読書日記

いろいろな本のレビュー

田原総一朗への退場勧告 

2008-05-25 09:33:46 | Weblog


田原総一朗への退場勧告 佐高 信  毎日新聞社

 タイトルがストレートで佐高らしいネーミングだ。本書は「サンデー毎日」「週刊金曜日」等の雑誌に発表されたものをまとめたもの。時事批評から人物批評まで多岐にわたっている。田原総一朗とは日曜10時からやっているサンデープロジェクトのキャスターである。政治・経済界のリーダーと目される人物を呼んでの討論会等でやたら偉そうに、権力の中枢にいる人物と近いのだということを言葉の端々に出して、一部で顰蹙を買っている人物だ。その姿勢は卑屈で幇間風情というのがピッタリだ。以前は電波芸者とも言われていた。「ジャーナリストを自称する権力の幇間」の実際はテレビをご覧になれば納得でされると思う。
 それにしても日本のメディアの権力との癒着は嘆かわしいかぎりだ。反権力のスタンスを貫いてこそその真価が発揮されるのに。それに田原は最初、島田紳助を司会に起用していたが、その理由として「視聴者の目線で政策を論じる番組」にしたかったからで、彼の「勘がよく、素人として遠慮なく疑問をぶつける」所に期待したからだと言っている。しかし佐高によると、紳助は田原と同じく権力者(たとえば小泉純一郎や石原慎太郎)には遠慮し、非権力者には「遠慮なく疑問をぶつけ」た。こういう人間を普通はタイコ持ちというのであると憤慨させている。
 島田紳助はこの番組をきっかけに自分は偉いと錯覚し舞い上がってしまった。最近のテレビでの彼の顔を見よ。本当に悪人面をしている。バラエティー界の田原総一朗だ。島田の自己顕示欲の強さは松本竜助とつっぱり漫才をしていた頃、何を思ったのか「東大」を受けるといってマスコミに宣伝し、実際実行したことからも窺われる。相方の竜助は最近病死したが、闘病中は見舞いも来ず、葬式の時は友人代表で式辞を述べるなど好いとこ取りで、本当に好かんタコだ。竜助は生前、「あいつは金儲けのことしか考えてない」とこぼしていたらしい。最近では吉本興業の女性マネージャに暴力を振るってしばらく謹慎していたが、さもありなんという感じだ。マスコミがこういう手合いをちやほやして甘やかすから増長するのだ。テレビ局もスポンサーも視聴率が取れればそれでいいという短絡的な発想はやめて、この国の文化をどうするかという視点で考える時期に来ている。バカな番組によって愚かな民衆はいろんな意味で情報操作されてしまうのだ。
 この紳助が司会していた「行列のできる法律相談所」に出ていた弁護士達もこのおかげで出世栄達を遂げた。丸山某、北村某、橋下某等々。いずれも自民党寄りの体制派弁護士である。佐高は橋下について「多数派に迎合しているだけで言葉がどうしようもなく軽い。人間も軽いベニヤ板みたいだなという印象だった」と番組で一緒だった時の印象を述べているが、うまいこというものだと感心する。その男がしょうもない番組で人気を博し、愚かな大阪府民180万人の支持を得ていま大阪府知事となって、予算削減に大鉈を振るっている。彼に投票した府民自身も大鉈で切り刻まれるのが分からずにいるのだからこれは悲劇というより喜劇だ。ことほど左様にいまの日本の指導者はテレビというメディアをうまく利用したものが仕切るということななっている。これは非常に危ういことと言わざるを得ない。衆愚政治の行き着く先は全体主義しかない。石原慎太郎、橋下徹、この危険な連中をなんとかしなければ、地方政治のみならず、国政にも悪影響を及ぼす危険性がある。
 よって佐高信や内橋克人はその反権力のスタンスを維持してこれらの人物を徹底的にマークすべく、今後とも健筆を揮って大いに頑張って欲しい。