死刑とその執行者(2024.4.12日作)
死刑は犯罪被害者の立場からは
もし その犯罪が現実社会の規範 規則に照らして
正当なものである限り 実行されて然るべきもの
犯罪被害者の被害に相当し得る刑罰を
犯罪加害者に要求するのは 被害者としての
当然の権利
しかし
その刑を執行し得るのは 誰だろう
人間社会が人と人との繫がり
人の輪の上に成り立つものなら 人の手で
人の命を奪う死刑 その刑を実行する時
死刑執行者が犯罪加害者と完全 絶対的に
無縁であると言えるだろうか ?
一見
遠く離れた場所に居る人間は
引き起こされた犯罪とは無縁に見える
遠く離れた場所に居る人間には
直接的に犯罪加害者に関わる事は出来ない
犯罪加害者が引き起こした犯罪には
手の施しようもなく 防止のしようも無い
故に
犯罪を引き起こした犯罪加害者との関り
その責任を 遠く離れた場所に居る人間に
問う事は出来ない
至極 正当な意見であり
正しい見方と言える
だが 世上 引き起こされるあらゆる出来事は常に
反面の見方 異なる角度からの検証も
可能になる
人間社会が 人と人との繫がり
人の輪の上に成り立つものと捉える時に
死刑を執行する人間もまた
人と人との繫がり 人との繫がり 人の輪の中に生きる
一人の人間であり その立場から
犯罪に対する間接的責任の皆無と言えるのか ?
人と人との繫がり 人の輪が連綿と続いて この世界
人の世を形成する限りに於いて
繋いだ人の手の温もりは 何時か
遠く離れた場所に居る誰かに伝わる
犯罪加害者が かの地で繋ぐ手の温もりは 巡り巡って
遠く離れた この地に居る 死刑執行者の手に伝わり
届いて来る
同じ人間同士 人と人との繫がり
同じ人間同士 人と人との繫がり
人の輪の中に生きる犯罪加害者と死刑執行者
その死刑執行者が正義の名の下
犯罪加害者の罪を断罪し 死刑を執行する事は
執行者自らが
自身の行為に唾する行為にならないか ?
同じ人の輪の中で手を繋ぐ人間同士
一人の罪は万人の罪
人と人との繫がり 繋いだ手と手の温もり
その温もりを伝え合う人の輪 その輪は
総ての行為は自身の身に舞い戻り
降り掛かって来る事を 人 一人一人の心に
問い掛けてはいないだろうか ?
では 死刑に相当する犯罪者の罪は ?
死刑に値する犯罪者に対する刑罰は ?
永久的無期懲役
死刑に値する罪を犯した犯罪者は生涯
自身の生を生きる事は許されない 被害者とその家族への弁済
終身的永久奉仕を続ける 続けなければならない
犯罪者自身の生を生きる事は許されない
被害者とその家族への絶対的従属 奉仕 生涯に渡って
総ての行為を被害者とその家族に捧げ 自身の罪を償う
自身の生への欲望 欲求は認められない
犯罪被害者に代わり 被害者の生きたであろう生を生きる
永久 永遠に嵌(は)められた足枷(あしかせ)
恩赦は許されない
ーー永久不変に許されない犯罪者自身の生
永遠に嵌められた足枷
死刑にも勝る過酷な刑とも言い得る
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希望(18)
「マスター、昔はこの辺では有名な組の親分だったのよ。今では足を洗ってるけど、以前、出入りがあってその時に撃たれたんだって。それで生きるか死ぬかの境目をさ迷ったんだけど、良くなった時にはもう、男として駄目になっていて、組にも、不自由な身体で迷惑を掛けてはいけないからって、跡目も譲って引退したんだって」
修二は息を呑んだ。
マスターに対しては何か重い物を感じてはいたが、そこまでは考えが及ばなかった。
「女将さん、その事を知ってるの ?」
息を呑む思いのまま聞いた。
「知ってるわよ。その時はもう、一緒になっていたんだもん。マスターが刑務所に入ってる時には、女将さんがマスターの両親の面倒を看てたのよ。今でもマスターのお母さんが施設に入ってるんだけど、お店が休みの日には何時もお見舞いに行ってるんだよ」
「へーぇ。だけど、変な話しだなあ。普通なら女将さん、マスターを嫌って逃げ出したっておかしくないじゃないか。女将さん、マスターが怖いのかなあ」
「そうじゃないわよ。昔、女将さんの両親がマスターに世話になったのよ。詐欺に引っ掛かって困っている時、マスターが助けてあげたんだって。それで、女将さん、マスターに魅かれて高校を卒業するとすぐに結婚したんだけど、今ではこの店の名義は全部、女将さんのものになってんのよ。マスターが、自分には何時、何処でどんな事が起こるか分からないからって言って、そうしたんだって」
「鈴ちゃん、よくそんな事まで知ってるなあ」
鈴ちゃんの訳知り顔を疑って修二は言った。
「だって、世間ではよく知られてる事だもん、みんなが知ってるわよ。それにわたし、前に居た子にもいろいろ聞いたしね。前に居た子は女将さんから聞いたんだって。だから、修ちゃんも女将さんを慰めて上げればいいのよ。女将さん、欲求不満で苛々してるんだから」
鈴ちゃんは年増女の様な言い方をした。
「全く、しょうがねえなあ。下司の勘ぐりだよ、そんな事」
修二は匙を投げる様に言ってその場を離れた。
夜、十時に近かった。
店内はようやく忙しい時間帯も過ぎてひと息入れる時刻だった。
カウンター席に男の客が二人残っていた。
北川が蒼ざめた顔で入って来た。
悲愴感を漂わせていた。
「なんだ、どうしたんだ ?」
カウンターの奥に居たマスターが目敏く見抜いて聞いた。
北川はマスターの顔を見たが無言だった。
二人の客とは離れた場所に行って隅の椅子に腰を下ろした。
前掛け姿で腕組みをし、煙草を吹かしていたマスターはゆっくりと北川の前へ行くと、
「何か食うか ?」
と聞いた。
「いや」
北川は小さく首を振った。
二人の客は店内の動きには無関心だった。
一人の客はチャーハンを口に運びながらテレビを観ていた。
あとの一人はスポーツ新聞に眼を落したままラーメンを口に運んでいた。
北川は前に立ったマスターに視線を向けると、
「クロちゃんが事故っちゃったんですよ」
と、悲痛な声で言った。
マスターは驚きの表情も見せなかった。
指の間で短くなった煙草を口に運びながら、
「死んだのか ?」
と聞いた。
静かな声だった。
北川は黙って頷いた。
「何処で ?」
相変わらず静かな声でマスターは聞いた。
「境川の向こうっ側ですよ。ブラックキャッツの連中に走路を邪魔されて、橋の欄干に激突してしまったみてえなんですよ」
「クロ一人で走ったのか ?」
「ええ、一人だったんですよ。お袋さんに用事を頼まれて、叔母さんの所へ行った帰(けえ)りだったらしいんだけど、奴らのエリアを走らねえと行けねえ所だったもんで・・・・。クロちゃんの顔は奴らには売れてるんで、偵察に来たとでも思ったんじゃねえですか。帰りに四、五台のオートバイが追っ掛けて来て、橋の近くへ来た時には横合いから乗用車が飛び出して来て、アッという間だったらしいんですよ。クロちゃんにその気があれば、四台や五台なんて目じゃねえんだけど、お袋さんに頼まれた用事があったもんで、相手にしなかったらしいんだけどねえ」
北川は声を詰まらせた。
「何時、やったんだ ?」
「昨日の夕方らしい。今朝、工場に電話があって初めて知ったんだど・・・。クロちゃんのお袋さん、ショックで倒れちゃって、近所の人達が全部、クロちゃんの始末をしたらしい。チームのメンバの一人が近くなもんで、そいつが知らせて来たんですよ」
「どうするんだ、遣るのか ?」
マスターは軽い世間話しの様に聞いた。
「勿論、遣らねえ訳にはいかねえですよ。このままにして置いたら、好い様にのさばられちゃうし、俺だって、頭(あたま)としてのメンツが立たねえですから」
「警察は動いてるんだろう ?」
「当然だと思いますよ。そのうち、俺の所へもなんとか言って来るんじゃねえですか」
「まあ、あんまり派手に遣らねえ方がいいさ」
マスターは短くなった煙草を灰皿の中で揉み消しながら、諭すともない口調で静かに言った。
裏の世界を知り尽くした人の重みのこもった口調だった。
「だけど、礼だけはしねえ訳にはいかねえから」
北川は腹立ちを抑え切れない様子で言った。
クロちゃんの通夜は翌日、午後六時から自宅で行われた。
路地の奥の狭苦しい所に受付があって、中年の男性が二人、手持無沙汰な様子で椅子に座っていた。
修二はマスターの車に乗せて貰って行った。
「済いません、六時になったら少し時間を貰いたいんですけど。クロさんのお通夜に行って来ようと思うんで」
食材の下ごしらえが終わって少しの暇が出来た時、修二はマスターに言った。
「おまえ、クロ知ってんのか ?」
マスターは意外そうに聞いた。
「一度、みんなが俺の部屋へ来た時、会ってるもんだから」
「そうか。じゃあ、俺の車で一緒に行けよ。俺も行って、ちょっと線香を上げて来るから」
クロちゃんは小さな祭壇で写真となって微笑んでいた。
高校生ぐらいに見える写真の中のクロちゃんはまだ、修二が会った時の面影は無かった。素直な少年と言った感じだった。
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takeziisan様
春爛漫 自然の豊かさ キジの声 イノシシ出現
羨ましい環境です これでは散歩も飽きる事は無いのでは
時折り 用事で出掛け 車で自然豊かな田園地帯を走る事がありますが
何時も心が洗われる気がします
都会の街の中で唯 家々の屋根を見て暮らすだけの生活
味気ないものです
それにしてもイノシシとの戦い この農作業記事には何時も
笑いがこぼれ ほのぼのとした気分になります
楽しいですね と言っては失礼かも知れませんが
畑の真ん中にヤグルマギク ツツジの花の道
我が家では今 クンシランが花盛りそれぞれの株が色を競っています
この季節の楽しみの一つです 手入れもせず放りっぱなしなのですが
毎年 見事な花を咲かせてくれます
この所の気温の上昇でハゴロモジャスミンもすっかり蕾を膨らませています
あとに三日であの甘い香りを漂わせるのではと思っています
数々の花の美しさ この季節の特権であり眼の保養です
何時も楽しく拝見させて戴いております
有難う御座います
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