惑わされる(2024.4.29日作)
虚名に惑わされるな
この人間社会 人の世は 日々
名も知れない隠れた場所でそれぞれが
それぞれの道に於いて 地道に 真摯な作業を続け
より良いもの 今より更に良いもの と
たゆまぬ努力を続けている 平生
人の眼に触れる事の無い場所で生きる人々の
たゆまぬ努力によって 形成 形造られている
農業 漁業 林業 工業 商業 運輸 建設 事務
あの職業 この職種 そこに携わる名も知れぬ
数多くの人々 その人達が積み上げ 積み重ね
築いて来た人間社会 日常 この世界
日頃 ペラペラ ペラペラ 自慢気に喋る事は無い
寡黙 質実 堅固 揺らぎのない人々
虚名に惑わされるな お喋り好きな人間達
如何にも物知り顔 得々としてこの世を語り 社会を語り
世界を展望して見せる物知り顔の知識人 ?
言葉だけの人間達 実行力の伴わない顔を売るだけ
そんな人間達の 虚名に惑わされるな
その者達への過大な評価 価値付けで 人の道
真の 人としての道を歩む 日々 日頃 人の眼に触れる事の無い
隠れた場所で 自身の道を真摯に生きる その人達の
立派な姿 尊い姿を見誤り 見落とすな
人の価値 人の値打ちは 著名 無名 それだけでは計れない
実行力 実践力 その人 一人が何を為し 何を成し得たか
人の値打ち 人の価値は総て そこに集約される
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希望(20)
修二はその依頼まで断る事が出来なくて、すぐに押し入れに行って鞄からナイフを取り出した。
ずしりとした重みが久し振りに見るナイフに手応えを与えた。
マスターの店で働くのと共に忘れていた感触だった。
穏やかな満ち足りた日常の中では必要とする事の無いものだった。
それが無くても済む日が続いていた。
母親が来た時も、高木ナナに裏切られた時も、怒りや苦悩、哀しみに捉われる事はあっても、日常の生活がそれで脅かされる事は無かった。ナイフに必要性を感じる事も無かったのだ。
北川は修二が手にしたナイフを受け取ると得意気に、掌の上で二、三度小さく弾ませた。
「いいナイフだろう」
さも自慢気に自分の持ち物でもあるかの様に仲間達に言った。
「格好良いナイフだなあ !」
小柄な男が言った。
「飛び出しなんだ」
北川はボタンを押した。
小さく鋭い、乾いた音を立てて瞬時に刃(やいば)が飛び出した。
「おう、凄えや !」
男達の誰もが言った。
「これを借りていって、俺達で遣るか ?」
北川が言った。
「いや、俺達じゃ拙いよ。面(めん)が割れちゃってるから」
頬に傷のある男が否定的な面持ちと共に言った。
「扮装して行くんだよ」
北川が言った。
「いやぁ・・・・」
頬に傷のある男は気乗りのしない様子で言った。
「誰か、面の割れてねえ下っ端に遣らせたらどうだ ?」
頭を丸刈りにした瘦せ型の男が言った。
「腹の座った奴が居ればいいけどなあ」
北川が言った。
「一人ぐれえは居っだろう」
丸刈りの男が言った。
「どうかなあ」
鳥越が言った。
「口の堅え奴じゃねえと拙いよ。ペラペラ喋られたんじゃあ、目も当てられねえかんなあ」
小柄な男が言った。
「そうだよ」
鳥越が言った。
修二は黙って聞いていた。
自分には一切関係ない、他人事に思えた。
ナイフの刃を収めると北川は修二にナイフを返した。
男達はそれから一時間程、あれこれ話し合って結論の出ないままに帰って行った。
北川は帰り際、修二の肩に手を置いて、
「な、修二、考えておいてくれよ。お前(め)えなら度胸も据わってるし、動きも速えからよう」
と、如何にも親し気にまた言った。
修二は返事をしなかった。
男達が帰った後、修二は畳の上に寝転がった。
頭の下に両手を組んで天井を見詰めたまま、
「チェッ、バカにしてやがる。人をなんだと思ってやがんだ ! 手めえ達の道具じゃねえや」
腹立たしさと共に声に出して言っていた。
一日のうちの最も大切な自分一人の時間を台無しにされた事への怒りと共に、その依頼の話しにもならない愚劣さにも怒っていた。
店の電話が鳴ったのは翌々日の夜だった。
階段を駆け下りて行って受話器を取ると北川だった。
「どうだい、考えておいてくれたか」
北川は馴れ馴れしい口調で穏やかに言った。
修二は北川だと分かると途端に腹立たしさに捉われた。
うっせえ 野郎だ !
思わず口の中で呟いていた。
それでも、極力、感情を抑えた声で、
「いや、駄目だよ。考えるも考えないも無いよ。そんな事、俺、出来ないよ」
と、きっぱりと言った。
北川は再び、修二を諭す様に、
「大丈夫たよ。お前えには一切、迷惑は掛けねえから。この前えも言った様に段取りは俺達がやっからさあ」
と言った。
「でも、駄目だよ。もしもの事があって、店に迷惑を掛けてもいけなから」
修二は言った。
咄嗟に思い付いた本音だった。
その思いと共にそのまま電話を切ってしまいたかった。
北川はその前に言った。
「俺達も他の人間に当たってんだけっど、やっぱり、根性のあるいい奴がいねえんだよ。そっで、お前えに頼みてえんだ」
「俺だって、根性なんか無いよ」
反発心と共に修二は言った。
「そんな事ねえってば ! 俺は<金正>の店先でちゃんと見てんだから」
北川は言った
北川が唯一の自分の弱点にに踏み込んで来た、と修二は思って一層の腹立たしさに捉われた。
同時にもし、あの時の事を警察に喋られたら、と考えると焦りも覚えた。
<金正>の店の者には顔も見られている・・・・・
新たな恐怖が修二の胸の中を走り抜けた。
「今更、お前えがナイフをかっ払ったなんて警察に垂れ込む心算りはねえけっど、もう一回よく考げえてみてくれよ。この前(めえ)言った様に礼はすっからさあ」
北川は言った。
北川が最後の切り札を出して来た、という思いと共に修二は、湧き上がる怒りのままに強い口調で言っていた。
「じゃあ、幾らくれる ?」
北川の小ずるい遣り方に対する反発の思いがあった。
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桂蓮様
久し振りの御作品 何か懐かしい思いで拝見しました
お身体の不調 無理をなさいません様にして下さい
笑顔 面白いですね 笑顔の綺麗な人 醜い人
笑顔の美醜はその人の持って生まれた天性のものだという気がします
テレビ等でも笑顔の美しいアナウンサー そうでないアナウンサー
様々です
作った笑顔は見ていても何か 人に媚びて居るに様に見えて来て下品な感じです
気持ちの良いものではありません
美しい笑顔 矢張りその人の人柄 人格が表れるのではないでしょうか
前回戴いたコメント 失礼だ とは思っていません
唯 わたくしはこのブログに発表する文章は自分自身の思考の跡を記録して置きたい
という思いでのみ書いているもので 他人様を教育 説教しようなどという気持ちは
全くありません その為 週一回の発表に於いても
スタッフの方々にお手を煩わせる事をお願いしても
お眼をお通し戴く方々への配慮は全くしていません
故に退屈な文章になるとは思いますがお読み戴く方々を意識する事はありません
そんな中 何時もお眼をお通し戴く事に感謝申し上げます
お二人でランチ 小さな公園と流れ なんと素敵な風景ではないですか
お幸せそうな御様子が眼に浮かびます どうぞ これからも良い人生の時を
お過ごし下さい こちらは今 春本番真っ盛り花々の一番美しい季節です
一年の中でも最も至福に満ちた季節だと思います
退屈な物語 お読み戴き有難う御座います
今回は短編(ショートストーリー)ではなく 長編(ノベル)になると思います
完結までには少し時間が掛かる予定です
コメント 有難う御座いました
何時も有難う御座います
takeziisan様
溢れる花の季節 少し歩けばあちこちに咲き誇る
様々な花 ブログ画面で拝見する様々な花を見ていると
それが現実でもあるかのように身に迫って来ます
折りしもハゴロモジャスミンが茶色の色彩を
濃くしながらも最後の強烈な香りを家中いっぱいに満たしている中
画面上の鮮やかな花々を拝見していますと それが匂っているかの様な錯覚に捉われます
何時も楽しく拝見しております
ニッコウキスゲー―禅庭花 初めて知りました
尾瀬沼のニッコウキスゲ 一度は身を置いてみたいと思う風景ですが
多分 もう行く機会は無いでしょう お子様との思い出
いい思い出ですね
垂れ下がった鯉のぼり 揺れる事もなく これはこれでまた可笑しく 面白く
見事な風景ですね
登山 今朝のニュースで遭難者の多い事を報じていました
こういう所で足を滑らすのかなあ と思いながら画面を拝見していました
イノシシとの奮戦記 失礼ですがイノシシにも頑張れ と
声援を送りたい気持ちになります
短いながら楽しい記事です
何時も笑いと共に拝見しています
それにしても土の状態が良くないですね
こちらで眼にする畑の土の状態とは段違いに見えます
この地方は恵まれているのかなあ などと思ったりしています
何時も楽しい記事 有難う御座います
詰まらない文章にお眼をお通し戴く事と共に 御礼申し上げます
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