『グロリア』(80)(1981.6.22.蒲田パレス座.併映は『チャンス』)
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不思議な絵を背景に、奇妙な音楽が流れる中でタイトルが出た後、カメラがニューヨークの夜景をなめていく。やがて夜明けを迎えると、カメラは、バスを降り、ボロアパートの一室に入っていく女を捉える。この女がひどく慌てている様子で、最初から何か不穏なことが起こっている様子が伝わってくる。
この映画は、こんな魅力的なシーンから始まる。やがて、この女=グロリア(ジーナ・ローランズ)と、組織に家族を惨殺されたプエルトリコ系の少年との逃避行が始まり、タクシーや地下鉄などを駆使した、見事な追っ掛け劇が展開していく。
とにかく、この2人の関係性がユニークだ。最初は互いにいがみ合っていたのだが、やがて離れられなくなる。そんな2人が、時には母と子のようであり、親分と子分のようでもあり、恋人同士のようにも見えるのである。
グロリアという、世間から放り出されたようなやさぐれた女と、組織に家族を殺された移民の少年という、アメリカ、それもニューヨークならではのキャラクターも面白い。
とにかく、ローランズが素晴らしい。この映画の宣伝文句じゃないが、とにかくタフで強くてセクシーで、そのくせ優しいのである。目玉焼き一つ満足に焼けず、くわえたばこで、街中で拳銃をぶっ放す。およそ女性離れしたキャラクターを見事に演じ切っていた。
監督はローランズの夫でもあるジョン・カサベテス。本国では俳優としてよりも、むしろ監督としての評価の方が高いようだが、残念ながら日本ではそのほとんどが公開されていない。
この映画のキャラクター設定やニューヨークロケの見事さはもちろん、ラストに伏線を持たせる墓でのエピソードなどディテールもお見事。なるほど本国での評判は伊達じゃない、と納得させられた。
【今の一言】この映画を、あの社会派シドニー・ルメットが、シャロン・ストーン主演でリメーク(99)したのだが、あまり意味がなかった気がする。むしろ、リメークではないが、リュック・ベッソンの『レオン』(94)の方がこの映画の血を引いていると思う。
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