すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

思い出話

2015-01-30 22:36:57 | うちのキヨちゃん
 今夜残業して遅めの夕食となった。キヨちゃんのカレーを食べながら、テレビのニュースで雛飾りの話題になった。
 「綺麗な雛人形があったのに、いつまでも置いておくけん、結婚出来んのじゃ言うて焼いてもろうたなあ。あれは父ちゃんが買うたんだったか?」
 「違うよ。じいやんじゃよ。」
 そうなのである。うちには見事な七段飾りのひな人形があった。どこかで豪華な雛人形を見かけた祖父が、負けず嫌いも手伝って私に買ってくれたのだった。
 嬉しくて毎年毎年飾っていたが、家を出てからはお雛祭りどころではなく、いつまでも納屋の箱の中なので、いつかネズミに食われてしまわないかとヒヤヒヤしていた。その内、上に書いたような話もあって、氏神様で焼いてもらったのだった。まあ、今ならどこかに寄付するとか方法はあったのに、勿体ない話ではある。
 「供養して貰ってから、効果あるまでえらい時間かかったよね。」
そう私が言うと、
 「片っぱしから断るけんじゃ。」
とキヨちゃん。さすがに片っぱしからと言うほど、見合い話もなかったが、
 「断って良かっただろうがえ。」
そう切り返すと、
 「ええことあるか。父ちゃんおるうちに結婚せんと。」
ときた。
 そんなバカバカしいやり取りの後、過去の見合い話を引っ張り出しては、あの時はどーだったとかこうだったとか、キヨちゃんが解説し、私が反論すると言う展開に。その内、
 「ほんでも、縁って言うのはどこにあるか分からんもんじゃ。」
 そうしみじみ言うキヨちゃん。これ、この流れは当然私とくりりんに落ちると思いきや、
 「うちと父ちゃんの慣れ染めは・・・。」
と始まった(笑)。
 キヨちゃんと父は所謂職場恋愛である。酒飲みでやんちゃ者のくせにロマンチストの父は、キヨちゃんに洗濯物を頼んで、それにラブレターを忍ばせていたのだ。娘の私が言うのもなんだが、父はとても達筆で文章を書くのも上手い人だった。だから、当然ラブレターは素晴らしかっただろうと想像する。
 「父ちゃん、結婚した時一文無しでな、ミカン箱がテーブルじゃった。」
遠い目をして、嬉しそうに話すものだから、片付けも洗い物も後回しにしてくりりんと話に聞き入った。
 そして、ひとしきり思い出話をしてふと我に返ったキヨちゃん。
 「風呂入る。部屋暖めて。」
と言った。慌てて風呂の準備と洗い物と部屋の暖房と・・・。
 でも、こんな風に父の話をするのも久しぶりだった。くりりんも、
 「お父さんに会ってみたかったな。父にも会わせたかったけど。」
とお互いのお父さんの事を話した。
 「きっと父が生きていて、お父さんがいたら、そして、近くにいたら、僕たちよりもお父さん同士が仲良くなっていたと思うんだ。」
 そうだね。私もそんな気がする。だからこそ、父やお父さんが引き寄せてくれたのじゃないかとも思うのだ。

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コメント (2)
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