


そういえば、ひと昔半、昔の話。タバコをまだ吸っていた時分、似たような経験をしたことがある。



車の運転をしながら、タバコに火を点け快適なドライブを楽しんでいた。

くわえタバコに片手ハンドル。車内には心地よい音楽が響き渡っている。


アルファード(←リップサービス)とかいう有名なバンドの曲らしい。ルンルンルン……。



吸殻を捨てようと口元のタバコに手をやる。
――――すると、唇から離れるのを拒んだタバコは、人差し指と中指の自然な動きを無視、鈍い光を放つ燃えたぎったような溶岩の燃えカスだけを、私のズボンの上にポトリと落とすことを望んだのだ。



どういうわけか、唇とタバコが頑固にピターーっとくっついていた。

完全に目が醒めた。

