ご無沙汰しております。
鉛筆カミカミです。
へちま亭文章塾塾生の皆さん、お久しぶりです。
この鉛筆、まだ生きてました(笑)
本当はこの3連休で塾生の皆さんにコメント返しを
行おうと思っていたのですが、思いの外忙しく、
また体も無理がきかず、結局無理なようです。
最低でもやろうと思っていました、第11回のコメントで宣言した、
「5つの誤算・完全バージョン」を、今更ですが、
発表したいと思います。
………………………………………………………
『5つの誤算~完全Ver.~』
「じゃ、ダブルデートという事で」
「いいですよ?」
自分が何にドギマギしているのか、英二は判らなかった。
「だから期末テストまで頑張んなさい!」
「はいっ」
「じゃあこの問題…」
机上に目を移した美穂の長い髪が、サラ…と落ちた。
「…」
美穂がニマ~と笑う。
「ほら集中しろ!トップとれなかったら遊びにも行けないんだぞ!」
「…分かりましたぁ」
この日、英二と真里は美穂先生と耕一とで遊びに行く約束をした。
そしてテストも終わり、約束は果たされることになった。
当日。
「え~っ、熱出して、ベッドから起き上がれない!?」
真里が遅刻してくるのはおかしいと思い、英二が電話した。この時間、集合場所に来ているのは英二のみ。
遅れて2人が到着し、話し合いの結果3人で遊ぼうという事になった。
「重いですよ~耕一さんも持って下さいっ」
「んー雲行き怪しいなあ。英二君、どっか入ろうか。急いで急いで」
(全然聞いてない)
美穂も耕一にヒョイヒョイとついて行く。
(ほとんどあんたの買い物なんだぞ!)
恨めしそうに美穂の後姿を睨むが、気付くはずもない。
「みやこタワー入ろうよ。展望台登ろ」
途端に雨が降ってきた。
*
「エレベーターより早く登れたらご褒美に何かしてあげる!」
「何かってなんだよぅ」
「秘密っ」
「英二君、競争しよう!」
「こんな疲れてて勝てる訳ないじゃないですか。それにエレベーターより早くなんて無理ですよ。僕は降ります」
「そうか?」
「耕一頑張んなさい!」
耕一は階段で登り、英二と美穂はエレベーターに乗り込む。
エレベーターが走り出す。
バリバリバリーと切り裂くような音が鳴り響いた。
ガクン、とエレベーターが停まり、真っ暗になる。
停電?
「午後には、雷を伴った夕立があるでしょう」
朝、テレビのお天気キャスターが伝えていた。
「雷だ」
乗っているのは2人だけ。
「動かないね」
若い男女2人で密室に閉じ込められた。
「ええ」
長い。
「真里ちゃん残念だったね」
「ええ」
長い。
「英二君キスしたことあるの?」
「えっ・なんでそんな事」
「あるの?」
「…そ、そりゃありますよ」
「本当?大人なんだ…」
真里とのキスは数える程。
「キスしたいな」
「へっ?」
「最初に付き合った人、頭が良くて真面目な人だった」
「…へえ」
「忘れられないんだ」
「…」
美穂の唇が英二の唇に近付いてくる。
大人の女性の匂い。
英二が味わったどのキスより濃厚なのだ。
その刹那、ガタン、と床が動いた。明るくなる。離れる2人。
「ちぇ…でも未遂で良かったね」
美穂が悪戯っぽく笑った。
全くだ。今では本当にそう思っている。
*
無事に展望台に着いた。
耕一は一頻り心配した後、
「俺の方が早かったことには変わりないよな」
と誇った。
「わかったわよ~も~」
「約束」
美穂さんが軽くリップにキスをした。
「…それだけ?」
「何を期待してた訳?」
耕一は頭をボリボリ掻いた後、
「…まあ…嬉しい誤算だ」
「そうよっ」
英二は2人の様子を無言のまま眺めていた。
………………………………………………………………………
掲載にあたって思ったのは、ニュアンスの少しの差で
文章から受ける印象が全く変わってくるということです。
やっぱり800字、難し~~っ!!
鉛筆カミカミです。
へちま亭文章塾塾生の皆さん、お久しぶりです。
この鉛筆、まだ生きてました(笑)
本当はこの3連休で塾生の皆さんにコメント返しを
行おうと思っていたのですが、思いの外忙しく、
また体も無理がきかず、結局無理なようです。
最低でもやろうと思っていました、第11回のコメントで宣言した、
「5つの誤算・完全バージョン」を、今更ですが、
発表したいと思います。
………………………………………………………
『5つの誤算~完全Ver.~』
「じゃ、ダブルデートという事で」
「いいですよ?」
自分が何にドギマギしているのか、英二は判らなかった。
「だから期末テストまで頑張んなさい!」
「はいっ」
「じゃあこの問題…」
机上に目を移した美穂の長い髪が、サラ…と落ちた。
「…」
美穂がニマ~と笑う。
「ほら集中しろ!トップとれなかったら遊びにも行けないんだぞ!」
「…分かりましたぁ」
この日、英二と真里は美穂先生と耕一とで遊びに行く約束をした。
そしてテストも終わり、約束は果たされることになった。
当日。
「え~っ、熱出して、ベッドから起き上がれない!?」
真里が遅刻してくるのはおかしいと思い、英二が電話した。この時間、集合場所に来ているのは英二のみ。
遅れて2人が到着し、話し合いの結果3人で遊ぼうという事になった。
「重いですよ~耕一さんも持って下さいっ」
「んー雲行き怪しいなあ。英二君、どっか入ろうか。急いで急いで」
(全然聞いてない)
美穂も耕一にヒョイヒョイとついて行く。
(ほとんどあんたの買い物なんだぞ!)
恨めしそうに美穂の後姿を睨むが、気付くはずもない。
「みやこタワー入ろうよ。展望台登ろ」
途端に雨が降ってきた。
*
「エレベーターより早く登れたらご褒美に何かしてあげる!」
「何かってなんだよぅ」
「秘密っ」
「英二君、競争しよう!」
「こんな疲れてて勝てる訳ないじゃないですか。それにエレベーターより早くなんて無理ですよ。僕は降ります」
「そうか?」
「耕一頑張んなさい!」
耕一は階段で登り、英二と美穂はエレベーターに乗り込む。
エレベーターが走り出す。
バリバリバリーと切り裂くような音が鳴り響いた。
ガクン、とエレベーターが停まり、真っ暗になる。
停電?
「午後には、雷を伴った夕立があるでしょう」
朝、テレビのお天気キャスターが伝えていた。
「雷だ」
乗っているのは2人だけ。
「動かないね」
若い男女2人で密室に閉じ込められた。
「ええ」
長い。
「真里ちゃん残念だったね」
「ええ」
長い。
「英二君キスしたことあるの?」
「えっ・なんでそんな事」
「あるの?」
「…そ、そりゃありますよ」
「本当?大人なんだ…」
真里とのキスは数える程。
「キスしたいな」
「へっ?」
「最初に付き合った人、頭が良くて真面目な人だった」
「…へえ」
「忘れられないんだ」
「…」
美穂の唇が英二の唇に近付いてくる。
大人の女性の匂い。
英二が味わったどのキスより濃厚なのだ。
その刹那、ガタン、と床が動いた。明るくなる。離れる2人。
「ちぇ…でも未遂で良かったね」
美穂が悪戯っぽく笑った。
全くだ。今では本当にそう思っている。
*
無事に展望台に着いた。
耕一は一頻り心配した後、
「俺の方が早かったことには変わりないよな」
と誇った。
「わかったわよ~も~」
「約束」
美穂さんが軽くリップにキスをした。
「…それだけ?」
「何を期待してた訳?」
耕一は頭をボリボリ掻いた後、
「…まあ…嬉しい誤算だ」
「そうよっ」
英二は2人の様子を無言のまま眺めていた。
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掲載にあたって思ったのは、ニュアンスの少しの差で
文章から受ける印象が全く変わってくるということです。
やっぱり800字、難し~~っ!!