「あっち行って」
「……」
「あっち行って」
「え? なんで? いいでしょう、ここにいても」
「あっち行って」
しばらく、その押し問答が続いた。
これは、うちのもうすぐ三歳になる孫と僕とのやり取りだった。
孫はもちろん悪気があるわけはなく、覚えたての言葉を意味も解らず、使ったに過ぎない。
まったく問題ないし、相手が僕だったからこれも問題ない。
いずれ、言葉の良し悪しを覚えていくだろう。
でも、もし初めてのお客さんが来たとき、「あっち行って」と言ったら? いくら子供だからといっても、客の気分はあまりよくないだろう。
こういう言葉って、普段大人が口にしているから子供が覚えてしまうのだ。
そう思い、娘に尋ねてみた。
すると、首を少し曲げ、言ってないと思うけどな、と少々あやふやな答えが返ってきた。
この会話は、先月のことだったが、今日、会社でこういうことがあった。
おそらく彼が普段家で使っている言葉なのだろう、「ちぇっ、頭くるな。ムカつく。いい加減にしろ」荒々しい声で、周りの社員に気を遣わずPCにぶつけていた。
「まあまあまあ」といえば済むのだが、時には耳に障ることもある。
言葉は大事にしないとな、と思った今日だった。