おっちーの鉛筆カミカミ

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たいむりぃNEWS用連載原稿第8話

2011年02月23日 01時05分55秒 | 小説・短編つれづれ
お題:『「首輪」「ラーメン丼」「フライパン」「アンドロイド」「特殊部隊」「片道チケット」「ビーム」……以上すべての言葉を使って学園物の小説を書きなさい。』~第8話~(おっちー作)

 ボロボロに疲れて部屋に戻ったハヤ美は、ベッドに転がり込んだ。
 よく生きて帰れた。
 自分を褒めてやりたかった。
 あれは……魔法よね。
 自分と故郷の村人以外の人間が魔法を使っているのを、ハヤ美は初めて見た。
 ここの生徒は、剣と盾と鎧で武装しながら、同時に魔法を使う。
 ただでさえの重装備なのに、更に魔法で攻撃と防御を行うのだ。まさに最強のオフェンスと、鉄壁のディフェンスであった。
 そんな「達人」が、この学園には100人以上いる。
 ここはアイグラント帝国の兵士を養成する学校である。この帝国の軍事力の底知れなさを、ハヤ美は身を持って感じた。
 いつの間にか寝てしまっていたらしい。
 窓ガラスをコン、コンと叩く音で、ハヤ美は目を覚ました。
 なんだろう?
 何かが窓ガラスを叩いているのだ。この部屋は2階。誰かが訪ねて来た訳でもあるまい。
 面倒だったが、ハヤ美は起き上がって窓の方を確認した。真っ暗な窓の外に、黄緑色の小さな発光体が、チラチラと行き来している。
「蛍?」
 ホタルが、窓に何度も当たっているのだ。虫は明るい方に寄ってくるものである。
 可哀そうに。いつか体を傷付けるかも知れない。
 ハヤ美は窓に駆け寄って、ガラス戸を開いた。
 黄緑色の光を放つ蛍が、ハヤ美の目の前をフワフワ泳いだ。部屋に入ってくるかと思いきや、スッと地面の方に下りていってしまった。
「なんだ」
 ハヤ美は窓を閉め、再びベッドで横になった。
 コン、コン、
 また音がする。
「何よ?」
 ハヤ美が見やると、またあの蛍なのだろう、黄緑の光が窓の外で揺れていた。
(つづく)