爪の先まで神経細やか

物語の連鎖
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作品(3)-6

2006年06月14日 | 作品3
システム・エラー


そうなんだ。それで、スピーチもしちゃったんだ。もう、その手前でかなり酔っていたのも確かだけどね。そう、彼女は、とてもきれいだったよ。こうして話していると、ぼくは女性のことばかり考えすぎていないかな? 複数の女性がごっちゃになっていない? いま、話しているのは、ぼくのチームの後輩の女性と、馬鹿な後輩のあの男の話だよ。口が悪いね。いや、その男性も一人前になるまで、ぼくが必死に手をかけたんだ。なんか一人前にしすぎたかな。

話は、なかなか上手くこなしたんだけど、やっぱり一人になると切なくなってくるよ。個人的な意見なんだけど、女性の28歳から32歳までの期間を知りたいと思っているんだ。なんか理想なんだよ。その彼女がちょうど28歳だったんだ。その4、5年の間というものが完成間近みたいな気がするんだよ。それを過ぎたらどうか、なんてぼくの口から言わせないでよ。

また、逆にだよ、ぼくの20代を知らない人と、新たな関係を作るのって、面倒くさくない? もう大人になってからの自分なんて、面白みがないようにも感じるしね。あの失敗とたくさんの格闘をしていた自分を知っている人との方が安心できるんだ。これも、違う考えの人もいるらしいことも知っているけどね。自分のみじめさを認められない人も、どうかと思うよ。

そうスピーチに戻るね。ちょっと誤解を与えちゃったかな。いかにもぼくが彼女のことを職場の仲間以上に考えているのがばれてしまいそうでさ、自分自身に心配したよ。でも一人で強い慟哭、そうだこの言葉だ、一人で悲しんだよ。大体、いつも投げやりなんだけど、失ってから、いつもいつも後悔するのが、ある種の趣味なのかね。でも、幸せそうだったし、個人的な執着で、その幸福を破壊するのもよくないよね。

その後、新婚旅行から戻ってきた二人とも、なかなか上手くやっていたよ。でも、ぼくの手からは離れてしまったね。また、新しい才能を発掘したいな、とも考えたり実際に移行する時期だったんだろうね。また、目の前に表れたんだ。ぼくの存在をおびやかす能力の持ち主がね。でも、追い越されても、ぼくは全然問題にしないんだ。もっと嫉妬深かった気もしたけど、ちょっと違う観点からみれば、ぼくの影響を受けているのが分かってしまうんだ。早く、そんな青い時期から脱出してほしいね。ぼくも、その若い才能から刺激を受けたんだ。それは、眠りを控えるぐらいのことは、するさ。なかなか負けず嫌いだし。

しかし、彼の才能のお陰で、会社自体の売り上げも上がったし、ぼくもつまらない仕事から、弾き出されるように自由になった部分も大きいんだ。人間の魅力ってなんだろう? 良い人間が平和な社会を作るわけでもないし、こんなに問題をかかえた人間でも、子供たちが夢中になるゲームを作ったりできるんだからね。あとからあとから、追われているような感覚はあるよ。ヒットがないと、その人を抹殺するぐらい時代はエネルギーを持っているし。そんな馬鹿げた競争から、はやく脱出したいとも思っているけど、卵を割ってもらうのを待っている雛のように、その作品たちもぼくの手を借りて、生まれてこようとしているんだ。だから、はっきりいうとぼくの才能ではないのかもしれないし、ただの助産婦みたいな役なのかもね。でも、観賞されて終わりじゃないし、ゲームというのも難しいよ。その若い子のお陰で、ぼくは映画の分野とか、音楽の分野に交友の幅もひろげていくことが出来るようになった。簡単なアドバイスで、すごく喜ばれたり、一部の子たちの間では、時代の寵児とかも呼ばれてね。なぜ、浮かれないのか? 不思議でしょう。そんなに、自分が分からなくなってしまうほど、恥知らずでもないし、これが育てられ方の差なんだろうね。