タコと大根

　友人は高知県の「マンタに出会える町」出身である。つまり海があって山もある素敵な田舎である。
　私はその田舎に行ったことはない。そんな私に友人はいつもこう言っていた。
　「私の田舎はタコと大根が一緒に捕れる。」
私は初め、それを「タコと大根は料理の相性がよい。」とか「大根を使うとタコが柔らかくなる」という類の話だと思っていた。しかし、それでは「一緒に捕れる」の説明が付かない。
　次に「タコの旬と大根の旬が同じ」という意味だと思った。山育ちの私にはタコの収穫時期が分からない。
　すると彼女は平然とこんな事を言った。
　「違うちや。満月の夜にはタコが大根を抜きに来るがやき。それで一緒に捕れるが。」
・・・・。私はしばしの沈黙の後爆笑した。
　「そんなわけないやろ。」
すると彼女はムキになって真実だと言い張った。
　その後、これはネタとして方々で話した。デイサービスで話した時も大受けだった。タコが満月の夜に大根を抜きに来る。それを見計らって捕獲する・・・想像するだに笑える。
　ところがデイサービスに高知に住んでいたというあるおばあちゃんが来た日、事態は一変する。その日もこの話で大笑いしていたら、そのおばあちゃんは真面目にこう言った。
　「それはほんまじゃ。」
・・・？うそ？そしておばあちゃんはこう付け加えた。
　「タコは大根も抜くけど、かぼちゃも抜く。かぼちゃは重いけん、途中で捨てとる。大根は軽いけん、持って行くんじゃけど、そこを捕まえるんじゃ。」
　真相は分からないが、こう語る人がいた以上私は白旗を揚げるしかなかった。友人には
　「嘘つき呼ばわりして悪かった。」
と電話した。
　どなたか、真実を知る人いませんか？

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