おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

『たいむりぃNEWS』用連載第2話

2010年05月05日 00時46分48秒 | 小説・短編つれづれ

お題:『「首輪」「ラーメン丼」「フライパン」「アンドロイド」「特殊部隊」「片道チケット」「ビーム」……以上すべての言葉を使って学園物の小説を書きなさい。』~第2話~


 馬車が首都に着いた。
 ハヤ美は荷物からチケットを取り出した。
 大きさの違う二枚の紙切れが掌に乗ってる。
 一枚は、アレグラント学園までのチケットの半券。そしてもう一枚は学園から故郷に帰る時に使うチケットだ。
 その時、強い風が吹いた。
 路上から、砂ボコリが舞い上がる。
 それが、目の中に入った。
「痛い痛い痛い!」
 必死で目をこする。涙を出してホコリを流し出そうとする。
「痛かった……」
 痛みは落ち着いたようだった。
「ん?」
 私チケットどうした?
 確かバッグから取り出して、眺めて、目にゴミが入って……
 失くした? 風に飛ばされた??
 ハヤ美は慌てて馬車の床や、後ろの地面を探したが、それらしき紙切れは見付からない。
 大ショック!

「あの……おでこに何かがついていますよ」
 私は慌てて自分の額に指を当てた。
「ありがとうございます」
 何度かデコを指先でこすると、皮膚とは違う感触を得た。
 よかった。
 汗で張り付いたそれをはがして目の前に持ってくる。
 半券だ。
 帰りの馬車のチケットは!?
 私は全身のどこかにチケットが引っ掛かっていないか探った。
 しかし、どこにも無かった。私は、帰りのチケットを失くしたのだ。
 『恋の片道チケット』……そうではないが、私は故郷からアレグラント学園まで行くコトしかできない。そこから帰るコトが出来ない。
 私のこれからの運命を暗示しているようで、恐い。
 運命は、あの城壁の中で私を待ち構えている。
 全然ウキウキは、しない。


      *


 まだこの辺は、既に発表してある文章を手直ししたものになっています。
 1回600文字くらいまでに収めて、毎回どこかでキーポイントになる部分がなきゃいけないので結構難しいです。
 ちなみに今回は題名入れて『676』文字。
 まだまだですなあ~

 では最後に、恒例となりました宣伝を。
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 ではでは~

『たいむりぃNEWS』用連載第一話

2010年04月29日 18時04分12秒 | 小説・短編つれづれ

お題:『「首輪」「ラーメン丼」「フライパン」「アンドロイド」「特殊部隊」「片道チケット」「ビーム」……以上すべての言葉を使って学園物の小説を書きなさい。』~第一話~


 私は今、馬車に揺られている。
 いい天気だ。行く先に、少し灰色の雲がある……それ以外は……
 頭上の空を見上げると、真っ青。ほぼ快晴!
「あっ」
 すると、視界に白い影が映った。
 白い鳥の……群れだ。

 その中の一羽が彼女の方にパサパサと音をたてながら向かってくる。
「?」
 彼女が小さく手を掲げると、近付いてきた鳥はその指にとまった。
「かわいい」
 鳥は首をひねって彼女の顔をのぞき込んでいる。
「あれ? もしかして……じいちゃんかな?」
 彼女の名前は……仮に「ハヤ美」としておこうか。
 ハヤ美は白い鳥に手をかざし、精神を集中した。
 解除の魔法である。

 鳥の全身から優しい光がにじみ出す。形がぼやける。
 そのまま鳥の姿は溶けたようになくなり、ハヤ美の手のひらの上に一枚の白い紙切れが残った。
「やっぱりじいちゃんからだ」
 紙には文字がつづってある。なになに……

『がんばれ』

 ……それだけかい!
 この一言を伝えるためだけにじいちゃんはわざわざ魔法を使ったのか。ハヤ美はあきれながらも、一方で少し心が温かくなるのを感じてもいた。
 じいちゃんらしいや。
 私はひとりじゃない。そう思うと、今自分の置かれた絶望的な状況も少しは楽な気分で受け入れることができそうだった。

ラ研投稿作品……性懲りもなくまた掲載します。

2010年04月27日 08時12分50秒 | 小説・短編つれづれ
 第一章を書き終えました。

 今、おっそろしく忙しいです。
 頭の中で、無関係な4つとか5つ以上のマルチタスクが常に回っています。

 本当は投稿する作品をブログで掲載するのはフェアじゃないし、いけないことかなあと思うんですが、なんかフィードバックが返ってこないとモチベーションが続かなそうで……

 ラ研投稿者の皆さま、本当にごめんなさい!
 このままブログ連載をさせてください!

 すみません……
 よろしくおねがいします。

 今回は、第一章を全て掲載します。


      ○


第一章 戦いの前に


 私はハヤ美という名前だ。
 いまは馬車の中――『国立アイグラント学園』という学校へ向かう途中――で薄いクッションにもたれている。
 国立アイグラント学園……そこは、アイグラント帝国の絶大なる武力を支える、優秀な兵士を育成する学校だ。
 アイグラント帝国は、その学園から輩出された兵士たちを使い、今やこの大陸を制圧し尽くそうとしていた。
 はぁ~……これから私、どうなっちゃうんだろ?
 ハヤ美は、流れゆく景色を眺めながら絶望的な気持ちに打ちひしがれていた。
 だいぶ建て物が多い風景になってきた。故郷の山村とは目に入るモノが全く違う。家や畑、工場など、人の手で築かれたものが目立つ。
「あっ」
 白い鳥が飛んできた。かわいい。
 その中の一羽がハヤ美の方にパサパサと音をたてながら向かってくる。
「あれ?」
 ハヤ美が小さく手を掲げると、白い鳥が指にとまった。
「じいちゃんかな?」
 鳥の全身から優しい光がにじみ出す。形がぼやける。
 そのまま鳥の姿は溶けたようになくなり、ハヤ美の手のひらの上に一枚の白い紙切れが残った。
「やっぱじいちゃんからだ」
 紙には文字がつづってある。なになに……

『がんばれ』

 ……それだけかいっ!
 この一言を伝えるためだけにじいちゃんはわざわざ魔法を使ったのか。ハヤ美はあきれながらも、一方で少し心が温かくなるのを感じてもいた。
 じいちゃんらしいや。
 私はひとりじゃない。そう思うと、今自分の置かれた絶望的な状況も少しは楽な気分で受け入れることができそうだった。

 馬車は、アイグラント帝国の首都に着いたようだった。
 アイグラント帝国は、軍隊を率いながら各地を制圧し続け、その度に首都を移してきた。
 ということは……首都がある場所……それはすなわち敵国との戦いの最前線を意味する。
 そう思って城下の町並みを見詰めると、人々の生活から「活気」を感じると共に、「のん気」とは無縁のピリピリとした緊張感が感じ取られるような気もする。
 この町は、いつ戦闘に巻き込まれてもおかしくない場所なのである。

 ……しばらく馬車は城下町の中心部を進む。
 子供が遊んでいた。
 走り回る子達を大人が注意する。
 石造りの建て物の軒先には、洗濯物が干してある。
 飲食店の周りにはテーブルと椅子が並んでいて、そこで食事をカッ込む人、上品にお茶を飲んでいる若い女性、仲間と談笑する人々……いろんな人達が一日の終わりを謳歌している。

 あぁ~……癒される~~~……のんびり……

 している場合じゃない!
 私は自分の置かれている状況をすっかり忘れてのん気にしていた。
 あんたも!あんたも!あんたも!……そしてこの私も!!
 これからどんな危険が身に起こるか分からないんだよ!

 ハヤ美は荷物の中から、この馬車に乗り込む際に使ったチケットを取り出した。
 手のひらの上にのっているのは大きさの違う二枚の紙切れ。
 一枚は、アレグラント学園までのチケットの半券。そしてもう一枚は学園から故郷に帰る時に使うチケットだ。
 その時、強い風が吹いた。
 石畳の路上から、砂ボコリが舞い上がる。
 それがハヤ美の目の中に入った。
「……あいたたたたたた……!!」
 ハヤ美は必死で目をこする。涙を出してホコリを目の中から流し出そうとする。

 ………

「えーん……痛かったよう」
 ようやく痛みは落ち着いたようだった。
「ん?」
 私チケットどうしたっけ?
 確かバッグから取り出して、ぼんやり眺めてて、そしたらゴミが目に入って……
 失くした? 風に飛ばされた??
 ハヤ美は慌てて馬車のシートの周りや、後ろの地面なんかを探したが、それらしきベージュ色の紙切れは落ちていなかった。
 ショック!!!

「あの……おでこに何かがついてますよ」
 えっ?
 私は慌てて自分の額に指の先を当てた。
 何度かデコを指先でこすって探す。すると、皮膚とは違う感触を得た。
 ……あっ、なんかくっ付いてる!
 よかったあ。
 汗で張り付いたそれをはがして目の前に持ってくる。
 ……半券だ。
 帰りの馬車のチケットは!?
 私はどこかにチケットが引っ掛かっていないか全身を探った。
 ……ない。
 どこにも、ない。……私は帰りのチケットを失くしたのだ。
 『恋の片道チケット』……そんなんじゃないが、私は故郷からアレグラント学園まで行くコトしかできないのか。そこから帰るコトはデキないのか。
 私のこれからの運命を暗示しているようで、寒気がした。
 恐い。
 私の、心配のし過ぎであったらどんなにいいだろうか。でもこれはきっと……思い過ごしでは、ない。
 私の運命は、あの城壁の中で私を待ち構えている。
 全然ウキウキは、しない。

      *

 馬車が去ってゆく……
 本当は私を故郷まで乗せて行って欲しい。
 おウチに帰りたい。

「……まっ、やるっきゃないか!?」
 じいちゃんの顔が頭に浮かんで、ハヤ美は早足で巨大な門をくぐった。

 ――国立アイグラント学園特殊部隊養成学校――

 それが……この学校の正式名称。
 門の横の壁に、大きな活字で刻まれていたこの学校の名前。
 ハヤ美の足は早くも震えていた。
 これからどんなことが私を待ち受けているんだろう? 私はこの『任務』を成し遂げることができるのだろうか?
 ……そして私はもう一度、ふるさとの土を踏むことができるのか!?

 壁の厚さだけの短いトンネルを抜ける直前に、視界が大きく開けた。
 そこはまるで庭園のようだった。
 緑の芝生、並んでいる樹木、それらといい色の加減で通っている土色のみち……ところどころに木製のベンチも配置されている。
 これは国立学校ってゆうより国立公園だな……
 ハヤ美は辺りを見回した。
 『庭園』を取り囲んで、石造りの建物がたっている。
 あそこが……私の入る学生寮かな?
 あっちは……戦闘理論や戦術を学ぶ教室棟かな?
 そういえば、実戦を行うコロシアムがあるとも聞いている……
 ……ハヤ美はキョロキョロして……
 ……それはどこだろう?

 おのぼりさんのようにウロチョロキョロキョロしているハヤ美の背後から、声を掛けてくる者があった。
『お前は誰だ!?』
 大きな声量でいきなりそう訊かれた。
 ハヤ美は本気で20センチほど跳び上がって驚き、そのあと恐れおののきながらゆっくりと振り向いた。
「見ない顔だな。聞いていない。お前は誰だ」
「……あなたは……?」
 堂々と言葉を続ける自分と同じ年頃の娘に向かって、ハヤ美はおずおずと弱気に訊き返した。
「ん?……ワタシはこのアイグラント学園特殊部隊養成学校――生徒副隊長の野間だ」
「私はハヤ美です」
「ハヤ美?……ああそういえばそんな新入りが来ると教官から聞いていたか」
 野間は、重そうな甲冑を軽々と着こなしている。そして左腕に、やはり重そうな兜を抱えていた。
「スゴイですね、女性なのに副隊長」
 すると野間は全く心外といった表情をした。
「なにを言ってるんだ……貴様、何も知らないようだな……」
「えっ?」
「お前、死ぬぞ。早くここから出ろ」
 切れ長の目からハヤ美に注がれる、哀れむような目線。ハヤ美は背筋がぞゾゾゾーッとした。それが野間の言葉に対する恐怖だったのか、野間の美しさ、強さに対する感動だったのかは判別ができなかった。

 野間はハヤ美の方を振り返るような迷いを一度も見せることなく、後姿のままでハヤ美のいるその場所から見えなくなった。

      *

 ハヤ美はボーっとしていた。
 私は知らないことが多すぎる。何の為にここに来たのか分からなくなってきた。
 『庭園』のベンチに座って、しばらく空を眺めた。
 恨めしいくらいの青空。いわゆる快晴。神様は私の気持ちとは同調してくれないらしい。

 そんな時、空中をケーキとティーカップが飛んでいた。

 ………

 はっ!?
 そんなわけないじゃん。
 でも確かに視界の中を、ケーキとティーカップ――おやつのティータイムセットが二組――通り過ぎようとしていた。

 よいしょっ☆

 ハヤ美はそのティータイムセットを全てキレイに受け留めた。ついでにティーポットもあったが、それもきちんと中身をこぼすことなく、受け取った。

『……イタイイタイイタイイタイ!……止まらな~い!』

 授業棟の方にあった、広くて長い階段の方向から女の子の悲鳴が聞こえた。
 そっちを見ると、長いヒラヒラのスカートをはいた女の子が、階段を縦になり横になり転がり落ちてくる。
「誰か助けて~」
 悲鳴は弱々しくなってきた。
 ハヤ美はお盆にのったおやつセットを持っている。
「どうしよう!?……あっ、あそこに!!」
 ハヤ美は手に持ったおやつセットを近くのベンチの上に丁寧に置いた。
……それから、長い階段を転がり落ち終えて倒れている女の子に、丁寧に声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
「だいじょうぶじゃな~い!……ですぅ……あいたたた……」
「だいじょぶですか?」
「痛い!……痛いようぅ~~」
 なんとか立ち上がる女の子。
 ちっちゃい!
 ……私より20センチ以上低いぞ!
「あなた……初めて見る顔ねえ」
「ハヤ美といいます」
「私はグララン……あれっ、ケーキとお紅茶は?」
「あそこに置いときましたけど」
「あら奇跡的! こぼれてすらいないわ!」
 私のおカゲでしょう。ハヤ美は思う。
「ハヤ美さん……でよかったかしら? ありがとう」
「いえいえ」
「これでラフさんと3時のお茶が無事に飲めるわ~♪……おっと!」
 けっつまづき、ケーキ一個と紅茶一杯を落っことす。
「あらら~~」
「……」
「まあいいわ、ラフさんと半分コしよう(はぁとまぁく)」
 ハヤ美は思った……あれだけ丁寧に扱った私の努力って一体……

 ハヤ美は無事寮を見付け、自分の部屋に入った。……狭いな。まあ一人部屋だからしょうがない。
 着替えることもなく、ハヤ美はベッドにドサッと横になる。
 疲れた……
 そのままハヤ美は、明日のことを考える余裕もないままに深い眠りに落ちていった……


      ○


 以上で第一章終わりです。
 これで4千字くらい。だいたい1/4ってところでしょうか。
 本当はこれからもっとエピソード入れないと1万字まで届かないかと思ってたんですが、これで4千ですからね、メインに考えていたお話だけで1万字は軽く超えそうなことが分かりました。
 頑張ります。
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 ではでは~

ラ件投稿用作品。ほんのさわりだけ

2010年04月25日 16時48分19秒 | 小説・短編つれづれ
 ヴァッキーノさんが教えてくださった『ライトノベル作法研究所企画サイト』への投稿作品を書いています。(以下『ラ件』のホームページURL)

http://raken-kikaku.jpn.org/index.html

 僕の作品は……プロローグがあって、その後たぶん10章弱くらいで完結するかと思うんですが、今回はプロローグの後の第一章……その始めの方だけ掲載します。

 何かあったら感想等ください。

 よろしくです。

 ではでは~


      *


 私はハヤ美という名前だ。
 いまは馬車の中――『国立アイグラント学園』という学校へ向かう途中――で薄いクッションにもたれている。
 国立アイグラント学園……そこは、アイグラント帝国の絶大なる武力を支える、優秀な兵士を育成する学校だ。
 アイグラント帝国は、その学園から輩出された兵士たちを使い、今やこの大陸を制圧し尽くそうとしていた。
 はぁ~……これから私、どうなっちゃうんだろ?
 ハヤ美は、流れゆく景色を眺めながら絶望的な気持ちに打ちひしがれていた。
 だいぶ建て物が多い風景になってきた。故郷の山村とは目に入るモノが全く違う。家や、畑、工場など、人工のものが目立つ。
「あっ」
 白い鳥が飛んできた。かわいい。
 その中の一羽がハヤ美の方にパサパサと音をたてながら向かってくる。
「あれ?」
 ハヤ美が小さく手を掲げると、白い鳥が指にとまった。
「じいちゃんかな?」
 鳥の全身から優しい光がにじみ出す。形がぼやける。
 そのまま鳥の姿は溶けたようになくなり、ハヤ美の手のひらの上に一枚の白い紙切れが残った。
「やっぱじいちゃんからだ」
 紙には文字がつづってある。なになに……

『がんばれ』

 ……それだけかいっ!
 この一言を伝えるためだけにじいちゃんはわざわざ魔法を使ったのか。ハヤ美はあきれながらも、一方で少し心が温かくなるのを感じてもいた。
 じいちゃんらしいや。
 私はひとりじゃない。そう思うと、今自分の置かれた絶望的な状況も少しは楽な気分で受け入れることができそうだった。

 馬車は、アイグラント帝国の首都に着いたようだった。
 アイグラント帝国は、軍隊を率いながら各地を制圧し続け、その度に首都を移してきた。
 ということは……首都がある場所……それはすなわち敵国との戦いの最前線を意味する。
 そう思って城下の町並みを見詰めると、人々の生活から「活気」を感じると共に、「のん気」とは無縁のピリピリとした緊張感が感じ取られるような気もする。
 この町は、いつ戦闘に巻き込まれてもおかしくない場所なのである。

 ……しばらく馬車は城下町の中心部を進む。
 子供が遊んでいた。
 走り回る子達を大人が注意する。
 石造りの建て物の軒先には、洗濯物が干してある。
 飲食店の周りにはテーブルと椅子が並んでいて、そこで食事をカッ込む人、上品にお茶を飲んでいる若い女性、仲間と談笑する人々……いろんな人達が一日の終わりを謳歌している。

 あぁ~……癒される~~~……のんびり……

 している場合じゃない!
 私は自分の置かれている状況をすっかり忘れてのん気にしていた。
 あんたも!あんたも!あんたも!……そしてこの私も!!
 これからどんな危険が身に起こるか分からないんだよ!

 ハヤ美は荷物の中から、この馬車に乗り込む際に使ったチケットを取り出した。
 手のひらの上にのっているのは大きさの違う二枚の紙切れ。
 一枚は、アレグラント学園までのチケットの半券。そしてもう一枚は学園から故郷に帰る時に使うチケットだ。
 その時、強い風が吹いた。
 石畳の路上から、砂埃が舞い上がる。
 それがハヤ美の目の中に入った。
「……あいたたたたたた……!!」
 ハヤ美は必死で目をこする。涙を出して埃を目の中から流し出そうとする。

 ………

「えーん……痛かったよう」
 ようやく痛みは落ち着いたようだった。
「ん?」
 私チケットどうしたっけ?
 確かバッグから取り出して、ぼんやり眺めてて、そしたらゴミが目に入って……
 失くした? 風に飛ばされた??
 ハヤ美は慌てて馬車のシートの周りや、後ろの地面なんかを探したが、それらしきベージュ色の紙切れは落ちていなかった。
 ショック!!!

「あの……おでこに何かがついてますよ」
 えっ?
 私は慌てて自分の額に指の先を当てた。
 何度かデコを指先でこすって探す。すると、皮膚とは違う感触を得た。
 ……あっ、なんかくっ付いてる!
 汗で張り付いたそれをはがして目の前に持ってくる。
 ……半券だ。
 帰りの馬車のチケットは!?
 私はどこかにチケットが引っ掛かっていないか全身を探った。
 ……ない。
 どこにも、ない。……私は帰りのチケットを失くしたのだ。
 『恋の片道チケット』……そんなんじゃないが、私は学園に向かうコトしかできないのか。そこから帰るコトはデキないのか。
 私のこれからの運命を暗示しているようで、寒気がした。
 恐い。
 私の、心配のし過ぎであったらどんなにいいだろうか。でもこれはきっと……思い過ごしでは、ない。
 私の運命は、あの城壁の中で私を待ち構えている。
 全然ウキウキは、しない。


      *


 以上でブログでの発表は終わりになります。
 プロローグ及びこの続きは『ラ研』の企画ページ上で、よろしかったらご覧ください。
 よろしくお願い致します。

 ではでは~

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『ルナをみて』ちょうど あとがき のようなひとり言

2008年12月07日 00時54分53秒 | 小説・短編つれづれ

 なんとなく書いたという感じでしょうか。
 ただ最初に月って絵で描かれる時は大きいけど、実際見える月は小さいよなあという長年抱いていた疑問のようなものがあって、それを冒頭にもってこようと決め、それを女の子にしゃべらそう、そうだ女の子二人の会話にしよう、というところまでは決めて、書き始めたんです。

 それからあとは、指の進むままに、登場人物のやりたいようにやらせ、しゃべらせました。

 月星人(もしくは他の天体の知的生物を登場させたい、というのは書く前から決まっていたことです。
 本当は紀美たちと異星人がもっと直接関わり合う、一大スペクタクルへの展開も用意していたのですが、長くなりそうだし、面倒なのでコンパクトに収めることにしました。

 それでこのサイズに収まりました。

 最後の段落の紀美の台詞、『るなをみて』結構重要な台詞なんです。
 とってつけたわけではなく、この文章を書いた「言いたい事」の一番分かりやすい表れになっております。

 

 それにしても思うのは、僕はいろんな方々から影響を受けて生きているなあ、ということです。

 この文章ひとつにとってもそう。
 文章塾・ブログ仲間の文章の影響がモロに出ていますね。

 でもそれはたぶんいいことだと僕は思っていて、真似じゃだめなんですが、これはそういった影響が自分のとなりとなったから書けているんだと思うんです。
 それでなかったら、僕は自分の文章としてこれをブログに載せられません。

 そういうわけで、ありがとうございます。

 お陰さまで、ぎゃんばらせていただいております♪

 

 それから今回の『ルナをみて』、僕自身は嫌いな出来じゃないんですよぅ~


ルナをみて

2008年12月06日 11時20分45秒 | 小説・短編つれづれ
 初夏。風が涼しい夜の公園。
 私は紀美と一緒に公園の「お山」の天辺で空を眺めていた。
「あの月……見えるじゃん?」
「うん」
 今日は満月より、少し欠けてるかな。
「実際見るとちっちゃいよねー」
「……」
 えっ? どういう意味?
「ほら、マンガとかじゃすごくおっきくない?」
「……」
 なるほど。うん、わかるよ。
「そう考えると、夕日とかもおんなじなんだけどねー」
 でもさ、あのね……
「……こうすれば、」
「えっ?」
「こうすれば大きく見えない?」

 夕子は両手の指でかぎかっこを作って、その中に月を丸ごと収めていた。
 紀美は一瞬夕子の指の間を覗いて、自分でも夕子と同じことをやってみた。
「……。え~、そんなの錯覚だよー。サギサギ。夕子の詐欺師~~~」
「ひどーいっ」


「地球って大きいな」
「そうですか?」
「そうだよ! だってあんなに……」
「……そうですね」
「大きいよ」
「大きいです」


「月って生き物がいそうだよね」
 紀美が言った。
「……。そう?」
 なんともいえない表情で夕子が応う。
「でも月には実際に人が行ってるし、調査もたくさんしてるんじゃないのかな?」
「夕子は甘いな」
「なんでよ」
 夕子は少しムッとする。
「人の目には見えないほど小さな生き物かもしれないじゃない」
「なにそれ? 微生物ってこと?」
「やっぱり甘い」
「なによ」
「ミクロン単位の人間がいるの。月には」
「はぁっ?」
「目に見えない人間ってことね、簡単に言えば」
「そんなのいるわけないと思うよ?」
「そいつらは小さすぎて踏んでも分子のすき間に入ってつぶれない」
「聞いてないしー」
「聞いてるよ。だって地球の常識なんて、他の星に行っても通じると思う?」
「……どうだろ。でもそんなの私たちの考えることじゃないんじゃないかな」
「冷たいなー夕子は。少しは私の妄想に付き合ってよ」
「ふふふ、だって紀美の想像ってぶっ飛んでるから」
「私はこの妄想でノーベル賞とるんだ」
「意味わかんないし」


「私はいつか地球に行ける乗り物を作ります」
「……遠いぞ」
「一生を掛けても」
「力を合わせれば、あるいは実現できるのかもしれないな」
「……はい」


 夜も更け、公園からの帰り際。
「ねえ夕子、」
「ん、なに?」
『るなをみて』
「えっ、なぁに?」
「なんでもないっ」
「ちょっと紀美さん!?」
「じゃぁ明日ね!」
「……うん。あした」
 これからもっと暑くなるけど、夏バテしないように、体力つけなきゃな。

"Laugh away" ちょうど「あとがき」のようなひとり言

2008年12月04日 00時09分55秒 | 小説・短編つれづれ

 この "Laugh away" という文章はYUIさんのナンバーのひとつ、"Laugh away"の、ビデオクリップにインスピレーションってやつを感じて、書き始めたものです。
 題名もそのまんま貰ってしまいました。すみません。

 最初に出てくる黒板に書かれたクラスメートの文字はそのビデオクリップに映っていた内容そのままです。^^

 でも書き始めてみると、美嘉さん作の小説『こんぺいとう』や、昨日今日と観ていた深海誠さん監督のアニメーション映画『秒速5センチメートル』に色濃く影響を受けているなーと感じながらの作業でした。

 この文章、自分では結構気に入っています。
 本当は導入部をもう少しなんとかしたかったのですが……

 自分としては、今書いている長編を早く書き進めて、皆さんのお目にかけられるようにしたいです。

 そのときはまた、よろしくお願いします。^^

 ではでは。


Laugh away

2008年12月03日 15時14分38秒 | 小説・短編つれづれ

『つまんないクラス、バイバイ』

 黒板に書かれたクラスメートの文字

 そう、今日は終業式。

 ひとつが終わるから、始まる
 終わらないと「始まり」は来ない。

 でも「終わり」は「寂しい」。
 切ない思いが胸を締め付ける。

 みんなは、こんな思いないのかな

『新しいクラスに期待』

 みんなそう思ってるのかな。
 そうなのかな……

 私は……

 

 今日で別れがやってくる。

 俺は告白なんてできやしない。

 かと言って、違うクラスになったら、話す機会さえなくなるだろう

 どうしたらいいんだ……

 悩んだまま、夜が明けた
 今日は終業式
 眠らなかったら朝は来ないんじゃないかとも思った。
 今が永遠に続いてくれたらいいのに

 仁子との別れの日。
 その日は今日なんだ……
 ついに来てしまった。
 もう逃げられない

 学校に行きたくない
 休んでしまおうかとも思った。
 でも最後になるかもしれない。
 仁子の顔を、見たかった。声を聞きたかった
 最後なんて嫌だ。

 彼女に会ったらなんとかなるかもしれない。
 奇跡が起きるかもしれない

 そんな根拠のない仮想にとらわれ、俺は学校に急いだ。

「こんな日に遅刻!?」

 小さな奇跡は起きた。
 校門に向かって走っていた俺に声を掛けたのは、仁子だ。

「人のこと言えねーだろーが」

 軽口を返すのも、今日で終わりなのか

「そだね。急ご」

 仁子の方もあまり余裕はないらしく、足の回転を速める方に
神経を注いだ。

『セーフッ!』

 校門に飛び込んで、二人声を上げた。
 自然に笑みがこぼれる。

「仁子、敏雄、相変わらず仲いいね。でも早くしなよ?」

 そこにクラスメートの和美が声を掛けた。

「分かってるぅ」

 仁子と和美は仲がいい。
 昼休みはいつも一緒に弁当だ。

「講堂にね。急いで」
「うん、ありがと」

 終業式を終え、教室内は大騒ぎだ。
 春休みの遊びの計画を立てる者、携帯で記念撮影する者……
 その中に……

「あのさ、仁子ちょっといぃ?」
「ん?」

 俺はまだそのとき気付いていなかった。
 これから俺と仁子の間に重大な事件が訪れることを。

「圭一がさあ、お前に用があるんだって」
「なに?」

 仁子に声を掛けたのはクラスメートの之治だ。
 之治と圭一は、いつも一緒にいるグループ。
 ちなみに之治と俺は、以前ちょっとしたトラブルがあってあまり仲が良くない。
 圭一と俺の間も、クラスメートながらほとんど接点はない。
 あまり話す機会がなかったのだ。
 圭一はこう言ってはなんだがおとなしいやつで、クラスでもほとんど目立つ存在ではない。
 一方の之治はなにかとしゃしゃり出る性格で、何度も言うようだが俺とはそりが合わないのだ。

「ほら圭一」
「圭一くん何?」
「えっとさ、」
「うん、」

 胸騒ぎがした。
 これからひどく嫌なことが起こる。
 そんな予感がした。

 俺は話をしていた友達をそっちのけで、圭一と仁子たちの様子に注目していた。

 圭一は仁子の方を見なかった。
 目が宙に泳いだり、床を見詰めたりして、自分からなにかを切り出す様子がない。
 仁子の方も少し困ったような顔をしている。

 その様子に、之治が我慢できなくなったらしい。

「圭一、仁子のこと好きなんだって! だから俺たちと一緒に春休み遊んでくれよ!」

 心臓が瞬間止まりそうになった。
 圭一はまばたきもせずにただ仁子の方を見詰めている。
 俺もまばたきせずに仁子のことを凝視した。

 次の刹那、仁子と俺の目が合った。

「ごめん!」

 仁子は教室を飛び出していた。

 俺は一瞬なにをすればいいか分からなかった。

「追いかけろよ」

 そう言ったのはさっきまで俺と話していた友人だった。
 俺に、言ったのだ。

 呆然と立ち尽くしている圭一と之冶が横目にチラッと見えたが、気にもならなかった。
 俺にとって仁子はどういう存在なのか、そして仁子にとって俺は……自らに問いながら迷いながら、俺は仁子の後を追って教室を飛び出した。

 好きなんだ、愛しいんだ。触れたいんだ。いくらでも話したい。
 いつまでも一緒にいたい。
 彼女は俺にとって……

 自分より大切な、唯一つのもの。
 守りたいもの。

 そうなんだ。

 そうなんだ。

 俺は校庭に飛び出した。
 仁子の姿を探す。
 あちらを見る。そちらを見る。
 いない。どこにも見慣れた姿は見えない。

 どこにいった?
 俺は不意に校舎の上を見上げた
 いたっ!

 屋上の金網に寄り掛かって、遠くを見ている。
 なに考えてるのか。

 思わず手を振った。
 仁子はまったく気付く素振りもなく、遠くを見ている。

 仁子の姿は見える。はっきりと。あそこに居る
 周りに人。
 だけど声を出して呼べない。仁子のことを。
 大きな声で、『仁子!』と呼べばいいのだ。
 だけどそれができない。

 触れたい。
 俺は仁子の姿に小さく手を伸ばした。


ムダイ

2008年11月14日 00時04分33秒 | 小説・短編つれづれ
 人に引っ張られて僕は生きている
 いろんな主義・主張を持った人達
 その人達に影響を受けながら
 自分の中身にある感覚を拡げて
 知識を拡げて
 人として大きくなれれば良いと思っている
 すべては結ばれている
 すべてはひとつなぎの
 この世界
 そしてそれは私
 それはいつか

   *  *  *

 力を誇示する為でなく
 全ての調和を実現するために 

青い空のもと歩む道

2008年03月01日 10時11分09秒 | 小説・短編つれづれ
 道を歩くとあなたが見える

 でも あなたは
 いつも 遠くで手を振るだけなのね

 見守るだけなのね

 好きなひとは いるの?

 どんなひと?

 私も そのひとに近づこうと思うから
 教えてよ

 空を見上げるとあなたの笑顔
 あなたはめったに笑わないけど
 微笑みだけでも この胸に 残しておくわ

 誰が好きなの?
 その眼の中に 私はいないの?
 私があなたに できる事はある?
 迷惑なだけ?
 私は…
 そして今
 目の前の空を少しの角度をもって見上げる
「スカイブルー…」

 みんなこの下にいるんだね

 安心して この道をゆくよ

 誰が私を 見ていなくても

 いつか誰かと 出逢うから
 この青い空のした。 少しだけ上のほうを見て



 久々に詩を書きました。
 いつか自分で作詞作曲した歌を歌いたい(歌うのは自分じゃなくてもいい)、と思っていて、その下準備。

 最初は曲を作ってから、それに思い浮かんだ詩をのっければいいや、と思っていたのですが、それだと詩の力が薄まるかもと思い、元々作った詩を、曲にのせて修正するという方法にすることにしました。
 それなら相乗効果も生まれるかもしれないし。
 
 そんなんで、やっています。

 この詩は、僕が今書いている、戯小説『ONE EYES』に出てくる、「田中みどり」という人物の気持ちをモチーフにしたものです。
 また違う登場人物で書いてみます。

 ではでは。

66億5千万人66億5千万1脚(おおよそ)

2008年01月15日 21時11分30秒 | 小説・短編つれづれ
 僕らは皆、いえない傷かかえながら歩き続ける。
 いくら抱き締め合っても
 いくら語り合っても、
 いつまでも触れ合うことなく
 分かり合えることなく。

 薄くて硬いバリヤーの中
 いくらでもはしゃぎ合えるし、
 大笑いし合える。
 それでも僕らは独りなの?

 みんなで手を繋いで大きなジャンプをする。
 高く高く、
 深く、深く。
 そこに見える物
 遠ざかるもの 近付くもの
 みんなあるんでしょう?
 わかってるんだから
 ひとりでも それを信じて
 大きなジャンプをして。

雨粒と息子

2006年11月13日 00時22分37秒 | 小説・短編つれづれ
 昔、蛙の親子が住んでいました。
 蛙の親子は、ナマズが好きでした。
 ナマズが好きといっても、蛙がナマズをとって食うわけではありません。
 かといって、ナマズも蛙をとっては食いません。
 蛙の親子は、池に住むナマズと大の仲良しだったのです。

 ある日、ナマズは蛙のお母さんに言いました。
「なあ、おれも子供が欲しいなあ」
 蛙のお母さんは黙っていました。
「どうしたら子供できるかなあ」
 すると、蛙の息子が言いました。
「知らないの? 子供は卵から生まれるんだよ」
「へえ、そうなの?」
 蛙のお母さんは黙っていました。
「どうしたら卵を産めるかなあ」
 今度は蛙の息子も黙ってしまいました。
「知らないの?」
「ううん、ごめん、わからない」
 蛙の息子はナマズに答えました。
 突然、空から雨が降ってきました。
 大粒の雨でした。
「これはひどい」
 ナマズは水の中に潜り、蛙の親子は急いで岩の陰に隠れました。

 ある日、一匹になってしまった蛙の息子と、ナマズが並んで話をしていました。
「なあ、俺って蛙はどこから来たんだろう」
 蛙の息子がナマズに聞きました。すると、ナマズはすぐに答えました。
「決まってるだろ。お母さんのお腹の中さ」
 蛙の息子はゲコゲコ鳴き始めました。
 ナマズがいつの間にかいなくなっても、蛙の息子はまだ鳴いていました。
 その声は、遠く地平線の彼方まで届いていくようでした。




 今日、部屋の整理をしていたら出てきたノートにこんな短編があるのを発見しました。
 早速投稿。

 ではまた。

 鉛筆カミカミ

~プロローグ~【後編】

2006年09月07日 00時52分19秒 | 小説・短編つれづれ
 一昨日の続き。「プロローグ」の後編です。



   『プロローグ』後編


 林の中だった。まわりにあるのは木ばっかりで、どちらに進んだらここを抜けられるかなんて、全然見当がつかない。けれど、とりあえず逃げおおせたのは確かだった。立ち止まって息を整えるあたしたち二人。
 さあて、どうしたもんかだけど・・・
「休もう」
「そうね」
 異論なし。その場にしゃがみ込むあたし達。
 まわりは静寂としていて、森の動物の声さえ少しも響いてはこない。あまりじっとしていると、耳が痛くなってくるほどだ。
「・・・」
 それにしても、さっきのには驚いた。なんだかよくわからないままここまで引っ張ってこられたけど、あんな行動力のあるところがこいつにあるなんて、全然知らなかった。今まで意識しなかったけど、こいつも男なのだな。えらいえらい。
 見ると、あいつはいびきをかいて寝ていた。おいおい。つくづく無神経だな、こいつは。不安ということを知らんのか。
 キンと澄んだ空気の中に、寝息というには少々激しいあいつの発する音声だけがそこにある。もしこれがなかったら、あたしはこの場所に一人なのだ。
 急に体が小さくなるような感触を覚える。
 そういえばここはどこなのだ? 周りには木の影しか見えない。見上げた空は灰色に曇った、この場所はどこなのだろう。
 頭の後ろを引っ張られるような感覚がした。振り返ってみる。他の方向を向いて見えるのと同じ、果てのない木々の景色。
 また後ろを引っ張られる感覚。元の姿勢に戻る。見える景色に変化はない。
 ゆっくりと立ち上がってみる。その場所で首を巡らし、少しずつ身体の向きを巡らしながら、見える景色を凝視する。
 瞬間、風景の端が揺らいだ気がした。目をこする。目を凝らす。うーん、目の乾燥が気になる。涙よ出ろっ。ごしごし。
 林の向こうの景色があいまいになる。急いで周囲を見渡す。おかしい!何か異変が起きている!
「ちょっと哲也! 起きなさいって!」
「・・・!」
 でも哲也は起きない。こんな時にぃ!
 どんどん景色は移り変わり、空間は揺らいでいる。ここは、・・・いったいどこ?
 あたしは哲也の傍に立った。
 嘘でしょ~ぅ? 哲也はこの状況でまだ寝ている。起きる気配も・・・
「あ~~ぁ」
 起きたっ!! あたしは足で何度も小突く。
「おいっ、おいっ、おいっ!」
 哲也は構わずにまだのんびりと伸びなんぞをしている。
「・・・いってえな、何だよ?」
 ようやくこっちを向く。そして、まわりの景色が落ち着いた。
「何だよじゃないわよ! あんたよくこんな時に寝てられるわね! 早く周りを見ろっ!!」
「なに? 今何時だよ?」
「時間なんてあるかっ! それ、よ・・・」
 あたしは落ち着いて周りを見ていた。そこは、あたしの目によく馴染んだ風景。あたしが一生かかっても読みきれないような沢山の本、そのまわりのこげ茶色の本棚、少し埃を被った天井・・・
「サンキュ」
「へ?・・・」
「いい時間♪」
 あいつはいつの間にか腰を上げていて、その部屋の出口の方に向かおうとしていた。
 あたしはまだ、起こっている事が理解できずにポカンとしていた。
 なに? いったい・・・?
「行かないの?」
「・・・」
「先行くよ」
「・・・ちょっと、待ってよ」
 あたしは反射的に後を追った。
「また本?」
「え?」
「本読んでたの?」
「・・・」
 なんだかまだよくわからない。結局あたしはどうなったのか。
「また昼休み中寝てたんだ。いい加減、あたし誰かに言いたいんだけどなー・・・」
「やめろよ。誰に迷惑かけてるって訳でもねーだろーが」
「そうかなぁ」
「・・・」
 この人は誰だろう。今は目の前にいるけど、あたしの知ってるあの人なのだろうか。
「ほら」
「ん?」
「忘れもん」
 あたしが受け取ったのは、一冊の本。
「床に落ちてたぞ」
「ちょっとあそこのは持ち出しちゃいけないんだから・・・」
 見覚えがあった。表紙にも、その手触りにも。
「返してくる」
「いいじゃんか別に。変なとこでかたっ苦しいな、お前」
「んん、そういうんじゃなくてさ」
「?」
 あたしは本当に向かおうと思った。さっきの場所に。
「じゃ、行ってくる」
「教室で待ってるからな。先生が来たらうまくやっといてやる」
「ん。ありがと」
 あいつは行ってしまった。
 まったく、薄情な奴だ。
 でも元から、当てにしてないもん。
「ふううううう~~っ」
 あたしは強く息を吐いた。気合いを入れたつもりだけど、こんなんで目の前の問題が解決したら、こんなに楽なことはない。
 あたしは目の前を見た。うん、景色ははっきりしてる。見えるはずのものが見えてるということは、大切だ。
 そして扉を開ける。本の扉と同じくらい大きくてキョウ大な、現実という名前の扉を。
 ・・・ありゃ、シリアスになっちまったよ。
 あたしはそういって、頭から水の中へと飛び落ちる。
 そして、水飛沫があがった。

                          とりあえず、了


   * * *


 次回(明後日)からは以前予告した通り、10年前に書き、大学の学園祭で上演した芝居の脚本を発表します。何回で終わるかな~?わかんない。

 では。

~プロローグ~【前編】

2006年09月05日 01時53分43秒 | 小説・短編つれづれ
 ふううう~~~っ、へちま亭文章塾の投稿作品の推敲も一段落し、これから知人にお披露目です。どんな意見が聞かれるか…わくわく。
 さて、今日からは、今から約7年前に書いた短編小説を公開いたします。妙な、アニメ的な雰囲気が、気に入っていなくもない、この作品。
 今、改めて読んでみて、ああ、文章って何やってもいいんだな、と考えさせられました。
 では、題名「~プロローグ~」です。



    『~プロローグ~』


 ふうとため息をつくことで、目の前の問題が解決すればこんなに楽なことはないのだが、そんな楽な話はない。
 それでもふうとため息をつかねばならないのがこの世の常で、私は深深とため息をついてしまう。
「ふううううう~~っ」
「おいっ」
 がんっ! ごろんごろん・・・ごつっ!! しーん・・・
 今のはこうべを垂れて私の態勢が前に傾いていたところに急に後ろから押すもんだから、態勢を崩して頭から地面に突っ込み、そのまま前転を三回して前方の木の幹に突っ込んでやっと止まった様子を、擬態語と擬声語で表現したものである。
「そうなったらどうするのよっ!?」
「はっ?」
 あたしは高校一年の女の子である。そして今あたしを後ろから突き飛ばしたのは、私のクラスメートの男子である。とりあえずそれだけわかれば十分でしょ?
「・・・で、どうするんだよ?」
「・・・あぁ・・・」
「ああじゃなくて! この状況をお前は何とかしたほうがいいんじゃないか!?」
「そうなのよねぇ」
 あたしとこいつの周りには、裸の体に、腰ミノをつけ、手には槍と盾みたいのを持った、アフリカに住んでるどこかの部族の原住民みたいのが十人くらいで、輪になって踊っていた。
 嘘じゃないし、夢でもない。
 だからあたしは困っている。
 その原因が、今あたしたちの足元にある本にあるみたいなのだが、そんな原因がわかったところで、目の前の問題が解決しなきゃあ、全然意味がない。
 その目の前の問題が、あたしたちを見つめている。そして目線をあたし達から逸らさないままで、グルグルと踊りながら回っている。
 そっちの方にあんまり目をやっていると、頭がくらくらしてくる。
「・・・俺、眠くなってきた」
「ばかっ! こんなときにどうしてあんたは・・・」
「きっとこいつらの踊りには催眠効果があるのだ・・・」
「そういう問題じゃぁないっ!!」
 あたしはゲシ!と頭をぶっ叩く。
 それにしても・・・
 ここは、学校の図書館の地下にある、書庫の中のはずである。
 しかし、いつのまにか、まわりの景色は、植物の生い茂った・・・ジャングル、とでもいうような様子に変わっている。
 この本のページを開いた時には、まだまわりは書庫だった・・・
 とりあえずこの場を逃れたいのだが、この原住民が邪魔をして、ここから抜け出すことが出来ない。
「あんた、こいつらと戦える?」
「冗談ゆうなよ」
「・・・聞いてみただけ。」
 ここが本の中の世界だったら、そろそろ誰かが助けに来るとか、こいつらがあたしたちを捕まえるとか、もちろんそれはいやだけど、何か新しい展開があっていいはずなのに、そんな兆しもない。
「・・・どうしようか」
「どうしようもないねぇ」
 ・・・ったくこいつは・・・こんな状況下で全然態度が変わらないのはすごいと思うけど、ちっとは状況を変える努力をしてみろ!! せめて嘘でもいいからふりだけでもしてみせてくれっ!!
「戦ってみようか」
「そんなの嘘でしょ」
「よくわかった」
「・・・殺す」
 次の瞬間、あいつが原住民に向かって駆け出した。そのままタックルを食らわす。
「へ?」
 固まったまま動けないあたし。
 体当たりした勢いで倒れこんだあいつが、あたしの方に目をやろうとした瞬間・・・
 大地が揺れた。
 恐慌をきたす原住民達。あいつがあたしの手を引いて逃げ出す。
 駆けてきた後ろを見返ると、原住民達はまだひたすらおろおろしている。殊勝にもまだ舞を続けようとしている奴、地面に這いつくばって動けなくなっている奴、なんだかよくわからないが突っ立ったままでふらふらしている奴。けれどなぜか一人として、あたしたちを追いかけようとする奴はいなかった。そりゃあほっとはしたけど、なんだかちょっと物足りないような・・・



  * * *

 こんなんで、続きは明後日。
 では。