが生きる道と考えて、特色のある新技術そして加工
品のブランド化を目指して懸命に努力しています。
<水産加工品の豆知識>
1.原料原産地を表示しなければならないワケ
TPPへの参加が契機です。加盟により安い外国産が国内に流入して来るから、原料
原産地を表示させることで、国内産との識別をはっきりと分かりやすくさせる。こ
うすれば、国民は愛国心を持って国内品を積極的に購入してくれるだろうから、国
内生産者の保護になるとの考えから生まれたようです。
2.勝手に販売してはいけない?販売のルール
農作物を販売する際は農家から直送したり、加工品を仕入れて販売したりするのは
特別な許可を取る必要がありません。しかし、鮮魚をそのまま販売したり、加工し
て販売したりする場合は、都道府県の保健所に届け出を出す必要があります。水産
加工品であれば、缶詰は許可が不要ですが、生物や干物、燻製などは許可なく販売
できない決まりとなっています。
3.出来たてより時間が経ったほうがおいしい!?水産加工品
ナマ物は鮮度が命!というように食品は新鮮なものほど味がおいしく、時間が経つ
と味が落ちると言いますが、水産加工品はそうではありません。缶詰でも、製造日
が新しいほどおいしいというわけではないように、時間を置くことで発酵熟成され
て旨味が増す水産加工品もあります。
4.かまぼこはうま味にこだわった水産加工品
「かまぼこ」は平安時代の古文書にその名が登場するほど、歴史の古い食品でその
製法のメカニズムは未だに謎の部分が残っています。 面白いのはその加工の主眼で
す。大半の水産加工品が保存性を重視するのに比べ、かまぼこは「うまみ」にこだ
わって誕生しました。現在の生産地としては静岡県焼津市が有名ですね。
5.たらこ(明太子)
たらこの原料は「スケトウダラ」の卵です。スケトウダラは、すり身にされて蒲鉾
やその他の水産加工品としても重宝されています。そのスケトウタラの卵つまり
「子供」と言う意味合いで「タラ(の)子」→「たらこ」となったと言われています。
その「たらこ」に辛子を加えた調味液に漬け込んだものが「辛子明太子」です。 で
は、この「明太子」 と言う言葉はどういう意味なのでしょうか? 実は 朝鮮半島で
「タラ」は昔から「ミョンテ(明太)」と呼ばれ、卵が食べられてきました。 この
「ミョンテ(明太)」の卵と言うことで「明太子」と呼ばれていたのが現代でもそ
のまま用いられ「めんたいこ」となったと言われています。
6.たらことイクラ
タラの卵は「たらこ」ですが、なぜ鮭の卵は「イクラ」というのでしょうか?実は
ロシア語で魚の卵のことを総じて「イクラ」と言うのだそうです。
7.魚の栄養価
魚は非常に栄養価が高く、健康に良い食品です。
①高たんぱく質: 魚は高品質なたんぱく質を豊富に含んでおり、筋肉の成長や修復に役
立ちます。
②オメガ-3脂肪酸: 魚にはオメガ-3脂肪酸が多く含まれており、心臓病のリスクを低減
し、脳の健康をサポートします。特にサーモン、マグロ、サバなどの
脂肪が多い魚に多く含まれています。
③ビタミンD: 魚はビタミンDの優れた供給源であり、骨の健康を維持するために重要です。
④ビタミンB群:魚にはビタミンB12やナイアシンなどのビタミンB群が豊富で、エネルギ
ー代謝や神経機能の維持に役立ちます。
⑤ミネラル: 魚にはセレン、ヨウ素、亜鉛などのミネラルが含まれており、免疫機能や甲
状腺機能のサポートに重要です。
魚を定期的に食事に取り入れることで、これらの栄養素を効果的に摂取することができます。
<海産物の流通の仕組み あなたの食卓に魚が届くまで>
(1)市場内流通
海産物はまず、水揚げ港に開設されている「産地市場」に水揚げされます。そして、水産加工
会社や冷凍冷蔵業者、鮮魚卸業者などの買受人が購入し、大都市や地方都市など一定の消費人
口がいる「消費地市場」に出荷されます(消費地市場のうち、人口20万人以上の自治体にある
消費地市場を中央卸売市場と呼びます)。市場内流通は一見複雑に見えますが、この仕組みが
あることで産地から遠く離れた消費地でも、全国で水揚げされたさまざまな魚を店の規模に見
合った量だけ仕入れることが可能となります。産地市場は全国に313カ所、 消費地市場は278
カ所あり、セリや入札の市況がすべて公表されるため、 取引する際の海産物の参考になる価格
(最高値)が判断でき、公正な取引の指標にもなっています。
(2)市場外流通
今やネットショッピングが主流の時代。近年増えているのが、市場を通さない「市場外流通」
です。ネットショッピングだけでなく、例えば業者や飲食店から漁師が直接注文を受けて出荷
することもあれば、「今日はこんな魚が入ったぞ!」と漁師自ら船の上で営業の電話をするこ
ともあります。市場外流通のメリットは、市場の動きに合わせることなく出荷ができることや、
流通段階でかかる費用を省けるということ。また、消費者と直接繋がれる機会があるのも魅力
的です。一方で、自然相手の仕事をこなしながら、販路の確保・開拓、出荷作業をするという
のは大変なこと。顧客対応や、市場内流通では起きないトラブルが発生する場合もあります。
(3)漁協などを通じて販売する「共同販売」
養殖業の現場では、漁業協同組合(漁協)が行う「共同販売」(共販)が主流です。共販とは、
漁協が漁師から仕入れた海産物を一括して仲買加工業者に入札(もしくは相対で)販売するシ
ステムのこと。養殖業の現場は家族単位の経営体も多く、販路の確保まで行うのは大変です。
漁師にとっては、共販で売ることで代金回収の手間や売れ残りのリスクを抱えることなく販売
ができるメリットがあります。
<県内水産加工製品の地域別特色>
茨城県の水産加工品は量も種類も豊富で、地元産原料を使ったサバ・イワシの生鮮冷凍品やシ
ラス干し、ワカサギの佃煮・煮干しをはじめ、県外産原料を使ったホッケ・シシャモの塩干品
や煮タコなど、地域ごとに特色のある多彩な製品が生産されています。製品の販売先は国内だ
けでなく、サバ・イワシ・タコ製品は、諸外国に輸出されています。 本県において水産加工業
が主に営まれている地域は,大きく沿海の六地区と霞ヶ浦・北浦に分か れます。具体例で地域
特産の水産加工品を紹介します。
1.北茨城地区:「揚げかまぼこ」と「煮たこ」が有名。他に「しらすぼし」「こうなご(い
かなごの稚魚)」「惣菜品」「タイの干物」・「ニギスの丸干し」・「いわ
しのみりん干」・「いわしの丸干し」など
2.日立地区:タコ製品といわし製品が多い。「蒸しタコ」「酢タコ」「いわしのごま漬け」
「たたみいわし」「丸干いわし」「煮干いわし」「いわしみりん干し」、他に
「しらすぼし」「こうなご」「惣菜品」など
3.那珂湊地区:塩干品が主力の生産地。輸入産タコを使った「タコ製品」「ホッケの干物」
が有名。他に「ボイルエビ」・「サケのみりん干」・「イカの塩辛」・
「明太子」など
4.大洗地区:県外産のホッケ・シシャモなどを使った塩干品やタコ製品、そして明太子など
が主力、他に「サバの焼き魚」・「サンマの加工品」・「しらす干し」
5.鹿島灘地区:地元で獲れる「鹿島灘蒸しハマグリ」「焼はまぐり」他に「海産つくだ煮」
「ちりめんしらす」「煮干いわし」「しらす干し」
6.波崎地区:サバ・イワシなどの生鮮冷凍品を主体とした付加価値の高い製品づくり「サバ
の缶詰」・「イワシの加工品」・「サンマの加工品」・「サバの加工品」・
「いわしピーマンボール」・「さくら干し」これら水産加工品の生産高は
約13~15万トンで県内生産量のおよそ70%を占めています。
7.霞ヶ浦北浦地区:古くから、湖で獲れるワカサギ・シラウオ・テナガエビなどを使った佃
煮や煮干しなどの生産が盛ん。「ハゼの佃煮」・「ワカサギの佃煮」・
「エビの佃煮」・「アサリの佃煮」など
<生産量の多い代表的な水産加工品>
(1)干しホッケ:ホッケには、北方のオホーツク海で漁獲される「シマホッケ」と北海道近
海で漁獲される「マホッケ」があります。「シマホッケ」は輸入品になります。
「マホッケ」はほとんどが北海道で漁獲されています。ホッケの加工品である干し
ホッケは茨城県の那珂湊地区、大洗地区で多く製造されており、シェア22.3%で日
本一の生産量を誇りますが、原料はシマホッケが中心です。ロシアとの関係悪化で
今後どうなるのか心配です。
(2)タコ製品:県北方面が中心で生産されています。特に茨城県ひたちなか市は、タコの加
工量が日本一で、街を歩くとタコ文化に満ち溢れています。 原料のタコは主にモロ
ッコやモーリタニア等の西アフリカ産を中心にした輸入品が 多い です。輸入原料
以外にも日本海沿岸で獲れるマダコ、 ミズダコ、ヤナギダコも煮だこや酢だこなど
として加工されています。 独特の歯ごたえと扱いの簡便さから親しまれている加工
品と言えます。
(3)いわし製品:県南地区で多く生産されています。いわしの水揚げ量6年連続全国1位を誇
る銚子漁港があります。いわしは水揚げ後の傷みが早いことなどから、加工品として
出回ることも非常に多い魚です。たとえば、煮干し、ちりめんじゃこ(しらす干し)、
釜揚げしらす、めざし、つみれ、オイルサーディン、アンチョビ、みりん干し、など
など。これらが、品種の違いや干すときのやり方・度合い、調味料の違い、成長によ
る大きさの違いなどでさらに細かく分かれたり、各地で別の呼ばれ方をされたりしま
す。そして食用以外にも「いわし」は有効活用されており、魚油の採取、養殖魚や家
畜の飼料、肥料などの用途があります
(4)明太子:茨城県屈指の観光地・大洗には、明太子の老舗メーカー「かねふく」が運営する
明太子専門のテーマパークがあります。一日5トンを超えることもあるという明太子が
施設内の工場で生産されており、実際に作っている工程を間近に見学できます。出来
上がったばかりの明太子を購入したり食べたりできるほか、明太子についてゲーム感
覚で学べるギャラリーもあり、子どもはもちろん大人も楽しめると好評。周辺には
「アクアワールド」といった人気スポットや、四季の花々が彩る国営ひたち海浜公園
があり、観光ついでに立ち寄るのもおすすめです。
茨城県で生産されている水産加工品の中から優れた製品を選定し、消費者が水産加工品を安心して
購入できるように推奨マークを添付して販売する「水産加工優良推奨品制度」を行っています。
ですから安心して茨城県産の水産加工品をご賞味あれ!
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