読書日記

いろいろな本のレビュー

韓国を蝕む儒教の怨念 呉 善花 小学館新書

2019-10-13 09:20:15 | Weblog
 日韓関係は今最悪の状況だが、それに伴い巷には嫌韓本・韓国トリセツ本が溢れている。そんな中で本書は韓国の反日の源流を歴史的に分析したもので、なるほどという感じでうなずいてしまうところがミソである。呉氏は、もと反日韓国人でありながら日本留学を機に反日から親日に転じた先駆的人物で、日本国籍を取得し、現在拓殖大学教授。
 
 本書の結論は、韓国では「自国民が絶対善で、日本は絶対悪!」という原則が憲法よりも最優先され、反日は永久に終わらない。従って日本は「韓国は民主主義国家ではない」ことを確認した上で、外交をやるべきだということだ。一見民主主義国家を装っているだけに、中国と付き合うよりも難しいかもしれない。中国は共産党独裁を正々堂々と謳っているので、対処の仕方は分かりやすい。韓国の難しさは、「国民情緒法」を憲法の上に置くというおよそ近代国家とは言えない法体系を有していることにある。これは国民が自ら進んで全体主義を支える構図に近い。文政権のやり方を見ると明らかに全体主義を志向するもので、疑惑まみれの人物を検察改革という名のもとに法務大臣に任命するなど、民主主義国家ではありえない状況が現出している。
 
 この異形の民主主義主義国家を作り上げたのは、大国中国に長い間隷属してきたことからくる事大主義と、儒教を極度に純化した朱子学の影響であるということは夙に指摘されてきたが、著者は本書でさらに細かい分析をしている。

 著者曰く、「儒教社会としての李朝では、父子・君臣・夫婦という特定の関係にある個人と個人の間柄に関する道徳だけが発達し、日本のように、諸集団や社会全体についての道徳が発達することはありませんでした。社会組織といえるほどのものがなく、そのため社会的な連帯の意識も発達することがなかったのです」と。
 
 また曰く、「私の知る限り、日本人の歴史認識は絶対許せないといいながら、日本人それ自体が嫌いだという人はまずいません。つまり、大多数の韓国人は、表面では反日、内面では親日という具合に、一人一人の中で二つの面が同居しているのです。この表面=反日と内面=親日は、公的と私的、政治的と生活的、知識人的と庶民的にほぼ対応しています。ですから、韓国の反日は基本的に『公的、政治的、知識人的』なレベルの問題だということができるのです。反日活動家が日本車レクサスに乗っているというニュースが流れたが、これを実証するものだろう。
 
 その他、韓国のキリスト教の現世利益の傾向は、儒教とシャーマニズムに由来するという分析は面白いし、この国になぜ美容整形術を受ける女性が多いのかということとか、アリランは「恨みが解ける」喜びの歌であるとか、民族的分析は著者ならではのもので、一読をお薦めする。

 近代の民主主義国家とは言い難い韓国だとすれば、韓国版『菊と刀』を作って分析と研究に励んで、外交の糧にすべきであろう。