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種之助の涎くり   秀山祭の「寺子屋」  ― 新橋演舞場・昼の部 ―

2012-09-15 | 歌舞伎


前回の新橋演舞場夜の部に引き続き、今回は昼の部。

義太夫狂言『寺子屋』と黙阿弥の世話物『河内山』の2本立である。幕間40分の休憩が1回ある。

今月から初の試みらしいが(いつもは3本立て)、わたしは今回のような試行に賛成したい。

嬉しいのは『寺子屋』は、いつもなら源蔵戻りからだが、今回は千代(福助)が子の小太郎を入門させる「寺入り」から。

これだと、菅秀才の身替りになる、我が子小太郎との最後の別れ、つまり母の心情がより鮮明になる。

それと、なにより嬉しいのは、涎くり(種之助)の仕どころというか、見せ場が多分にあることだ。

 

 

滞在してるホテルで夕刊をみると、今回の歌舞伎評がちょっぴり載っていた。大半が吉右衛門のせりふ回しの賛辞ばかり。

最後の1行が「種之助の涎れくりがいい」。それだけである。

いま一番注目しているのは、又五郎丈の長男・歌昇(平成元年生まれ)と次男・種之助(平成5年生まれ←画像)のご兄弟である。

兄弟といえば阪神の新井良太新井貴浩選手も三味線の吉田兄弟も好きです。

話が逸れましたが、昨年も同じ新橋演舞場で父又五郎の初役源蔵で『寺子屋』をみている。そのときの涎くりが兄貴の歌昇だった。

著名な演劇評論家が歌昇の涎くりを「あまりにも現在的すぎる」と評した。

異論を唱えるつもりはないが、わたしは今まで誰もやったことのない工夫がいたるところにあり、いい涎くりだったと思う。

この役は幹部の息子がやるのが通常だが、大名題がご馳走役で出ることもある。名前はいわないが、ある襲名公演で涎くりを幹部俳優が付き合った。

段取り芝居だけのつまらない涎くりだった。

さて種之助の涎くりであるが、ベテランの錦吾の三助を相手に回して大奮闘である。嫌味にならず、淡々と演じたところがいい。

オームという件などは、客席からかなりの爆笑があった。ことに戸浪のマネが素人っぽいのがいい。

ただし二つの欠点がある。

一つは暖簾口の引っ込みがよくない。涎くりの役でなく、素になってしまっている。小川暁久になってしまっている。

二つ目は寺子の親たちが迎えに来るところ。涎くりは3番目である。花道でおんぶしてもらうのが逆に祖父の橘三郎をおんぶするのがいつもの決まりだが、ジャンプしないで横を通る始末。所見の日だけならいいのだが・・。

又五郎の玄番はニンだと思う。期待通りのいい玄番だ。

その又五郎曰く
「息子の種之助が涎くりで出させていただいてますが、玄番が涎くりを叩くところは思いきり力をかけますハ、ハ、ハ」。

   左の高頬にひとつのほくろ!!

ご存知『河内山』。

やはり吉之助の持役の北村大膳がうまい。

それと米吉の浪路がこの芝居にうまくおさまった。7月の松竹座より格段の進歩である。

人気狂言がふたつ。夜の部よりも盛況だった。 

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