わたしのダンナは、ハゲ頭だ。それが、大晦日に富士山に登ろうと言い出した。二人共いい歳だ。真冬に登山……遭難するのがオチなんじゃないかい。
ダンナは本気だった。嫌がるわたしを言いくるめ、どうにかこうにか、富士のふもとまで連れ出した。それからわたしは、「絶対に登りたくない」と必死で抵抗した。
わたしのダンナは、昔から口がうまかった。今でもわたしは、だまされて口説かれ、だまされて結婚したと思っている。
案の定、我々夫婦は遭難をしている。このさっぶい雪山の中、進む道を見失っていた。
「あんたの言う事は、みんな嘘! 昔っからそうだった!」
「言うに事欠いて、ヒドイこと言うなあ、お前」
「言うに事欠いてないわ、本気で言ってるのよ!」
「冗談もたいがいにしいよ。とりあえず、疲れたから休もうか」
「こんな状況で寝るなあ!」
「だからさ、なんとかなるって」
ならん!そう言おうとした時、ダンナの頭頂がまぶしく光った。一瞬目を逸らしたその後ろから昇ったのは、
「ほら、御来光」
ダンナは本気だった。嫌がるわたしを言いくるめ、どうにかこうにか、富士のふもとまで連れ出した。それからわたしは、「絶対に登りたくない」と必死で抵抗した。
わたしのダンナは、昔から口がうまかった。今でもわたしは、だまされて口説かれ、だまされて結婚したと思っている。
案の定、我々夫婦は遭難をしている。このさっぶい雪山の中、進む道を見失っていた。
「あんたの言う事は、みんな嘘! 昔っからそうだった!」
「言うに事欠いて、ヒドイこと言うなあ、お前」
「言うに事欠いてないわ、本気で言ってるのよ!」
「冗談もたいがいにしいよ。とりあえず、疲れたから休もうか」
「こんな状況で寝るなあ!」
「だからさ、なんとかなるって」
ならん!そう言おうとした時、ダンナの頭頂がまぶしく光った。一瞬目を逸らしたその後ろから昇ったのは、
「ほら、御来光」