読書日記

いろいろな本のレビュー

中国臓器狩り デービッド・マタス デービッド・キルガー  アスペクト

2015-09-05 13:58:43 | Weblog
 中国では死刑囚の臓器を移植に使っている。もちろん本人の同意を得ると言うようなことはしていない。本書はこの臓器移植に法輪功信者のものを使って外国人に移植手術をして数十億ドル規模のビジネスをしたことを告発している。法輪功信者は不法に拘束され拷問を受けた挙句、生きたまま臓器を摘出されたと言う。その数数万人。これはナチのホロコーストに匹敵する人道に対する罪だと著者は言う。二人はカナダ人の弁護士で、中国政府のやり方に対して細かく分析を加えており、ほぼ事実であることを読者に納得させる。
 法輪功が公に活動するようになったのは、1992年5月から、李洪志が中国吉林省で最初に講法を行なったのがきっかけである。当初は中国政府にもその健康効果が認められ、瞬く間に中国中に広まり、七千万人まで膨れ上がった。そもそも、法輪功は明確な組織体系を持っておらず、入会手続きも会費も不要、ただ単に定期的に公園や広場で行なわれている修練場所に参加するだけであるらしい。1996年6月の光明日報が批判的な記事を掲載したが大したことはなかった。本格的になったのは1999年からである。天津教育学院が発行する『青少年博覧』誌が法輪功のことを「学習者は精神病をきたす」「義和団のような亡国団体」と批判、法輪功学習者は天津教育学院前で抗議行動を行ない、該当記事の削除を求めた。天津市公安局は45人の法輪功学習者を逮捕した。そして4月25日、法輪功学習者一万人が抗議のために指導部のいる中南海でデモを行なった。江沢民はこれに激怒し、7月19日に中国全土で法輪功禁止令が公布され、中国共産党は「邪教」(カルト)に指定した。以後弾圧が繰り返され、逮捕した学習者を拷問し、最後は生きたまま臓器を摘出したというわけである。
 江沢民の指令でかくも多くの人々が無残な死を強制されたことは誠に慙愧の念に堪えない。しかも医師団がこの蛮行に加担して反省がないところに現代の中国の病巣が表れている。「生きるに値しない命」とはかつてナチが優生主義を標榜したときに使ったフレーズだが、公安と結託した病院が金もうけのために罪を犯しているのである。中央政府の決定をさらに都合よく解釈して至福をこやす構造が表面化している。
 著者は言う、法輪功には、「眞・善・忍」という三つのシンプルな原則がある。片や共産党による支配を言葉で表現するとしたら、「不誠実・残酷・不寛容」になるだろう。法輪功は、この中国共産党による過酷な支配を背景にして生まれてきた。これらの間違った行いを二度と繰り返してはいけないという宣言でもあったと。中国共産党の本質を見事に言い表したもので、痛快である。昨日の抗日70年記念の軍事パレードは中国共産党の断末魔の咆哮であった。北朝鮮がまともに見えて来るほどの習近平のパフオーマンスであった。任期終了までもつのだろうか。