読書日記

いろいろな本のレビュー

日本人の9割に英語はいらない 成毛眞 祥伝社

2011-11-07 09:42:24 | Weblog
 副題は「英語業界のカモになるな!」と誠にわかりやすいタイトルで、昨今の英語熱に冷や水を浴びせる内容が大変面白い。著者はもとマイクロソフト株式会社の社長で、外資系の会社の元社長が書いているので、経験則からの発言だと信用して買う人も多いだろう。一読して、同感する部分が多かった。
 最近小学校の高学年で英語を教えているらしいが、私はそれより日本語をきちんと教える方が大事だとかねがね思っていた。また高校での英語の授業はすべて英語で行なわれることになるらしい。これについてアメリカによるソフトな侵略だと手きびしい批判を展開している。曰く、「海外に留学もしくは赴任するために英語を勉強するなら、まだわかる。だが、無自覚のまま他国の言語を教育されるのは、侵略されるのを許すのと大差ない。すでに日本はアメリカの51番目の州だと皮肉を言われている。これ以上、日本人としてのアイデンティティーを壊されないためにも、英語教育に関してはもっと慎重になるべきだろう」と。
 また最近楽天とユニクロが社内で英語を公用語にすると宣言して話題になったが、これについても馬鹿な話だと一蹴している。全員が下手な英語をしゃべってどんな意味があるのか、それならば店長以上の幹部社員に限定すべきだ。会社で英語を必要とするのは1割の人間なのだからと痛快な断定をしている。因みに英語公用語宣言をしてから、この二社の人気ランキングが凋落したとのこと。英語やるより営業の勉強をすべきだということは素人にもわかる。この会社の社長には成りあがり者のワンマン経営者特有の臭みがある。これでは一流企業にはほど遠いだろう。「英語はできても、バカはやっぱりバカである」という言葉がダメ押しだ。
 グローバル化に対応するにはと最近英語重視の風潮が蔓延しているが、国際化の中で優位な人材は国粋化によって生まれるのではないかという逆説的な思いを抱くようになった。「国粋化」というと誤解されそうだが、要するに自国の文化・言語をしっかり学習することである。英語を操る人材が増えることは喜ばしいが、著者も言う通り植民地の奴隷根性に陥っては意味がない。アイデンティティーの喪失は国家の喪失に繋がる。TPP参加問題でアメリカの言いなりにならぬように出来るかどうか。英語問題のアナロジーとして興味深い。