遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(521) 小説 <青い館>の女(10) 他 金木犀

2024-10-27 11:31:28 | 小説
             金木犀(2024.10.13日作)



 金木犀
 今年は未(いま)だ 咲かない
 蕾一つ着けない
 四十年以上過ぎた木
 金木犀 

 亡き父の 面影浮かぶ 金木犀
 散り敷いて 金木犀の 金の庭
 金木犀 今宵も静か 独り居て
 彼(か)の女(ひと)は 今は何処(いずこ)に 金木犀

 遠い日の幼い頃過ごした故郷の家
 庭に香った金木犀 
 豊潤な香りに魅せられ 以来
 親しみ 馴染んだ長の年月
 今年は未だ 花芽一つ着けない 初めて 
 かつて無かった事
 幾年月 長の年月(としつき)過ごした金木犀
 年老いた ?
 否否 あり得ない
 生育盛ん 年毎大きく枝葉を延ばした
 元気な樹
 剪定 ?
 枝葉を切り落とした所為(せい)か ?
 否否 そうではない かつて 
 幾度 そうして来た事か !
 今年に限って・・・
 あり得ない
 今年に限って・・・ 
 猛暑の夏
 金木犀もまた 音を上げた ?
 気温上昇 世界の各地 各国
 地球の総てに及んだ異常な気象
 猛暑 酷暑の一夏
 災難 災厄 災害
 人の命の多くも奪われた
 金木犀もまた同じ事 ?
 未だ 花芽一つ着けない 
 異常な気象 
 頭を過ぎる ふとした不安
 金木犀はこのまま 今年は花芽を着けない ?
 異常な気象 地球温暖化 その先に
 見えて来るものは ?
 不吉な影のみ




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             <青い館>の女(10)




 
 昨夜は気付かなかった左手すぐ傍にこれもまた、一見、壁と見紛うドアがあった。
 加奈子はすぐにそのドアの鍵をわたしには理解出来ない方法で開けて、身体全体で押す様にして扉を開いた。
 眼の前にはなんの変哲も無い古い木造アパートの、両側に部屋の並んだ廊下があった。
 その廊下に出ると加奈子は扉を閉め、また、わたしには理解出来ない方法で鍵を掛け、わたしの前に立って廊下を歩き出した。
 両側それぞれに五つの部屋があった。
 廊下が終わると古びた木製ドアがあった。
 鍵は掛けられていなかった。
 加奈子は軽く右手でドアを開けた。
 直接外気に触れる街の通りが眼の前に開けた。
 足元にはその通りへ出る為の小さな三段の石段があった。
 石段を上ると早朝のアスファルト通りにはまだ人影が無かった。
 依然として街を包み込んだままの薄い霧の流れが、街全体をおぼろな影に見せていた。
 昨夜、わたしがパーティー会場から歩いて来た通りとは趣を異にしていた。  
 何処か、うらぶれた感じのする侘しい気配が漂っていた。
 葉を落とした貧弱な並木の傍に三台のタクシーが霧に包まれて並んでいた。
 わたしと加奈子の姿を認めると一台のタクシーが近付いて来た。
「何処まで帰るんですかぁ」
 加奈子が聞いた。
「海岸ホテルなんだ」
 別段、隠す必要もないと思って言った。
「じゃあ、タクシーで行った方がいいですよぉ。ここは裏通りなんでぇ、ずっと遠回りになるのでぇ」
 加奈子は言った。
「うん、そうしよう。道も分からないし」
 わたしの乗ったタクシーは、薄い霧に包まれてまだ街灯の明かりの消え残る街の中を、裏通りから表通りへと出て暫く走りホテルの前で停まった。

 わたしが開店セールで混雑する店に顔を出したのは午後一時過ぎだった。
 赤と白の垂れ幕を張り巡らした店内は賑やかな雰囲気の中で、溢れる人の熱気にむせ返っていた。
 この小さな街の何処から、こんなに人が出て来るのだろう、という驚きと共に、その盛況に思わず込み上げて来る喜びを抑える事が出来なかった。
 五百坪程の広さの一階食品売り場を一廻りしてから、二階の家庭用雑貨売り場へ足を運んだ。
 更に、三階の衣料品や家具、室内装飾品の並んだ三階まで足を延ばした。
 元々が<スーパーマキモト>は缶詰や乾物を主体にした個人経営の食品店だった。
 現在の形体になってからもなお、売り上げの六十数パーセントが食品関係で占められている。
 関東、東北地区にある五十七店舗の大半が一階の食品売り場と二階の家庭用雑貨売り場で構成されていた。
 所により、周囲の状況次第で三階に室内装飾品や家具などを並べたりしていたが、この北の小さな漁港街への進出に当たっても当初は三階までの計画で事が進んでいた。
 それが思わぬ形で変更されたのは息子の一言だった。
 息子は突然、四階まで延ばして電気製品売り場を作りたいと言い出した。
 無論、余りに唐突なその提案は役員会議にも掛けられ、<マキモト>に取っては初めての計画に反対意見も多かったが、息子は敢えてそれを断行した。
 息子にしてみれば、何度も足を運んで現地の状況を確かめた上での結論だったのだろうが、わたしにもまた、一抹の不安があった。
 結果はだが、息子の決断が正しかった事が証明された。危惧しながら足を運んだ四階にも、思い掛けない人の混雑があってわたしの驚きを誘った。
 息子は祖父に習っての様々な商品の買い叩き物や中古品の安値販売をしていた。
 その狙いは見事に当たっていた。
「安いよ、これ。あっちの店では同(おんな)じ物に二千円の値札が付いていたよ」
 そんな会話が彼方此方から耳に届いて来た。
 わたしはそんな中でどの売り場にも見られる、何時もの開店風景に劣らない活気に満足していたが、開店セールの終わった後の商売の難しさもまたよく知 っていた。
 取り分け、此処が小さな漁港街であるだけに、その心配も一入(ひとしお)で、息子ももう何軒もの開店を手掛けている以上、後はくれぐれも失敗の無い様にと願うのみであった。
 幸い、昨日初めて顔を合わせた店長も仕事が出来そうで、わたしは満足していた。
 多分、この店も上手くやってくれるだろう。
 その店長はわたしが一階に戻ると、肉の半値売り場で声を嗄らして陣頭指揮を執っていた。
 その合間には絶えず野菜売り場や魚売り場に視線を向けて、状況確認を怠らなかった。
 わたしは暫く、観察した後で店長の傍へ行った。
 店長はわたしに気付くと、
「ああ、来てらっしゃったんですか」
 と、素っ気なく言ってすぐにまたお客の対応に戻った。
 わたしは店長をそのままにして、売り場の隅にあるエレベーター乗り場へ行くと四階にある事務所へ向かった。
 事務所には本社から派遣されて来ている経理責任者の川本部長がいた。
「なかなか良さそうじゃないか」
 わたしは部長に言った。
「ええ、思った以上に盛況ですね。店長もこんなに人が来るとは思っていなかった様です」
 川本部長は言った。
「セールの終わった後が、この小さな街ではどうなるか、ちょっと心配だが」
 わたしは言った。
「でも、それは心配ないと思いますよ。 結構、安売りでお客を呼べると思いますし、今日程の活況は無理だとしても、どうにか行けるんじゃないでしょうか」
 今年、四十八歳になって、東京本社でも古参の一人になる川本部長は言った。




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               takeziisan様


                自然の風景は何時見ても良いですね
               テレビは余り見ないのですが自然を映した番組はよく見ます
               NHKでの日本百低山とか小さな旅はよく見ています
               下手に創られていない所がいいです
                野菜畑 羨ましい限りです 我が家の屋上菜園も終わりました
               落花生も殻ごと茹でで食べました 
                奥様 御退院 おめでとう御座います
               一安心というところでしょうか 風の吹く場所が埋められた
               それが実感ではないのでしょうか
               食事の腕前 是非 奥様に判定して貰って下さい
               共に生きるという事の喜び これは何事にも代え難いものです
               それでも結局 人間 最後は独り 寂しいものです
               禁じられた遊び 名作ですね          
               あの幼い子供二人の演技
               名優も子供と動物の演技には敵わないと言いますが
               あの最後の場面など何度観ても涙になってしまいます
               それにしてもよくあの演技が出来るものだと 見る度に感嘆してしまいます
               本人にしてみれば演技をしているなどという意識は全く無いのでしょうが 
               あの迫真の演技は何処からくるのでしょう
               驚きを禁じ得ません
                有難う御座いました












































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